役員にも出勤簿は必要か

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<役員の立場>

役員と会社との関係については、会社法に次の規定があります。

 

【株式会社と役員等との関係】

第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

そして、「委任に関する規定」は民法にあります。

 

【委任】

第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

 

ここで、当事者の一方は会社であり、相手方は役員です。

つまり、会社が役員に法律行為を委託し、役員が会社に承諾して効力が発生します。

「法律行為」というのは、権利の発生・変更・消滅を望む意思で行うことにより、その通りの効果を生じさせるものをいいます。

 

<兼務役員の立場>

役員として、会社との間で委任契約を締結したからといって、雇用契約を重ねて契約できなくなるわけではありません。

雇用契約についての基本的な規定は、民法にあります。

 

【雇用】

第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

会社との間で役員として契約し、同時に労働者としても契約している人のことを、兼務役員といいます。

会社からは、役員報酬と給与の両方が支給されます。

労働者としての立場では労働基準法などの保護を受ける一方で、役員としての立場では労働基準法などの保護が受けられず、会社法などに定められた重責を負うことになります。

兼務役員の行動が、役員としてのものか労働者としてのものか、明確に区分することが困難な場合も多々ありますが、会社は労働者として勤務している部分について、労働時間の適正な把握が義務付けられています。

つまり、この部分については、出勤簿が必要ということになります。

 

<名ばかり役員の立場>

役員として登記されているにもかかわらず、それに相応しい権限を与えられず、取締役会に出席することもないという「名ばかり役員」がいます。

こうした人は、100%労働者ですから、労働基準法などが適用されます。

つまり、出勤簿が必要です。

 

<健康保険と労働保険>

傷病手当金など健康保険の給付は、純然たる役員にも、兼務役員にも、名ばかり役員にも権利があります。

出勤簿が無い場合でも、別の資料から役員として、あるいは労働者としての活動があった日、休業した日は判りますから、手続きをするのに困らないはずです。

純然たる役員には、労災保険も雇用保険も適用がありません。

兼務役員には、労働者の部分について、労災保険・雇用保険が適用されます。兼務役員になったときは、ハローワークで手続きが必要です。給付が受けられるのは、労働者としての立場に基づく部分に限られます。

名ばかり役員は、労災保険も雇用保険も適用されます。

ただ困ったことに、会社は労働基準法や労働保険などの適用を排除し、不当に会社の負担を減らそうとしていることが多いものです。

名ばかり役員の立場を1日も早く解消するため、専門家へのご相談をお勧めします。

 

2019.06.03. 解決社労士 柳田 恵一