賃金の記事

<朝礼の時間の賃金支払義務>

朝礼は、業務上必要な連絡事項の伝達、心身の異常の有無の確認、勤務に就く態勢を整えさせるなどのために行われています。

業務に密接に関わる内容を含みますので、通常は出勤者全員の参加が義務付けられています。

確立した判例理論によると、労働時間の定義は「何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」です。通常の場合、朝礼はこの定義に当てはまりますので、賃金支払の対象となります。

例外的に、その朝礼が自由参加であって、参加しなくても評価の低下などの不利益が全く無いのなら、労働時間の定義に当てはまりませんから賃金の支払いは不要です。

 

<掃除当番の時間の賃金支払義務>

掃除当番は、会社が通常の業務にプラスアルファで行わせているのが一般的な形です。これは、上記の労働時間の定義に当てはまりますので、賃金支払の対象となります。

例外的に、従業員同志が話し合って、自主的に当番を決めてボランティアで行っている場合には、労働時間の定義に当てはまりませんから賃金の支払いは不要です。

たとえば、長年にわたり社長が毎朝早く出社してトイレ掃除をしていたとします。あるとき、一人の社員の提案で、社長に代わり自分たちで掃除することになって、掃除当番が始まったとします。これが、社長に対する尊敬の念とボランティア精神から始まったことであれば、賃金の支払いは不要なのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「昔から朝礼や掃除当番の時間については無給です」というのは、その時間の賃金を支払わなくて良い理由にはなりません。

長く続いているルールが、労働法違反の慣行に過ぎないということもあるのです。

社内で行われている何となくのルールに疑問を感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.22.解決社労士

<就業規則による時給の引き下げ>

労働者と使用者が労働契約を締結する場合に、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとなります。〔労働契約法7条本文〕

では、就業規則に「従業員が社会保険の被保険者資格を取得したときは、取得日の属する月の翌月支給分の給与より、基本給を2割減額するものとする」などという規定があったら、これを根拠に時給を下げることができるでしょうか。

もちろん、できません。

なぜなら、「合理的な労働条件が定められている就業規則」とは言えないからです。この「合理的」というのは、使用者が都合良く解釈した合理性ではなく、客観的な合理性が基準になります。使用者側は、次のような解釈をするかも知れません。

・従業員の勤務時間が増えて、社会保険の加入基準に達すると、使用者は加入させる義務を負う。これは法定の義務である。

・厚生年金保険料と健康保険料は、使用者が半分負担するので、時給を下げないと使用者の負担が増えてしまう。

・従業員は勤務時間が増えているので、時給を下げても、総支給額はあまり変わらない。

しかし、客観的な立場で考えると、使用者が従業員を社会保険に加入させる義務を負う場合には、保険料の半分を負担するのも義務なので、負担が増えるのは当然です。この負担を、従業員に押し付けるのは、社会保険料を折半する制度の趣旨から考えて不合理です。

また時間給の場合には、勤務時間が増えれば、それに比例する形で給与の総支給額が増えます。それなのに、あまり変わらないというのは不合理です。

 

<合意による時給の引き下げ>

労働者と使用者が合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することはできます。〔労働契約法8条〕

ただ、労働者は立場が弱いですから、労働者が精神的な圧迫を受けずに、自由な意思により同意したのでなければ、合意があったとは認められません。

「時給を引き下げることに異議なく同意します」という同意書や、下げた後の時給を基準に作った労働契約書に従業員が署名してあったとしても、それだけで合意があったことは証明できません。法廷などでは、労働者がダマされたのではないか、署名しないとクビになると思ったのではないかということが疑われるからです。

ましてや、社会保険に加入するとともに、時給引き下げに同意するというのは、自由な意思によるものではないと疑われるでしょう。

 

<自由な意思による同意があったことの証拠>

パート社員から店長に直筆の「お願い」が出され、そこに「私は長年このお店で働いてきました。今では、このお店で働くのが生きがいです。もっと長時間働きたいです。でも、その分人件費が増えるのでは申し訳ないと思います。ですから、時給を2割下げて、毎週もう1日シフトに入れていただけないでしょうか」と書いてあって、その人なりの「計算書」も添付されていたとします。

これを受けて、会社の会議で検討され、勤務日数の増加と時給の5%引き下げが決議され、その議事録も作成・保管されているとします。

この状況で、時給を5%下げた労働契約書が交わされたなら、「自由な意思による同意」の存在は証明できるのではないでしょうか。

しかし、実際にこのような「お願い」をもらった店長は、会社に対して、このパート社員の臨時昇給を提案するかもしれないですね。

 

2017.03.17.解決社労士

<解決法>

能力を理由に給与を引き下げることは、個人的な不利益変更ですから、労働協約や就業規則の変更ではなく、会社と労働者との合意の形で行うことになります。〔労働契約法8条〕

この場合に、「賃金減額に合意しなければ解雇します」などの強迫をしてしまうと、労働者から賃金減額に対する合意が取り消されることもあります。〔民法96条1項〕

ですから会社としては、強く迫るのではなく丁寧な説明をする必要があります。

 

<予防法>

とはいえ、「能力が期待外れなので賃金を減額します」と言われて、素直に納得する人は少ないでしょう。

こうしたことが起こらないようにするには、採用に至る前の段階で、求人広告に詳細な人材要件を明示すること、面接など採用選考で能力を見極めることが必要です。

また採用決定後も、試用期間を設けて、雇い入れ通知書に会社の期待する能力を詳細に記述し、業務に必要な能力が欠けている場合には本採用しないことを明らかにしておきたいところです。

 

<本当に必要な人材か>

そもそも、期待した能力を発揮しない労働者を、社員として雇用しておくことは必要なのでしょうか。

人手不足だから、せっかく採用したのだから、かわいそうだからといった理由で、労働条件を引き下げて雇い続けることは、会社にとっても計画の挫折ですし、本人も意欲的に勤務できないでしょう。

会社としては、別の人材獲得を考えるのが得策ではないでしょうか。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

必要な人材の確保に必要な求人、採用選考、試用期間制度の運用は、ぜひ信頼できる社労士にお任せください。

 

2017.03.10.解決社労士

<最低賃金>

最低賃金は、都道府県ごとに1時間あたりの賃金額で定められています。

たとえ働く本人の同意があっても、最低賃金額を下回ることはできません。〔最低賃金法4条〕

高校生のアルバイトにも適用されますし、本人や家族の「同意書」は無効です。

 

<労働基準法の定める「賃金の原則」規定>

賃金は通貨で、直接働く本人に、全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。〔労働基準法24条〕

これは賃金支払いの5原則と呼ばれます。「原則」とは言うものの、違反すれば30万円以下の罰金が科せられます。ですから原則違反は犯罪行為です。〔労働基準法1201号〕

 

<通貨払いの原則>

賃金は通貨で支払う必要があり、現物支給は禁止されています。

働く本人の同意などがあれば銀行振込も可能です。ただし、家族名義の口座ではなく本人の口座であることが必要です。

 

<直接払いの原則>

賃金は働く本人に直接支払う必要があります。代理人や親権者等への支払はできません。

 

<全額払いの原則>

賃金は全額を支払う必要があります。

ただし、所得税など法令に定めがあるものや、労使協定で定めたものだけは控除できます。

 

<毎月1 回払いの原則>

毎月少なくとも1回は賃金を支払わなければなりません。

賞与等の一時金は、会社の就業規則などに従って支払えば良いので、この原則の対象とはなりません。

 

<一定期日払いの原則>

毎月25日というように、周期的な支払期日を定めなければなりません。

毎月第3月曜日というように、固定されているように見えて、実は周期的ではない期日は原則違反となります。

 

2016.12.13.

<金額についての規制>

使用者が支払わなければならない賃金の最低限度額が定められています。〔最低賃金法〕

外国人であっても、日本国内で働いている人は、この最低賃金以上であることが必要です。

最低賃金は、都道府県ごとに決まっていて、毎年のように改定されています。改定されれば、改定日当日に勤務した分の賃金から適用されます。

たとえ労働者が同意したとしても、それより低い賃金での契約は認められません。最低賃金より低い賃金で契約したとしても、法律によって無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされます。

 

<減給の制限>

労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりするなどの規律違反をしたことを理由に、制裁として、賃金の一部を減額することを減給といいます。懲戒処分の一つです。

一回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

また、複数回規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません。〔労働基準法91条〕

なお「罰金」というのは、死刑や懲役と同様に、国家権力以外が科すことはできませんから、会社の中で設定することはできません。

 

<支払い方法の規制>

労働者を保護するため、賃金の全額が確実に労働者に渡るように、支払い方法には、次の4つの原則が定められています。〔労働基準法24条〕

 

<通貨払いの原則>

賃金は現金で支払わなければならず、会社の商品などの現物ではいけません。

ただし、労働組合のある会社で、労働協約により定めた場合には、通貨ではなく現物支給をすることができます。

また、労働者の同意を得た場合には、銀行振込み等の方法によることができます。労働者から振込口座の指定があれば、銀行振り込みの同意があったものと考えられます。

 

<直接払いの原則>

賃金は労働者本人に払わなければなりません。

未成年者だからといって、親などに代わりに支払うことはできません。

 

<全額払いの原則>

賃金は全額支払われなければなりません。

したがって「積立金」などの名目で、強制的に賃金の一部を天引きして支払うことは禁止されています。

ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。それ以外は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合に限り認められます。

 

<毎月1回以上定期払いの原則>

賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。

したがって「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められません。

また、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません。

ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。

 

2016.04.23.