フレックスタイム制に必要な就業規則と労使協定

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<フレックスタイム制>

フレックスタイム制は、1日の労働時間の長さを固定的に定めず、1箇月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決め、その生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことができる制度です。〔労働基準法32 条の3

労働基準法の範囲内で認められる特例ですし、導入するには就業規則と労使協定での規定が必要です。ここを省略して運用すると違法ですし無効になります。

 

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)にはフレックスタイム制の規定例が見当たらないのですが、労働基準監督署などで配布される「フレックスタイム制の適正な導入のために」というパンフレットには、次のような規定例があります。

 

 (適用労働者の範囲)

第○条 第○条の規定にかかわらず、企画部に所属する従業員にフレックスタイム制を適用する。

第○条 フレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。ただし、始業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午前6時から午前10 時まで、終業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午後3時から午後7時までの間とする。

  ② 午前10 時から午後3時までの間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、所属長の承認のないかぎり、所定の労働に従事しなければならない。  

 (清算期間及び総労働時間)

第○条 清算期間は1箇月間とし、毎月26 日を起算日とする。   

  ② 清算期間中に労働すべき総労働時間は、154 時間とする。  

 (標準労働時間)

第○条 標準となる1日の労働時間は、7時間とする。  

 (その他)

第○条 前条に掲げる事項以外については労使で協議する。

 

あくまでも規定例ですから、これをそのまま使うのではなく、それぞれの職場に合わせて修正することが必要です。

その際、法令の制限を超えた修正をしてしまうと、その部分は無効になってしまいます。不安があれば、運用を含め社会保険労務士にご相談ください。

 

<労使協定の規定>

労使協定には、次の各項目を定めます。

 

・対象となる労働者の範囲

 対象となる労働者の範囲は、全社員、特定の部署、特定の部署の一部の社員、あるいは個人ごとに指定することもできます。

 

・清算期間

清算期間とは、労働者が労働すべき時間を定める期間のことで、清算期間の長さは、現在の法律では1箇月以内に限ります。そして、賃金の計算期間に合わせて1箇月とすることが一般的です。

 

・清算期間における起算日

 毎月1日から月末まで、16 日から翌月15日までなど、清算期間を明確にする必要があります。

 

・清算期間における総労働時間

清算期間における所定労働時間のことです。

 この時間は、清算期間を平均し、1週間の労働時間が40 時間(特例措置対象事業場は44 時間)以内になるように定めなければなりません。

 ここで、特例措置対象事業場とは、常時10 人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)、保健衛生業、接客娯楽業のことです。

 一般には、40時間 ÷ 7日 × 暦の日数 で計算されます。

 暦の日数が30日の月なら、171.4時間となります。

 1か月単位でみて制限を上回ってはいけませんから、端数は切捨てで設定します。

 

・標準となる1日の労働時間

 フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇を1日取得した場合には、

その日に標準となる1日の労働時間労働したものとして取扱うことが必要です。

 

・コアタイム

 コアタイムは、労働者が出勤日に必ず働かなければならない時間帯です。

設けないことも可能です。

なるべく短い方が、フレックスタイム制の効果は大きくなりますが、会社の労務管理の都合も考えて設定しましょう。

 特定の日や曜日だけコアタイムを変えたり、コアタイムを1日の中に複数設けることも可能です。

 

・フレキシブルタイム

 労働者が勤務できる時間帯に制限を設ける場合は、その開始時刻と終了時刻を定める必要があります。

 労働者の勤務時間を30分単位で区切り、その中から選ぶような仕組みはできません。

 

<残業時間の計算>

「清算期間における総労働時間」を超えて勤務した時間が残業時間ですから、時間外割増賃金の支払い対象となります。清算期間が1箇月であれば、1日や1週単位での計算は不要です。ここが、賃金計算上のメリットになります。

ただし、1週間丸々出勤した場合には、法定休日出勤の賃金を別に計算し、フレックスタイム制での労働時間には加えません。

また、精算期間内の残業時間を、次の精算期間の早帰りなどで相殺することはできません。清算期間をまたいでしまっては、清算期間の意味がありません。また、賃金の全額払いの原則〔労働基準法241項本文〕にも反します。

労働時間が「清算期間における総労働時間」に足りないときは、その時間分だけ欠勤控除をすることになりますが、年次有給休暇の取得によって総労働時間を補うことも多いでしょう。

 

2018.06.25.解決社労士