2022/08/02|2,170文字
<令和3年改正育児・介護休業法Q&A追加>
令和4(2022)年7月25日、厚生労働省が令和3年改正育児・介護休業法に関するQ&Aに18項目を追加しました。
企業にとって影響の大きな項目を、2回に分けてご紹介しています。
今回は、前回の続きです。
<出生時育児休業期間の年次有給休暇付与の出勤率算定>
出生時育児休業は、年次有給休暇付与の出勤率算定に当たって、出勤したものとみなされます。
また、出生時育児休業中に部分就業を行う予定であった日について、欠勤した場合や子の看護休暇等の年休の出勤率算定に含まれない休暇を取得した場合についても、出勤したものとみなされます。
出生時育児休業中に就業させることができる者について、労使協定で定める際、 「休業開始日の○週間前までに就業可能日を申し出た労働者に限る」といった形で対象労働者の範囲を規定することは可能です。
1日勤務できる者(所定労働時間より短い勤務は認めないなど)、特定の職種や業務(営業職は可だが事務職は不可、会議出席の場合のみ可など)、特定の場所(A店は可だがB店は不可、テレワークは不可など)で勤務できる者、繁忙期等の時期に取得する者等に限定することも可能です。
出生時育休中の部分就業の上限について、「就業日における労働時間の合計が、出生時育児休業期間における所定労働時間の合計の2分の1以下であること」とありますが、直前まで育児短時間勤務をしている場合等でも、1日の所定労働時間は、短縮前の労働時間をもとに計算します。
<管理監督者への適用>
管理監督者(労働基準法第41条第2号)に出生時育休中の部分就業を行わせることも可能です。
出生時育休中の部分就業の合意の範囲内に、労働時間の選択が限定されることをもって直ちに管理監督者性が否定されることにはなりません。
ただし、管理監督者は自身の労働時間に関する裁量を有していることから、あらかじめ合意した就業日時より少ない時間数しか実際に就業しなかったことをもって賃金の減額等があることは、管理監督者ではないと判断される要素として働き得ます。
また、あらかじめ合意した就業日時の範囲を超えて就業することは認められていませんので、当日就業する日時の目途が立たない場合には、あらかじめ合意する就業日時を広く設定しておくことが考えられます。
この場合でも、育児・介護休業法施行規則21条の17に定める範囲内に収めなければなりません。
<フレックスタイム制の適用される労働者への適用>
フレックスタイム制の適用される労働者に出生時育休中の部分就業を行わせることも可能です。
この場合、フレックスタイム制の対象としたまま、出生時育休中の部分就業の対象とする方法と、フレックスタイム制の対象から外し、通常の労働者の労働時間管理を行うこととしたうえで、改正育児・介護休業法9条の5の定めるところに従って部分就業させる方法の2つが考えられます。
フレックスタイム制の適用される労働者がその適用を受けたまま出生時育休中の部分就業をする場合は、労働者の就業可能日等の申出とそれを受けた事業主の提示については、例えば、労働者が就業可能な時間帯と出生時育児休業中に就業可能な時間数の最大幅を示し、そのうえで、事業主から就業可能日時の外枠(その枠内で就業してよい範囲)のみを示し、その枠内での始終業時刻は労働者の決定に委ねることなどが考えられます。
フレックスタイム制における総所定労働時間は、出生時育児休業期間が含まれる清算期間でも特別の定めをしない限り変更になることはないため、出生時育休中の部分就業を行った時間を含む清算期間の実労働時間が清算期間の総所定労働時間に満たない場合には、その満たない労働時間分を控除した賃金を支払うことになります。
<事業場外労働のみなし労働時間制の適用される労働者への適用>
事業場外労働のみなし労働時間制の適用される労働者に、出生時育休中の部分就業を行わせることは可能です。
労働者を事業場外みなし労働時間制の対象としつつ出生時育休中の部分就業の対象とする方法と、一時的に別の業務に従事させることとしたうえで労働者を事業場外みなし労働時間制の対象から外し、通常の労働者の労働時間管理を行うこととしたうえで、出生時育休中の部分就業の対象とする方法の2つが考えられます。
<裁量労働制の適用される労働者への適用>
裁量労働制の適用される労働者に、出生時育休中の部分就業を行わせることも可能です。
ただし、あらかじめ合意した就業日時の範囲内で就業することとなっている出生時育休中の部分就業を行いながら、裁量労働制の適用を続けることはできませんので、出生時育休中の部分就業を行わせる場合には、労働者を裁量労働制の対象から外し、通常の労働者の労働時間管理を行うこととしたうえで、改正育児・介護休業法9条の5の定めるところに従い、出生時育休中の部分就業を行わせることとなります。
この場合の就業可能な時間数は、就業規則等で定められた通常の労働者に適用される所定労働時間数をもとに算出します。
<出生時育休中の部分就業についての休業手当の取扱い>
出生時育休中の部分就業を行う日が、使用者の事情による休業となった場合について、会社は休業手当を支給する義務があります。