2022/07/30|1,254文字
<年次有給休暇を取得させる義務>
年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。
与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。
かつては、実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定がなければ、使用者の方から積極的に取得させる義務はなかったのです。
ところが、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。
つまり、年次有給休暇が新たに付与される日数が10日以上の労働者に対しては、年次有給休暇のうち5日以上について、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。
これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。
結局、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。
・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数
・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数 ・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数 |
<就業規則に必要な規定>
年次有給休暇など法定の休暇だけでなく、会社で設けている休暇については就業規則に必ず定めることが必要です。
年次有給休暇については、新たに取得日を指定してでも取得させる義務が発生したわけですから、これも就業規則に定めなければなりません。
その職場の就業規則により、また前後関係から、表現の違いはあるものの内容的には次のようになります。
【新たに規定する内容】
年次有給休暇が新たに10日以上与えられた従業員に対しては、従業員があらかじめ請求する時季だけでなく、付与日から1年以内に、その従業員の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が従業員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。
ただし、従業員があらかじめ請求する時季に年次有給休暇を取得した場合、および労使協定を結んで計画的に休暇取得日を決定した場合には、その取得した日数分を5日から控除する。 |
<働き方改革との関係>
年次有給休暇の取得率は、やっと平均50%を超えるようになってきました。
こうした事態を解消するために、働き方改革の一環で、使用者に年次有給休暇の取得日を指定させてでも、取得率を向上させようということです。
働き方改革というのは、働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な改革ですから、会社が従業員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で進めることが必要です。
残業が減った分だけ給料が減り、残業手当の付かない役職者に仕事が集中するのは、働き方改革の弊害だと言われますが、進め方を誤った結果にすぎません。
年次有給休暇の取得についても、働き方改革の本質から外れない運用を心がけましょう。