2022/03/20|870文字
<不正競争防止法>
不正競争防止法が保護の対象としている営業秘密は、範囲が限定されているため簡単には適用されません。
保護されるのは「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」とされています。〔不正競争防止法第2条第6項〕
実際には、秘密管理性の要件に欠けるとして、この法律の保護が受けられないことが多いのです。なぜなら、秘密管理性の要件を満たすには、次のことが行われている必要があるからです。
・情報に接した者にその情報が営業秘密であると認識させていること
・情報に接する者が制限されていること |
不正競争防止法の規定は、本人が「営業秘密であると認識していること」を適用要件とはしていません。
あくまでも使用者側が、客観的に「営業秘密であると認識させている」という状況が認定されれば法が適用されます。
こうしたことから、会社は営業秘密にはその旨を表示しておき、誰でも一見してわかるようにしておくなどの対策が必要になります。
<情報の窃盗>
刑法には、電子的に記録された情報自体を盗む行為を処罰する規定がありません。
刑法の窃盗罪(第235条)は「財物」を対象としていて、情報は「財物」に含まれないからです。
裁判の実例でも、情報そのものではなく、情報が入力されたDVDやUSBメモリ等の媒体物を盗んだ場合に窃盗罪の成立が認められています。
私物のノートパソコンを持ち込んで、これに情報を複製しても窃盗罪に問うことができません。
<企業としての対応>
営業秘密が不正競争防止法の保護を受けられるよう、物理的な体制を整えておくべきです。
そして就業規則には、営業秘密の持ち出しや漏えいの禁止規定と、これに対応する懲戒の規定も置いておく必要があります。
しかし、最も効果的なのは、定期的に社員研修を繰り返すことです。
入社時に、あるいは何か問題が発生してから1回だけ研修を行い、その後長く実施しなければ、会社の態度が見透かされてしまいます。
ですから、少なくとも年1回は実施したいものです。