フレックスタイム制導入の迷い

2021/05/12|1,091文字

 

<シフトの不安>

厚生労働省が発行している「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」には、メリットがある場合の例として、次のようなケースが示されています。

・共働きで子育てをする夫婦が、保育園の送り迎えを日替わりで分担している。

・資格取得を目指している人が、月・水・金曜日に学校に通うため早く帰っている。

・通勤ラッシュが苦手な人が、早く帰りたい日に通勤ラッシュ前に出勤している。

・休日にケガをした人が、病院に寄ってから出勤する。

フレックスタイム制が特定の部署の全員に導入された場合、こうしたニーズを抱えた従業員が多いと、まともなシフトが組まれないのではないかと不安になります。

 

<フレックスタイム制を導入しなくても>

上の4つの例のうち、月・水・金曜日に早く帰って学校に通う例では、これらの曜日だけ早く出勤し、通常の時間だけ勤務することも可能です。

勤務時間帯を前倒しにするわけです。

このことは、通勤ラッシュを避けたい人にも当てはまります。

また、休日にケガをした人が出勤予定日に病院に行くケースでは、病院に行くほどのケガであれば、年次有給休暇の取得を考えたいところです。

ただ、これらの場合であっても、フレックスタイム制であれば、会社にプライベートな事情を説明しなくて済むという利点があります。

共働きで子育てをする夫婦が、保育園の送り迎えを日替わりで分担する例では、夫婦の一方がいつも送って、他方がいつも迎えるということであれば、やはり勤務時間帯の変更で対応できます。

しかし、送り迎えの両方を同じ日に行う形で分担するのであれば、フレックスタイム制の導入が必要となってきます。

 

<就業規則の規定による対処>

フレックスタイム制を導入するには、就業規則に関連規定を置く必要があります。

これらの中に「フレックスタイム制により勤務する従業員は、取引関係者、業務の都合、他部門への影響等を十分に配慮し、業務に支障を生じないようにするとともに、効率的に業務を遂行できるよう、始業・終業時刻の決定をしなければならない」という規定を置くことも可能です。

そして、個人的な都合を最優先して、業務に支障を来しうるような行動に出る従業員については、懲戒などを検討するのではなく、労使協定を見直してフレックスタイム制の対象から外すのが現実的です。

これについては、制度の導入にあたって、予め説明しておくべきことです。

フレックスタイム制は、生活と業務との調和が図れる便利な制度です。

自分の都合ばかり優先していると、フレックスタイム制の対象者から外されうるのであれば、業務に支障が出ないように配慮することでしょう。

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