令和3(2021)年度地方労働行政運営方針

2021/04/15|1,980文字

 

<地方労働行政運営方針の意義>

厚生労働省は、令和3(2021)年4月1日付で「令和3年度地方労働行政運営方針」を策定しました。

各都道府県労働局は、この運営方針を踏まえつつ、各局の管内事情に即した重点課題や対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図ることにしています。

労働基準監督署の労働基準監督官は、監督指導実施計画に沿って臨検監督(実地調査)を行っていますが、この計画も「行政運営方針」に基づいています。

労働基準行政で優先順位の高いものほど、重点項目の上のほうに記載されていますから、会社の所轄労働基準監督署が監督(調査)に入るとしたら、何を見られるかが把握しやすいといえます。

 

<令和3年度の運営方針の特徴>

労働行政の最大の課題として、長期化する新型コロナウイルス感染症への対応を掲げています。

今後は、新型コロナウイルス感染症が社会経済活動に様々な影響を及ぼす中で、現下の厳しさがみられる雇用情勢と、労働市場の変化の双方に対応した機動的な雇用政策を実施していくこと、人材ニーズに柔軟に対応した人材開発やテレワークなどの多様な働き方の定着などに取り組むとしています。

さらに、構造的な課題の少子高齢化の中で、労働供給の確保や生産性向上等に引き続き取り組む必要があること、人生100年時代を迎え、どのような生き方や働き方であっても安心できる社会を創っていくことも必要なことを確認しています。

このため、働き方改革関連法の着実な施行等が大事であることを強調しています。

年次有給休暇の管理と取得させる義務の履行、時間外労働時間の法的規制の遵守、同一労働同一賃金への対応などが、企業にとっても重点課題となるでしょう。

 

<ウィズ・ポストコロナ時代の雇用機会の確保>

1.雇用の維持・継続に向けた支援

新型コロナウイルス感染症の影響等により休業させられた労働者の雇用の維持・継続のため、雇用調整助成金により事業主を支援し、産業雇用安定助成金により在籍型出向を活用した雇用維持を促進します。

2.業種・地域・職種を越えた再就職等の促進

新型コロナウイルス感染症の影響等による求職者のニーズの多様化に対応するため、ハローワークに新たに専門の相談員を配置する等により、業種、地域、職種を越えた再就職等の支援を行います。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により離職を余儀なくされ、就労経験のない職業に就く希望者を、一定期間試行雇用する事業主の賃金の一部をトライアル雇用助成金で助成します。

3.非正規雇用労働者の再就職支援

非正規雇用労働者等の早期再就職を支援するため、ハローワークに専門の相談員を配置し、担当者制による求職者の個々の状況に応じた体系的かつ計画的な就職支援の強化を図ります。

また、求職者等に向けた企業の職場情報の提供を行う職場情報総合サイト(しょくばらぼ)や職業の様々な情報が手軽に入手できる職業情報提供サイト(日本版O-NET)を活用し、求人・求職の効果的なマッチングを図ります。

4.女性活躍・男性の育児休業取得等の推進

不妊治療のための休暇制度・両立支援制度の利用促進に取り組む中小企業事業主に対する助成金の利用を促進し、不妊治療を受けやすい職場環境の整備を推進します。

また、女性活躍推進法の行動計画策定義務対象企業が101人以上に拡大されることを踏まえ、中小企業事業主に対する女性活躍推進アドバイザーによる個別支援等を行います。

 

<ウィズコロナ時代に対応した労働環境の整備、生産性向上の推進>

1.「新たな日常」の下で柔軟な働き方がしやすい環境整備

適正な労務環境下での良質なテレワークの普及促進を図るため、テレワーク相談センターによる働き方改革推進支援センターと連携した個別相談対応やセミナーの開催等により、テレワークを実施する中小企業への支援を行います。

また、良質なテレワークを導入・実施し、人材確保や雇用管理改善の観点から効果をあげた事業主への支援(人材確保等支援助成金の支給)を行います。

2.ウィズコロナ時代に安全で健康に働くことができる職場づくり

職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、「取組の5つのポイント」やチェックリスト等を活用した職場における感染防止対策の取組を推進するとともに、新型コロナウイルス感染症に係る労災補償については、迅速かつ的確な調査及び決定を行います。

3.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に向けて、働き方改革推進支援センターによるワンストップ窓口で、労務管理等の専門家による個別訪問支援等に加え、新たに業種別団体等に対し専門家チームによる支援を実施します。

また、賃金引上げや非正規雇用労働者のキャリアアップを図るため、各種助成金の活用も含めた支援を行います。

 

解決社労士

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