治療と仕事との両立のため環境を整えましょう

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2020/03/27|2,810文字

 

<ガイドラインの公表>

令和2年3月18日、厚生労働省が「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン令和2年3月改訂版」を公表しました。

これは、がん、脳卒中などの疾病を抱える方々に対して、会社が適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と仕事が両立できるようにするためのものです。

ここでは、両立支援を行うための環境整備(実施前の準備事項)について、中心的な部分の概要をご紹介いたします。

 

<事業者による基本方針等の表明と労働者への周知>

衛生委員会等で調査審議を行った上で、事業者として、治療と仕事の両立支援に取り組むに当たっての基本方針や具体的な対応方法等の事業場内ルールを作成し、全ての労働者に周知することで、両立支援の必要性や意義を共有し、治療と仕事の両立を実現しやすい職場風土を醸成します。

会社として、本気で取り組む姿勢を示すことによって、社内での意識を変革することができるようになります。

 

<研修等による両立支援に関する意識啓発>

治療と仕事の両立支援を円滑に実施するため、当事者やその同僚となり得る全ての労働者、管理職に対して、治療と仕事の両立に関する研修等を通じた意識啓発を行います。

人事異動が、全社的など広汎に行われる会社であれば、すべての労働者に対して研修等が必要となります。

これは、事業者による基本方針等の表明を受けて、具体的な内容を伝達する目的で行うものですから、基本方針等の表明からなるべく期間を置かずに実施することが望ましいものです。

 

<相談窓口等の明確化>

治療と仕事の両立支援は、労働安全衛生法に基づく健康診断において把握した場合を除いては、労働者からの申出を原則とすることから、労働者が安心して相談・申出を行えるよう、相談窓口、申出が行われた場合の当該情報の取扱い等を明確にします。

会社から治療と仕事の両立支援について、正式な表明が行われるまでは、多くの労働者が病気を隠して治療しながら就労しているという実態があります。

こうした労働者が、会社に対して支援を求めようとする場合に、相談窓口や担当部署が明確でなければなりません。

また、支援を求めた場合に、どのように対応してもらえるのか、個人の秘密は守られるのかなど、不安要素は多岐に亘りますから、これらを解消する情報の提供も必要です。

 

<休暇制度、勤務制度の整備>

治療と仕事の両立支援においては、短時間の治療が定期的に繰り返される場合、就業時間に一定の制限が必要な場合、通勤による負担軽減のために出勤時間をずらす必要がある場合などがあることから、以下のような休暇制度、勤務制度について、各事業場の実情に応じて検討、導入し、治療のための配慮を行うことが望ましいといえます。

【時間単位の年次有給休暇】

労働基準法に基づく年次有給休暇は、1日単位で与えることが原則です。しかし、労使協定を結べば、1時間単位で与えることが可能となります。ただし、1年で5日分までが上限となります。

【傷病休暇・病気休暇】

事業者が自主的に設ける法定外の休暇で、入院治療や通院のために、年次有給休暇とは別に休暇を付与するものです。取得条件や取得中の賃金の支払いの有無などの処遇についても、事業場ごとに異なります。

大企業の多くが、こうした休暇制度を設けています。

【時差出勤制度】

事業者が自主的に設ける勤務制度であり、始業と終業の時刻を変更することにより、身体に負担のかかる通勤時間帯を避けて通勤するといった対応が可能となります。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的として、この制度が利用されましたので、その有効性は確認済みといえます。

【短時間勤務制度】

育児、介護休業法に基づく短時間勤務制度とは別に、事業者が自主的に設ける勤務制度です。療養中・療養後の負担を軽減すること等を目的として、所定労働時間を短縮する制度です。

【在宅勤務(テレワーク)】

事業者が自主的に設ける勤務制度で、パソコンなどの情報通信機器を活用した、場所にとらわれない柔軟な働き方です。自宅で勤務することにより、通勤による身体への負担を軽減することが可能となります。

大企業では、東京オリンピック対策で用意された制度が、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的として広く利用されました。そのメリット・デメリットは確認済みといえます。

【試し出勤制度】

事業者が自主的に設ける勤務制度であり、長期間にわたり休業していた労働者に対し、円滑な復職を支援するために、勤務時間や勤務日数を短縮した試し出勤等を行うものです。復職や治療を受けながら就労することに不安を感じている労働者や、受入れに不安を感じている職場の関係者にとって、試し出勤制度があることで不安を解消し、円滑な就労に向けて具体的な準備を行うことが可能となります。

 

<労働者から支援を求める申出があった場合の対応手順、関係者の役割の整理>

労働者から支援を求める申出があった場合に円滑な対応ができるよう、労働者本人、人事労務担当者、上司・同僚等、産業医や保健師、看護師等の産業保健スタッフ等の関係者の役割と対応手順をあらかじめ整理しておきます。

 

<関係者間の円滑な情報共有のための仕組みづくり>

治療と仕事の両立のためには、労働者本人を中心に、人事労務担当者、上司・同僚等、産業医や保健師、看護師等の産業保健スタッフ、主治医等が、本人の同意を得た上で支援のために必要な情報を共有し、連携することが重要です。特に、就業継続の可否、必要な就業上の措置及び治療に対する配慮に関しては、治療の状況や心身の状態、就業の状況等を踏まえて主治医や産業医等の医師の意見を求め、その意見に基づいて対応を行う必要があります。このため、医師に労働者の就業状況等に関する情報を適切に提供するための様式や、就業継続の可否、必要な就業上の措置及び治療に対する配慮について医師の意見を求めるための様式を定めておきます。

「様式」は、書式、フォーマットですが、ひな形の他に記入例も作成して示しておき、情報伝達を円滑・確実にしましょう。

 

<両立支援に関する制度や体制の実効性の確保>

治療と仕事の両立支援のための制度や体制を機能させるため、日頃から全ての労働者に対して、制度、相談窓口の周知を行うとともに、管理職に対して、労働者からの申出、相談を受けた際の対応方法や、支援制度・体制について研修等を行います。

管理職向けの研修は、人事考課研修に併せて定期的に繰り返し行うと効果的です。

 

<労使等の協力>

治療と仕事の両立に関して、制度・体制の整備等の環境整備に向けた検討を行う際には、衛生委員会等で調査審議するなど、労使や産業保健スタッフが連携し、取り組むことが重要です。

何でも話し合って決めるというわけにはいきませんが、話し合いにより共通認識が得られれば、制度の円滑な運用に役立つことでしょう。

 

解決社労士