働き方改革と定額残業代(固定残業代)

2022/08/13|1,368文字

 

<定額残業代の導入>

割増賃金の基礎となる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。

このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、最低賃金を下回らないことが必要です。

割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つに限定されています。〔労働基準法第37条第5項〕

これらの手当は、労働の量とは無関係に福利的に支給されるものとして、除外することが認められているのです。ですから、これらに該当するかどうかは、手当の名称ではなく、その性質に基づいて判断されます。

この割増賃金の基礎となる賃金から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。

文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。

定額残業代の計算が誤っていたり、割増率が法定の基準を下回っていたり、最低賃金法違反があったり、労働者への説明が不十分であったりすると、制度そのものが無効とされます。

この場合、労働基準監督署の監督が入ったり、労働審判が行われたりすると、定額残業代を含めた総額を基準として残業代を計算し、さかのぼって支払うことになるのが一般です。

残業代の二重払いが発生しますから、会社にとって予定外の出費となります。このように、導入の失敗は大きなリスクとなります。

 

<定額残業代の運用>

定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。

なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。

もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。

そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。

誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。

 

<働き方改革と定額残業代>

働き方改革の推進によって残業時間が減少し、自分の時間が増えたものの、手取り収入が減ってしまったという不満が聞かれます。

この点、定額残業代は良い仕組みです。

労働者にとっては、残業が少なくても定額残業代が保障されていますし、会社にとっては人件費が安定します。

しかし、それだけではありません。

残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。

そのためには、自主的に学んだり、仕事の手順を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。

これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。

こうした自己啓発や自己研鑽が期待できない場合であっても、仕事による疲労の蓄積が無い分だけ、生産性が上がると考えられます。

 

<上手に活用しましょう>

定額残業代は、ブラックな制度のように思われていました。

今でも、ハローワークで求人票に定額残業代の表示をすることについては、窓口で慎重すぎる態度を示されてしまいます。

これは、誤った制度導入や運用があまりにも多いため、悪い印象を持たれてしまっているからでしょう。

定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

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