<年次有給休暇の確実な取得>
使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については毎年時季を指定してでも与えなければなりません。
年次有給休暇は労働者に与えられた権利ですから、本来はその権利を使うかどうかが労働者の自由に任されています。
しかし、年次有給休暇の取得を促進しても取得率が50%前後で伸び悩んだことから、働き方改革の一環で労働基準法が改正され企業に時季指定を義務付けることになったのです。
これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と労使協定によって計画的付与がされた日数は年5日から差し引かれます。
つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について次の3つの合計が5日以上となる必要があります。
・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数
・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数 ・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数 |
本来は、労働者の権利である年次有給休暇の取得について、労働基準法が使用者を通じて間接的に義務付けたことになります。
しかし、労働者の時季指定権を確保するため、5日を超える日数を指定することはできません。
労働基準法が年5日と法定している以上、会社の方針で年10日以上など5日を超える日数を基準に時季指定することはできないのです。
<年次有給休暇の取得を嫌う労働者>
年次有給休暇の取得を嫌がる人もいます。
この理由はさまざまです。
休んでいる間に仕事が溜まることを、極端に恐れるというのが多いようです。
反対に、仕事が溜まらないように同僚や上司が業務を代行した場合に、普段の仕事ぶりが明らかになってしまうことへの不安もあります。
こうした労働者についても、使用者は法定の範囲内で年次有給休暇を取得させなければならないわけですから、労働者から見たら「年次有給休暇を取得させられる」ということになります。
この関係は、定期健康診断の実施義務にも似ています。
義務を果たさない場合について、使用者側には罰則が適用されうるのですが、労働者側に罰則はありません。
<年次有給休暇取得率70%に向けて>
内閣府は「仕事と生活の調和推進のための行動指針」で、2020年までに年次有給休暇取得率70%を目指すとしていました。
これを受けて、年次有給休暇取得率70%以上を目標に掲げる企業もあります。
年次有給休暇は労働者の権利ですから、取得を強制する、取得しないと人事考課で評価が下がるなどの運用は許されません。
これらは、権利の侵害になるからです。
休んでも仕事が溜まらない仕組み、各社員の普段の仕事ぶりの見える化など、年次有給休暇を安心して取得できる環境を整えることによって、目標を達成したいものです。