障害者雇用促進の歴史

2022/08/07|1,571文字

 

<障害者数の不適切な計上>

かつて、障害者雇用率制度に関連して、多くの行政機関で、障害者である職員の不適切な計上があり、法定雇用率を達成していない状況が長年にわたって継続していた事実が報道され、国民の関心を集めました。

国が働き方改革を推進し、一億総活躍社会の実現を目指している中での報道ですから、かなりのインパクトがありました。

しかし、障害者雇用・就業の促進は、最近始まったことではなく長い歴史があります。

以下は、その概要です。

 

<身体障害者雇用促進法の制定>

諸外国で障害者の雇用法が制定されていたこと、ILO(国際労働機関)で職業更生勧告が採択されていたことなどを踏まえ、昭和35(1960)年、「身体障害者雇用促進法」が制定されました。

主に職業紹介、適応訓練、雇用率制度について定められ、雇用率制度については、公的機関は法的義務、民間企業は努力義務とされました。

 

<法定雇用率の法的義務化>

身体障害者の雇用が不十分なため、昭和51(1976)年、全ての企業に法定雇用率を義務付け、雇用納付金制度を創設しました。

このときの法定雇用率は1.5%でした。

 

<障害者の雇用の促進等に関する法律>

昭和56(1981)年の国際障害者年をきっかけに、法律の制定時から課題となっていた知的障害者に対する雇用率の適用に向けた動きが盛んになりました。

また、障害者の離職率の高まりについても対策が求められました。

そこで、昭和62(1987)年、法律の名称を「障害者の雇用の促進等に関する法律」とし、対象範囲を身体障害者から知的障害者や精神障害者を含む全ての障害者に拡大しました。

これによって、職業指導、職業訓練、職業紹介などの職業リハビリテーションの推進に必要な改正や、知的障害者を身体障害者と同様に実雇用率の計算に加える改正が行われました。

 

<知的障害者の雇用の義務化>

知的障害者の雇用が進展し、身体障害者の雇用の促進にも影響を及ぼすようになっていたことから、平成9(1997)年、知的障害者が雇用義務の対象とされ、障害者雇用率の算定基礎に加えられました。

 

<精神障害者の雇用対策の強化>

精神障害者の就業や在宅就業障害者が増加してきたため、平成17(2005)年には、精神障害者(手帳所持者)を実雇用率に算定できるようにしました。

また、在宅で就業する障害者に対して仕事を発注する事業主に、特例調整金などを支給するなどの改正が行われました。

 

<短時間労働者への適用拡大>

中小企業では障害者の雇用が低調に推移し、一方で短時間労働に対する障害者のニーズが高まったため、平成20(2008)年、障害者雇用納付金制度の適用対象が常用雇用労働者が300人以下の企業に拡大されました。

また、障害者の雇用義務の基礎となる労働者と雇用障害者に、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者が追加されました。

 

<障害者に対する差別の禁止と合理的配慮の提供義務>

「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、平成28(2016)年4月1日に施行されました。

①雇用の分野での障害者差別の禁止

②雇用の分野での合理的配慮の提供義務

③相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助

事業所の規模・業種に関わらず、すべての事業主が対象となりました。

対象となる障害者は、障害者手帳を持っている方に限定されません。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能に障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方が対象となりました。

 

<精神障害者の雇用義務化>

平成30(2018)年4月1日から、障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました。

法定雇用率が引き上げられ、精神障害者である短時間労働者の算定方法が変わりました。

 

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