勤務中の居眠りに対する懲戒処分

2022/10/15|1,069文字

 

<懲戒権濫用法理>〔労働契約法第15条〕

「使用者が労働者を懲戒できる場合」であることを前提に、次のような条件すべてを満たしていないと、その懲戒処分が無効とされるばかりではなく、会社は損害賠償の責任を負うことになります。

・労働者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

・事件が起きてから懲戒処分の規定ができたのではないこと。

・過去に懲戒処分の対象とした行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

・その労働者に説明するチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 

<居眠りに対する懲戒処分>

まず、居眠りというのは故意にできることではなく過失による行為ですから、懲戒規定の中でも他の過失行為と同様に軽い処分とせざるを得ません。

また、今まである程度勤務中の居眠りが黙認されてきたのに、突然、懲戒規定を置いて処分の対象とする場合には、居眠りが許されない新たな職務の発生など、それ相当の強い根拠が必要となります。

さらに、居眠りの原因を考えた場合に、肥満や病気が関与している場合には、会社の健康管理の一環として、懲戒処分の前に生活面での指導が必要となります。

ましてや、過重労働や長時間労働の結果、居眠りが生じたような場合には、会社側に大きな責任がありますから、懲戒処分では何も解決しません。

結論として、居眠りの原因について会社側に落ち度がないかを確認し、本人に考えられる原因を挙げてもらい、まずは原因をつぶしていく努力をします。

それでもなお、本人の落ち度で居眠りが発生するのであれば、注意、厳重注意、譴責(けんせき)あたりまでは、懲戒処分もありうると考えます。

 

<居眠りに対する他の対応>

きちんとした評価基準があれば、勤務中の居眠りが評価を下げる原因となり、昇進、昇格、昇給、賞与に反映されます。

ですから、人事考課のシステムがない会社は、きちんと構築する必要があるでしょう。

また、1時間、2時間と長時間の居眠りを繰り返すようであれば、本人と責任者が面談して、欠勤控除の対象となることを説明すべきでしょう。

この欠勤控除は、労働契約の性質から導かれるノーワーク・ノーペイの原則から許されるものですが、計算方法については、就業規則に規定しなければなりません。

さらに、居眠りがひどくて仕事になっていないというケースでは、普通解雇を考えざるを得ないこともあります。

いずれにせよ、最初に懲戒処分を考えるのではなく、その前に検討すべき対応は数多くあるということです。

 

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