脱退一時金の改正と注意点(2026年4月施行)

2025/10/28|1,251文字

 

2025年の年金制度改正により、外国人労働者向けの「脱退一時金制度」が大きく見直されました。以下では、制度の概要、改正ポイント、注意点をわかりやすく整理し、企業や外国人本人が押さえておくべき事項を解説します。

 

脱退一時金>

脱退一時金は、日本で一定期間働いた外国人が、年金受給資格(原則10年)を満たさずに母国へ帰国する際、支払った年金保険料の一部を返金してもらえる制度です。対象は国民年金・厚生年金の加入者で、日本人には適用されません。

脱退一時金制度の改正ポイント(2025年改正)

項目 改正前の制度内容 改正後の制度内容(2025年~)
支給対象期間の上限 最大5年分 最大8年分に拡大
再入国許可保持者への支給 支給可能 支給不可(再入国許可期間中は対象外)
請求回数 原則1回 条件を満たせば複数回申請可能
所得税の扱い(厚生年金) 20.42%の源泉徴収 還付申請により一部返還可能
所得税の扱い(国民年金) 非課税 非課税(変更なし)
社会保障協定国との関係 協定国でも脱退一時金請求可能 協定国出身者は通算制度との選択が必要
請求期限 資格喪失から2年以内 変更なし
障害年金受給権の有無 受給権がある場合は請求不可 変更なし

 

支給条件(2025年時点)>

・日本国籍を有していない

・6か月以上の保険加入期間がある

・年金受給資格(10年)を満たしていない

・日本に住民票がない

・被保険者資格喪失から2年以内

・障害年金の受給権がない

 

<再入国許可との関係>

再入国許可を保持したまま出国した場合、脱退一時金は支給されません。これは制度の趣旨(永続的な出国者への支給)に沿った改正であり、短期的な出国による不正受給を防ぐ目的があります。

 

<退職タイミングの誤解>

技能実習から特定技能に移行した外国人が、脱退一時金の申請可能時期に合わせて退職を希望するケースが増えています。企業側は「突然の退職」に見えるかもしれませんが、制度理解が不足しているとトラブルの原因になります。

 

<有給休暇・再雇用の混乱>

退職→再雇用の流れがある場合、有給休暇の扱いや雇用契約の再設定が曖昧になりがちです。建設分野などでは「受入計画」の再申請も必要になるため、事前調整が不可欠です。

 

<税金の取り扱い>

厚生年金の脱退一時金には20.42%の所得税等が源泉徴収されますが、確定申告に類する手続で還付を受けられる可能性があります。支給決定通知書の保管が重要です。

 

<社会保障協定との選択>

協定国出身者は、脱退一時金を受け取るか、年金通算制度を利用するか選択が必要です。誤った選択は将来の年金受給に影響するため、慎重な判断が求められます。

 

企業が取るべき対応>

制度を「知っているかどうか」で、外国人従業員との信頼関係は大きく変わります。説明責任を果たすことが、トラブル回避と持続可能な雇用の鍵です。次のようなことが検討課題となります。

・入社時・2年目・退職前の3段階で制度説明を実施

・書面+母語翻訳での通知を徹底

・登録支援機関や社労士との連携強化

・不適切な退職勧奨を防ぐ社内ルールの整備

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