賃金の記事

<欠勤控除>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことをいいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

<法律の規定>

労働基準法その他の法令に規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供が無い場合には、使用者は賃金を支払う義務が無く、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

これは、労働契約が「働きますから賃金を支払ってください」「賃金を支払いますから働いてください」という労使の合意によって成立していることから当然に導かれます。

欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります。

 

<「時間給」の計算>

欠勤控除を考える場合、まず「時間給」を計算します。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけて、1か月の所定労働時間を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が、「時間給」となります。

所定労働日数や所定労働時間が決まっていなければ、こうした計算はできないことになります。

しかし、労働条件を書面で通知することは使用者の義務ですから、決まっていないということは想定外になります。

 

<減額方式>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の勤務シフト上の労働日数が所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じます。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から天引きしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

 

<加算方式>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない月など、その月の勤務シフト上の労働日数が所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。減額方式よりも明らかに不利になります。

 

<併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって欠点を解消することができます。

 

2018.12.11.解決社労士

<ノーワーク・ノーペイの原則>

「ノーワーク・ノーペイ」とは、「労働者の労務提供がなければ使用者は賃金を支払わなくてよい」という原則のことです。

これを直接規定した法令はありませんが、労働契約法には次の規定があります。

 

【労働契約の成立】

第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

つまり労働契約は、労働者の労働に対して使用者が賃金を支払う約束だということです。

裏を返せば、労働者が労働しなければ使用者に賃金支払い義務は無いのが原則です。

ただし、使用者側に何か落ち度があれば、賃金の全額または一部の支払義務が生ずることはあります。

 

使用者の都合で半日休みになったときの減給がどこまで許されるかは、「使用者の都合」の中身によって結論が分かれます。

 

<使用者に故意・過失がある場合>

使用者に故意・過失があって、労働者が働けない場合には、賃金全額を支払うという規定が民法にあります。

この場合には、減給できないことになります。

 

【債務者の危険負担等】

第五百三十六条 2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

 

この中の「債権者」というのは、労働の提供を受ける権利がある使用者のことをいいます。

「債務を履行」というのは、労働の提供をいいます。

「債務者」は、労働を提供する義務がある労働者のことです。

「反対給付」は、労働と引き換えに受け取るもの、つまり賃金を指します。

 

使用者に明らかな故意・過失がある場合としては、次のようなものが想定されます。

・使用者が設備の法定点検を何度も怠っていたために、設備に欠陥を生じ営業時間の途中から営業できなくなった場合。・お店のカギを開けられるのが使用者である店長のみであったのに、寝坊して大幅に遅刻したため、営業開始時間が遅くなった場合。

 

<使用者側に責任がある場合>

使用者に明らかな故意・過失が無くても、労働者には責任が無く、どちらかというと使用者側に原因がある場合には、使用者は労働者に対して平均賃金の6割以上を支払う義務があります。

この場合には、4割まで減給できることになります。

このことを定めたのが、労働基準法の次の規定です。

 

【休業手当】

第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

 

条文に使われている言葉は、民法536条2項も、労働基準法26条も同じで、「責(せめ)に帰すべき事由」です。

しかし、その意味合いは、民法では故意・過失を指し、労働基準法では広く何らかの責任があることを指していると解釈されています。

 

使用者に明らかな故意・過失は無いものの、何らかの原因がある場合としては、次のようなものが想定されます。

・取引先の手配ミスによって材料が不足し製造ができない場合。・景気が急速に悪化したため、新規学卒採用内定者を自宅待機させた場合。

 

<使用者側に全く責任が無い場合>

どう考えても、使用者に責任の無い理由で、労働者が働けない状態になったのなら、使用者は賃金を支払う義務がありません。

この例としては、次のようなものがあります。

 

・2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の被害・影響により、計画停電が実施されたとき。・労働安全衛生法の規定による健康診断の結果に基づいて、労働者を休業させたとき。

 

2018.10.25.解決社労士

<最低賃金の発効日>

平成30年10月1日をもって、東京都の最低賃金時間額は958円から985円に引き上げられます。この日が発効日ですから、この日に勤務した分から985円を下回る時間給は違法になってしまいます。日給でも月給でも、1時間あたりの賃金が985円を下回ってはいけません。

 

<雇用契約書を変更する必要性>

契約期間が平成30年10月1日以降にまたがる雇用契約書(労働契約書)であれば、その人の賃金時間額が985円を下回っている場合に、これ以上の賃金に改定した内容で雇用契約書を交わしなおす必要があります。

賃金という重要項目でもありますし、いつの分からの変更か明らかにする意味でも、また、最低賃金改定の説明をするチャンスでもあることから、修正して訂正印ではなくて、きちんと作り直して説明のうえ交付することをお勧めします。

 

<雇用契約書が複数ある場合の効力>

古い雇用契約書には、まだ契約期間が残っていて、新しい雇用契約書と期間がダブることになります。

そして古い雇用契約書も、その期間の雇用契約を明らかにする重要な文書ですから、回収するわけにもいきません。

実は、雇用契約書を含め契約書には必ず作成年月日が記されています。これは、契約内容が変更され新しい契約書が作成された場合には、作成年月日の新しいものが優先的に効力を持つという約束事があるからです。

ですから期間の重なった複数の雇用契約書があっても、最新のものが適用されるということで安心なのです。ただし、雇用契約書の作成年月日を空欄にしたままではいけません。きちんと契約書を完成させた日の日付を入れておきましょう。

 

最低賃金の引き上げに限らず、有期契約の無期化や、社会保険加入基準の変更などで、雇用契約の管理は少し複雑になってきています。面倒に思えてきたらお近くの社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2018.09.22.解決社労士

<給与から控除(天引)できるもの>

給与から控除できるものとしては、次のものが挙げられます。

・法令に別段の定めがある場合(所得税法による所得税等の源泉徴収、健康保険法、厚生年金保険法、労働保険徴収法による保険料の控除)

・労使協定(労働組合または労働者の過半数を代表する者と使用者との協定)によるもの

・欠勤控除(休んだ分を差し引く)

・減給処分(これは厳密には控除ではなく給与そのものの減少)

このうち欠勤控除だけで、給与の総支給額がマイナスになってしまう場合には、給与計算の方法が不合理だと考えられるので改める必要があるでしょう。

 

<欠勤控除>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことをいいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

欠勤控除について、労働基準法その他の法令に規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

この原則は、労務の提供と賃金の支払いが対応するという労働契約の性質上、当然に認められているものです。

ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります(絶対的必要記載事項)。

 

<欠勤控除の単価>

欠勤控除を算出する場合、まず単価である「時間給」を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が、「時間給」となります。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけるなどして、1か月の所定労働時間を計算します。

1か月の所定労働時間が計算できないのは、労働条件通知書の必須項目が決まっていないという状態ですから違法ですし、トラブル防止のためにも決めなければなりません。

 

<減額方式の場合>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じることがあります。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から控除したりしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

ですから、減額方式でマイナスになった場合にはゼロとして扱い、会社からの支払も労働者からの徴収もないこととするなど、規定に例外を設けるなどの工夫が必要です。

 

<加算方式の場合>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。減額方式よりも、明らかに不利になります。

 

<合理的な併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して、多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって、欠点を解消することができます。

 

<月間所定労働時間の変動>

なお、1か月の所定労働時間が、毎月の出勤日数や暦上の日数によって変動する会社もあるようです。この場合には、欠勤控除の不合理が発生しにくくなります。

しかし、月給の時間単価が変動するというのでは、給与計算が複雑になりますし、同じ時間の残業手当が月によって変動するのなら、単価の安い月には仕事を溜めておいて、単価の高い月に集中して残業するという困った現象も起こりかねません。

平成31(2019)年4月には、年次有給休暇の取得が義務化されますが、これも有利な月に集中しそうです。

毎月変動するのでは名ばかり「所定労働時間」になってしまいます。

やはり、1か月の所定労働時間は一定にすべきでしょう。

 

<他の控除と欠勤控除が重なってマイナスの場合>

社会保険料など法定の項目を給与から控除することは、法律上問題ありません。

しかし、欠勤控除をしたら給与が少額となり、ここから社会保険料を控除するとマイナスになってしまう場合、これでよいのか迷ってしまいます。

それでも、欠勤控除だけでマイナスになる場合とは違い、マイナス分を別途労働者に請求することは問題ありません。

こうした例外的な場合についてまで、就業規則に規定しておくことは稀でしょうから、マイナス分をどのように支払ってもらうかなど細かいことは、会社と労働者とで話し合って決めればよいでしょう。

 

2018.09.13.解決社労士

<定額(固定)残業代>

1か月の残業代を定額で支給するものです。

基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。

残業時間を減らしても給与が減らないので、長時間労働の抑制になります。

会社にとっても、人件費が安定するので人件費の予算や計画が立てやすくなります。

 

<適法性>

かつては違法な運用が横行していたために、定額(固定)残業代そのものが悪であるかのように言われていました。

しかし、適法に運用する会社が増えてきており、必ずしも悪いものとは見られなくなりました。

ハローワークの求人票でも、正しく内容を明示すれば問題ないものとして扱われています。

適法な導入と運用の概要は次のとおりです。

まず、残業について1か月の基準時間を定めて、これに応じた定額の残業代を設定します。

基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。

基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。

賞与でまとめて支給することはできません。

深夜労働や休日労働の割増賃金は、別計算で支給する方式をお勧めします。

たしかに、深夜労働や休日労働の分も定額(固定)にすることは、理論的には可能です。

しかし、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのでお勧めできません。

この点は、労働基準監督署でも、このように指導されているはずです。

 

<具体的な計算方法>

定額(固定)残業代の設定に必要な計算はやや複雑ですから、Excelなど表計算ソフトを活用した方が良いと思います。

ここでは、1日8時間、1週40時間、1か月の勤務日数が22日で月給が設定されている場合を例にとります。

残業の基準時間が30時間で、基本給+定額残業手当=25万円にしたいときは、

定額残業手当=基本給÷(8時間×22日)×1.25×30時間なので、

25万円-基本給=基本給×37.5÷176

基本給×(37.5÷176+1)=25万円

基本給=25万円÷(37.5÷176+1)

これを計算すると、206,089円となります。

定額残業手当は、25万円-206,089円=43,911円です。

206,089円の基本給の場合、1か月の勤務時間が8時間×22日=176時間なら、

30時間分の残業手当は、(206,089円÷176時間)×30時間×1.25=43,911円で計算の正しいことが確認できます。

※ただし実際の給与計算では、円未満の端数処理のルールがありますから、上記のとおりにいかない部分もあります。

 

<その他の注意点>

このとき注意したいのは、最低賃金です。

計算結果の基本給が、最低賃金×176時間を下回ると最低賃金法違反となります。

上記の例では、206,089円÷176時間=1,170円ですから、1時間あたりの賃金が1,170円となり、現在どの都道府県でも最低賃金を上回ります。

しかし、基本給+定額残業手当=20万円の場合を想定すると、1時間あたりの賃金が936円となり、東京都や神奈川県では最低賃金を下回ってしまいます。

これでは最低賃金法違反となってしまいます。

なお、基本給に定額残業代を含めたいときは、上記の基本給+定額残業手当を基本給として設定すればOKです。この場合でも、きちんと内訳を表示する必要がありますから、本来の基本給分がいくらで、定額の残業代が何時間分でいくらなのかを対象者に明示しましょう。

さらに、残業時間が基準時間を超える場合に、残業手当を別途支給するときの基準額も示す必要があります。

何も示さないと、定額残業代を含んだ基本給をベースに残業手当を計算することになってしまいます。

これでは、想定外に人件費が膨らんでしまうので注意しましょう。

 

2018.09.08.解決社労士

<平成30(2018)年度 地方最低賃金審議会の答申のポイント>

・改定額の全国加重平均額は874円(昨年度848円) 

・全国加重平均額26円の引上げは、最低賃金額が時給のみで示されるようになった平成14年度以降最大の引上げ 

・最高額(東京都985円)に対する最低額(鹿児島県761円)の比率は、77.3%(昨年度は76.9%。なお、この比率は4年連続の改善)、また、引上げ額の最高(27円)と最低(24円)の差が3円に縮小(昨年度は4円) 

・東北、中四国、九州などを中心に中央最低賃金審議会の目安額を超える引上げ額が23県(平成27年度以降最多。昨年度は4県)

答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、101日から10月中旬までの間に順次発効される予定です。

たとえば、105日に最低賃金が改定される場合には、105日勤務分の賃金から適用されます。給与計算が複雑にならないようにするためには、105日の直前の締日の翌日の勤務分から、新しい最低賃金を下回ることになる従業員の賃金を引き上げることが必要です。

 

<平成30年度地域別最低賃金時間額答申状況>

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000344180.pdf

 

たとえば、東京都と大阪府は101日から27円増で、東京都が985円、大阪府が936円です。

県境のコンビニなどでは、求人に対する応募者の集まり具合に差が出ます。賃金以外の待遇で差を埋めるなどの対応が行われています。

 

2018.08.15.解決社労士

<春季賃上げ集計>

平成30(2018)83日、厚生労働省が平成30年の民間主要企業の春季賃上げ要求・妥結状況を集計し公表しました。

集計対象は、妥結額(定期昇給込みの賃上げ額)などを把握できた、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業334社です。

集計結果は、平均妥結額が7,033円で、前年(6,570円)に比べ463円の増額となっています。

また、現行ベース(交渉前の平均賃金)に対する賃上げ率は2.26%で、前年(2.11%)に比べ0.15ポイントの増額で、賃上げ率は3年ぶりに前年比プラスとなっています。

 

<賃上げの傾向変化>

かつては、こうした大企業の統計を見ても、中小企業の実態とはかけ離れていて、大企業だからこそこれだけの賃上げができるという見方が一般的でした。

ところが、人手不足が進行している現在、中小企業の賃上げ率が大企業を上回るという傾向が見られます。

しかし、企業の体力差を考えると、中小企業がいつまでも今のペースで賃上げを続けることには無理があります。

中小企業としては、各社の実態に合った魅力づくりを進めることで、新規採用の実現や定着率の向上を図っていく必要に迫られるでしょう。

 

<中小企業こそ働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

 

社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ、肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下してきます。

しかし、休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。

 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし、生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、そして企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

 

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

2018.08.11.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<休日出勤にはならない休日の労働>

日曜日や祝日は、カレンダーでは赤い数字で表示されます。

これらは、日常用語としての「休日」にあたります。

しかし、この「休日」に出勤したからといって、必ずしも休日出勤となり割増賃金が発生するというわけではありません。

スーパーマーケットやパチンコ店など店舗での接客業では、日曜日にお客様が多いため、時給が100円プラスされるということがあります。

これは、労働基準法などの規定によるものではなく、従業員の公平やシフトの組みやすさなどを考えて会社が独自に行っているものです。

ですから、時給が100円プラスの日に時間外労働が発生すれば、100円をプラスしたうえで割増賃金を計算しなければなりません。

 

<法定休日の労働>

会社は、社員に少なくとも週1日、または、4週で4日の休日を与えなければなりません。これが、法定休日です。〔労働基準法35条1項、2項〕

週1日の法定休日が与えられる社員が、日曜日から土曜日まで7日間連続で出勤すれば、法定休日の労働時間について、35%以上の割増賃金が発生します。

これが「法定休日出勤手当」です。

この場合に、どの日が法定休日なのか予め就業規則などでルールを決めておかないと、給与を計算するときに困ってしまいます。

就業規則には、従業員が読んでわかりやすい表現で明確に定めておきましょう。

原則として、法定休日出勤手当は勤務時間分の手当を支給するのですが、1時間の勤務でも丸々 1日の所定労働時間分支給している会社もあります。

これは、労働基準法の基準を上回る支給ですから、全従業員一律の基準で支給していれば問題ありません。

 

<所定休日の労働>

週休2日制で、毎週日曜日が法定休日、木曜日がもう1日の休日という場合、この木曜日は「所定休日」になります。

この場合、仕事の都合で止むを得ず木曜日に出勤すれば、この日の出勤は所定休日の労働となります。

所定休日の労働は、8時間を超えなければ、必ずしも時間外割増賃金の対象とはなりません。

しかし、原則として週40時間を超える労働となった時間は、通常の残業同様に25%以上の割増賃金となります。

これが「所定休日出勤手当」です。

 

2018.07.30.解決社労士

<平均賃金とは>

平均賃金は、賃金の相場などという意味ではなく、労働基準法等で定められている手当や補償、減俸処分の制限額を算定するときなどの基準となる金額です。

原則として事由の発生した日の前日までの3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額です。〔労働基準法12条〕

法律の条文には、「算定すべき事由の発生した日以前三箇月間」と書いてありますが、「事由の発生した日」は、労災事故にあった日など丸々1日分の給料が支払われないことがあるので、実際の運用では前日までの期間で計算しています。

 

<平均賃金が使われる場合>

労働者を解雇する場合の解雇予告手当=平均賃金の30日分以上〔労働基準法20条〕

使用者の都合により休業させる場合に支払う休業手当=1日につき平均賃金の6割以上〔労働基準法26条〕

年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金〔労働基準法39条〕

労働者が業務上負傷し、もしくは疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償等〔労働基準法76条から82条、労災保険法〕

減給制裁の制限額 = 1つの理由で減給できるのは平均賃金の半額まで、複数の理由で制裁をする場合には月給など賃金総額の1割まで〔労働基準法91条〕

 

<具体的な計算方法>

賃金の締日がある場合には、事由の発生した日の直前の締日までの3か月について、通勤手当、皆勤手当、時間外手当など諸手当を含み税金などの控除をする前の額(賃金総額)の合計額を算出します。これを3か月の暦上の日数で割って、銭(1円の100分の1)未満を切り捨てます。

例外として、賃金が日額や出来高給で決められ労働日数が少ない場合には、総額を労働日数で割った金額の6割に当たる額が、上の方法で計算した結果よりも高い場合にはその額を適用します。(最低保障額)

 

2018.07.16.解決社労士

<ノーワーク・ノーペイの原則>

「ノーワーク・ノーペイ」とは、「労働者の労務提供がなければ会社は賃金を支払わなくてよい」という原則のことです。

これを直接規定した法令はありませんが、労働契約法には次の規定があります。

 

(労働契約の成立)

第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

つまり、労働者の労働に対して使用者が賃金を支払う約束だということです。

裏を返せば、労働者が労働しなければ使用者に賃金支払い義務は無いのです。

もちろん、使用者側に何か落ち度があれば、賃金の全額または一部の支払義務が生ずることはあります。

 

それでも、電車の遅れに対して、一般には使用者側に落ち度が無いので、やはり賃金の支払い義務は無いのです。

つまり、電車が遅れて勤務できなかった時間の賃金について、会社が欠勤控除をせず、全額支払うというのは、法令によるものではなく、会社の恩恵的な取扱いだということになります。

ただ、電車の遅れによる遅刻について欠勤控除をしない会社の比率は高いですから、欠勤控除をするルールの会社では社員の不満が生じやすいでしょう。

 

<証明を求める会社>

遅刻の報告書に遅延証明書を添えれば、証明された遅延時間の範囲内で、欠勤控除をしないというルールの会社が多数派でしょう。

遅延証明書は、多くの鉄道会社でネット交付のサービスがありますから、ずいぶんお手軽になってきました。

 

<証明を求めない会社>

遅延証明書が無くても、本人が申し出れば欠勤控除をしないというルールの会社もあります。

改札口で遅延証明書をもらうための列に並ぶよりは、1分でも早く業務を開始してもらった方が、会社にとって得かもしれません。

また電車遅延の情報は、ネットで容易に得られるようになりましたから、社員のひとり一人から遅延証明書をもらうよりも、人事部門で一括して情報を把握し処理した方が、人件費の節減になります。

 

<問題社員のケース>

欠勤控除をしない会社の場合、次のような不正行為がありえます。

本当は寝坊してタクシーで駆けつけたのに、ネットで検索して、たまたま電車の遅延情報を見つけたから、遅延証明書をダウンロードして使用するということはありえます。

大雪などで、早朝から電車の大幅遅延が見込まれているのに、いつも通りの時刻に自宅を出発し、遅延証明書の範囲で賃金が得られるなら良しとする社員もいます。

このあたりは、教育研修や人事考課の適正な運用で対応すべきことでしょう。

 

<鉄道会社の賠償義務>

さて、電車の遅れによって賃金が減ったら、社員は減った分の賃金を損害として鉄道会社に請求できるのでしょうか。

直感的に無理だというのはわかります。

鉄道会社と乗客との間には旅客運送契約があります。読んだことがなくても有効なのは、電気会社やガス会社などとの契約と同様です。

この旅客運送契約に関して、各鉄道会社は営業規則を定めていて、鉄道会社は運行不能や2時間以上の遅延の場合などに料金の払い戻しはするものの、それ以上の損害等について責任を負わないことになっています。

 

2018.05.29.解決社労士

<就業規則による労働条件の変更>

年功序列を疑われるような給与制度を改め、成果主義の給与とすることは、有能な若者を採用し定着させるのに必要なことでしょう。

しかし、給与が減ることになる人もいるでしょうし、給与が大きく変動すれば年収が不安定になります。

こうした不都合があっても、成果主義給与制度を導入できる基準とはどんなものでしょうか。

 

労働契約法に、次の規定があります。

 

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更によって、給与などの労働条件を変えた場合には、それが合理的であればその通りの効力が認められるということです。

反対に、合理的でなければ、たとえ就業規則を変えても、それによって一人ひとりの労働条件は変わらないということです。

この中の「合理的」というのは、「労働契約法の趣旨や目的に適合する」という意味だと考えられます。

それでも、この条文を読んだだけでは良く分かりません。

 

<最高裁判所の判例>

労働契約法という法律は、10年余り前に判例法理がまとめられて作られました。判例法理というのは、それぞれの判決を下すのに必要な理論で、判決理由中の判断に含まれているものです。

そして、最高裁は次のように述べています。

 

合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである」(最高裁判所昭和43年12月25日大法廷判決)

 

<変更を有効だとした裁判例>

会社が赤字のときには、賃金の増額を期待できないし、8割程度の従業員は賃金が増額しているので、不利益の程度はさほど大きくない。

収益改善のための措置を必要としていたこと、労働組合と合意には至らなかったものの、実施までに制度の説明も含めて8回、その後の交渉を含めれば十数回に及ぶ団体交渉を行っており、労働組合に属しない従業員はいずれも新賃金規程を受け入れていることから、新給与規定への変更は合理性がある。

(ハクスイテック事件 大阪高裁平成13年8月30日判決)

 

<変更を有効だとした裁判例>

主力商品の競争が激化した経営状況の中で、従業員の労働生産性を高めて競争力を強化する高度の必要性があった。

新賃金制度は、従業員に対して支給する賃金原資の配分の仕方をより合理的なものに改めようとするものであって、どの従業員にも自己研鑽による職務遂行能力等の向上により昇格し、昇給することができるという平等な機会を保障している。

人事評価制度についても、最低限度必要とされる程度の合理性を肯定し得るものであることからすれば、上記の必要性に見合ったものとして相当である。

会社があらかじめ従業員に変更内容の概要を通知して周知に努め、一部の従業員の所属する労働組合との団体交渉を通じて、労使間の合意により円滑に賃金制度の変更を行おうと努めていたという労使の交渉の経緯や、それなりの緩和措置としての意義を有する経過措置が採られたことなど諸事情を総合考慮するならば、上記のとおり不利益性があり、現実に採られた経過措置が2年間に限って賃金減額分の一部を補てんするにとどまるものであっていささか性急で柔軟性に欠ける嫌いがないとはいえない点を考慮しても、なお、上記の不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の、高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるといわざるを得ない。

(ノイズ研究所事件 東京高裁平成18年6月22日判決)

 

<結論として>

このように、具体的な事情によって、裁判所の判断は分かれます。

変更を有効だとしたノイズ研究所事件の判決も、具体的な事情を踏まえたギリギリの判断であったことが伺えます。

結論として、就業規則の変更により成果主義の給与とするには、新しい給与制度そのものの合理性も必要ですし、説明会などの段取りも大事です。

どこまでやれば良いかは、数多くの労働判例を見比べて考えなければなりません。

こうした専門性の高いことは、素人判断で進めてしまわず、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

以上は、就業規則がある会社についての話です。

就業規則が無い会社では、労働契約法の次の規定が適用され、一人ひとりの労働者の同意が必要になりますのでご注意ください。

 

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

 

2018.02.20.解決社労士

<明らかにおかしいのに>

自分の賃金と勤務時間からすると、最低賃金法違反だと思われるのに、何だか良く分からないので雇い主に何も主張できないという労働者がいます。

きちんと根拠を示して法令違反を主張したいのに、上手く計算できないというわけです。

 

<最低賃金額以上かどうかを確認する方法>

厚生労働省は、ホームページに次の説明を公開しています。

 

支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。

 

(1) 時間給制の場合

時間給≧最低賃金額(時間額)

 

(2) 日給制の場合

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

 

ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、

 

日給≧最低賃金額(日額)

 

(3) 月給制の場合

月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

 

(4) 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合

出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

 

(5) 上記(1)、(2)、(3)、(4)の組み合わせの場合

例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。

 

<実は別の違法行為が>

自分の給与が最低賃金法違反のような気がするが、良く分からない、上手く計算できないという人の中に、時間給で働いている人はいません。

時間給であれば、それが最低賃金を下回っているかどうかが明らかだからです。

 

計算できないのは、日給や月給の人で、1日の所定労働時間や1か月の所定労働時間が明らかにされていない人たちです。

これではそもそも1時間当たりの賃金は計算できないのですから、当然のことなのです。

 

労働条件のうちの基本的な事項は、労働者に対して書面で通知するのが基本です。新人なら、1回目は雇い入れ通知書で、2回目からは契約更新の時や、時給変更、出勤日変更の時から労働条件通知書というパターンもあります。

 

「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」〔労働基準法15条〕

 

これが労働基準法の定めです。そして、罰則もあります。

 

「三十万円以下の罰金に処する。」〔労働基準法120条1号〕

 

所定労働時間がわからないので、最低賃金法違反かどうかわからない人は、その前提となる労働条件通知書などの交付を求める必要があるでしょう。

雇い主に「賃金や労働時間などの条件を通知する書類をください」と言えばわかるはずです。

単に忘れているだけであることを期待しますが、「うちはそんなの出してないよ」ということならブラック確定です。

 

所定労働時間がわからないということは、残業手当の計算もできないですから、サービス残業もあると思われます。

 

<最低賃金法違反の罰則と企業名の公表>

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。

仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。

したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。

 

また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。

この罰則は実際に適用されていますし、厚生労働省のホームページで企業名が公表されています。長時間労働削減に向けた取組 ― 長時間労働削減推進本部 というページです。PDFファイルで表示されていますから保存も印刷も簡単です。

こうなると対象企業は、金融機関や取引先そしてお客様からの信頼を失いますし、求人広告を出しても応募者が集まらないのではないでしょうか。

 

2018.01.28.解決社労士

<なんでも相談ダイヤル>

連合が平成2910月に実施した「なんでも労働相談ダイヤル」の集計結果が発表されています。

10月1日から1031日までの期間に、1,211件の相談があったそうです。

 

1位 最低賃金199件、16.4%)

2位 セクハラ・パワハラ・嫌がらせ148件、12.3%)

3位 解雇・退職強要・契約打切95件、7.8%)

4位 退職金・退職手続84件、6.9%)

5位 雇用契約・就業規則73件、6.0%)

 

<最低賃金の相談>

2017年度の最低賃金が9月末から各都道府県で順次適用されるタイミングに合わせ、1016日・17日に「みんなが対象最低賃金!連合労働相談ホットライン2017年度地域別最低賃金が改定されました~」(最終集計125件)を実施したこともあって、全体件数は1,200件を超えたということだそうです。

最低賃金を主とした相談が多く寄せられたことから、雇用形態別では前年同月と比べパート(20.6%)、アルバイト(8.4)、契約社員(8.5)など非正規労働者からの相談が増加しました。

具体的な相談では、相談者自身の「最低賃金は、アルバイトの更新時期まで適用されないと言われた。」「月間の労働時間の長さから換算すると現在の月給は最低賃金を下回っているのではないか。」といったものや、家族からの「娘が最低賃金で長時間働かされている」などの相談が多く寄せられたそうです。

 

<最低賃金改定への対応>

最低賃金が改定された場合に、いつからどのように対応しないと違法になってしまうのか、自社で最低賃金法違反になっている従業員はいないのか、こうした基本的なことが分かりにくいようです。

また、人手不足クライシスで採用難という現状のもと、違法ではないにせよ最低賃金で働かせることも問題視されつつあります。

つまり適法性だけでなく、妥当性もチェックが必要だということです。

遵法経営で人手不足を解消するにはどうしたら良いのか、こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご用命ください。

 

2017.12.24.解決社労士

<最低賃金の本来の目的>

最低賃金の目的については、最低賃金法の第1条に次のように規定されています。

 

この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 

対象者は、賃金の安い労働者です。

賃金の最低額を保障し、労働条件を改善して、次のことを可能にしようとしています。

 

・賃金の安い労働者の生活が経済的に安定する。

経済的な困窮から犯罪に走ること、自分や家族の命を絶つようなことを予防するという目的も含まれているでしょう。

 

・賃金の安い労働者が、質の高い労働力を提供できるようにする。

ある程度環境の整った住宅に住み、体力を維持するのに必要な食事をとることができて、体調が悪ければ医師の診察を受けて治療でき、能力向上のための自発的な学習ができるなどによって、労働力の質を高めることができるようにするわけです。

 

・一部の企業だけが不当に安い賃金で労働者を雇えないようにする。

 本来、賃金は企業と労働者との話し合いで自由に決められるはずです。しかし、一部のブラックな企業がとても安い賃金で雇って荒稼ぎしていたら、まともな賃金で雇っている企業は競争に負けてしまうかもしれません。そこで、賃金の最低額を法律で定めて企業に強制し、企業間の競争を公正にしようというのです。

 

・日本経済の健全な発展にプラスに作用する。

 賃金の安い労働者の収入を増やすことによって、物を買ったりサービスを利用したりが盛んになります。賃金の高い労働者は収入が増えても貯蓄に回す比率が高いのですが、賃金の安い労働者ほど増えた収入を消費に回しやすいのです。こうして、日本経済の発展を下支えすることが期待されるのです。

 

<最低賃金の現在の機能>

東京都の最低賃金は平成29年10月1日から958円、大阪府の最低賃金は平成29年9月30日から909円です。

発効した日の勤務分から新しい最低賃金が適用されています。

これはもう最低賃金法の目的からすると、十分高い水準なのかもしれません。

それでも、来年もまた最低賃金が上昇するだろうと言われています。

 

これは政府の少子高齢化対策の継続的な推進と関係があると思われます。

今、政府は少子高齢化対策を強力に推し進めていて、関連する法改正も盛んです。

企業の就業規則も、改定からたった3年放置しただけで違法だらけになってしまうのが現状です。

 

最低賃金が問題となる賃金の安い労働者というのは、基本的には若い労働者です。

これから結婚して子供を設け育てていく労働者です。

若い労働者が安心して結婚し子供を育てられる賃金水準というと、今の最低賃金ではまだ不十分でしょう。

たとえば東京都の最低賃金の958円で、1日8時間、週5日働くと、年間で200万円弱です。

( 958円 × 8時間 × 5日 × 52週 = 1,992,640円 )

これでは結婚に踏み切れないでしょう。

 

このように少子高齢化対策の側面から見ると、最低賃金は更に上がって当然と言えそうです。

 

<企業の対応策>

人件費を考えると、従業員の数は最低限に抑えたいところです。

その一方で採用難ですから、そもそも新人を採用することは困難です。

機械化する、外注に出す、正社員からパート社員に切り替えるなどの他に、もう一度、教育訓練の強化を考える時期に来ていると思います。

いつの間にか、社員の教育研修を簡素化するようになった企業が多いのではないでしょうか。

生産性を上げるのに人件費を切り詰めてブラックになるよりは、社員の少数精鋭化と多機能化を目指して優良企業となった方が、お客様もお取引先も喜ぶのは目に見えています。

もし自社にぴったりの教育研修について迷うところがあれば、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

2017.11.23.解決社労士

<平成29年度の賃金引上げ>

経済産業省が実施した平成29年「中小企業の雇用状況に関する調査」によると、

今年度賃金の引上げを実施した中小企業の割合は、正社員で66.1 %、非正規社員で36.5%となり、昨年度より増加しています。

賃金を引上げた企業の引上げ理由のうち、最も多かったものは、正社員、非正規社員ともに「人材の採用・従業員の引き留めの必要性」(正社員42.9%,非正規社員47.0%)でしたが、非正規社員では、「最低賃金引上げのため」(38.3%)が次いで多かったそうです。

 

<政府の政策>

政府は、デフレに歯止めをかけ経済を活性化するためには、給与水準を上昇させる必要があると考えています。

収入が増えれば支出も増え、景気が良くなるというわけです。

 

<人手不足の影響>

経済学者の間では、この数年、人手不足の割には給与水準が上がってこないが、その原因がはっきり分からないと言われています。

人手不足であれば、より良い人材を獲得するために、企業がより多くの給与を支払うはずなのに、現実にはそのような傾向が強くないというのです。

それでも、「人材の採用・従業員の引き留めの必要性」が賃金引上げ理由のトップとなっています。

今後は、理屈通りに給与水準が上昇していくことも予想されます。

 

<最低賃金引上げの影響>

非正規社員については、最低賃金引上げが給与水準の上昇に直結していると言えるのではないでしょうか。

最低賃金の引き上げは毎年行われていますし、その上昇は、企業の通常の昇給幅を上回っています。

これによって、今年度採用した新人だけでなく、2年前、3年前に採用した非正規社員の昇給も、最低賃金法により強制的に行われることになります。

しかも、たとえば東京都の最低賃金は1時間当たり958円となったのですが、新人も3年前に入社した非正規社員も958円というのでは、3年前の入社組が納得できません。3年間の実績と経験を無視して新人と同じ給与では、不合理だと考えられるからです。

こうして、最低賃金額の引上げ以上の人件費上昇が見られるのです。

非正規社員の人件費が高騰したために、正社員の昇給は見送らざるを得ないという企業も出てきています。

 

<最低賃金上昇の逆効果>

10年前、東京都の最低賃金は739円でした。

当時は採用面接をしてみて、時給800円程度の働きをしそうな応募者を、時給750円で採用できれば企業としては助かっていました。

ところが、今、時給800円の働きをしそうな応募者は魅力的ではありません。

採用を見送って、「もっと良い応募者」が来るのを待とうということになります。

こうした動きをする企業では、人手不足クライシスに陥ります。

一方で、10年前には採用されたであろう多くの応募者が働けずにいるということが考えられます。

 

<ではどうするか>

時給800円程度の働きをしそうな応募者を時給960円で採用して、時給1,000円以上の働きができるように育てることを考えるべきです。

教育指導によって新人の能力を高めることは、企業にとって利益が大きいのは当然ですが、本人も自分の成長を喜び、育ててくれた会社に感謝しますから、定着率も高まるのです。

「利は仕入れにあり」という言葉があります。これは商売の鉄則を表す言葉です。

しかし、今や「利は教育にあり」と言えるのではないでしょうか。

 

熱心のあまり教育指導を急ぐと、パワハラだと言って辞めていく社員が増えるリスクも高まります。

自社に適合する教育システム構築のような専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

2017.11.02.解決社労士

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、職場ごとに就業規則で決めたり、個人ごとに労働契約で決めたりするのではなく、客観的に決まっている定義です。

労働時間に対しては賃金を支払わなければなりません。

 

<労働時間となるかならないかの判断基準>

就業規則や労働契約で定められている始業時刻よりも早く出社した場合、それが労働時間となり賃金支払いの対象となるかは、具体的な事情によって異なってきます。

早めの出社がどの程度義務付けられていたのか、本来の始業時間前に業務を行っていたのか、時間と場所を拘束されていたのかなどによって、使用者の指揮命令下に置かれているかどうかが決まってきます。

 

<労働時間となり賃金支払いの対象となる例>

業務命令により始業時刻前の朝礼に参加していた場合や、業務命令により始業時刻前に当日の業務の引継ぎをしていた場合であれば、使用者の指揮命令下に置かれていたわけですから、労働時間に該当するのは明らかです。

また、自由参加の朝礼が終わってから自主的に業務を開始している場合や、毎日の始業時刻前に自主的に当日の業務の引継ぎをしている場合であっても、それが習慣化し使用者も知っていて黙認しているような場合には、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価され労働時間となることがあります。

 

労働時間とはならず賃金支払いの対象とはならない例>

お子さんを保育園に連れて行くついでにそのまま早めに出勤しているとか、交通機関の遅れが多く遅刻しないために早めに出勤しているだけで、始業時刻前には外出したり仮眠したり軽食をとったりして自由に過ごしているような場合には、労働時間とはならず賃金支払いの対象とはなりません。

この場合には、たとえばタイムカードで労働時間の管理をしている職場では、出勤しても打刻せず業務の準備を開始するときに打刻する運用が適切です。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

早めに出社した場合に、会社が賃金の支払い義務を負うか負わないか、判断が微妙なケースもあります。

また、こうした微妙なケースが発生しないための対策も必要ですが、ここでも難しい判断が必要となります。

なぜなら、法令の条文を読んでも具体的なことは書かれていないので、通達や裁判例などから具体的な基準を探る必要があるからです。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

2017.10.13.解決社労士

<東京労働局からのお知らせ>

東京労働局職業安定部から、次のお知らせが出されています。

 

平成29930日以降、平成29年度地域別最低賃金額が順次発効されることから、都内ハローワークにおいて受理する求人については、最低賃金額を下回る(法令違反状態にある)求人の公開を一時停止いたします。

 求人申込みをされている事業主の皆さまには、現在公開中の求人についてご確認いただき、就業場所における最低賃金額を下回る場合につきましては、求人提出先ハローワークにて、賃金額の変更を行っていただきますようお願いいたします。

 

東京都の最低賃金は、平成29年10月1日から958円(時間額)です。

これは時間額で示されていますが、時間給の場合だけでなく、日給、月給、年俸制などすべての労働者に適用されます。

適用されるのは、101日勤務分の給与からとなります。

給与計算の締日が毎月末日でない場合には、日割り計算が大変ですから、前回の締日の翌日にさかのぼって昇給するのが一般でしょう。

 

<最低賃金額以上かどうかを確認する方法>

厚生労働省は、ホームページに次の説明を公開しています。

 

支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。

 

(1) 時間給制の場合

時間給≧最低賃金額(時間額)

 

(2) 日給制の場合

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

 

ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、

 

日給≧最低賃金額(日額)

 

(3) 月給制の場合

月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

 

(4) 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合

出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

 

(5) 上記(1)(2)(3)(4)の組み合わせの場合

例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。

 

<最低賃金違反の罰則と企業名の公表>

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。

仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。

したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。

また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。

この罰則は実際に適用されていますし、厚生労働省のホームページで企業名が公表されています。PDFファイルで表示されていますから保存も印刷も簡単です。

こうなると対象企業は、金融機関や取引先そしてお客様からの信頼を失いますし、求人広告を出してもワケアリの応募者しか来ないのではないでしょうか。

 

2017.09.30.解決社労士

<親の口座への振り込み>

アルバイトの親から「バイト代を私の口座に振り込んで欲しい」というご要望があっても、会社は応じることができません。

アルバイト本人から「バイト代が自分の口座に入ると遊びに使ってしまう。将来のために貯金したいので、親の口座に振り込んで欲しい」と言われたら、これには応じたくなるでしょうか。

しかし、本人からの話であっても、親から言わされているだけかもしれません。現実に子どもを食い物にする親はいるのです。

 

<賃金直接払いの原則>

労働基準法に次の規定があります。

 

(賃金の支払)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(以下略)

 

つまり、親子だろうと夫婦だろうと、労働者本人に代わって賃金を受け取らせてはいけないというルールがあるのです。

社員夫婦が会社に現れて、「夫に給料が振り込まれるとすぐにギャンブルで使ってしまうので、妻の口座に振り込んで欲しい」という連名の要望書を提出しようとも、会社は応じることができません。

アルバイトが自分名義の口座を持っていないのなら、現金で支払うか新たに口座を開設してもらうか、いずれにせよ直接本人に支払わなければなりません。

 

<国税滞納処分なら>

賃金直接払いの原則にも例外はあります。

たとえば、労働者が国の税金を滞納し国税徴収法による国税滞納処分を受けた場合や民事執行法に基づく差押えがされた場合には、賃金の一部を国や債権者に支払うということがあります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

労働者の便宜を図っているつもりが、法令違反ということがあります。特に労働関係法令は、労働者保護の要請という原則が強く反映されていますので注意が必要です。

会社が足元をすくわれないように、労働条件審査あるいは簡易な経営労務チェックを受けることをお勧めします。詳しくは、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.09.07.解決社労士

<労働条件の明示>

労働基準法には、次のように定められています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

 

そして賞与については、支給するのであれば明示するというルールです。

厚生労働省の公開している労働条件通知書には次のように示されています。

 

賞与( 有(時期、金額等        ) , 無  )

 

これは「ひな形」ですから、「金額等」と書いてあっても、必ずしも「5万円」とか、「給与の2か月分」などと記入する必要はありません。ただし記入すれば、それが労働契約の内容となりますから守らなければなりません。

「会社の業績と個人の人事考課により決定される額」という記載でも良いわけです。

 

<給与の決定>

給与というのは、一定の期間先までの活躍ぶりを想定して決まるものです。決して過去の実績に応じて決まるものではありません。

そうでなければ、新規に採用した人の給与や、課長から部長に昇格した人、営業職から事務職に異動した人の給与は決まらないことになってしまいます。

会社によっては、過去の実績を評価して将来の給与を決めていることがあります。こうした会社では、過去の実績から将来の活躍を予測している建前になっています。しかし、人事異動には対応できていないわけです。

 

<納得できる賞与の決定>

賞与は、将来の活躍に期待して支給するものではありません。

過去の一定期間の会社の実績、部門実績、個人の会社に対する貢献度、目標の達成度などを評価して支給するものです。

中には、「基本給の2か月分」など計算方法が決まっている会社もあります。しかし、これでは頑張ってもサボっても支給金額に変化はありません。賞与の支給額だけを考えるなら頑張る気にはなりません。むしろ、頑張っただけ賞与が増える会社への転職を考えたくなります。こうした賞与を喜ぶのは、サボっていたい社員だけということになりかねません。

 

<給与と賞与との関係>

給与は将来の活躍を予測して支給します。この予測が外れることもあります。

良い方に外れたのであれば、それだけ高額の賞与を支給して調整できれば良いのです。反対に、悪い方に外れたのであれば、それだけ低い金額の賞与を支給して調整したいところです。

結局、賞与は適正な人事考課に基づき、給与の不足や払い過ぎを調整する役割を持つべきものです。

これを実現するのは、具体的で客観的な人事考課基準の運用です。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

小さな会社では、個人の実績を考慮せず一定の基準で賞与の額を決定するということも行われます。あるいは、支給しない会社も多数あります。

すると結果的に、賞与に見合った働きをしていない社員だけが残ることになります。

なぜなら、賞与以上の貢献をしている社員は、活躍に見合った賞与を支給する会社に転職するからです。

こうして働き以上の賞与をもらえる社員だけが残り、「いい人材が集まらない」という状態になるのは人事考課制度が無いからです。

会社の現状にふさわしい人事考課をお考えでしたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.09.04.解決社労士

<給与の支払い時期>

民法の雇用の節に、報酬の支払い時期について次の規定があります。

 

(報酬の支払時期)

第六百二十四条 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。

2 期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。

 

つまり、給与は後払いが原則です。実際、新人を採用するなり給与を支払うというのはごく少数派でしょう。

時給制や日給月給制ならもちろん、月給制で欠勤控除がある場合には締めてみないと金額が確定しません。

また、そもそも給与は労働の対価ですから、雇い主としては働き振りを見てからでないと納得して支払えないのも事実です。

それでは、まず働いてもらって働きぶりを評価し、その評価に応じて給与を支払うということも許されるのでしょうか。

 

<労働条件の明示>

労働基準法には、次のように定められています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

このように、まず給与を決めて労働者に示したうえで働いてもらうルールだということです。そして、示した給与と支払われる給与が違うなら、労働者はそれを理由に退職できます。

ここで、示した給与と支払われる給与が違うというのは、時間給や基本給などの単価が違っていたり、計算方法が違っていたりということです。

 

<納得のいく給与決定>

このような法的制約のもとで、労使共に納得のいく給与を決定するには、かなり詳細で客観的な人事考課基準が必要でしょう。

入社にあたっては、予測される働きぶりを人事考課基準に当てはめて給与を決定します。

その後は、一定の期間を区切ってその期間の働きぶりを参考に、次の一定の期間の予測される働きぶりを人事考課基準に当てはめて給与を決定します。

ここで注意したいのは、過去の働きぶりをそのまま給与に反映させるのではなく、将来の予測だということです。言い換えれば、社員に対する会社の期待です。

このように考えることで、転勤や昇格などの人事異動にも正しく対応できることになります。

また、働いてみてもらったら給与に見合った働きができなかったとしても、最初の約束をひっくり返して減給できるわけではないことも当然です。それは、働きぶりの予測の精度が低かったということになります。

もちろん、人事考課と給与の決定時期について、予め具体的な説明をしておいて、それを約束通りに運用するのであれば、合理的な仕組の運用である限り許されるわけです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

小さな会社では、ひとり一人の社員の生活に必要な金額を考えて、給与の額を決定するということも行われます。

すると結果的に、給与に見合った働きのできない社員だけが残ることになります。

なぜなら、給与以上の働きをする社員は、働きに見合った給与を支給する会社に転職するからです。

やはり給与は、社員の働きに応じて支給するのが大原則です。

働き以上の給与をもらえる社員だけが残り、「いい人材が集まらない」という感想を抱くのは、人事考課制度が無いからです。

会社の現状にふさわしい人事考課をお考えでしたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.09.03.解決社労士

<同じ日当でも>

出張に伴う日当は、就業規則などに規定が無ければ、本来、支払われなくても問題の無い手当です。しかも、社会慣行として非課税とされているなど、その性質は不明確です。

これに対して、同じく日当と呼ばれることはあるものの、日給には多くの法的規制があります。

 

<最低賃金法の規制>

日給制とは、1日を単位として賃金が定められている制度を言います。また、これを前提として、毎日賃金を支払うことを言います。賃金を1月に1回支払う場合には、日給月給制と呼ばれます。

一方で、最低賃金法で定められている最低賃金は、1時間当たりの賃金で示されています。これは、時間給だけではなく、月給制でも日給制でも適用があります。

ということは、1日いくらという日給制の場合、その1日とは何時間なのか明確にしておく必要があるということです。

日給÷所定労働時間=1時間当たりの賃金

これで計算した結果が、最低賃金を下回ると違法になります。

 

<時間外割増賃金の規制>

このように、1日いくらで決めれば計算が簡単なハズの日給ですが、所定労働時間は決めなければなりません。

そして、所定労働時間を超える労働に対しては、プラスアルファの賃金支払いが必要となります。

さらに、法定労働時間を超えた場合には、割増賃金の支払いも必要です。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

このように見てくると、せっかく明確な賃金制度として日給制を選んでも、そのメリットは疑わしくなってきます。

また、その日によって、所定労働時間がバラバラの場合には、どのように計算すれば良いのか迷うことになるでしょう。

日給制を合理的に、また合法的に運用するのであれば、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.04.30.解決社労士

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

 

<持ち帰り仕事を命じられた場合>

使用者から命じられて、自宅や喫茶店などで業務をこなした場合、途中で進み具合のチェックが入ったり、完了の報告が求められたりすれば、労働時間の定義にあてはまるでしょう。

ところが、翌日出勤するまでチェックされない場合には、テレビを観たり飲食したりでダラダラやってもわかりません。通常2時間で終わる仕事について、「5時間かかりました」という自己申告により、使用者が5時間分の残業手当を支払うのも不合理です。この場合には、2時間分の賃金支払いが合理的です。

ここは、次の条文が参考になりますが、実際には、労使で合意しにくいポイントでもあります。

「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。」〔労働基準法38条の2第1項〕

 

<労働者が自己判断により無断で行った場合>

業務上の資料を無許可で社外に持ち出すこと自体が問題です。

それはともかく、使用者が把握できないならば、指揮命令下に置くことも不可能ですから、労働時間とはなりません。

 

<持ち帰り仕事を黙認していた場合>

使用者が、自主的な持ち帰り仕事の存在を知っていて、これを禁止するなどの措置を取らなかった場合には、使用者から暗黙の命令があったものと考える余地があります。ここはグレーゾーンで、具体的な事情によって結論が分かれるところです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

総務省がテレワーク(在宅勤務)を推進しています。

あいまいな持ち帰り仕事を、ルールに従ったテレワークとして正式に認めれば、会社も労働者も納得することができます。

具体的にどうすべきか、迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.04.29.解決社労士

<疑問点>

同じ会社なのに、昇給のある社員と昇給の無い社員がいても、労働基準法違反にはならないのでしょうか。

 

<労働基準法の規定>

労働基準法には、均等待遇の規定があります。

「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」〔労働基準法3条〕

また、男女同一賃金の原則についての規定もあります。

「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」〔労働基準法4条〕

これらは、憲法の保障する平等権〔日本国憲法141項〕の趣旨を踏まえた規定で、男女雇用機会均等法をはじめ、多くの労働法にその趣旨が反映されています。

 

<平等と公平>

複数の人々の間に共通する要素があって、その共通する要素に着目して、同じ扱いをすることにより、妥当な結果をもたらそうとするのが、平等の考え方です。

しかし、同じ会社の社員だという理由で、全員が同じ額の給与と賞与では納得できない人が出てきます。会社のために頑張ろうという社員も、ほとんどいなくなってしまいます。これでは、会社が続かないでしょう。

会社の中では、役割に応じて給与の額が設定されたり、貢献度に応じて賞与が支給されたりします。ここには、平等の原理が働きません。公平の原理が働きます。

複数の人々の間に相違する要素があって、その違いに着目し、違いに応じた扱いをすることにより、妥当な結果をもたらそうとするのが、公平の考え方です。

労働基準法の中にも、年少者を保護する規定や、産前産後の女性を保護する規定などがあり、これらは公平の原理に基づくものです。

 

<結論として>

同じ会社で、全く同じ仕事をしているのに、一部の社員だけが昇給無しでは、平等権の侵害となり、労働基準法違反の恐れがあります。「昇給は男性のみ」あるいは「外国人に昇給は無し」という扱いは、明らかに労働基準法違反です。

しかし、きちんとした人事考課が行われ、各社員の成長に応じた昇給を実施している会社でも、たとえば「モデルルーム公開中」の看板を持って国道沿いの歩道に椅子を置き座っている仕事だけをするアルバイトは、昇給が無くても不平等や不公平の問題を生じないでしょう。なぜなら、熟練や生産性の向上ということがほとんど想定しがたいからです。

ですから同じ会社の中に、昇給のある社員と昇給の無い社員がいても、客観的に合理的な理由があり、不平等や不公平の問題が無いのであれば、法的に見ても問題は無いといえます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

実際の労働紛争では、会社が主観的に問題無しと判断したことに対して、退職者などから違法性や不当性を指摘されることが多いのです。

「この条文はこのようにも解釈できる」「今回は例外」のように、会社に都合のよい解釈をして満足するというミスを犯すのです。

本当に大丈夫なものか怪しいときは、信頼できる社労士にご相談ください。外部の第三者である専門家から見たら、驚くほど多くの問題点が見えるものです。

 

2017.04.08.解決社労士

<定額(固定・みなし)残業代とは?>

1か月の残業代を定額で支給するものです。

基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。

労働基準監督署では正しい運用を指導しています。しかし、正しい運用が難しいことから、ハローワークでは求人票に載せることを嫌います。

 

<ブラック運用1

対象となる従業員に計算根拠の説明が無い。あるいは、就業規則に具体的な規定が無い。これはブラックな運用です。

残業代の計算方法がわからなければ、給与を支給されたときに、誤っていてもわかりません。対象者全員に理解させることが必要です。

 

<ブラック運用2

残業時間が少ないと、定額残業代が減額される。これはブラックな運用です。

基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。「定額」残業代と言うことばから当然のことです。

定額残業代は、全く残業しなくても支給される最低保証額なのです。

 

<ブラック運用3

残業時間がどんなに多くても、残業代は増えず、定額残業代だけが支給される。これはブラックな運用です。

基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。賞与でまとめてということはできません。

そもそも定額残業代の基準時間が無いという悪質なものもあります。

 

<ブラック運用4

定額残業代に、深夜労働や法定休日労働の割増賃金を含めている。これは、多くの場合ブラックな運用です。

深夜労働や法定休日労働の分も定額にすることは、理論的には可能です。しかし、それぞれの基準時間と金額を明らかにする必要があって、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのであまり使われません。

 

<ブラック運用5

1時間あたりの基本賃金が、最低賃金法の基準を下回っている。これはブラックな運用です。

最低賃金は、年々上昇していますので、いつの間にか違法になってしまうケースもあります。給与の設定が春だと、最低賃金の変更が秋なので、この時点で違法になることも多いのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

定額残業代(固定残業代・みなし残業代)を使うなら、適法に運用しなければなりません。それだけではなく、適法に運用するとかえって人件費が割高になるという場合には、給与制度や人事制度を見直す必要があります。

それぞれの職場に合った制度をお考えでしたら、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.29.解決社労士

<朝礼の時間の賃金支払義務>

朝礼は、業務上必要な連絡事項の伝達、心身の異常の有無の確認、勤務に就く態勢を整えさせるなどのために行われています。

業務に密接に関わる内容を含みますので、通常は出勤者全員の参加が義務付けられています。

確立した判例理論によると、労働時間の定義は「何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」です。通常の場合、朝礼はこの定義に当てはまりますので、賃金支払の対象となります。

例外的に、その朝礼が自由参加であって、参加しなくても評価の低下などの不利益が全く無いのなら、労働時間の定義に当てはまりませんから賃金の支払いは不要です。

 

<掃除当番の時間の賃金支払義務>

掃除当番は、会社が通常の業務にプラスアルファで行わせているのが一般的な形です。これは、上記の労働時間の定義に当てはまりますので、賃金支払の対象となります。

例外的に、従業員同志が話し合って、自主的に当番を決めてボランティアで行っている場合には、労働時間の定義に当てはまりませんから賃金の支払いは不要です。

たとえば、長年にわたり社長が毎朝早く出社してトイレ掃除をしていたとします。あるとき、一人の社員の提案で、社長に代わり自分たちで掃除することになって、掃除当番が始まったとします。これが、社長に対する尊敬の念とボランティア精神から始まったことであれば、賃金の支払いは不要なのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「昔から朝礼や掃除当番の時間については無給です」というのは、その時間の賃金を支払わなくて良い理由にはなりません。

長く続いているルールが、労働法違反の慣行に過ぎないということもあるのです。

社内で行われている何となくのルールに疑問を感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.22.解決社労士

<就業規則による時給の引き下げ>

労働者と使用者が労働契約を締結する場合に、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとなります。〔労働契約法7条本文〕

では、就業規則に「従業員が社会保険の被保険者資格を取得したときは、取得日の属する月の翌月支給分の給与より、基本給を2割減額するものとする」などという規定があったら、これを根拠に時給を下げることができるでしょうか。

もちろん、できません。

なぜなら、「合理的な労働条件が定められている就業規則」とは言えないからです。この「合理的」というのは、使用者が都合良く解釈した合理性ではなく、客観的な合理性が基準になります。使用者側は、次のような解釈をするかも知れません。

・従業員の勤務時間が増えて、社会保険の加入基準に達すると、使用者は加入させる義務を負う。これは法定の義務である。

・厚生年金保険料と健康保険料は、使用者が半分負担するので、時給を下げないと使用者の負担が増えてしまう。

・従業員は勤務時間が増えているので、時給を下げても、総支給額はあまり変わらない。

しかし、客観的な立場で考えると、使用者が従業員を社会保険に加入させる義務を負う場合には、保険料の半分を負担するのも義務なので、負担が増えるのは当然です。この負担を、従業員に押し付けるのは、社会保険料を折半する制度の趣旨から考えて不合理です。

また時間給の場合には、勤務時間が増えれば、それに比例する形で給与の総支給額が増えます。それなのに、あまり変わらないというのは不合理です。

 

<合意による時給の引き下げ>

労働者と使用者が合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することはできます。〔労働契約法8条〕

ただ、労働者は立場が弱いですから、労働者が精神的な圧迫を受けずに、自由な意思により同意したのでなければ、合意があったとは認められません。

「時給を引き下げることに異議なく同意します」という同意書や、下げた後の時給を基準に作った労働契約書に従業員が署名してあったとしても、それだけで合意があったことは証明できません。法廷などでは、労働者がダマされたのではないか、署名しないとクビになると思ったのではないかということが疑われるからです。

ましてや、社会保険に加入するとともに、時給引き下げに同意するというのは、自由な意思によるものではないと疑われるでしょう。

 

<自由な意思による同意があったことの証拠>

パート社員から店長に直筆の「お願い」が出され、そこに「私は長年このお店で働いてきました。今では、このお店で働くのが生きがいです。もっと長時間働きたいです。でも、その分人件費が増えるのでは申し訳ないと思います。ですから、時給を2割下げて、毎週もう1日シフトに入れていただけないでしょうか」と書いてあって、その人なりの「計算書」も添付されていたとします。

これを受けて、会社の会議で検討され、勤務日数の増加と時給の5%引き下げが決議され、その議事録も作成・保管されているとします。

この状況で、時給を5%下げた労働契約書が交わされたなら、「自由な意思による同意」の存在は証明できるのではないでしょうか。

しかし、実際にこのような「お願い」をもらった店長は、会社に対して、このパート社員の臨時昇給を提案するかもしれないですね。

 

2017.03.17.解決社労士

<解決法>

能力を理由に給与を引き下げることは、個人的な不利益変更ですから、労働協約や就業規則の変更ではなく、会社と労働者との合意の形で行うことになります。〔労働契約法8条〕

この場合に、「賃金減額に合意しなければ解雇します」などの強迫をしてしまうと、労働者から賃金減額に対する合意が取り消されることもあります。〔民法96条1項〕

ですから会社としては、強く迫るのではなく丁寧な説明をする必要があります。

 

<予防法>

とはいえ、「能力が期待外れなので賃金を減額します」と言われて、素直に納得する人は少ないでしょう。

こうしたことが起こらないようにするには、採用に至る前の段階で、求人広告に詳細な人材要件を明示すること、面接など採用選考で能力を見極めることが必要です。

また採用決定後も、試用期間を設けて、雇い入れ通知書に会社の期待する能力を詳細に記述し、業務に必要な能力が欠けている場合には本採用しないことを明らかにしておきたいところです。

 

<本当に必要な人材か>

そもそも、期待した能力を発揮しない労働者を、社員として雇用しておくことは必要なのでしょうか。

人手不足だから、せっかく採用したのだから、かわいそうだからといった理由で、労働条件を引き下げて雇い続けることは、会社にとっても計画の挫折ですし、本人も意欲的に勤務できないでしょう。

会社としては、別の人材獲得を考えるのが得策ではないでしょうか。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

必要な人材の確保に必要な求人、採用選考、試用期間制度の運用は、ぜひ信頼できる社労士にお任せください。

 

2017.03.10.解決社労士

<スーパーマーケットと経営者を逮捕・送検>

江戸川労働基準監督署長は、スーパーマーケット経営会社とその代表取締役等を労働基準法違反の容疑で、平成2662日、東京地方検察庁に書類送検しました。

 

<逮捕・送検の理由>

このスーパーマーケット経営会社の代表取締役は、東京都江戸川区内の2店舖で勤務する従業員に残業代を支払いませんでした。

そこで、江戸川労働基準監督署労働基準監督官が、割増賃金の不払につき是正指導し、その是正措置結果について報告をするよう求めました。

ところが、この代表取締役は、部長A、課長Bと共謀し、平成25101日、労働基準監督官に対し、実際には支払をしていないのに、過去の賃金不払残業に対する割増賃金を遡及して支払ったとする虚偽の内容を記載した是正報告書を提出しました。

このウソの報告書提出が逮捕・送検の理由です。

 

<捜査が入ったキッカケ>

この会社に対しては、平成248月、平成256月に、江戸川労働基準監督署が、割増賃金の不払について是正するよう監督指導を行ってきました。

ところが、その指導にもかかわらず、違反行為を続けてきたので捜査に着手したのです。

そしてこの会社は、是正指導に対して是正報告を行っていたのですが、本社などを家宅捜索したところ、実際には遡及支払を行っていないことがわかり、ウソの報告であったことが判明したのです。

 

<サービス残業に対する指導>

各労働基準監督署では、事業者に対して適正な労働時間管理の徹底を図り、賃金不払残業を起こさせないことを重点とした監督指導を実施しています。

また、是正指導にも関わらず改善の意欲が認められず、賃金不払残業を繰り返し、または労働基準監督署に対し虚偽の報告を行うなど重大悪質な事業者に対しては、書類送検を含めて厳正に対処しています。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

労働基準監督署は、退職者などからの申告に基づき、会社に抜き打ちの調査をすることがあります。また、事前に調査内容や調査日時を通知したうえで調査に入ることもあります。

通知があった場合には、ぜひ信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。調査への立会や、その後の報告書作成・提出を含め、会社の負担を最小限にして速やかな対応をすることができます。

また、顧問の社労士がいれば、抜き打ち調査への対応も安心です。

 

※労基署による監督をわかりやすく調査と表示したところがあります。

 

2017.03.03.解決社労士

<最低賃金法の罰則>

最低賃金法に示された都道府県別の最低賃金を、単なる指針や目安であると勘違いしている事業主の方もいらっしゃいます。

しかし違反に対しては、罰金や懲役刑といった罰則が規定されています。〔最低賃金法39条、40条、41条〕

そして、実際に適用されることなど無いようにも思われがちですが、書類送検の事例は労働局のホームページなどに公開されています。

 

<居酒屋経営者を逮捕・送検>

新宿労働基準監督署は、平成27年3月2日、居酒屋経営者を最低賃金法違反の疑いで逮捕し、平成27年3月3日、東京地方検察庁にこの経営者を身柄と共に送検し、居酒屋を経営する法人も書類送検しました。

ここで分かることは、労働基準監督署によって、本当に逮捕・送検されてしまうということだけではありません。

罰則は、経営者と法人の両方に適用されるのです。〔最低賃金法42条〕

 

<逮捕・送検の理由>

ある労働者の平成25年6月分の賃金が、東京都の最低賃金を下回っていたのが理由です。

たった1人でも、1か月でも、最低賃金を下回れば違法です。

これだけなら、素直に不足分の賃金を支払って、「今後は最低賃金法を順守します」と約束すれば良かったのです。

ところがもっとひどい事情がありました。

実は、平成23年1月1日から平成25年8月16日までの間に、この会社の元労働者から、勤務した最後の月の給料が支払われないという申告が4件ありました。

新宿労基署では、この申告を受け、会社に対して賃金を支払うよう行政指導を行いました。ところが、会社はその行政指導に従わなかったのです。

そこで新宿労基署は、この会社の社長に対して出頭を要求します。ところが、この社長は再三の出頭要求に応じず、証拠隠滅のおそれもあったことなどから、逮捕のうえ、送検に踏み切ったのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

そもそも、賃金は後払いが基本です。〔民法624条〕

「退職者に給料を支払う必要は無い」と勘違いし、退職後に支払われるはずの給料を支払わない社長もいます。今回ご紹介した事例の社長もそうです。「昔からこれでやっていて問題は無かった」と考えていたかも知れません。

労働法違反によって、会社や経営者がどのような不利益をこうむるのか、今まじめに働いている社員に対する影響はどうなのか、少しでも疑問を感じたら信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.02.27.解決社労士

<自宅待機は労働時間か?>

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間のことをいいます。これは、就業規則などの社内ルールとは関係なく客観的に認定されるものです。

ところが、自宅待機は会社側の都合でとりあえず仕事が無く「もし仕事が入ったら出勤する約束で自宅にいてもらうこと」ですから、実際に仕事で呼び出されない限りは、労働者が自由に過ごして良いというのであれば、労働時間にはあたらず給与の支払い義務は発生しません。

たしかに、待機中は会社からの連絡に注意を払わなければならず、その前提として、すぐに連絡がつく場所にいなければならないのですが、使用者の指揮命令下に置かれているとは言えないのです。

 ここは、懲戒処分の内容を検討するにあたって、調査している間、自宅待機命令を出しているのとは事情が違います。

 

<職場待機の場合には>

これに対し、労働者を職場で待機させ、仕事が発生したらすぐに業務に就くように命じてある場合には、その待機時間は、場所的な拘束があること、業務に備えた状態でいなければならないことから、使用者の直接の指揮命令が及んでいると評価され、労働時間にあたります。

したがって、職場待機の場合には給与の支払義務が発生します。

 

<待機手当の支給が望ましいケース>

その職場で、同じ職種のすべての社員が、当番制で平等に自宅待機を受け持つなら、自宅待機の負担込みで給与が設定されていると考えられます。

しかし、一部の社員だけが自宅待機の対象となったり、自宅待機の回数が個人ごとに片寄ったりしたのでは、不満が出てくるでしょう。

この場合には、待機手当の支給を考えたいものです。

 

<待機手当を設定するなら>

待機手当は給与の一部になりますから、就業規則などにその詳細を定める必要があります。

待機手当の金額は、定額あるいは基本給に対する一定割合などで定めます。金額が少ないと、負担に見合っていないという不満が出ますし、金額が多すぎると、実際に勤務している場合とのバランスが悪くなってしまいます。これについては、自宅待機することのある社員にヒアリングすると良いでしょう。

それだけではなく、自宅待機の時間帯、服装・髪・ヒゲなどの身だしなみ、外出や飲酒の制限など、待機手当を支払うからには、ある程度の基準を設定したいものです。ただし、使用者の指揮命令下に置くことになる内容は含めることができません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

一度、待機手当について定めてしまうと、後から労働者の不利益に変更するのは限定されてしまいます。

待機手当を導入する前に、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.02.20.解決社労士

<退職金の性質>

もともと会社に退職金の支払い義務はありません。しかし、就業規則などに計算方法、支払い方法などの規定を設けることにより、労働契約の内容となって、会社に支払い義務が生じます。

 

<退職金の減額・不支給が許されない場合>

懲戒解雇の場合に退職金が減額されあるいは支給されない旨の規定が、就業規則や退職金規程の中に無ければ会社に全額支払いの義務があります。なぜなら、それが労働契約の内容となっているからです。

ちなみに、中退共(中小企業退職金共済)や建退共(建設業退職金共済)の退職金についても、懲戒解雇による退職金の減額などの規定はありませんので、全額支給されることになります。

 

<退職金の減額・不支給を規定する意味>

退職にあたって、退職者が会社に大きな損害を与えていることが発覚し、その穴埋めのために退職金の減額・不支給という手段を用いるということも考えられます。

しかし、むしろ退職金を減額されたり支給されなかったりということがないように、従業員に真面目で誠実な勤務を心がけてもらうための警告として規定していることが多いのです。

 

<退職金の減額が許される場合>

就業規則などに、懲戒解雇の場合には退職金が減額される旨の規定があり、従業員のそれまでの長年の勤務による功労を大きく減殺するほどの信義に反する行為があった場合には許されます。

信義に反する行為というのは、正義に反し信頼関係を破壊する行為のことです。

もちろん、功労をどの程度減殺するかによって、減額が許される限度も変わってきます。

裁判になれば、会社が思い切った減額をした場合、裁判所は退職者の功労や過去の勤務態度を踏まえ、減額し過ぎを指摘し不足分を追加で支払うように命ずることがあります。

 

<退職金の不支給が許される場合>

就業規則などに、懲戒解雇の場合には退職金が不支給となる旨の規定があり、従業員のそれまでの長年の勤務による功労がすべて抹消されるような信義に反する行為があった場合には許されます。

裁判になれば、会社に対する劣悪な裏切り(功労を全く失わせる程度の著しい背信的行為)があった場合にのみ、退職金の不支給が許されます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

万一の場合に、退職金の減額や不支給が可能となる就業規則を整えるのも社労士の仕事です。

また、実際に懲戒解雇が発生したときに、どの程度まで退職金を減額できるか意見を述べるのも社労士の仕事です。

しかし、懲戒解雇を出さないように職場環境を整えることこそ、社労士の大事な仕事です。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.02.14.解決社労士

<退職金の支払い義務>

民間企業の従業員に対する退職金支給義務は、使用者に課されていません。

ですから民間企業では、必ずしも退職金を支給する必要はなく、実際に退職金制度の無い企業も少なくありません。

とはいうものの、退職金は日本の雇用慣行の中で、引退後の生活基盤の原資として重視されています。

その額も、給与や賞与に比べても多額なのが通常です。

 

<退職金と就業規則>

就業規則に「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」を規定すべきことが定められています。〔労働基準法89条〕

ここでいう退職手当とは、退職金よりは広い概念で、労働契約などによってあらかじめ支給条件が明確になっていて、その受給権が退職により在職中の労働全体に対する対償として具体化するものであれば良いとされています。

また、一時金だけでなく年金である場合も含みます。

 

<社外の退職金制度利用の場合>

使用者が、中小企業退職金共済制度などの社外積み立て型の退職金制度を利用している場合も、ここにいう退職手当の制度に該当します。

ですから、この場合にも、就業規則に規定を設けなければなりません。

 

<危険なケース>

社外の制度を利用しているからという理由で、就業規則に退職金の規定を置かないのは、労働基準法違反になります。

それ以上に問題なのは、就業規則がひな形や他社の就業規則のマネを元に作られていて、実際には退職金を支給していないのに、あるいは支給する予定がないのに、規定だけが存在するという場合です。

これらの場合には、自己流で修正することがトラブルの原因となりかねません。是非、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.02.06.解決社労士

<給与からの控除>

基本給の他に、通勤手当、残業手当、その他の手当があれば、それらを合計して給与の総支給額となります。

しかし、この総支給額がそのまま従業員に支給されるわけではありません。

総支給額を基準に、厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料が決まり、これらが控除されます。40歳になれば、介護保険料も加わってきます。

また、総支給額から通勤手当を差し引いた金額を基準に、所得税と住民税の控除があります。ただし、一定の基準を超えれば通勤手当にも課税されますし、住民税は入社の翌年か翌々年の6月から控除することが多いのです。

こうして、いろいろ控除された残りが手取り額となります。

 

<入社にあたっての給与の決定>

小さな会社では、社長と応募者とで採用面接をして、給与については手取り額で合意することもあります。

たしかに、応募者の入社後の生活費を考えると、手取り額で約束しておけば安心です。

しかし、手取り額から基本給を逆算するのは容易ではありません。所得税や住民税は、扶養家族の状況によっても変わるものです。

 

<深夜労働がある場合>

夜間に営業する飲食店などでは、午後10時から翌日午前5時の間に勤務時間が含まれるのが通常です。そして、この時間帯は深夜手当として25%以上の割増賃金が発生します。

深夜手当の計算基礎は、基本給に一定の手当を加えた金額ですから、基本給とも総支給額とも違う金額になるのが通常です。

基本給を手取り額から逆算する場合には、この深夜手当も計算に入れる必要があります。

このとき、休憩時間をいつ取るかによっても計算が変わってきます。

 

<残業代込みの場合>

残業代込みで手取り額を設定する場合には、定額残業代についてきちんとしたルールを定め、正しく運用しなければ違法になってしまいます。

残業代の計算基礎は、深夜手当と同額になります。

 

<結論として>

新人を採用する場合に、給与について手取り額で約束してしまうと後の計算が大変です。

基本給と各手当の金額で決定し、手取り額を目安として提示するのが得策です。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

それでも手取り額で給与を決めたい、あるいは決めてしまったという場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

ご本人から必要な情報をうかがって、可能な限り正確な基本給を計算いたします。

 

2017.02.03.解決社労士

<最低賃金>

最低賃金は、都道府県ごとに1時間あたりの賃金額で定められています。

たとえ働く本人の同意があっても、最低賃金額を下回ることはできません。〔最低賃金法4条〕

高校生のアルバイトにも適用されますし、本人や家族の「同意書」は無効です。

 

<労働基準法の定める「賃金の原則」規定>

賃金は通貨で、直接働く本人に、全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。〔労働基準法24条〕

これは賃金支払いの5原則と呼ばれます。「原則」とは言うものの、違反すれば30万円以下の罰金が科せられます。ですから原則違反は犯罪行為です。〔労働基準法1201号〕

 

<通貨払いの原則>

賃金は通貨で支払う必要があり、現物支給は禁止されています。

働く本人の同意などがあれば銀行振込も可能です。ただし、家族名義の口座ではなく本人の口座であることが必要です。

 

<直接払いの原則>

賃金は働く本人に直接支払う必要があります。代理人や親権者等への支払はできません。

 

<全額払いの原則>

賃金は全額を支払う必要があります。

ただし、所得税など法令に定めがあるものや、労使協定で定めたものだけは控除できます。

 

<毎月1 回払いの原則>

毎月少なくとも1回は賃金を支払わなければなりません。

賞与等の一時金は、会社の就業規則などに従って支払えば良いので、この原則の対象とはなりません。

 

<一定期日払いの原則>

毎月25日というように、周期的な支払期日を定めなければなりません。

毎月第3月曜日というように、固定されているように見えて、実は周期的ではない期日は原則違反となります。

 

2016.12.13.

<最低賃金の発効日>

たとえば東京都の最低賃金時間額は、平成28年10月1日をもって、907円から932円に引き上げられました。この日が発効日ですから、この日に勤務した分から932円を下回る時間給は違法になってしまいます。日給でも月給でも年俸制でも、1時間あたりの賃金が932円を下回ってはいけません。

 

<「雇い入れ通知書」より「労働条件通知書」が便利>

労働者の採用にあたっては、書面の交付により労働条件を通知しなければなりません。このとき、「雇い入れ通知書」という名称の書面を交付することもあります。雇い入れにあたって交付する書面ですから、「雇い入れ通知書」という名称がしっくりきます。

しかし、契約期間が平成28年10月1日以降にまたがる「雇い入れ通知書」を交付していた場合で、その人の賃金時間額が932円を下回っている場合には、これ以上の賃金に改定した内容の労働条件を示さなければなりません。

このときは、「雇い入れ」ではありませんから、「労働条件通知書」という名称が正しいことになります。

最初から「労働条件通知書」という名称の書面を用意しておけば、採用にあたっても、その後の変更や契約更新でも、同じ書式が使えますので「労働条件通知書」がお勧めです。

 

<「労働条件通知書」のひな形>

「労働条件通知書」のひな形は、厚生労働省のホームページでダウンロードして利用できます。労働条件によって、次の中から適合するものを選んで使います。

【一般労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

【短時間労働者用】常用、有期雇用型

【派遣労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

【建設労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

【林業労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

それぞれに詳しい【記載要領】が、本文と同じ位の分量で添付されていますので、よく読んで作成する必要があります。

 

最低賃金の引き上げに限らず、有期契約の無期化や、社会保険加入基準の変更などで、労働条件の管理は少し複雑になってきています。面倒に思えてきたら信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.08.

<最低賃金の意味>

「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす」というのが法令の規定です。〔最低賃金法4条2項〕

最低賃金を下回る賃金しか支払わない場合、最低賃金との差額は、サービス残業と同様に未払い賃金となります。

ここで「最低賃金の適用を受ける労働者」の例外は、一定の条件を満たす人について、労働局長の許可を受けた場合のみです。〔最低賃金法7条〕

最低賃金は時間額で示されていますが、日給や月給にも適用があります。

日給は、最低賃金時間額×1日の所定労働時間 を下回ってはいけません。

月給は、最低賃金時間額×1か月の所定労働時間 を下回ってはいけません。

そして、1日や1か月の所定労働時間は、書面で労働者に示されなければ違法です。〔労働基準法15条1項〕

この場合の書面とは、労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書などの名称で作成され、労働者に交付されているものです。

 

<最低賃金の発効>

最低賃金は都道府県ごとに決められますが、発効年月日も都道府県ごとにバラバラで、平成27年は10月1日から18日までの間に発効しています。この発効年月日に勤務した分の賃金から、最低賃金を下回る賃金は強制的に最低賃金に引き上げられます。

たとえば京都府では、平成27年10月7日をもって最低賃金時間額が789円から807円に引き上げられました。時間給790円で働いていた人も、10月7日の勤務分からは強制的に807円に引き上げられたのです。そして、賃金計算の締日が月末であれば、期間の途中での変更となり、計算が複雑となって手間がかかり、シフト変更などがあった場合には間違えやすくなります。

 

<結論としてお勧めなのは>

こうした不都合を避けるためには、改定された最低賃金時間額の発効日の直前の賃金計算締日までは従来の賃金、締日の翌日からは最低賃金時間額以上の賃金に改めて運用するということになります。そしてこの期間の労働に対する賃金支払い日の給与から、変更が反映されることになります。

たとえば、平成27年10月の京都府の例でいえば、あらかじめ10月1日からの勤務は時間給810円などと決めておいて、1か月同じ時間給で計算できるようにします。そして、10月勤務分の賃金支払い日から支給額が変更となります。

こうした措置をとらずに、最低賃金時間額の発効日から新たな最低賃金に合わせて賃金が変わるとなると、働き手の皆さんは「自分は最低の賃金で働かされているのだ」という思いが強くなってしまいます。これを避けるため、5円単位、できれば10円単位で端数を切り上げて賃金を支給したいものです。モチベーションの低下を防ぐための費用として、これくらいの人件費アップは必要でしょう。

 

2016.08.29.

<欠勤控除とは?>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことをいいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

<法律の規定は?>

労働基準法その他の法令に規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

これは、労働契約が「働いてください。賃金を支払います」「働きます。賃金を支払ってください」という労使の合意によって成り立っているので、労働者が働かなければ賃金を支払わなくても良いという理論です。

こうして、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります。

 

<「時間給」の計算>

欠勤控除を考える場合、まず「時間給」を計算します。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけて、1か月の所定労働時間を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が、「時間給」となります。

 

<減額方式>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じます。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から天引きしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

ですから、減額方式でマイナスになった場合にはゼロとして扱い、会社からの支払も労働者からの徴収もないこととするなど、規定に例外を設けるなどの工夫が必要です。

 

<加算方式>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。減額方式よりも、明らかに不利になります。

 

<併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して、多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって、欠点を解消することができます。

 

<他の控除と欠勤控除が重なってマイナスの場合>

社会保険料を賃金から控除することは、法律上問題ありません。

しかし、欠勤控除をしたら賃金が少額となり、ここから社会保険料を控除するとマイナスになってしまう場合、これでよいのか迷ってしまいます。

それでも、欠勤控除だけでマイナスになる場合とは違い、マイナス分を別途労働者に請求することは問題ありません。

こうした例外的な場合についてまで、就業規則に細かく規定しておくことは稀でしょうから、会社と労働者とで話し合い決めればよいことです。

 

2016.07.24.解決社労士

<厚生労働省のモデル就業規則のねらい>

厚生労働省のモデル就業規則の最初のほうに「モデル就業規則の活用に当たって」という標題で、「このモデル就業規則(以下「本規則」といいます。)は、平成28年3月現在施行されている労基法等の規定に基づき就業規則の規程例を解説とともに示したものです。本規則はあくまでモデル例であり、就業規則の内容は事業場の実態に合ったものとしなければなりません。したがって、就業規則の作成に当たっては、各事業場で労働時間、賃金などの内容を十分検討するようにしてください。」という説明があります。

モデル就業規則の各規定の内容を十分検討して、各事業場の実態に合ったものとすれば、労基法などの規定に基づいた就業規則が完成します。

 

<一方で年俸制とは>

プロ野球の選手のように、年1回、社員と会社とが交渉して、たとえば4月から翌年3月までの年俸を決めることは可能です。このときは、会社の業績と社員の働きぶりを踏まえて、期待できる内容に見合った金額とするわけです。

そして、年俸はすべて込みの報酬であり、決まった金額さえ支払えば残業代などは発生しないように誤解されがちです。

しかし、プロ野球の選手とは違いサラリーマンには、労基法などが100%適用されます。当然ですが年俸制にすれば、労基法を無視できるというわけではありません。

ということは、残業手当、休日出勤手当、深夜手当の支払対象ですし、欠勤すれば欠勤控除をすることも可能です。「年俸制の社員が休日にケガをして長期入院してしまった。年俸を下げてはいけないのか?」という心配は無用です。これらのことは、就業規則に定めておけばよいのです。

一定の時間・金額の残業代を年俸に含めるということも、正しいルールと運用で可能となります。

 

<結論として>

年俸制というと「プロ野球の選手のように」という勘違いはかなり多いのです。

また、具体的にルールを作ろうとすると、各事業場の実態に合ったものとすることが簡単ではありません。

こうしたことから、モデル就業規則の中に、年俸制についてのモデル例と解説を加えることは、かえって混乱を招くともいえます。

今現在、年俸制を導入している企業や、これから導入を検討している企業では、規定だけでなく運用についても、弁護士か社労士のチェックを考えていただきたいと思います。

 

2016.07.17.

下の表に示した端数処理は、賃金計算の便宜上の取り扱いとして、労働基準法違反にならないとされています。〔昭和63年3月14日基発150号通達〕

1か月の賃金支払い額 1か月の賃金支払い額に100円未満の端数が生じた場合 50円未満を切り捨てそれ以上を100円に切り上げる
1か月の賃金支払い額に1,000円未満の端数が生じた場合 翌月の賃金支払い日に繰り越す
1か月の労働時間数 時間外労働、休日労働、深夜業の各々の時間の合計に1時間未満の端数がある場合 30分未満の端数を切り捨てそれ以上を1時間に切り上げる
1時間あたりの賃金額 1時間あたりの賃金額に1円未満の端数が生じた場合 50銭未満の端数を切り捨てそれ以上を1円に切り上げる
1時間あたりの割増賃金額 1時間あたりの割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合
1か月の割増賃金総額 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額

反対に、これ以外の労働者に不利益な取り扱いはできません。

よく問題にされるものとしては、毎日5分未満の残業時間を切り捨ててしまうなどがあります。

 

2016.06.21.

<消滅時効の制度>

賃金の請求権は2年間、退職金の請求権は5年間で時効消滅します。〔労働基準法115条〕

たとえば、給与支給日に指定口座への入金がないのに、放置したまま2年間が経過して会社から時効だと言われれば、その給与は請求できなくなります。

これは、「請求できるのに何もしないで放っておくような、権利の上に眠る者は保護しない」という消滅時効の制度によるものです。

この場合、支払義務のある側からすれば、一方的に得をすることになり道義的な違和感を生ずることもあります。ですから、時効の利益を受ける者が、時効であることを主張することによってその効果が発生します。この主張を時効の援用(えんよう)といいます。〔民法145条〕

 

<時効の中断>

たとえば、給与支給日に指定口座への入金がないので社長に確認したとします。そして、社長から「ごめん、少し待って」といわれて、しばらく待ってから催促することを繰り返していたら、いつの間にか2年たったので請求できなくなったというのではお話になりません。

そこで、社員の側から請求の意思が明確にされた場合や、会社の側から支払の意思が明確にされた場合には、時効期間の進行がリセットされます。これを時効の中断といいます。

時効の中断には、請求(裁判上の請求、裁判外の請求)、差押え・仮差押え・仮処分、債務者の承認の3つがあります。〔民法147条〕

もし給与の未払いが続いて裁判になったとしたら「ときどき催促していました」といっても証拠がなければ負けてしまいます。ですから、内容証明郵便などによる催促が必要になります。

しかも、催促というのは時効中断の効力が制限されていて、6か月以内に裁判で請求するなど一段突っ込んだアクションをしないと、効力を生じないことになっています。〔民法153条〕

お勧めなのは「少しでもいいから支払ってください」と催促して、振り込んでもらうことです。これも「債務者の承認」となって時効中断の効力があります。

 

2016.06.18.

<よくある計算方法>

就業規則のひな形によくあるパターンですが、退職時の基本給に勤続年数に応じた係数をかけて退職金の金額を算出することが多いようです。

これだと若いころ、あるいは働き盛りのころの基本給は関係なくて、退職間際になってから頭角をあらわし大きく昇給した人が有利です。

反対に、若いころに大変な努力をして出世し、基本給も役員並みになったあと、働きすぎて体を壊し基本給が大幅にダウンして退職していった社員は、報われないということになってしまいます。

 

<退職功労金>

退職金については、基本給×係数で一律に支給し、これとは別に、個人の会社に対する功績の度合いに応じた退職功労金を支給するというのが、もっとも単純なやり方でしょう。

ただし、これだと金額を客観的に決めるのは難しいでしょうし、その時々の会社のふところ具合に大きく左右されそうです。

 

<ポイント制>

たとえば、毎年4月の基本給1か月分の累計を退職金の金額にすることも考えられます。しかし、物価の変動が大きいと不公平になる可能性もあります。

そこで、担当者は1ポイント、係長は2ポイント、課長は3ポイント、部長は5ポイントなどと、1か月間在籍すると累計されるポイントを決めておき、物価の変動を踏まえて、1ポイントいくらにするかという方式もあります。

 

<退職金の性格>

退職金の性格として、退職後の生活保障的性格、賃金後払い的性格、功労報償的性格があげられます。

このうち、退職後の生活保障は在籍中に給与・賞与に応じた厚生年金保険料を支払っていて、老後の年金額に反映されると考えれば、重視しなくてもよいでしょう。

また、賃金後払い性格については、終身雇用制の崩れた現在では、退職までプールしておかないでタイムリーに給与・賞与に反映してほしいという社員の本音があります。

こう考えると、退職金のメインの性格は、功労報償的性格でしょうから、退職金を会社に対する功績の度合いで決めるというのは、合理的であると考えられます。

 

2016.06.03.

<賃金の立て替え払いとは>

政府は、事業主が破産手続き開始の決定を受けたとき、労働者の請求に基づいて未払い賃金の立て替え払いをすることがあります。

このことは、「賃金の支払いの確保等に関する法律」の7条に規定されています。

聞きなれない法律ですが、オイルショック直後に、不況による企業倒産や賃金未払いの増加が著しかったために、その対策として制定されました。

 

<その条件は?>

次の2つの条件があります。

・1年以上労災保険の適用事業であったこと

・最初の破産手続き開始の決定を受けた日などの半年前から1年半後までの2年間に、その事業を退職した者について未払い賃金があったこと

つまり、退職してから半年以内に破産手続きが開始すれば可能性があります。

 

<立て替え払いの対象額>

未払い賃金総額の80%が対象となりますが、退職日の年齢に応じて未払い賃金総額には上限があります。

退職日の年齢

未払い賃金総額の上限

 30歳未満

110万円

 30歳以上45歳未満

220万円

 45歳以上

370万円

 

この制度の窓口は、労働基準監督署です。

 

2016.05.12.

<金額についての規制>

使用者が支払わなければならない賃金の最低限度額が定められています。〔最低賃金法〕

外国人であっても、日本国内で働いている人は、この最低賃金以上であることが必要です。

最低賃金は、都道府県ごとに決まっていて、毎年のように改定されています。改定されれば、改定日当日に勤務した分の賃金から適用されます。

たとえ労働者が同意したとしても、それより低い賃金での契約は認められません。最低賃金より低い賃金で契約したとしても、法律によって無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされます。

 

<減給の制限>

労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりするなどの規律違反をしたことを理由に、制裁として、賃金の一部を減額することを減給といいます。懲戒処分の一つです。

一回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

また、複数回規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません。〔労働基準法91条〕

なお「罰金」というのは、死刑や懲役と同様に、国家権力以外が科すことはできませんから、会社の中で設定することはできません。

 

<支払い方法の規制>

労働者を保護するため、賃金の全額が確実に労働者に渡るように、支払い方法には、次の4つの原則が定められています。〔労働基準法24条〕

 

<通貨払いの原則>

賃金は現金で支払わなければならず、会社の商品などの現物ではいけません。

ただし、労働組合のある会社で、労働協約により定めた場合には、通貨ではなく現物支給をすることができます。

また、労働者の同意を得た場合には、銀行振込み等の方法によることができます。労働者から振込口座の指定があれば、銀行振り込みの同意があったものと考えられます。

 

<直接払いの原則>

賃金は労働者本人に払わなければなりません。

未成年者だからといって、親などに代わりに支払うことはできません。

 

<全額払いの原則>

賃金は全額支払われなければなりません。

したがって「積立金」などの名目で、強制的に賃金の一部を天引きして支払うことは禁止されています。

ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。それ以外は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合に限り認められます。

 

<毎月1回以上定期払いの原則>

賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。

したがって「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められません。

また、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません。

ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。

 

2016.04.23.

<遺族から退職金の請求>

あと2年で定年退職という社員が、急病で亡くなりました。会社から多くの社員が葬式に参列しました。ただ泣くばかりの奥様が気の毒でした。

後日、就業規則の規定に従い、奥様名義の銀行口座に退職金が振り込まれました。

それから半年後、亡くなった社員の息子さん2人が会社にやってきて、退職金を請求します。会社としては、もう退職金は支払い済みと思っていたところ、奥様とは別の相続人2人があらわれたのです。確かに、法定相続分は、奥様が半分、息子さんは4分の1ずつです。彼らは、母親とは仲が悪く10年以上会っていないのだそうです。それで、自分たちの取り分である退職金の4分の1ずつは、直接自分たちに支払えということなのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第52条 退職金は、支給事由の生じた日から  か月以内に、退職した労働者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

労働者が死亡した場合の退職金の支払については、別段の定めがない場合には遺産相続人に支払うものと解されます。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形なのですが、どうやら今回のようなケースには対応できていないようです。

ですから、専門家ではない人が、就業規則のひな形だけを頼りに自分の会社の就業規則を作ると、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、次のような規定にしておけば良いのです。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第52条

2 死亡による退職のときの退職金を受ける遺族の範囲および順位は、次のとおりとします。

    ・配偶者(内縁関係にある者を含みます)

    ・子

    ・父母

    ・孫

    ・祖父母

    ・兄弟姉妹

3 同順位の者が二人以上ある場合には、その人数によって等分するものとします。

 

「就業規則の適用対象は社員だけだから、何かあったら、そこは話し合いで」という考え方は危険です。特に、社員が退職した後のことや、ご家族にも影響のあることについては、慎重に規定の内容を吟味する必要があるのです。

 

2016.04.22.

<退職金倒産>

もう10年近く前のことですが、企業が定年退職者の退職金を支払うことによって、倒産するという現象が生じました。

これは、第二次世界大戦直後の1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)に生まれた団塊の世代と呼ばれる人たちが、一斉に定年を迎えて退職することになり、企業が一度に多額の退職金を支払うことになったため、資金繰りができなくなって倒産したのでした。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の額)

第51条 退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。

 

勤続年数

支給率

5年未満

1.0

5年~10年

3.0

10年~15年

5.0

15年~20年

7.0

20年~25年

10.0

25年~30年

15.0

35年~40年

20.0

40年~

25.0

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文によれば、たとえば勤続23年で退職する人の退職時の基本給の額が40万円であれば、40万円×支給率10.0=400万円というように、簡単に計算することができます。

しかし、同い年の人がたくさんいて、同時に定年退職すれば、同時に退職金の支払いが生じます。企業によっては、これに耐えられない場合もあるでしょう。

また、基本給30万円、役職手当8万円、資格手当2万円という給与であれば、総支給額は40万円でも、退職金を計算するときに、基本給30万円×支給率となります。

ところが、同じ総支給額40万円でも、40万円すべてが基本給なら、退職金を計算するときは、基本給40万円×支給率となります。

結局、その会社の社員の年齢分布や、給与体系などによって、会社の負担は大きく異なってくるわけです。

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

本規程例では、退職金の額の算定は、退職又は解雇の時の基本給と勤続年数に応じて算出する例を示していますが、会社に対する功績の度合い等も考慮して決定する方法も考えられることから、各企業の実情に応じて決めてください。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうすればOK>

注意書きにあるように、「各企業の実情に応じて決めて」いれば安心です。

そのためには、規定を考えるときに、充分なシミュレーションをすることです。

現在の社員のうち、1年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、2年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、3年後に定年を迎える人たちの退職金合計額…を計算します。また、新人の入社を想定して、その分も加えます。

こうして、毎年必要な退職金の額を計算してみて、自分の会社に無理の無い金額であればOKです。

退職金の方式は、基本給×支給率というものだけではありません。最近では、ポイントの積み上げ制を導入する会社も増えていますし、全く違うやり方もあります。是非「各企業の実情に応じて決めて」ください。

 

2016.04.21.

<退職者から賞与の請求>

10年近く働いて円満退職した正社員から「賞与が振り込まれていない」という電話が入ります。もう3か月も前に退職した方です。

この電話を受けた人事担当者は、頭の中がパニックです。なにしろ、つい先日「退職金が振り込まれていました」という電話をくださったその退職者から、今度は賞与の催促です。

後日、その退職者の代理人から、賞与請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の請求も増えているようです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(賞与)

第46条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

算定対象期間

支給日

    日から    日まで

    

    日から    日まで

    

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

しかし、「下記の算定対象期間に在籍した労働者」に支給するという規定です。「算定対象期間の最終日に在籍した労働者」とは書いてありません。これだと、算定対象期間の途中まで在籍していて、その後退職した労働者には、本当に支給しなくて良いのか不明確です。

労働法の原理からすると、「疑わしきは労働者の有利に」ですから、会社は賞与の支払を拒めないように思われます。

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、当たり前のことですが、「賞与支給日に在職しない者には支給しない」と規定しておけば良いのです。

たったこれだけのことで、会社が痛い目を見ることは避けられるでしょう。

 

2016.04.16.

<説明が無い場合>

賞与の支給額を明細書で初めて知り、どうしてこの金額なのか分からないというのは小さな会社ほど多いようです。

そもそも賞与の金額は、社長が一人で思い悩んで決めたので、全員についてハッキリした説明などできないという場合もあります。

もらった社員は、前回に比べていくら増えた/減ったしか感じません。

会社の経費を、それも多額の経費を賞与に充てたのに、ちっとも感謝してもらえないなんて勿体ない話です。

 

<説明のある場合>

賞与の支給額は、基本給を基準に会社の業績を反映した支給月数、個人の貢献度を反映した考課係数を設定して、次のように計算されていれば納得しやすいでしょう。

個人の賞与支給額=その人の基本給×支給月数×考課係数

支給月数が多ければ「会社は経営状況が良い」とわかりますし、考課係数が高ければ「私は高い評価を得ている」とわかります。

支給月数が少なかったり、考課係数が低かったりしても、「次こそは!」という気持ちになります。

このことが、社員ひとり一人のヤル気に結びつくでしょう。

また、連続して考課係数が低い社員は、大いに努力するか会社を去るかの決断を迫られます。

 

<具体的な計算方法>

「うちの会社は、そんなにキチンとやっていない」とあきらめる必要はないのです。

たとえ、社長が一人で考えて決めた支給額であっても、次の手順で計算できます。

 

賞与支給額の総額÷(支給対象者の基本給の合計額)=支給月数

こうして、平均的な人事考課の場合の支給月数がわかります。

 

個人の賞与支給額÷(その人の基本給×支給月数)=考課係数

これで、賞与から逆算したその人の考課係数がわかります。

 

結局、「あなたの今回の賞与は次の計算によって決まりました」と説明できるのです。

個人の賞与支給額=その人の基本給×支給月数×考課係数

 

社長や上司が各社員と面談して、この説明をして激励してはいかがでしょうか。

 

2016.04.15.

<賃金カット>

会社の経営が思わしくなく、一時的に賃金カットを実施したくても、労働者の「自由な意思による同意」が無ければむずかしいのです。

社長が社員全員を集めて説明し、一人ひとり説得を試みたとしても、誰だって給料を減らされるのはイヤです。

ヘタをすると、どの会社でも通用する優秀な社員だけが退職していき、残ったメンバーでは…ということになりかねません。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(昇給)

第45条 昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年  月  日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。

2 顕著な業績が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。

3 昇給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

この条文は、次のことを言っています。

・毎年、定期昇給を行うが、特別な事情があれば行わないこともある。

・臨時昇給もありうる。

・昇給額については、個人ごとに決める。

結局、この規定は昇給だけを想定していて、賃下げなど考えていません。

 

<個別の同意が無くても就業規則を変えればOKだが>

使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、その変更が、次のような事情に照らして合理的であることが必要です。〔労働契約法10条〕

・労働者の受ける不利益の程度

・労働条件の変更の必要性

・変更後の就業規則の内容の相当性

・労働組合等との交渉の状況

実際に、これらの条件が充分にそろっていることを証明するというのは、使用者にとって大変むずかしいでしょう。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、2つの方法があります。

1つは、会社が経営不振に陥らないようにすることです。これは、当たり前のことですが、常にできることではありません。

もう1つは、就業規則の規定を「昇給」ではなくて、

 

(給与改定)

第45条 給与改定は、毎年  月  日をもって行うものとする。

2 特別な事由が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず臨時の給与改定を行うことがある。

3 昇降給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

 

というような規定にしておきます。

そして社員には、「会社の状況によっては賞与や給料が減ることもある。会社が儲かっている時は社員に還元するので、会社が苦しい時には耐えて欲しい」という説明をあらかじめしておくのです。

さらに、経営不振でもいきなり人件費削減ではなく、まずは役員報酬のカット、そして不採算部門の縮小、新人採用の停止など手を尽くしたうえで実施するという説明もしておけば、社員にはそれなりの覚悟ができますし、イザというとき納得も得られやすいものです。

社員には、こういう覚悟をもって仕事をしていただいた方が、生産性が向上するのではないでしょうか。

 

2016.04.14.

<年俸制なら残業代は支払わなくてよい?>

プロ野球の選手なら年俸制で残業代の支払いはありません。

しかし一般の労働者には、残業代をはじめとする割増賃金の支給が原則必要です。

労働基準法は、時間外労働と休日労働・深夜労働の割増賃金を定めていて、年俸制を例外としていません。

この割増賃金の支払いを使用者に義務付ける理由は、法定労働時間と法定休日の維持を図るとともに、過重な労働に対する労働者への補償を行おうとすることにあります。

この趣旨は、どのような賃金体系であっても変わりがありません。

また、たとえ三六協定の無い、あるいは協定の限度を超える違法残業であっても、割増賃金は支払わなければなりません。

 

<なぜ年俸制では割増賃金が割高なのか?>

年俸制における代表的な賃金の支払い方法には、次の二つがあります。

・賞与無し=年俸額の12分の1を月例給与として支給する

・賞与有り=年俸額の一部を賞与支給時に支給する(例えば、年俸の16分の1を月例給与として支給し、年俸の16分の4を二分して6月と12月に賞与として支給する)

このうち、賞与有りの支払い方法の場合には、賞与が割増賃金の算定基礎額に含まれるという通達があるのです。〔平成12年3月8日基収78〕

したがって、月例給与よりも高い「年俸の12分の1」を基準に割増賃金を計算することになりますから、ある意味、賞与の二重払いが発生するのです。

 

<書面をもって合意をすれば合法に>

労使の合意で年俸に割増賃金を含むものとする場合についても、上記の通達が基準を示しています。

年俸がいくらで、その中に何時間分の残業代としていくら含まれているのか、書面をもって合意し、その12分の1を超える残業が発生した月には、その都度不足分の残業代を月々の給与と共に支払えばよいのです。

ただし、深夜労働や休日出勤の割増賃金は別計算となります。

 

ちなみに実際の通達は、次のように言っています。

「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労基法37条に違反しないと解されるが、年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働等を行わせ、かつ、当該時間数に対応する割増賃金が支払われていない場合は、労基法37条違反となることに留意されたい。また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合において、各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、同条違反となることに留意されたい。」

 

2016.04.07.

<業績給とは?>

従業員の従事した仕事の業績で基本給を決める賃金制度です。

 

<業績給の長所>

・仕事の成果と基本給が連動し企業の業績が向上

・業績の範囲内で基本給を決められる

・従業員の勤労意欲が高まる

 

<業績給の短所>

・複雑な共同作業には対応できない

・組織が硬直化し従業員の協調性が育たない

・従業員の過重労働に繋がる

・勤労意欲や業績の向上は短期的なものである

 

<最近では>

個人だけでなく、所属部署や企業全体の業績を、基本給や賞与に反映させる動きがあります。

 

2016.04.06.

<職務給とは?>

従業員の従事する職務で基本給を決める賃金制度です。

 

<職務給の長所>

・仕事内容と基本給が一致

・必要な人材を仕事に見合った給与で募集できる

・新しい職務を作り古い職務を廃止することで社内外の変化に対応できる

・職業能力向上のためのコストが生じない

 

<職務給の短所>

・企業内での職掌や職種を超えた人事異動が困難

・能力開発の動機付け(多能工化)ができない

・基本給が一定額以上上昇せず長期勤続を促す効果がない

・組織が硬直化し従業員の協調性が育たない

・制度の設計と維持にコストが掛かる

 

<最近では>

職務の細分化をやめ、職務範囲を拡大することによって、短所を補う動きがあります。

 

2016.04.05.

<職能給とは?>

従業員の職務遂行能力で基本給を決める賃金制度です。

 

<職能給の長所>

・仕事と基本給が一致せず職掌・職種を超えた人事異動が容易

・従業員の能力開発を促し企業の長期的な発展に寄与

・保有能力が低下しない限り基本給は下がらず長期勤続を促す効果がある

・昇進と昇格を分離することによりポストが不足しても昇格が可能

 

<職能給の短所>

・仕事と基本給が一致しないことによる不満の発生

・ポストがなくても昇格できるので人件費が上昇

・既存の能力の陳腐化には対応できない

・職務遂行能力の定義次第ではその運用が年功的になる

 

<最近では>

これまでの能力の概念である「保有能力」を仕事で発揮されている「発揮能力」に改める動きが盛んです。

また、会社の業績に著しく貢献している従業員の「行動特性」が分析され、各人の「行動特性」との類似性を評価指標に取り入れる動きもあります。

 

2016.04.04.

<年齢給とは?>

従業員の年齢、最終学歴の卒業年次、勤続年数といった属人的要素で基本給を決める賃金制度です。

 

<年齢給の長所>

・年齢という万人共通の基準は明確

・基本給の計算と管理が容易

・従業員のライフステージごとの最低生計費が保障される

・従業員に安心感を与え長期勤続を促進する効果がある

・仕事と賃金額が一致しなくても良いので配置転換が容易

 

<年齢給の短所>

・同じ仕事をしていても賃金が異なる

・従業員の働き振りや職業能力の向上と基本給は一致しない

・企業の業績と無関係に賃金コストが変動

・平均年齢の上昇が賃金コストの上昇に直結

・若手従業員には不平不満が生じる

・日本独自の賃金制度であり国際性がない

 

<最近では>

縮小・廃止の傾向にあり、年齢給を維持する会社では、若者の採用がむずかしくなっています。

また、非正規労働者を含めた労働者の生計費の確保のため、政府による最低賃金の引上げが毎年行われており、年齢給では賃金コストの上昇が著しくなっています。

 

2016.04.03.

<賃金制度の決定>

賃金制度について、労働基準法による規制はありません。

賃金制度のあり方は、労使が対等の立場で話し合って決定するたてまえです。

 

<年功序列型賃金>

年功序列型賃金の統一的な定義はありません。しかし一般的には、企業での勤続年数や従業員の年齢の上昇に従って、賃金(基本給)も上昇する仕組みです。

従業員の全員が新卒採用で、定年まで働き続けるという職場であれば、今もなお一定の合理性を保った制度だといえます。

 

<非年功序列型賃金>

勤続年数や年齢に関係なく、担当している仕事の難易度や仕事上発揮した能力による成果を重視した賃金の決定の仕組みが、多く採用されるようになっています。

こうした賃金制度は、経費節減となり、従業員の意欲を刺激することを期待して採用されています。しかし、その具体的な内容は、企業の経営戦略や人事政策により異なることになります。

 

<賃金制度の種類>

賃金制度には、従業員の属人的要素(例えば、年齢、勤続年数など)で基本給を決める「年齢給」、従業員の能力で基本給を決める「職能給」、従業員が従事している仕事で基本給を決める「職務給」、従業員が行った仕事の「成果・業績」で基本給を決める業績給などがあります。

どの賃金制度にも長所と短所がありますし、社会の価値観の変化や市場環境に応じた変更は、すべての従業員にチャンスを与える意味でも必要不可欠です。

社内外の事情を具体的に把握・分析したうえで、採用する賃金制度を検討されるとよいでしょう。

 

2016.04.02.

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになるのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2018.09.29.解決社労士

<正しい計算の法的根拠は?>

労働基準法には、残業手当を何分単位で計算するのか規定がありません。

しかし、規定が無いからといって、労働局や労働基準監督署が企業の残業代計算について、指導できないというのでは困ります。

そこで、法令の具体的な解釈が必要な場合には、行政通達が出されて、その内容が解釈の基準となります。

残業手当の計算についても、労働省労働局長通達が出されています。〔昭和63年3月14日基発第150号〕

531ページまである行政通達の220ページから221ページにかけて、次のような内容が記載されています。

 

次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、…違反としては取り扱わない。

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の合計について、1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げること。

・1時間当たりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数がある場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げること。

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の割増賃金の総額に1円未満の端数がある場合は、上記と同様に処理すること。

 

結局、この基準に沿った四捨五入は許されますし、たとえば常に切り上げるなど労働者に有利なルールで運用することも問題ありません。

 

<行政通達の効力は?>

この行政通達は、厚生労働省が労働局や労働基準監督署に、企業指導のための具体的な指針を示したものです。

ですから、労働基準法などの法律とは異なり、行政通達が直接企業を拘束するものではありません。

しかし、企業から「行政通達の内容が不合理だから従いません」と主張するためには、行政訴訟で指導の不当性を争い、裁判所に行政通達の違法性を確認してもらうしかないでしょう。

これは、立法機関が法律を作り、行政機関が執行し、司法機関がその違法性や違憲性を審査するという三権分立のあらわれです。

結局、現実的には、どの企業もこの行政通達に従うしかないでしょう。

 

<トイレに行ったら減給?>

これも法令には規定が無いのですが、一般に「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。仕事をしなければ賃金を支払う必要がないということです。

この原則をしゃくし定規にとらえると、トイレに行っても、タバコを吸っても、居眠りをしても、1分単位で給料を減らして良いように思えます。

しかし、この原則は労働契約の性質から導き出されています。労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することによって成立する契約です。〔労働契約法6条〕

つまり「働くなら払います」の裏返しで、「働かないなら払いません」ということを言っているに過ぎません。

そもそも、労働契約を締結する際には、いちいち確認しなくても、トイレに行くことぐらいは当然に了解済みです。タバコについては、その職場のルールが説明されるでしょう。そして、居眠りについては、ひどければ懲戒処分の対象としておけば済むことです。

結局、労働時間の中には、労働以外のことをする時間もある程度含まれているという了解のもとで、労働契約が成立し給与も決められているといえるのです。

 

2016.03.23.