2025/10/29|1,051文字
<平均賃金の勘違い>
平均賃金は、労働基準法に基づいて算定される「基準賃金」であり、解雇予告手当、休業手当、労災補償、育児休業給付などの金額算定に用いられます。
しかし、実務では給与の日割計算などと混同されることが多く、計算ミスや従業員の誤解が生じやすい項目です。
<労働基準法の平均賃金>
労働基準法第12条に定められた「平均賃金」は、以下の2つのうち高い方を採用します。
| 過去3か月間の賃金総額 ÷ その期間の暦日数(平均賃金方式)
過去3か月間の賃金総額 ÷ 労働日数 × 0.6(最低保障額) |
この制度により、労働日数が少ない場合でも最低限の保障が確保されます。
<計算対象となる賃金>
平均賃金の算定に含める賃金も法定されています。
含める:基本給、残業代、通勤手当、役職手当、皆勤手当など
含めない:臨時的な賞与、慶弔見舞金、退職金、結婚祝い金など
※控除前の総額で計算し、税金や社会保険料は差し引きません。
<よくある勘違いと誤算例>
✕「基本給だけでいい」と思い込む
→ 残業代や手当を除外すると、実際より低い平均賃金となり、休業手当や解雇予告手当の支給額が不足する可能性があります。
✕「給与÷勤務日数」で計算してしまう
→ 平均賃金は「暦日数」で割るのが原則です。勤務日数で割ると高くなりすぎます。
✕「アルバイトやパートには関係ない」
→ 平均賃金は雇用形態に関係なく適用されます。労災補償や休業手当の算定に必要です。
✕「自社のルールで計算しても問題ない」
→ 労働基準法に基づく計算が義務です。誤算は労働者からの申告や労基署の是正勧告につながります。
<実務での注意点>
実務上特に注意したい点は次のとおりです。
- 賃金データの管理
平均賃金の算定には、過去3か月分の賃金明細と勤怠データが必要です。給与計算システムやクラウド管理で正確性を確保しましょう。
- 就業規則への明記
平均賃金の取り扱いを明文化することで、従業員とのトラブルを防止できます。
- 手当の支給ルールの整理
「含める賃金」「除外する賃金」を明確にし、法定のルールと社内ルールとを照らし合わせておくことが重要です。
- 顧問社労士との連携
月次チェックや制度改正への対応を専門家と連携することで、リスクを最小限に抑えられます。
<実務の視点から>
平均賃金は法定されていますから、正しい理解と計算が不可欠です。勘違いや自己流の算定は、企業にとって重大なリスクとなります。制度の趣旨を理解し、正確な運用を心がけることで、従業員との信頼関係を築き、労務トラブルを未然に防ぐことができます。