就業規則で会社を守れるか

2021/05/11|1,321文字

 

<会社を守るということの意味>

従業員から労働者としての法的権利を主張されたら、会社の負担が増大するので内緒にしておきたいというブラックな意味での「会社を守る」もあります。

ブラック社員から会社が不当な要求をされたら、まじめに勤務している他の社員の迷惑にもなり会社の存続も危ういので、ブラック社員から会社を守りたいという意味での「会社を守る」もあります。

 

<ブラックな意味での「会社を守る」>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。

また、1つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 就業規則の由来からすると、その内容は労働条件の共通部分と職場の規律だけで十分なはずです。

しかし会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで就業規則の周知として行っています。

ですから、従業員から労働者としての法的権利を主張されたくないので、作りたくない、作っても隠しておきたいという気持になってしまう経営者もいるのでしょう。

実際には、就業規則と個別の労働契約と法令とを比べて、労働者に一番有利なものが有効になります。

もし、就業規則が見当たらないのであれば、個別の労働契約と法令とを比べて、労働者に有利な方が有効になります。

さらに、経営者が法令に違反して労働条件を文書で通知していないような場合には、個別の労働契約の内容も不明確ですから、法令通りの運用であると認定されます。

結局、経営者が就業規則を隠して「会社を守る」ことができるのは、労働関係法令の内容を知らない労働者に対してだけということになります。

しかし、その労働者もネットなどの情報で自分の権利を知るようになります。

こうなると、ブラック経営者は「会社を守る」ことができなくなります。

 

<ブラック社員から「会社を守る」>

まじめに働く社員のためにも、経営者はブラック社員から会社を守らなければなりません。

就業規則に次のような規定を入れることによって、ある程度ブラック社員の攻撃を阻止することができます。

・ブラック社員を採用しない規定

・ブラック社員の内定を取り消せる規定

・ブラック社員を解雇できる規定

・ブラック社員の休職がトラブルにならない規定

・ブラック社員の無断欠勤を許さない規定

・ブラック社員からの不当な残業代請求を許さない規定

・ブラック社員のルール違反を許さない規定

・ブラック社員から会社が責任を追及されない規定

こうした規定は、現状の就業規則や社内ルールとの整合性を保ちつつ考える必要があります。

また、規定だけでなく運用も適正に行う必要があります。

 

<解決社労士の視点から>

ひな形を少し修正しただけの就業規則では会社を守れません。

また、2年以上変更していない就業規則も、法令違反になっていることでしょう。

会社の実情に応じた就業規則を作成し、タイムリーに変更をかけていくことで会社を守りましょう。

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