本当は怖い労働基準法の罰金

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<30万円の罰金>

労働基準法には、「30万円以下の罰金」についての規定が50種類以上あります。

このうち、わかりやすいものとして次のようなものがあります。

・国籍や性別で賃金を差別する

・遅刻などに「罰金」を設ける

・業務災害による休業中に解雇する

・法定の休憩時間を与えない

・年次有給休暇を与えない

・満18歳に満たない者を午後10時から午前5時に働かせる

・労働条件通知書などにより労働条件を明示しない

・使用者側の都合で休業させたのに休業手当を支払わない

・法定の制限を超えて減給処分を行う

 

<犯罪の個数>

原則として、労働者1人に対する1回の行為が1個の犯罪としてカウントされます。

上記の国籍や性別で賃金を差別した場合については、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されています。

たとえば、外国人や女性を採用するにあたって、日本人や男性よりも低い賃金で雇用し、これが5人続いたとします。そして、6か月にわたって低い月給を支給し続けたとします。この場合、5 × 6 = 30 で、30個の犯罪が成立していることになります。

これでも、懲役刑が科される場合には、9か月が上限となります。〔刑法第47条〕

しかし、罰金が科される場合には、単純に 30万円 × 30 = 900万円 が上限となります。〔刑法第48条第2項〕

労働基準法違反を承知で、長年にわたって多数の従業員に違法な扱いをしていると、数百個の犯罪が成立していることもあるのです。

 

<実際の罰則適用>

実際に罰金が適用されるのは、労働者からの申告を受けて労働基準監督署が摘発し、あるいは無作為抽出による定期的な監督に基づき勧告があって、使用者が指導に従わないような悪質な場合です。

この場合でも、数十万円の罰金に留まるのが一般です。

これは、書類送検されるような悪質な事件については、マスコミの報道により社会的な制裁が十分であることや、罰則よりも被害者や遺族に対する損害賠償の金額の方が遥かに多額であることなどが考慮されているようです。

 

<遵法経営が一番>

こうして見ると、労働基準法違反で罰金が科される場合、本当に怖いのは、罰金よりも社会的制裁や被害者への補償により、企業に莫大な損失が発生してしまうことだと考えられます。

「30万円以下の罰金」であっても、罰則に触れるようなことは、決して行わないよう注意を怠ってはなりません。

 

【刑法の規定】

(併合罪)第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

 

(併科の制限)

第四十六条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。

2 併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。

 

(有期の懲役及び禁錮の加重)

第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

 

(罰金の併科等)

第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。

2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。

 

2019.05.20. 解決社労士 柳田 恵一