2024/11/28|1,491文字
<解雇一般の有効要件>(実体面)
解雇権の濫用であれば不当解雇となります。
不当解雇なら、使用者が解雇を宣告し、解雇したつもりになっていても、その解雇は無効です。
一方、従業員は解雇を通告されて、解雇されたつもりになっていますから出勤しません。
しかし従業員が働かないのは、解雇権を濫用した使用者側に原因があるので、従業員は働かなくても賃金の請求権を失いません。
何か月か経ってから、従業員が解雇の無効に気付けば、法的手段に訴えて会社に賃金や賞与を請求することもあります。
これを使用者側から見れば、知らないうちに従業員に対する借金が増えていくことになります。
解雇権の濫用による解雇の無効は労働契約法に、次のように規定されています。
第16条【解雇】
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
<解雇の予告>(手続面)
解雇権の濫用とはならず、解雇が有効になる場合であっても、その予告が必要です。
つまり、解雇しようとする従業員に対し、30日前までに解雇の予告をする必要があります。
解雇予告は口頭でも有効ですが、トラブル防止のためには、解雇する日と具体的理由を明記した「解雇通知書」を作成し交付することが必要です。
また、従業員から求められた場合には、解雇理由を記載した書面を作成して本人に渡さなければなりません。
これは法的義務です。
一方、予告を行わずに解雇する場合は、最低30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
<即時解雇が許される場合>(実体面・手続面)
「従業員の責に帰すべき理由による解雇の場合」や「天災地変等により事業の継続が不可能となった場合」には、解雇予告も解雇予告手当の支払もせずに即時に解雇することができます。
ただし、解雇を行う前に労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けなければなりません。
また、次のような場合は解雇予告そのものが適用されません。
ただし、所定の日数を超えて引き続き働くことになった場合には解雇予告制度の対象となります。
試用期間中の者 | 14 日間 |
4 か月以内の季節労働者 | その契約期間 |
契約期間が2 か月以内の者 | その契約期間 |
日雇労働者 | 1 か月 |
<労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)>(手続面)
労働基準監督署では「従業員の責に帰すべき事由」として除外認定申請があったときは、従業員の勤務年数、勤務状況、従業員の地位や職責を考慮し、次のような基準に照らし使用者、従業員の双方から直接事情等を聞いて認定するかどうかを判断します。
1)会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があった場合
2)賭博や職場の風紀、規律を乱すような行為により、他の従業員に悪影響を及ぼす場合
3)採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
4)他の事業へ転職した場合
5)2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
6)遅刻、欠勤が多く、数回にわたって注意を受けても改めない場合
上記の認定は客観的な基準により行われますので、社内で懲戒解雇とされても、解雇予告除外認定が受けられない場合があります。
また、懲戒解雇が有効か否かは、最終的には裁判所での判断によることになります。
さらに、次の期間は解雇を行うことができません(解雇制限期間)。
1)労災休業期間とその後30日間
2)産前産後休業期間とその後30日間
解雇してもトラブルにならないケースといえるのか、即時解雇は許されるのかといった専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。