フレックスタイム制の違法な運用

2021/04/05|1,717文字

 

YouTubeこれって労働時間?

 

<スタートは法定手続から>

フレックスタイム制は、労働基準法の次の規定によって認められています。

この規定に定められた手続を省略して、形ばかりフレックスタイム制を導入しても、すべては違法であり無効となります。

 

第三十二条の三 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

一 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲

二 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。)

三 清算期間における総労働時間

四 その他厚生労働省令で定める事項

 

長い条文ですが、ポイントは次のとおりです。

・業務開始時刻と業務終了時刻は労働者が決めることにして、これを就業規則などに定めます。

・一定の事項について、会社側と労働者側とで労使協定を交わし、協定書を保管します。これを労働基準監督署長に提出する必要はありません。

 

<違法な名ばかりフレックス>

上記の法定手続きをせずに、残業時間を8時間分貯めると1日休むことができるというインチキな運用も聞かれます。

この残業時間は、割増賃金の対象となる法定時間外労働でしょうから、25%以上の割増が必要です。

つまり、8時間の残業に対しては、10時間分の賃金支払いが必要です。

( 8時間 × 1.25 10時間 )

だからと言って、残業時間を6時間24分貯めると1日休めるという運用も違法です。

( 6時間24分 × 1.25 8時間 )

計算上はこのとおり正しいのですが、労働基準法が認めていないことを勝手にやってもダメなのです。

 

<フレックスタイム制導入後の違法な運用>

せっかく正しい手続でフレックスタイム制を導入しても、次のような違法な運用が見られます。

・残業手当を支払わない。

・残業時間が発生する月は年次有給休暇を取得させない。

・残業時間を翌月の労働時間に繰り越す。

・業務開始時刻や業務終了時刻を上司など使用者が指定してしまう。

・コアタイムではない時間帯に会議を設定し参加を義務づける。

・18歳未満のアルバイトにフレックスタイム制を適用してしまう。

 

<メリットはあるのか>

導入手続と正しい運用が面倒に感じられるフレックスタイム制ですが、導入手続は最初に1回だけですし、運用は慣れてしまえば問題ありません。

私生活と仕事との調整がしやすくなりますから、生産性の向上が見込めます。

これを誤解して、人件費を削減する仕組だと捉えると上手く機能しません。

 

<活用のポイント>

勤務時間の情報を上手く社内外と共有することが大事です。

また、業務開始時刻と業務終了時刻を自由に決められるとはいえ、労働者個人の好みで決めて良いわけではありません。

仕事のスケジュールや、他部署や取引先などとの連動を考えながら、同僚、関連部署の社員、取引先などと相談しながら決めることになります。

しかし、これをすることによって、他部署や社外とのコミュニケーションも良くなりますし、業務の連動も取りやすくなります。

つまり、生産性の向上につながるわけです。

 

<解決社労士の視点から>

社員数の少ない会社ほど、フレックスタイム制活用のメリットは大きいでしょう。

フレックスタイム制の導入をキッカケに、社員の多機能化を図ることも可能です。

具体的にどうしたら良いのかという専門的なことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

PAGE TOP