労災の記事

<企業の労災防止>

各企業は、労災事故の発生を防ぐため、安全教育、設備・機械・器具の点検、安全のためのルールの設定と遵守指導に取り組んでいます。

業務災害は、新人とベテランに多いものです。新人はまだ良くわかっていないからですし、ベテランは昔教育されただけで、その後教育されていないこともありますし、本人が油断していることもあります。

また通勤災害は、交通機関や道路の改善などは無理ですが、交通安全教育、通勤経路の危険個所についての情報提供などによって、間接的に防止するよう努めています。

 

<労災防止の効果>

労災防止の効果としては、労災事故の減少・軽減による会社資産の保護、労働力の確保、従業員の安心などがあります。

そして労働者の安心は、定着率の向上、応募者の増加、会社の評判の上昇をもたらしますから、企業は本気で労災防止に取り組むべきなのです。

 

<忘れがちな形式面の対策>

たとえば、所轄の労働基準監督署が企業に調査(臨検監督)に入ったとします。そして、その企業では労災防止策が徹底されていて、数年にわたって労災事故が無かったとします。

対応に当たった社員が、月1回労働安全研修会を行っていることを説明しても、労働基準監督官は証拠が無ければ説明内容を安易に信じるわけにはいきません。監督官が報告書に「毎月研修会を実施していると聞きました」と書くわけにはいかないのです。

同様に、毎日朝礼で安全対策の確認をしていて、従業員は設備・機械・器具の使い方や注意点をしっかり頭に入れていたとしても、証拠が無ければそうした対策が徹底されているとは認定されません。

むしろ、労災保険の給付請求書が提出されないのは、違法な労災隠しが行われているのではないかと疑われかねないのです。

 

またたとえば、不幸にして死亡事故が発生し、遺族から損害賠償を求められたらどうでしょう。

企業としてできる対策をきちんと行い、死亡した被災者にも定期的に十分な教育をしていたにもかかわらず、たまたま本人が想定外の不注意で事故を起こしてしまったような場合でも、証拠が無ければ裁判では企業の労災事故防止に向けた努力を主張できないのです。

こうなると、企業の負う賠償額はかなり高額になってしまいます。企業の存続すら脅かすかもしれません。

 

<証拠を残すとは>

企業が労災事故の発生防止に努めているという証拠を残しておくには、それを意図して行わなければできるものではありません。

 

社内研修を行うのであれば、社内研修の案内・資料・参加者名簿を残す準備が必要です。参加者名簿は、参加者のひとり一人から署名を得ておくのが良いでしょう。

また、マニュアルなど参照しなくても問題なく作業できる従業員ばかりの職場であったとしても、すぐ参照できる所にマニュアルを保管しておくべきです。

「危険!」「熱い!」などの表示は、それ自体が本当に労災防止に役立つものではなくても、労災防止に努めている証拠として積極的に施しておくべきです。

 

また、交通ルール・自転車マナー・危険個所情報の掲示も有効です。通勤災害の防止にも取り組んでいる資料を示しておくことになります。

実際には、通勤災害についてまで企業が責任を負うことは稀です。

しかし、勤務中の自動車・自転車の使用や移動中の歩行でケガをした場合には業務災害になりますから、こうした対策も必要でしょう。

 

労働基準法や労働安全衛生法などにより、作成・保管を義務付けられている書類は多いものですし、上記のように法的義務の無いものであっても、作成・保管が企業防衛に必要なものもあります。

こうしたことを一括してチェックするには、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)に調査をご用命ください。

2017.12.03.解決社労士

<待期期間の不思議>

健康保険の傷病手当金、労災保険の休業(補償)給付、雇用保険の基本手当(昔の失業手当)には、待期期間があります。

給付の理由があっても、最初の一定の日数は給付されません。しかし、その理由は意外と知られていませんので、ここにご紹介させていただきます。

なお、「待機期間」ではなくて「待期期間」です。

「待機」は、準備を整えてチャンスの到来を待つことです。待機児童、自宅待機、待機電力の「待機」はこの意味で使われています。

「待期」は、約束の時期を待つことです。待期期間の「待期」はこの意味で使われています。

 

<傷病手当金の待期期間>

健康保険の傷病手当金は、ケガや病気で働けなくなっても、最初の継続した3日間は待期期間とされ支給の対象とされません。

これは、仮病による支給申請を防止するためだそうです。

3日間の無給を犠牲にしてまで、嘘のケガや病気で傷病手当金の申請をしないだろうという考えによります。

ただ、年次有給休暇の取得も考えられますから、効果は疑わしいと思います。

 

<休業(補償)給付の待期期間>

労災保険の休業(補償)給付は、ケガや病気で働けなくなっても、最初の継続または断続した3日間は待期期間とされ支給の対象とされません。

仮病による支給申請の防止というのは、傷病手当金と同じです。

しかし、年次有給休暇のこともありますし、通勤災害による休業補償給付ではなくて、業務災害による休業給付ならば、最初の3日間は事業主が労働基準法の規定により休業補償を行うことになりますから、ますます効果は疑わしいものです。

 

<雇用保険の基本手当の待期期間>

ハローワークに離職票を提出し求職の申し込みをした日から7日間は、待期期間とされ基本手当の支給対象期間とされません。

本当に失業状態にあるといえるのかを確認するために設けられているとされます。しかし、失業状態にあることの確認は、待期期間を設けるだけでは不十分でしょう。

なお自己都合退職者には、7日間の待期期間の後、さらに最大3か月の給付制限期間が設けられています。これは、自分の都合で退職しているので、経済的な備えなどができるはずだということで設けられています。

不思議なことに、この給付制限期間のことを「たいききかん」と呼んでいる人もいます。

 

<待期期間の役目>

以下は、私個人の考えですので悪しからず。

火災保険や自動車保険その他の損害保険では、免責金額が設定されているのが一般的です。免責金額以下の損害に対しては保険金が支払われないのです。

保険会社から見ると、少額の損害で保険金を支払ったり、そのための手続きや処理をしたりで経費を使わなくてもよいので助かります。また、保険加入者にとっても、その分だけ保険料が安くなるわけです。

健康保険、労災保険、雇用保険で、1日限りの休業や失業に対してまで給付をするというのでは、手続きにかかわる人々の人件費が大変です。また、ある程度以下の給付は切り捨てて、その分だけ保険料を安くするという要請は公的保険という性質上、大きいものと考えられます。

以上のことから待期期間は、損害保険の免責金額のような役目を果たしているものと思われます。

2017.12.01.解決社労士

<事業主編>

 

Q:従業員の少ない小さな会社では、労災保険に入らない方が得?

A:原則として一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに労災保険が適用されます。

労働保険(労災保険と雇用保険の総称)は、労働者を1人でも雇用した場合には、事業主は加入に必要な手続を行うことが、法律で義務づけられています。

法律上は、条件を満たせば労災保険が適用されていて、事業主が入っていないつもりになっているのは、手続きを怠っているだけです。

 

Q:労災保険に入る手続きをしなくても簡単にはバレない?

A:厚生労働省が「労働保険適用事業場検索」というサービスを提供しています。これによって、誰でもネットで確認できますので、その会社の求人広告に応募しようとする人やお客様、お取引先、金融機関などが知ることとなります。

http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/daijin/hoken/980916_1a.htm

 

Q:労災保険に入る手続きをしないうちに労災事故が発生したら?

A:労災事故の発生などをきっかけとして、成立手続を行うよう指導を受けたにもかかわらず、自主的に成立手続を行わない事業主に対しては、行政庁の職権による成立手続と労働保険料の認定決定を行うこととなります。

その際は、遡って労働保険料を徴収するほか、併せて追徴金を徴収することとなります。

また、事業主が故意または重大な過失により労災保険の保険関係成立届を提出していない期間中に労災事故が生じ、労災保険給付を行った場合は、事業主から遡って労働保険料を徴収(併せて追徴金を徴収)するほかに、労災保険給付に要した費用の全部又は一部を徴収することになります。

 

手続きや保険料の納付などについて迷ったら、信頼できる国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<労働者編>

 

Q:家に帰る途中でケガをしても、労災保険で治療を受けられない?

A:労災保険制度は、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度です。通勤途中のケガにも適用されます。

 

Q:給料から労災保険料が天引きされていないなら、労災保険に入っていない?

A:労災保険の費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。事業主だけが保険料を負担し、労働者の負担はありませんから、給与からの控除もありません。

 

Q:学生のアルバイトなら労災保険は関係ない?

A:労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。アルバイトでも労災保険が適用されます。

 

労災事故による給付の手続きなどについて迷ったら、信頼できる国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.11.28.解決社労士

<総合スーパーとは>

総合スーパーは、日常的に需要の高い商品を中心に、衣食住全体にかかわる品揃えで、大量仕入れと大量販売により価格を抑えている業態です。

お客様が自分で商品を選択し、レジに持参して精算するセルフ方式が中心となっています。

 

<リスクと労災の傾向>

次のようなリスクがあり、中高年の女性パートタイマーの被災が多発しています。

・大量な荷捌き、頻繁な商品の補充、狭いバックヤード、水や油で濡れた床などに起因した転倒、腰痛、墜落など

・包丁などによる切り傷

・スライサーなどへの巻き込まれ

ベテラン店員の労働災害が多く、慣れや油断、加齢による体力や注意力の低下による労働災害を防止するため、安全意識を高める教育が必要です。

 

<労災防止策>

次のような労災防止策が有効です。

・バックヤードの整理・整頓

・カッターではなくハサミの使用

・落下防止対策として陳列棚の天板はその上に物を置かせないよう取り外す

・精肉加工、清掃でのスライサー起因災害防止のため、切創防止手袋の着用、そのマニュアル化

・労働災害の原因を、「作業員の不注意」としない。なぜ不注意が起きたのかを究明

・バックヤードにハザードマップ掲示等、各種表示による安全の見える化

・作業動線を考え、適切な位置に物を配置するなど、作業場の見直しによる作業効率の改善

・メーカー指導の下、バックヤードの業務改善等、作業性と安全性の両面を向上させる活動

 

労災防止のためには、知識よりも経験が有効です。その反面、経験豊富なベテランが被災しやすいという事実もあります。

また、労働基準監督署や被災者(ときに遺族)から責任を問われないようにするには、労働安全衛生を中心とする法令の知識が必要です。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

2017.10.29.解決社労士

<厚生労働省による緊急要請>

厚生労働省は、平成29年の労働災害による死亡者数(1月~8月の速報値)が対前年比で増加し、特に8月に急増したことを受け、平成29年9月22日、労働災害防止団体や関係事業者団体に対し、職場における死亡災害撲滅に向けた緊急要請を行いました。

9月20日に公表した、平成29年の労働災害発生状況(1月~8月の速報値)では、死亡者数が対前年比9.6%(49人)の増加、休業4日以上の死傷者数が対前年比0.9%(600人)の増加となりました。また、8月単月の死亡者数は66人となり、対前年同月比57.1%(24人)の大幅な増加となっています。

ここ数年は、労働災害による死亡者数が減少傾向にありました。医学の発達により、以前は救われなかった命が救われるようになったという要因もあります。それにもかかわらず死亡事故が増加するというのは、まさに緊急事態だと思われます。

 

<緊急要請のポイント>

労働災害防止団体、関係事業者団体(約250団体)に対して、厚生労働省労働基準局安全衛生部長名で緊急要請を行いました。

 

(1)産業界全体に対する企業の安全衛生活動の総点検などの要請

労使・関係者が一体となって、基本的な安全管理の取組をはじめとする以下の労働災害防止活動の徹底を要請。

・安全作業マニュアルの遵守状況を確認するなど、職場内の安全衛生活動の総点検を実施すること

・安全管理者、安全衛生推進者、安全推進者等を選任し、その職務を確実に遂行させるなど、事業場の安全管理体制を充実すること

・雇入れ時教育等を徹底するなど、効果的な安全衛生教育を実施すること

 

(2)死亡者数が増加している業種での取組のポイントを明示

 特に死亡者数が増加している業種(建設業、陸上貨物運送事業、林業、製造業)での労働災害防止ための取組のポイントは以下のとおり。

 

(建設業)

・労働者の立ち入り制限や誘導員の配置など、車両系建設機械などとの接触防止対策の実施

・高所作業における作業床の設置、安全帯の着実な使用などの墜落・転落防止対策の実施

・「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づく対策の実施

 

(陸上貨物運送事業)

・「荷役5大災害防止対策チェックリスト」を活用した荷役作業での安全対策の実施

・「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づく対策の実施

 

(林業)

・「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」に基づく対策の実施

 

(製造業)

・リスクアセスメントや機能安全による機械設備の安全対策の実施

・高経年設備に対する優先順位を付けた点検・補修などの実施

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

企業が守るべき労働関係法令は、労働基準法ばかりではありません。

もともと労働基準法の中にあった労働安全と労働衛生の規定が増えたこともあり、独立した労働安全衛生法となって強化されたのです。

その内容も、度重なる改正によりかなり詳細なものとなっています。

厚生労働省の緊急要請を受けて、労働基準監督署の監督(調査)も強化されることでしょう。

もし会社に不安な点があれば、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

2017.09.23.解決社労士

<労災の原因>

労災のほとんどは過失により発生し、労災を起こした本人がケガをしても、周囲の人たちからは「本人の不注意だから」と言われることが多いものです。

しかし、ここで話を終わらせず、さらに原因を追及する必要があります。これは本人の責任を明確にし、再発を防止するために不可欠なので手を抜けません。

まずは、会社の安全教育です。業務を行うにあたって予めわかっている危険ポイントごとに、事故を避けるための正しい動作や手順などについて、繰り返し定期的に教育が行われていたでしょうか。事故が発生したということは、教育不足が疑われます。

つぎに、事故防止のための表示です。「手袋着用」「高温注意」など、必要な表示が漏れなく整っていたでしょうか。

さらに、仕事による疲労の蓄積です。個人的な悩みや、プライベートでの疲労で注意力が低下していたのなら、本人の責任が重いといえます。しかし、残業続きの状態で労災が発生した場合には、不注意の責任を本人だけに押しつけるわけにはいきません。そうした勤務を許した会社の責任が問われます。

そして、本人の資質の問題があります。本人の不得意なこと、あるいは、そこまでの注意を期待できない業務を担当させていなかったでしょうか。適材適所ができていなければ、会社の責任も重くなります。

 

<懲戒処分による減給>

安全教育、表示、適材適所ができていて、過重労働が無かったのに事故が発生したのなら、懲戒処分を検討するのにも十分な理由があります。

しかし、この場合でも、懲戒処分により再発防止が期待できない場合には、懲戒処分の目的が果たされず、悪影響だけが残ってしまいます。

結局、上司や会社に対する恨みなどが原因で、故意に労災を発生させたような場合に限定されるのではないでしょうか。故意に事故を発生させたのであれは、減給処分では懲戒処分としては軽すぎるかもしれません。

 

<降格・降職に伴う給与の減額>

労災事故の発生をきっかけに、現在置かれている立場の業務を行うには能力が不足していると判明する場合があります。

この場合には、適正な人事考課により職位や役職を下げて、それに応じた給与にするということもあります。

これは、本人の身の安全を守るという観点からも、正当性の認められる場合が多いでしょう。

 

<職務の転換>

自動車事故を起こした従業員の職務から自動車の運転を外し別の業務を担当させることは、本人の身の安全を守る点では有効な手段です。

この場合には、職務の転換によって給与が下がると、非公式な制裁と見られてしまいます。あくまでも、本人の心からの同意に基づき行うことで、トラブルにならないよう心がけましょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

労災事故を発生させたから給与を下げるというのでは、社長の気が済むだけで会社としては何も解決しません。

こんなとき、労災をきっかけに会社の成長を考えるのであれば、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.09.02.解決社労士

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法715条)により、被害者に対して賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、会社は従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

 

<懲戒処分による減給>

就業規則に「過失によって会社に損害を加えた場合」の懲戒規定を置いておけば、減給処分も可能です。厚生労働省のモデル就業規則にも、こうした規定例がありますので参考になります。

しかし、減給処分の金額は限られていて、損害のすべてを回収することはできないでしょう。

むしろ、懲戒処分を受けることはそれ自体が苦痛ですから、懲戒処分を受けた従業員も、懲戒処分があったことを知った従業員も、会社に損害を加えないようにより一層の努力を尽くすことになります。

 

<適正な人事考課による対応>

きちんとした人事考課の仕組みがあって、交通事故を起こしたことの責任を反映させるというのは正しい方法です。

給与について言えば、安全運転ができないという能力の面や、会社に損失を与えたという貢献度の面で適正な評価をすれば、他の従業員よりも昇給額が少ないというのは妥当性のある結果です。

また、賞与の支給率に反映され、支給額が少なくなるのも仕方のないことです。

これらは、あくまでも人事考課の仕組みがあって、適正に運用されることが前提となります。

従業員が給与や賞与を意識して、会社に損害を加えないように注意深くなるのは明らかです。

<交通安全教育>

今更ですが、会社の従業員に対する交通安全教育も重要です。報償責任や懲戒処分の有効性を考えたときには、会社が十分な教育を行っていたことが、損害賠償の請求や懲戒処分の正当性の根拠となります。

ここで注意したいのは、実質面だけでなく形式面にも配慮すべきだということです。

交通事故を減らすために交通安全教育を実施するわけですが、実施したことの証拠を残すことも重要です。

最終的に会社が負担する責任の範囲を狭めるためには、いつどこでどのような内容の教育を行ったのか、資料を残しておく必要があります。

そして、参加者名簿を作成し、参加者の署名を得ておくことをお勧めします。

参加・不参加も人事考課に反映させたいところです。

 

<過重労働の責任>

全く残業していない従業員の事故と、月80時間ペースで残業している従業員の事故とでは、会社と従業員との間の責任割合が変わってきます。

長時間労働であるほど、会社の責任が重くなります。過重労働によって疲労が蓄積したり、注意力が低下したりで事故が発生したと評価されるからです。

人手が足りないのなら、新人を採用する工夫が必要です。

残業手当は25%以上の割増賃金が絡んできますから、長時間労働が発生しているのなら、新人の採用が経営上も有利になります。

ひとり一人の負担を減らすことで、事故の防止を図りたいところです。

 

<スケジュールの見直し>

忙しいとはいえ、そうでもない日もあるはずです。繁閑の差が出ないようにシフトを工夫しましょう。

1か月何件というノルマがある場合でも、1日何件までという上限を設定して、過重労働を防止する工夫ができます。会社がスケジュールの管理を強化することも考えられます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

社会保険労務士というと、手続業務を思い浮かべることが多いようです。

しかし、どちらかというと労務管理の専門家ですから、年金、健康保険、雇用保険、労災保険の手続きよりも、労務管理や労働安全衛生のこと、そして就業規則などのルール作りと運用管理が得意です。

また、労働トラブルへの対応や防止が得意な社労士もいます。

守備範囲は広範に及びますから、何か困ったら、とりあえず信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.30.解決社労士

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法715条)により、被害者に対して賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、会社は従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

 

<賠償金の給与天引き>

客観的に適正な範囲内の賠償金が確定したとします。この場合でも、賠償金を給与から控除することには、また別の問題があります。

労働基準法には次の規定があります。

 

(賃金の支払)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

 

原則として賃金は全額を支払わなければなりません。法令、労働協約、労使協定に定めがあるものは例外的に控除が許されます。

法令により控除が許されるのは、所得税、住民税、社会保険料、財形貯蓄などです。賠償金は、法令により控除が認められているわけではありません。

労働協約で組合費、労使協定で共済会費、社宅家賃の控除が定められていることは普通にあります。

賠償金も、労使協定などで定められていれば控除が可能です。ただし、会社側からの強制で労使協定を交わしたのなら無効です。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

万一に備えて、規定を整備しておくことは重要です。労使協定も残業がありうるのなら交わして所轄の労働基準監督署長への届出が必要です。届出なしに残業が1分でもあれば違法です。

つまらないことで足元をすくわれることがないように、手続き的なことはきちんと行いましょう。ただ、やるべきことは会社によって違いますので、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.29.解決社労士

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法715条)により、被害者に対して賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、会社は従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

 

<懲戒処分による減給>

就業規則に「過失によって会社に損害を加えた場合」の懲戒規定を置いておけば、減給処分も可能です。厚生労働省のモデル就業規則にも、こうした規定例がありますので参考になります。

しかし、減給処分の金額は限られていて、労働基準法に次の規定があります。

 

(制裁規定の制限)

第九十一条  就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

 

つまり、1か月の総支給額が30万円なら、1日分の1万円のさらに半分の5千円しか減給ができません。複数の減給処分が重なった特殊な場合でも、3万円が限度となります。この規定は、「1か月につき」ではなく「全部で」という意味です。

会社としては、わずかな損害しか回収できません。

 

<適正な人事考課による対応>

きちんとした人事考課の仕組みがあって、交通事故を起こしたことの責任を反映させるというのは正しい方法です。

給与について言えば、安全運転ができないという能力の面や、会社に損失を与えたという貢献度の面で適正な評価をすれば、他の従業員よりも昇給額が少ないというのは妥当性のある結果です。

また、賞与の支給率に反映され、支給額が少なくなるのも仕方のないことです。

これらは、あくまでも人事考課の仕組みがあって、適正に運用されることが前提となります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

成果を出しても出さなくても、努力してもしなくても、昇給や賞与はみんな同じならば、できる社員ほど退職しやすくなります。

「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則が働くのです。

小さな会社でも、評価制度は必要です。生産性を高める適正な人事考課は、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.28.解決社労士

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法715条)により、被害者に対して賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、会社は従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

会社ができたばかりのときは、共同経営者だけで運営している場合があります。この場合には、利益も損失も分かち合う関係にあるでしょう。

ところが、誰かを雇う場合には、その従業員に利益のすべてを給与として支払ってしまうわけではありません。会社の取り分があります。このように、利益が出れば会社が一部を得るのに、従業員の過失で損失が出たら、その従業員にすべての損失を押し付けるというのは、正義に反するということなのです。

会社としては、安全運転のできる注意深い人を採用できるし、従業員を教育できるし、保険にも入れるのだから、そのようにして損害を回避すれば良いのです。

 

<損害の何割までなら従業員に賠償を求められるか>

その従業員が故意に事故を起こしたような特殊なケースであれば、会社は損害のほとんどを従業員に賠償させることができそうにも思えます。

しかし、長時間労働で疲労が蓄積し注意力が低下していた、スケジュールがタイトで常に急がねばならない状況だった、不注意な人間であることを承知のうえで運転させていた、会社は交通安全についての教育に熱心ではなく安全運転について本人の自覚に任せていたなどの事情があれば、ある意味、事故を起こした従業員も被害者であって、会社が加害者の性質を帯びてしまいます。

こうした具体的な事情を踏まえて、どれほどの賠償を請求できるのか慎重に検討しなければなりません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

訴訟になってしまえば、どの程度の賠償請求が妥当かを考えるのは、弁護士の仕事になるでしょう。社労士が法廷に立つにしても、補助的な役割を担うに過ぎません。

むしろ、交通事故を防止するための、長時間労働の解消、ノルマやスケジュールの管理の適正化、安全運転のできる従業員の採用・教育、あるいは労災保険の手続きついて、信頼できる社労士にご相談いただきたいと思います。

 

2017.08.27.解決社労士

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法715条)により、被害者に対して賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<ルール設定の必要性>

こうした事態に備えて、従業員の会社に対する損害賠償のルールを設定しておかないと、その都度、損害賠償の範囲を検討したり、事故を起こした従業員への説明と交渉をしたりで多大な労力と時間が必要になります。

明確かつ客観的な規定を就業規則に置いておけば、万一の場合に役立つに違いありません。

 

<就業規則の規定>

ところが、厚生労働省のモデル就業規則を見ても、このような規定は見当たりません。交通事故に限らず、従業員の会社に対する損害賠償の規定が無いのです。

実は、予め賠償額や損失の負担割合のルールを決めておくことは、労働基準法違反となり、ルールを定めるだけで最高刑懲役6月の罰則があります。〔労働基準法16条、1191号〕

こうした規定は、労働者を不当に拘束するものとして禁止されているのです。

さらに進んで、「賠償金の支払いが完了するまでは退職を認めない」などということになれば、強制労働の禁止に違反し最高刑懲役10年の罰則があります。〔労働基準法5条、117条〕

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

あれば便利なルールでも、定めること自体が違法ということもあります。

就業規則の作成にあたっては、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.26.解決社労士

<平成28年度調査研究結果のポイント>

新たに、過労死等が多く発生しているとの指摘がある自動車運転従事者、外食産業の企業と労働者や、法人役員、自営業者に対する調査が実施されています。

  Ⅰ 平成27年度調査結果の再集計・分析

 

・「労働時間を正確に把握すること」及び「残業手当を全額支給すること」が、「残業時間の減少」、「年次有給休暇の取得日数の増加」、「メンタルヘルスの状態の良好化」に資することが示唆される。

・『残業時間を0時間に近づける』ことが「年次有給休暇の取得日数の増加」、「メンタルヘルスの状態の良好化」に、また、残業を行う場合に『所属長が残業を承認する』ことが、 「残業時間の減少」、「メンタルヘルスの状態の良好化」に資することが示唆される。

・『最長の週の残業時間が30時間以上であること』、『ハラスメントがある職場』は、「メンタルヘルスの状態の悪化」を招く傾向にあるが、『裁量をもって仕事を進めることができる』、『仕事に誇りややりがいを感じる』または『適当な仕事量である』職場環境を構築することは、「メンタルヘルスの状態の良好化」に資することが示唆される。

 

 Ⅱ 企業・労働者調査

 

○自動車運転従事者(バス、タクシー、トラック)に係る調査結果

・企業調査、労働者調査ともに所定外労働が発生する主な理由はほぼ同じで、「バス」では「仕事の特性上、所定外でないとできない仕事があるため」、「人員が足りないため」が多く、「タクシー」では「人員が足りないため」、「予定外の仕事が突発的に発生するため」が多く、「トラック」では「取引先の都合で手待ち時間が発生するため」、「仕事の特性上、所定外でないとできない仕事があるため」が多かった。

・労働者調査において、業務関連のストレスや悩みの内容をみると、「バス運転者」では「長時間労働の多さ」、「タクシー運転者」では「売上・業績等」、「トラック運転者」では「仕事での精神的な緊張・ストレス」がそれぞれ最も多かった。

 

○外食産業に係る調査結果

・企業調査、労働者調査ともに所定外労働が発生する主な理由はほぼ同じで、「スーパーバイザー等(※)」では「人員が足りないため」、「予定外の仕事が突発的に発生するため」が多く、「店長」では「人員が足りないため」、「欠勤した他の従業員の埋め合わせが必要なため」が多く、「店舗従業員」では「人員が足りないため」、「業務の繁閑の差が激しいため」が多かった。

 ※スーパーバイザー等とは、スーパーバイザー・エリアマネージャー(複数の店舗を担当し、売上やレイアウト、在庫管理等の店舗運営について支援・指導を行う者)のことをいう。

・労働者調査において、業務関連のストレスや悩みの内容をみると、「スーパーバイザー等」と「店長」では、「売上げ・業績等」、「店舗従業員」では、「仕事での精神的な緊張・ストレス」がそれぞれ最も多かった。

 

 Ⅲ 自営業者・法人役員調査結果

 

・労働時間が長くなると、疲労蓄積度(仕事による負担度)が高い者や、ストレスを感じている者の割合が高くなる。

・休日における息抜き・趣味活動・家族の団らん等の時間が足りていると感じている者については疲労蓄積度(仕事による負担度)が低くなる傾向であり、労働時間が長い者であっても、自分のペースで仕事ができる者については、疲労蓄積度(仕事による負担度)が低くなる傾向にある。

 

 

<報告書からわかること>

この報告書に示された調査結果や分析が、正しいかどうかはわかりません。

しかし、平成27年度調査結果の再集計・分析の内容から、国(厚生労働省)の方針が次のように見えてきます。

・労働時間の正確な把握を徹底させる

・残業手当を全額支給させる

・残業時間を減少させる

・ハラスメントをなくさせる

今までも、労働基準監督署が労働基準について、企業に監督(調査)に入れば、労働時間の正確な把握と残業手当の全額支給は、必ず対象となっていたところです。

これからは、残業時間の減少とハラスメント対策についても、対象とされるようになることが予想されます。

自社が具体的にどのような対策を講じるか、先手を打って、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談されてはいかがでしょうか。

 

2017.08.12.解決社労士

<労災保険給付による免責の範囲>

労災保険給付がされた場合、使用者はその事故については、その給付金額の限度で民法上の損害賠償責任を免除されることになります。〔労働基準法842項類推〕

しかし、労災保険給付は慰謝料を対象としていません。また、休業損害を含め失った利益の全額を補償するものではありません。

ですから、労災保険給付がされても、使用者は労働者から慰謝料、休業損害、その他失った利益のうち補償されなかった部分については、別に損害賠償の請求を受ける可能性があります。

なお同じ労災でも、通勤災害については原則として使用者に責任がありませんから、損害賠償責任は問題になりません。

 

<安全配慮義務違反の責任>

労災保険による保険給付は、業務上の事由や通勤による労働者の負傷、疾病、死亡に対して行われます。

このうち、業務上の災害と認められ、労災保険給付が行われた場合には、被災について業務起因性が認められたということですから、使用者が安全配慮義務違反の責任を問われて損害賠償義務を負担する可能性があります。

実際に安全配慮義務違反の責任を負うのは、被災結果を具体的に予見できた可能性があったことと、被災結果を回避できた可能性があったことが必要となります。

そもそも被災結果を予見できる可能性が無かった場合や、予見できたとしても結果の発生を回避できなかったという場合には、使用者の安全配慮義務違反が問われることはありません。

また、結果を回避しなかったことが違法とは言えなかったような場合にも、安全配慮義務違反は否定されます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

労災が発生した時に、使用者がその事実を隠して、労災保険の手続きを全くしないのは、労災隠しであり犯罪です。

中には、手続きが複雑で良くわからないから放置しているというケースもあります。

こんなときは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.09.解決社労士

<解決の困難さ>

精神疾患を発症した労働者から、その原因が長時間労働やパワハラが原因であるとして、会社に損害賠償を求めてくることがあります。

そうではないことを会社側が証明するのは困難ですし、きっぱりと否定したのに対して訴訟を提起されても時間、労力、人件費、経費、精神力の無駄が発生します。

そもそも精神疾患を発症している労働者を相手に、あれこれ議論を重ねても有効な解決策は見つかりにくいでしょう。

 

<労災保険の利用>

訴訟や労働審判にならないうちに、その労働者と協力する形で、労働基準監督署に労災の申請をすることをお勧めします。

たしかに、責任を追及してきた労働者と協力して、しかも敵視しがちな労働基準監督署を利用してというのは、抵抗を感じるかもしれません。

しかし、当事者同士で議論しても解決は困難であり、労働基準監督署(労働局)の判断を仰いだ結果、労災として認定されなければ、責任を追及してきた労働者も、会社側に責任は無いものと納得するしかないでしょう。

反対に、労災として認定されれば、労働者に一定の給付がなされますから、会社はその価額の限度で民法上の損害賠償の責任を免れることになります。〔労働基準法84条2項類推〕

つまり、慰謝料など労災保険でまかなわれない損害についてのみ、賠償すれば良いことになります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

とはいえ、会社の担当者が精神疾患の労働者と協力しながら、労働基準監督署や医師とも打ち合わせを行いつつ、労災申請手続を進めるのは困難かもしれません。

こんなときは、信頼できる社労士に依頼した方が、スムーズに解決できることでしょう。

 

2017.07.03.解決社労士

<労災認定の条件>

パワハラ、セクハラ、マタハラなどのハラスメントが精神疾患の原因となった場合には、業務災害として認定されるか、労災保険の給付対象となるかが問題となります。

これを判断するのは、労働基準監督署長や労働局長です。

認定の条件としては、業務遂行性と業務起因性があります。

業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づいた事業主の支配下にあったことです。

業務起因性とは、業務と病気との間に因果関係が存在することです。

 

<精神疾患の労災認定>

精神疾患の労災認定の判断は、厚生労働省が平成2312月に「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を定め、これが運用されています。

その主なポイントは次のとおりです。

・認定基準の対象となる精神障害を発病していること

・認定基準の対象となる精神障害の発病前約半年の間に業務による強い心理的負荷が認められること

・業務以外の心理的負荷や個人的な要因により発病したとは認められないこと

 

<業務による強い心理的負荷>

業務による強い心理的負荷が認められるには、業務による具体的な出来事があって、その出来事とその後の状況が、労働者に強い心理的負荷を与えたといえることが必要です。

 

2017.06.26.解決社労士

<過労死ライン>

国の過労死認定基準として「法定労働時間を上回る残業時間が1か月で100時間を超えた場合、または、直近2~6か月の平均が80時間を超えた場合」という基準が有名です。具体的には、次のように用いられています。

・「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日付基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達)

・「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日付基発1226第1号厚生労働省労働基準局長通達)

・ハローワークで雇用保険給付手続きをした場合に自己都合退職ではなく会社都合退職として特定受給資格者となる基準

こうしたことから、大手企業を中心に、従業員の労働時間がこの過労死ラインを超えないようにする配慮が行われています。

 

<例外の発生>

最近、山口県内の弁当販売会社で配送業務を行っていた当時50歳の女性社員について、山口労働基準監督署が労災(過労死)と認定したことが報道されています。

この女性の勤務時間は、過労死ラインを超えていなかったものの、死亡前の半年で休日が4日しか無かったことが重視されているようです。

これを受けて、今後、政府から月間労働時間だけではなく、休日労働を含めた基準が提示されることが想定されます。

 

<会社の取るべき対応>

この基準さえ守れば、会社は従業員の過労死について責任を負わずに済むという絶対の基準はありません。

ましてや、基準を守っているかのような数字を作ることによって、会社の責任が消えるハズはありません。

特定の従業員に負担が集中しているのなら、たとえ本人が望んでいる場合であっても、万一の事態を想定して負担を分散しなければなりません。

また、全社的に従業員の負担が大きいのであれば、事業の存続について行政に協力を求めるべきです。

そして、それも無理なら思い切って事業の継続を見直すことも必要です。

 

2017.05.07.解決社労士

<一元適用事業>

労働保険(雇用保険と労災保険)の保険関係の適用や、保険料の申告・納付などの事務は、原則として、一つにまとめて処理することができます。

この原則が適用される事業を、労働保険の一元適用事業といいます。

 

<二元適用事業>

これに対して、建設業などでは、労働保険を一つにまとめて処理することがむずかしいので、保険関係の適用や保険料の申告・納付などの事務を、それぞれ別に行います。

建設業では、次の3つに分けて行います。

1.工事現場の労災保険は、工事現場の労働者の賃金総額をもとに保険料を計算します。

2.本店、支店、事務所などの労災保険は、工事現場の労働者を除く賃金総額をもとに保険料を計算します。

3.雇用保険は、会社全体の雇用保険の対象者の賃金総額をもとに保険料を計算します。

特に建設業では、元請事業者がまとめて労災保険料を負担することになっています。

また、工事現場に複数の企業が関与していて、賃金総額を正しく把握するのが難しい場合には、元請としてその年度中に終了した工事の請負金額に労務費率を掛けて賃金総額を求めるという例外が認められています。

 

<二元適用事業に該当するもの>

•都道府県、市町村およびこれらに準ずるものの行う事業

•港湾労働法の適用される港湾における港湾運送の事業

•農林・畜産・養蚕・水産の事業

•建設の事業

 

2017.05.05.解決社労士

<義務の対象となる事業場>

産業医については、労働基準法ではなく労働安全衛生法13条に義務規定が置かれています。

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任し労働者の健康管理などを行わせることになります。

事業場というのは、事務所、営業所、店舗などを言いますから、会社全体の人数ではありません。

 

<産業医の資格>

産業医は、医師のうち次のいずれかの条件を満たす者から選任します。

(1)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者

(2)産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者

(3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者

(4)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者

 

<産業医の職務>

産業医は、次のような職務を行うこととされています。

(1)健康診断、面接指導等の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置、作業環境の維持管理、作業の管理等労働者の健康管理に関すること。

(2)健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。

(3)労働衛生教育に関すること。

(4)労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理などについて必要な勧告をすることができます。

また産業医は、原則として毎月1回作業場などを巡視し、作業方法や衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じることになっています。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

産業医選任義務の有無の確認や労働基準監督署への届出、衛生委員会や事業場巡視での活用については、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.04.28.解決社労士

<業務災害とは>

労働者の業務上の負傷、疾病、障害、死亡を業務災害といいます。

「業務災害」として認定されるためには、業務に内在する危険有害性が現実化したと認められること(業務起因性)が必要で、その前提として、労働者が使用者の支配下にある状態(業務遂行性)にあると認められなければなりません。

 

<これも業務遂行性が認められる>

厳密には業務といえない行為であっても、労働者が使用者の支配下にある状態だといえるので、業務遂行性が認められる行為として次のものがあります。

・事業主の私用を手伝うなどの作業中

・生理的行為(用便、飲水等)による作業中断中

・作業に関連または附随する行為、作業の準備、後始末、待機中

・火災等緊急事態に際しての緊急行為中

・事業施設内での休憩中でその事業施設に欠陥があった場合

・出張中(住居と出張先の往復を含む)

 

<業務災害の特殊ケース>

次のような災害も、過去に業務災害として認められています。

・上司の指示により、無届欠勤者の事情を調査するため、通常より約30分早く自宅を出発し、自転車で欠勤者宅に向かう途中で電車にはねられ死亡した〔昭和24年12月15日基収第3001号通達〕

・勤務時間中に、作業に必要な私物の眼鏡を自宅に忘れた労働者が、上司の了解を得て、家族が届けてくれた眼鏡を工場の門まで自転車で受け取りに行く途中で運転を誤り負傷した〔昭和32年7月20日基収第3615号通達〕

・小型パイプが事業場の資材置場に乱雑に荷下しされていたため、それを整理していた際、材料が小型のため付近の草むらに投げ込まれていないかと草むらに探しに入ったところ、その草むらの中にいた毒蛇に足をかまれて負傷した〔昭和27年9月6日基災収第3026号通達〕

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

業務災害にあたらないものを、勘違いして労災保険の手続きをしても、病院や労働基準監督署でストップがかかります。それでも、健康保険の手続きに切り替えたり、被災者やご家族に説明して、お叱りを受けたりという負担は発生します。

恐いのは、業務災害として労災保険の補償が受けられるのに、業務災害ではないと勘違いして手続きを進めないことです。この場合には、時効により権利が失われる前でも、遅れたことにより手続きを進めるのが困難なこともあります。

迷ったら、所轄労働基準監督署の労災課に確認すれば良いのですが、少し聞きづらいと感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.27.解決社労士

<通勤災害とは>

労働者の通勤による負傷、疾病、障害、死亡をいいます。ここで「通勤」とは、労働者が就業に関し合理的な経路および方法により移動、往復することをいい、業務の性質を有するものを除きます。

 

<これも「通勤」の一種>

転勤に伴い、やむを得ない事情により配偶者、子、要介護状態にある父母・親族等と別居することとなった場合に、帰省先への移動に反復性や継続性が認められれば、単身赴任先と帰省先との間の移動が通勤と認められうるとされます。〔平成18年3月31日基発0331042号通達〕

 

<「みちくさ」の例外>

通勤経路の途中で、通勤とは関係ない目的で、合理的な経路をそれた場合や、通勤とは関係のない行為を行った場合は、その時点で通勤とは認められなくなるのが原則です。

しかし、日常生活上必要な行為で厚生労働省令に定められているものである場合は、「みちくさ」をしても元の経路に戻った後からは、通勤災害として認められうるとされます。

「日常生活上必要な行為で厚生労働省令に定められているもの」とは、次の行為です。

・日用品の購入その他これに準ずる行為

・職業訓練、学校教育法1条に規定する学校で行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

・選挙権の行使その他これに準ずる行為

・病院または診療所で診察や治療を受けることその他これに準ずる行為

・要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母、要介護状態にあり同居し扶養している孫、祖父母、兄弟姉妹の介護(継続的にまたは反復して行われるものに限る)

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

通勤災害にあたらないものを、勘違いして労災保険の手続きをしても、病院や労働基準監督署でストップがかかります。それでも、健康保険の手続きに切り替えたり、被災者やご家族に説明して、お叱りを受けたりという負担は発生します。

恐いのは、通勤災害として労災保険の補償が受けられるのに、通勤災害ではないと勘違いして手続きを進めないことです。この場合には、時効により権利が失われる前でも、遅れたことにより手続きを進めるのが困難なこともあります。

迷ったら、所轄労働基準監督署の労災課に確認すれば良いのですが、少し聞きづらいと感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.26.解決社労士

<建設会社と社長を書類送検>

青梅労働基準監督署は、建設会社とその代表取締役社長を、労働安全衛生法違反(労災かくし)の容疑で、平成261020日、東京地方検察庁立川支部に書類送検しました。

この事件では、会社と社長の両方が書類送検されています。こうした場合には、会社も社長個人も信用を失ってしまいます。

 

<逮捕・送検の理由>

労災事故は、平成25513日、JR五日市線熊川駅と東秋留駅間の多摩川に架かる橋梁下右岸河川敷(東京都あきる野市平沢)での立木伐採工事で起こりました。このとき、建設会社の労働者Bが伐採した立木の幹が落下して、付近で作業を行っていた同社所属の労働者Aの頭部から背部に激突したのです。その結果Aは、3か月の治療を要する怪我を負い、負傷の翌日から休業しました。

本来であれば、青梅労働基準監督署長に遅滞なく「労働者死傷病報告書」を提出しなければなりませんでした。しかしこの建設会社は、災害発生からおよそ5か月が経過した平成25108日になってから報告書を提出しました。

これが逮捕・送検の理由です。

労災事故のうち、被災者が3日を超える休業をした場合には、「労働者私傷病報告書」の提出が義務付けられています。しかし、頻繁に提出が必要となる書類ではありませんから、提出義務すら認識されていないことがあります。それでも、遅滞なく提出しなければ、意図的に提出しないものと見なされ、労災かくしと評価されうるのです。

 

<逮捕・送検の背景>

行政の立場からすると「労災かくし」が行われることは、災害原因究明、同種災害の防止対策の確立など、労働者の安全を確保する機会を失わせるほか、被災労働者が適正に労災補償を受ける権利を侵害することに繋がるということになります。

そこで、労働基準行政では「労災かくし」の排除を推進し、あらゆる機会を通じて事業者に「労働者死傷病報告」の提出を周知・啓発しています。

もちろん、こうした行政の動きは、一般にはわかりにくいものですが、行政が「労働者死傷病報告」の提出を周知・啓発しているにもかかわらず、きちんと提出しなければ、それは労災かくしであると評価されやすいのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社の人事担当者は、労働法を中心とする法改正には敏感だと思います。しかし、労働局や労働基準監督署がどのような手続きについて周知・啓発を強化しているかについてまでは、気が回らないかもしれません。

それでも、こうしたことに目を光らせていないと、今まで大丈夫だったことが逮捕・送検の対象となっていることに気付きません。

会社を守るためにも、労災が発生したときには、必要な手続きについて、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.03.03.解決社労士

<労災保険の適用>

次のような通勤災害についても、通常の労災と同じ基準で労災保険が適用されます。

・会社への届出と違う経路での通勤途中のケガ

・会社への届出と違う交通手段による通勤途中でのケガ

・バイク通勤禁止の会社でバイクによる通勤中転倒してケガ

不合理な寄り道や遠回りは、通常の労災と同じく労災保険の対象外となります。

 

<なぜかというと>

労災保険は、政府の制度ですから、会社のルールによって労災保険の適用範囲を制限したり広げたりはできません。

これを許すと、何のために国が統一的に労災保険の仕組みを作っているのか、わからなくなってしまいます。

それに、保険は保険料と保険金の給付のバランスが細かく計算され設計されています。それぞれの会社が、保険金の給付について独自のルールを作り、それが有効だとすると、保険料と保険金の給付のバランスが崩れてしまい、保険制度そのものが破たんする可能性すらあります。

 

<労災保険の勘違い>

アルバイトやパートに労災保険が適用されないという勘違いもあります。

また、労災保険を使うと保険料が高くなるという勘違いもあります。たしかに、従業員が100人を超える会社では、メリット制という保険料の割増・割引の制度がありますから、一定の限度を超えて保険給付を受けると、保険料が割増になることはあります。しかし、従業員が100人未満の会社で、保険料の割増はありません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社が労災保険の手続きに協力的でない場合には、被災者は所轄の労働基準監督署の労災課に相談できます。もちろん、信頼できる社労士にご相談いただければ、手続きの代行もいたします。

一方で会社としては、通勤手当をごまかしている従業員からは、払い過ぎの金額を徴収したいでしょう。しかし、給与から勝手に控除することはできません。

また、禁止しているバイク通勤を行った従業員には、適正な懲戒処分が必要です。「けしからんからクビ」というのでは不当解雇になります。

こうしたことに対応できる就業規則の改善と運用も、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.02.16.解決社労士

<事実の認定>

ある人が亡くなったとき、自殺、他殺、事故死、病死のどれなのか、ご本人に確認できれば簡単に判断できるのですが、ご本人が亡くなってしまった以上、客観的な事実の認定の積み重ねで判断するしかありません。

例は良くないですが、人を殺すつもりで突き飛ばしたら殺人、殺す気が無かったら傷害致死です。このとき、犯人が「殺すつもりでした」と言えば殺人罪、「殺す気はありませんでした」と言えば傷害致死だとしたら、ほとんどの犯人は後者を選びます。実際、殺人を犯した人の多くは「殺すつもりは無かった」と言います。

しかし、検察は本人の発言よりも、客観的な事実を認定して判断します。その場の客観的な状況、目撃者の証言、犯人と被害者との関係、犯人の性格を示す事実など、多くの事実を把握して判断材料とするのです。

 

<過労によるうつ病>

うつ病の原因も、仕事なのかプライベートなのか、これはご本人に聞いても不明なことすらあります。仕事の状況とプライベートの状況について、客観的な事実を確認して、うつ病の原因を推定するわけです。

 

<うつ病による自殺>

うつ病にかかったら必ず自殺するということではなく、自殺の原因がうつ病に限られるわけでもありません。

やはり、自殺するほど重いうつ病だったのか、うつ病の他に自殺の原因が無かったか、客観的事実を確認した上で認定するのです。

 

<会社が注意すべきこと>

従業員が自殺するようなうつ病の原因を作らないことです。

原因となる客観的な事実を発生させないためには、次のような対策が必要です。

・孤独にしない

・人間関係を悪くしない

・パワハラ、セクハラ、マタハラなど嫌がらせの事実を発生させない

・仕事の指示は具体的で明確に出す

・困ったときの相談窓口を設け機能させる

・抱えるストレスをチェックし、分析し、職場環境を改善する

・長時間労働を許さない

・業務終了から次の業務開始までの時間を十分に空ける

・休日と休暇を取らせる

そして、個人の体質、性格、遺伝的要素を言い訳にしないことです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「人手不足だから」は言い訳になりませんし、パワハラの定義すら無い会社には必ずパワハラがあり被害者がいます。

もし、具体的に何をどうしたら良いのか不明な点があれば、迷わず信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.02.10.解決社労士

<年度更新とは?>

労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法15条・17条〕

したがって会社は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きを同時に行うことになります。これが「年度更新」の手続きです。

 

<間違いの訂正は?>

年度内の訂正であれば、所轄の労働基準監督署、場合によっては所轄の労働局に相談して修正申告ができます。

納めた保険料が不足していれば追納になりますし、多過ぎたのであれば還付を受けることになります。

 

<間違えた場所により>

前年度の確定保険料に間違いがあったのであれば、速やかに修正しましょう。放置すると金額が確定してしまいます。

しかし、今年度の概算保険料のみに間違いがあったのであれば差額を確認し、それほど大きな金額でなければ、次回の年度更新で自動的に精算されますので、必ずしも修正申告は必要ないと思います。

ただし、年度更新を指示した事業主や上司への報告は忘れずに。

 

2017.02.08.解決社労士

<労災保険法1条>

労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 

<必要な保険給付>

治療費が無料になります。また、仕事を休んでいる間の所得が補償され、障害が残った場合には一時金や年金が支給されます。被災者が死亡した場合には残された遺族に対して補償が行われます。

 

<社会復帰の促進など>

被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために、義肢、義眼、補聴器など補装具の購入・修理費が支給されます。

被災労働者とその遺族の援護を図るために、お子さんの学資が援助され、介護施設が運営され、労災ケアサポーターによる訪問支援が行われます。

この他、メンタルヘルス対策、アスベスト対策、労災発生防止対策、賃金支払い確保のための事業が行われています。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

労災保険を会社に適用させる手続きが完了していなかったり、労災が発生しても給付を受けるための手続きが行われていなかったりというのは、もちろん違法なのですが、それ以前に大変もったいないことです。

迷ったら信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。 

 

2017.01.27.解決社労士

<建前上の請求人>

労災保険法によると、被災した労働者本人が請求人です。もちろん、労働者が死亡した場合には本人からの請求は無理ですから、その遺族が請求人となります。

この建前から、労災の請求をするかどうかは、被災した労働者本人や遺族が決めることになります。

しかし、労災保険の請求手続きを、建前通りに労働者本人や遺族が行うことには無理があると感じられます。

 

<事業主の手助け>

一方で「労働者本人がケガのため、自ら手続きができないときは、事業主は労災保険の請求手続きを手助けしなければならない」「労働者から労災保険の請求手続きに必要な証明を求められたときは、事業主は速やかに必要な証明をしなければならない」という規定があります。〔労災保険法施行規則23条〕

このように会社について、労災保険の請求手続きに関する証明義務と助力義務が規定されています。

 

<実際には>

実務的には、会社が労災保険の請求手続きを主導することになります。

多くの会社は、被災労働者に労災保険の手続きについて説明し、請求書の記入をその大半の部分で代行し、労働基準監督署に請求書を提出するなど、ほとんどの手続きを行っています。

実際に、手続きを本人任せにしていると、所轄の労働基準監督署の労災課から「きちんと手続きを主導しなさい」という指導が入ることになります。

 

2017.01.16.解決社労士

<転倒事故の増加>

積雪・凍結を原因とする転倒災害、交通労働災害、建物屋根等の除雪作業中の墜落・転落災害等の労働災害が多発しています。

東京では、平成262月の記録的な大雪によって、積雪・凍結を原因とする転倒災害が多く発生しました。

また、平成2811月、関東全域で雪が観測されました。11月に雪が観測されたのは54年ぶりです。

一般に都心部は「雪に弱い」と言われています。早めの積雪・凍結対策を行うことにより、転倒災害等防止への取組みが必要です。

 

<STOP!転倒災害プロジェクト実施要綱(抜粋)>(厚生労働省)

(1)重点取組期間に実施する事項

① 2月の実施事項

ア 安全管理者や安全衛生推進者が参画する場(安全委員会等)における転倒災害防止に係る現状と対策の調査審議

イ チェックリスト※を活用した安全衛生委員会等による職場巡視、職場環境の改善や労働者の意識啓発

② 6月の実施事項

職場巡視等により、転倒災害防止対策の実施(定着)状況の確認

(2)一般的な転倒災害防止対策

① 作業通路における段差や凹凸、突起物、継ぎ目等の解消

② 4s(整理、整頓、清掃、清潔)の徹底による床面の水濡れ、油汚れ等のほか台車等の障害物の除去

③ 照度の確保、手すりや滑り止めの設置

④ 危険箇所の表示等の危険の「見える化」の推進

⑤ 転倒災害防止のための安全な歩き方、作業方法の推進

⑥ 作業内容に適した防滑靴やプロテクター等の着用の推進

⑦ 定期的な職場点検、巡視の実施

⑧ 転倒予防体操の励行

(3)冬期における転倒災害防止対策

① 気象情報の活用によるリスク低減の実施

ア 大雪、低温に関する気象情報を迅速に把握する体制の構築

イ 警報・注意報発令時等の対応マニュアルの作成、関係者への周知

ウ 気象状況に応じた出張、作業計画等の見直し

② 通路、作業床の凍結等による危険防止の徹底

ア 通路、作業床の凍結等における除雪、融雪剤の散布による安全通路の確保

イ 事務所への入室時における靴裏の雪、水分の除去、凍結のおそれのある屋内通路、作業場への温風機の設置等による凍結防止策の実施

ウ 屋外通路や駐車場における転倒災害リスクに応じた「危険マップ」の作成、関係者への周知

エ 凍結した路面、除雪期間通過後の路面等における荷物の運搬方法、作業方法の見直し

 

2017.01.09.解決社労士

<早く給付を受けるために>

労災が発生して、労災保険の給付を受けるには、労働基準監督署に所定の書類を提出します。

多いのは、治療費を無料にするための書類と賃金の一部を補償してもらうための書類ですが、これらの書き方にはコツがあります。

表現を工夫しないと、労基署から問い合わせの電話が入ったり、訂正を求められたり、書き直しが必要になったります。

被災者は一日も早く給付(お金)をもらいたいのですから、スムーズな手続きが望ましいのです。

 

<ポイントとなる記入欄>

これらの書類で一番のポイントは「災害の原因及び発生状況」の欄です。

この欄には、「(あ)どのような場所で (い)どのような作業をしているときに(う)どのような物又は環境に(え)どのような不安全な又は有害な状態があって(お)どのような災害が発生したかを詳細に記入すること」という注意書きがあります。

しかし、必ずしもこれらの項目を分けてすべて記入しなければならないわけではありません。

労災保険の給付対象であることが説明できていれば良いのです。

そして、労災と認められるためには、業務遂行性と業務起因性を示す必要があります。

 

<業務遂行性>

業務遂行性というのは、労働者が使用者の支配・管理下にある状況のことをいいます。

たとえば、「昼食のお弁当を買いに外出していて事故にあった」と書いてあれば、労基署の担当者は「労災ではない」と判断しやすいでしょう。

しかし、「昼食のお弁当を買いに行く当番だったので休憩時間前に外出していて事故にあった」と書いてあれば、業務遂行性が認められ労災保険が適用されうるのです。

 

<業務起因性>

また、業務起因性というのは、業務にひそんでいる危険が現実化したと認められることをいいます。

たとえば、「空の段ボール箱を持って立ち上がったら腰を傷めた」と書いてあれば、労基署の担当者は「労災ではない」と判断する可能性が高いと言えます。

しかし、「空の段ボール箱(縦80cm×横100cm×高さ120cm)を持って立ち上がる途中で、お客様から声を掛けられ振り返ったときに、腰をひねって傷めた」と書いてあれば、客観的に見て腰を傷めうる作業であること、お客様に対応したのだから業務であることが明らかになります。

 

<心がけとして>

提出された書類をチェックするのは、労基署の担当者です。社内の人なら読んでわかる内容であっても、労基署の担当者が読んで業務遂行性と業務起因性が確認できなければ、手続きが滞ってしまうのです。

たとえば、パチンコ店の店員がケガをした状況について「災害の原因及び発生状況」の欄に記入したとします。それが、社内の人やパチンコ店の常連客にわかる内容でも、パチンコ店に入ったことのない人が読んだらわからない内容では不十分なのです。

ですから、労働基準監督署に提出する書類は、現場を見たことがない人でもわかるように、表現を工夫して作成しましょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

良くないことですが、書類が下手で受けられるはすの給付が受けられないというのは、労災に限らず、年金でも、健康保険でも、雇用保険でも、実際に起きていることです。

不安な点があれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.01.05.解決社労士

<必要な手続き>

労働者が労働災害により負傷した場合などには、休業補償給付などの労災保険給付の請求を所轄の労働基準監督署長あてに行います。

具体的には、厚生労働省の「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」のページで、手続きに適合した書式をダウンロードし、会社、被災者、診断した医師の記入欄を記入し、労働基準監督署に提出します。

なお、休業4日未満の労働災害については、労災保険によってではなく、使用者が労働者に対し、休業補償を行わなければならないことになっています。 平均賃金の60%以上の補償が必要です。就業規則に明示しましょう。

 

<療養補償給付>

治療費の補償が行われます。

治療した医療機関が労災保険指定医療機関の場合には、「療養補償給付たる療養の給付請求書」をその医療機関に提出します。請求書は医療機関を経由して労働基準監督署長に提出されます。

このとき、本来は療養費を支払う必要が無いのですが、医療機関の立場からすると必ずしも労災の手続きが行われるとは限りませんので、「保証金」の名目で被災者から一定の現金を受け取り、「預かり証」を発行するのが通例です。

治療した医療機関が労災保険指定医療機関でない場合には、一旦治療費を立て替えて支払います。その後「療養補償給付たる療養の費用請求書」を、直接、労働基準監督署長に提出すると、その費用が口座振込で支払われます。

 

<休業補償給付>

労働災害により休業した場合には、第4日目から休業補償給付が支給されます。「休業補償給付支給請求書」を労働基準監督署長に提出します。

 

<その他の保険給付>

他にも障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付などの保険給付があります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

被災者は1日でも早く補償を受け現金を手にしたいところです。ところが、手続きに慣れていないと、受けられる補償の内容や必要な書類の種類で迷ってしまうことになります。

こんな時は、迷わず信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.12.29.

<労災保険は強制保険>

労災保険は政府が管掌する強制保険です。

労働保険(労災保険と雇用保険)では、法律上当然に保険関係が成立する事業を適用事業といい、農林水産業の一部を除き、原則として1人でも労働者を使用する事業は、すべて適用事業になります。

そして、適用事業については、その事業が開始された日または適用事業に該当するようになったときに、事業主の意思にかかわりなく法律上当然に保険関係が成立することになります。

これは市区役所に出生届を出さなくても、赤ちゃんが生まれなかったことにはならないのと同じです。

 

<届出義務>

適用事業については、その事業開始の日または適用事業に該当することとなった日に自動的に保険関係が成立しますので、適用事業の事業主は、保険関係成立の日から10日以内に、「保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署または公共職業安定所へ提出しなければなりません。

この手続きは、社労士(社会保険労務士)が代行できます。

この届出を行わなくても、保険関係は成立しますので、労災事故が発生すれば被災者に労災保険が適用されます。

 

<届出を怠った場合>

成立手続を行うよう指導を受けたにもかかわらず、自主的に成立手続を行わない事業主に対しては、最終的な手段として、行政庁の職権による成立手続と労働保険料の認定決定が行われます。

この場合には、さかのぼって労働保険料を徴収されるほか、追徴金も徴収されることとなります。

 

<無届のうちに労災が発生した場合>

事業主が故意または重大な過失により「保険関係成立届」を提出していない期間中に労働災害が生じ、労災保険給付を行った場合は、事業主からさかのぼって労働保険料を徴収(併せて追徴金を徴収)するほかに、労災保険給付に要した費用の全部または一部を徴収することになります。

 

2016.12.14.

<業務上腰痛の認定基準>

腰痛は労災保険の対象外だというウワサがあります。

しかし、厚生労働省の定めた認定基準の条件を満たす場合には、労災認定できることになっています。

この認定基準では、災害性の原因による腰痛と、それ以外の腰痛とで、それぞれ別の条件が定められています。

 

<災害性の原因による腰痛>

次の2つの条件を両方とも満たす腰痛が対象です。

・腰のケガまたはケガの原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたことが明らかであること。

・腰に作用した力が腰痛を起こさせ、または元々あった腰痛を著しく悪化させたと認められること。

ぎっくり腰は、日常的な動作の中でも生じるので、たまたま仕事中に起こったとしても、原則として労災補償の対象とはなりません。

 

<災害性の原因によらない腰痛>

突発的なことが原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など、腰に大きな負担のかかる仕事をする人に起こった腰痛で、作業状態や作業期間からみて、その仕事が原因で起こったと認められるものが対象です。

日々の業務によって、腰への負担が徐々に作用して、ついには腰痛を発症したという場合で、筋肉疲労の場合と骨の変化の場合とがあります。

 

<労災の認定について>

労災の認定をするのは所轄の労働基準監督署(労働局)です。会社や労働者自身が判断するのではありません。

もし判断に迷ったり、納得がいかないということがあれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.12.11.

<労災保険の適用対象>

労災保険は年齢制限なく適用されます。

原則として、中学卒業年齢になれば雇われることができますので、15歳になって最初の331日になれば、労災保険の対象となります。

高校生のアルバイトも対象者です。

 

<ではどうして対象外と言われたのか>

労災保険について聞かれた人が、良く知らずに答えたのかもしれません。勤務先で確認するときには、労災保険に限らず、その仕事を担当している人に聞きましょう。

しかし、ウソをついてしまった可能性もあります。手続きを求められても良くわからないとか、どこかの事務所に手続きを依頼すると高い報酬を請求されるとか、正直に答えるのが不都合に思えたかもしれません。

 

<正しいことを確認するには>

労災保険について正確なことを確認するには、勤務先を管轄する労働基準監督署にたずねましょう。たとえ未成年者であっても、親切に回答してくれます。また、希望すれば、会社に話をしてくれます。

 

労災保険の手続きを依頼するとなると、お近くの社労士(社会保険労務士)ということになります。報酬は社労士事務所によってバラバラです。顧問契約を交わしていれば、簡単な手続きは顧問料の範囲内で行う所が多いようです。

柳田事務所の場合には、人事や総務の担当者の方に手続きの仕方を教えるのがメインです。社員が成長すれば会社も成長します。社長がご自分で覚えている会社もあります。

もちろん、担当者がいなかったり、急ぎだったりすれば、手続きを代行します。

 

2016.11.09.

<支給の内容>

業務や通勤が原因となったケガや病気が「治ったとき」、身体に一定以上の障害が残った場合には、業務災害なら障害補償給付、通勤災害なら障害給付が支給されます。

そして、障害の程度は障害等級に区分され、第1級から第7級は、障害(補償)年金、障害特別支給金、障害特別年金が、第8級から第14級は、障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金が支給されます。

 

<治ったとき>

ケガや病気が「治ったとき」というのは、一般には健康な状態に回復したことをいいます。

しかし、労災保険ではこうした場合だけでなく、ケガや病気の症状が安定して、医学上一般に認められた医療を行っても、その効果が期待できなくなった状態になった場合にも「治ったとき」といいます。

これは「症状固定」「治癒(ちゆ)」とも呼ばれます。

ここで、「医学上一般に認められた医療」とは、労災保険の療養の範囲として認められたものをいいます。したがって、実験段階または研究的過程にあるような治療方法は、ここでいう医療にはあたりません。

 

<アフターケア>

脊髄(せきずい)損傷、頭頚部外傷症候群、慢性肝炎などのケガや病気に対しては、症状固定後でも後遺症が変化したり、後遺症に伴う病気を発症する恐れがあるので、予防や保健上の措置として、診察、保健指導、薬剤の支給などを行う「アフターケア」が実施されています。

このアフターケアは、都道府県労働局長が交付する「健康管理手帳」を労災病院、医療リハビリテーションセンター、総合せき損センター、労災指定医療機関に提示することにより、無料で受けることができます。

 

2016.11.07.

<賞与と特別支給金>

労災保険には、給付の本体とは別に特別支給金があります。

賞与(3か月を超える期間ごとに支払われる賃金)は、本体給付には反映されませんが、特別支給金の一部に反映されます。

賞与が反映されるのは、特別支給金のうち障害特別年金・障害特別一時金・遺族特別年金・遺族特別一時金・傷病特別年金です。

ただし、特別加入者には支給されません。

 

<賞与として扱われる範囲>

3か月を超える期間ごとに支払われる賃金が反映されます。

ボーナスのほか、半年ごとに支払われる勤勉手当や販売奨励金などがあてはまります。

ただし、通勤手当が3か月を超える期間ごとに一括で支給されても、特別支給金ではなく本体給付に反映されます。

なお、結婚手当、出産手当など臨時に支払われた賃金は、本体給付、特別支給金のどちらにも反映されません。

 

2016.10.25.

<過労自殺と労災保険の適用>

自殺は故意に自分の命を絶つ行為ですから、一般には労働と死の結果との間に相当因果関係が無く、原則として業務起因性が認められないので、労災保険が適用されません。つまり、労働によって死亡したとはいえないとされるのです。

ここで相当因果関係というのは、労働と災害との間に「その労働が無ければその災害は発生しなかった」というだけでなく、客観的科学的に見て「災害の有力な原因が労働だと考えるのが自然である」「その労働からその災害が発生するのは、偶然でもなく、異常なことでもない」という関係があることをいいます。

しかし、過重な労働によりうつ病になり、うつ病によって自殺したといえる場合には、労災保険が適用されます。この場合には、労働とうつ病との間に相当因果関係があり、うつ病と自殺との間にも相当因果関係が認められれば、労働と自殺との間にも相当因果関係が認められて、労災保険の給付対象となるということです。

 

<安全配慮義務と債務不履行責任>

労災保険とは別に、会社に安全配慮義務違反などが認められれば、従業員の遺族から会社に対し債務不履行を理由とする損害賠償請求がなされることもありえます。

安全配慮義務というのは、労働契約を交わせば当然に会社が負う義務です。これに違反するのは、会社の債務不履行になるのです。〔民法415条〕

労働契約は、会社の「賃金を支払いますから働いてください」という意思表示と、労働者の「働きますから賃金を支払ってください」という意思表示が合致して成立します。契約書や労働条件通知書など無くても、労働契約は口頭でも成立します。

そして労働者は、きちんと働けるようコンディションを整えて定時までに出勤しなければなりません。たとえ出勤しても、すぐにトイレに入って眠っていたのでは、労務を提供していることにはならず、労働契約について債務不履行となります。

一方、会社は労働者がきちんと働ける環境を整えなければなりません。危険な労働環境で働かせようとするのは、労働契約について債務不履行となります。ここで「危険な労働環境」というのは、身の危険だけではありません。「何やってんだコノ!」「ちゃんとしろグズ!」などと、部下の指導のフリをしてストレス発散をしている部門長のもとで働くのは、精神に差し迫った危険があります。そして長時間労働の常態化は、身体と精神の両方にとって危険です。

結局、会社は労働者が精神を病んでしまう環境で働いているのを放置しておいて、実際にうつ病などにかかれば、債務不履行責任を負うことがあるのです。そしてそのうつ病が原因で自殺すれば、自殺についても責任を問われるということです。

 

パワハラや長時間労働で迷うところがあれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.24.

<業務災害についての法令の規定>

労働者が業務上負傷しまたは疾病にかかった場合、その傷病による療養のため労働できずに賃金を受けない日(休業日)の第4日目から休業補償給付が支給されます。〔労災保険法14条〕

労災保険法の対象とはならない休業日の第1日目から第3日目(待期期間)までは、事業主が平均賃金の60%以上を補償することになっています。〔労働基準法76条〕

そして、労働者の業務災害による負傷などについては、労働基準法により、事業主に補償義務が課せられています。しかし、労災保険より給付された場合に、事業主は補償義務を免除されることになっています。〔労働基準法84条〕

事業主は、このために労災保険に入らされているわけです。

 

<結論として>

労働基準法76条の休業補償についても、休業第4日目以降について労災給付が行われた場合は、事業主はその補償義務を免除されることになります。

一方、休業補償給付が行われない第1日目から第3日目までについては、事業主が労働基準法に基づいて、その補償を行うことになります。

つまり、被災者は労災保険からは休業の最初の3日間(待期期間)の補償を受けられないのですが、その3日間分は事業主から補償を受けることになります。

 

<通勤災害についての法令の規定>

なお、通勤災害に対する保険給付は、労災保険法で独自に定められた制度です。通勤災害における休業日の第1日目から第3日目までについては、事業主に補償義務は課せられていないのです。

これは、業務上の災害については事業主の責任が重いのに対して、通勤途上の災害については事業主に責任を問うことが適当ではないからです。

 

2016.10.12.

<労災防止の目的>

ケガをした本人は反省しているのに、何かと周囲の人から責められたり、勤務のたびにイヤな記憶がよみがえったりして、残念ながら退職していくケースが散見されます。これは、戦力の喪失です。

たとえ辞めなくても、しばらくの間は100%の力を発揮できないでしょう。また、大ケガであれば休業することもあります。これは戦力の低下です。

さらに、労働基準監督署の調査が入って、労災防止の指導があると、今までやってこなかったことを義務付けられるなど、そちらに戦力を奪われることになります。

労災を防止する大きな目的は、戦力を確保して生産性を維持することにあると思います。

 

<実質面での対策>

ケガ人を出さないための対策です。

従業員の注意力を向上させるというのは、まず無理でしょう。たとえ注意力が低下しても事故が発生しないようにする工夫が必要です。

これには教育が最も有効です。機械・器具の扱い方や、滑りやすい転びやすいポイント、危険な作業について、部門別の朝礼のときに再確認していくのが効果的です。進行係が一方的に説明するだけでなく、参加者に質問して答えをもらってから正解を解説すると、記憶に定着しやすくなります。

 

<形式面での対策>

労災防止策を実施していることの証拠を残して、労働基準監督署の調査が入っても、説明できるようにしておくことです。

当然ですが調査に入った方は、目に見えるものしかチェックできません。「毎朝朝礼で教育しています」と言っても、それが真実かどうかは見えません。

ですから、朝礼で指導した内容は、ノートなどへの記録が必要です。他にも研修を実施すれば、その案内書やレジュメなどに参加者の署名をしてもらって保管するなど、目に見える記録の保管が必要です。

職場に注意喚起のためのポスターやハリガミも必要です。たしかに掲示物で本当に労災防止の効果があるかどうかは疑問です。しかし、形式面での対策としては欠かせないものです。

 

<心がけとして>

他にも設備の更新など、お金をかければできる対策はたくさんあります。しかし、生産性の維持という観点からは一歩後退です。

実質面と形式面の両方での対策をするにあたって、手間のかかることをしてしまっては、生産性が低下してしまいます。より簡単に、より日常的に、そして経費のかからない方法をとっていくことが大事です。

 

それでも具体的に何をどこまでやればいいのか迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

「岡目八目」ということばがあります。事の当事者よりも、第三者のほうが情勢や利害得失などを正しく判断できることをいいます。会社の状況に慣れてしまった従業員よりも、客観的に見ることのできる専門家の意見は貴重だと思います。

 

2016.09.17.

<労災保険適用の判断>

基本的に、業務災害や通勤災害による傷病の治療費は労災保険の適用により無料となります。

そして、労災にあたるかどうかは、所轄の労働基準監督署や労働局が判断します。被災者が判断するのではなく、会社が判断するのでもありません。

労災が発生したときに「労災保険を使うべきか?」と会社が考えるのは、適法に処理しようか、それとも違法に処理しようかという選択をしていることになり、違法な労災隠しにつながります。

 

<労災病院や労災指定医療機関に支払う保証金>

労災で病院にかかった場合には、「保証金」のようなものを仮に支払っておいて、「保証金の預かり証」と労災の手続き書類を提出したときに返金されるのが通常です。

この「保証金」は、万一、病院などに労災の手続き書類が提出されなかった場合に、病院が治療費を受け取れなくなることを防ぐために支払いを求めてくるものですから、その金額は病院などによって、1,000円だったり20,000円だったりとバラバラです。

なにしろ、患者が労災だと言っていても、必ずしも労災だとは限りません。また、労災であっても会社がすぐに労災の手続き書類を提出してくれるとは限りません。これに備えての対策なのです。

いずれにせよ、この「保証金」は、なるべく早く被災者に返金されることが望ましいので、会社は書類の作成と被災者への交付を急ぎたいものです。

また、会社が「保証金」を負担した場合には、「保証金の預かり証」も会社が受領しておくとよいでしょう。こうしないと、会社が負担して被災者に返金されるケースもありトラブルのもとです。

 

2016.08.31.

<過労死認定のむずかしさ>

過労死の可能性が疑われる場合でも、次のような疑問がわいてきます。

・本当に過労が原因で亡くなったのだろうか

・仕事ではなくプライベートに疲労の原因があったのではないか

・平均的な人ならば耐えられる労働なのに弱かったのではないか

ですから、過労死が疑われる労働時間の基準が全くないのでは、企業は対策に悩んでしまいます。また、亡くなった人の遺族も過労死を主張できるか迷ってしまいます。

 

<残業時間の基準>

「1か月の残業時間が100時間を超えた場合、または、直近2~6か月の平均残業時間が80時間を超えた場合」という基準が、次のように多く用いられています。

・「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日付基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達)

・「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日付基発1226第1号厚生労働省労働基準局長通達)

・ハローワークで雇用保険給付手続きをした場合に自己都合退職ではなく会社都合退職として特定受給資格者となる基準

 

<労働時間の基準>

ここで「残業時間」というのは、法定労働時間である1日8時間、1週40時間を基準としています。

ですから、1か月30日で計算すると、

30日÷7日=4.28週

40時間×4.28週=171時間

これを超える時間が「残業時間」となります。

ということは、1か月271時間の労働時間(171時間+100時間)が過労死ラインとなります。

また、直近2~6か月で平均251時間の労働時間(171時間+80時間)も過労死ラインとなります。

 

2016.08.30.

<職業病リスト>

労災保険制度は、労働者の業務上の理由によるケガ・病気、通勤に伴うケガ・病気に対して、必要な保険給付を行います。

ケガであれば業務によること通勤途上だったことが明確であるのに対して、病気となると業務や通勤によって発生したといえるかが判断しにくいものです。

そこで労災保険制度による補償の対象となる病気は「職業病リスト」にまとめられています。

この「職業病リスト」には、病気の範囲を明確にすることにより、被災者の労災補償請求を容易にし、事業主が災害補償義務を果たすようにする役割があります。

 

<職業病の選定基準>

業務と病気との間に客観的な因果関係が確立しているものが列挙されています。

これは、新しい医学的知見や病気の発生状況を踏まえ、定期的に見直しが行われています。最新のものは、平成25101日施行です。このときの改正で、新たに21の病気が追加されています。

 

<労災補償の対象となる病気>

「職業病リスト」にある病気については、業務に起因することが明らかな病気とされます。これによって、被災者は業務と病気との因果関係の証明の負担を軽減されるわけです。

「職業病リスト」にない病気については、被災者が困難な証明責任を負うことになります。しかし、業務と病気との因果関係が証明できれば、労災補償の対象となります。

 

<現在の「職業病リスト」>

〔労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号) 別表第一の二)

一 業務上の負傷に起因する疾病

二 物理的因子による次に掲げる疾病

1 紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患

2 赤外線にさらされる業務による網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患

3 レーザー光線にさらされる業務による網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患

4 マイクロ波にさらされる業務による白内障等の眼疾患

5 電離放射線にさらされる業務による急性放射線症、皮膚潰瘍等の放射線皮膚障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊死その他の放射線障害

6 高圧室内作業又は潜水作業に係る業務による潜函病又は潜水病

7 気圧の低い場所における業務による高山病又は航空減圧症

8 暑熱な場所における業務による熱中症

9 高熱物体を取り扱う業務による熱傷

10 寒冷な場所における業務又は低温物体を取り扱う業務による凍傷

11 著しい騒音を発する場所における業務による難聴等の耳の疾患

12 超音波にさらされる業務による手指等の組織壊死

13 1から12までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他物理的因子にさらされる業務に起因することの明らかな疾病

三 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病

1 重激な業務による筋肉、腱、骨若しくは関節の疾患又は内臓脱

2 重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務その他腰部に過度の負担のかかる業務による腰痛

3 さく岩機、鋲打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与える業務による手指、前腕等の末梢循環障害、末梢神経障害又は運動器障害

4 電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害

5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病

四 化学物質等による次に掲げる疾病

1 厚生労働大臣の指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)にさらされる業務による疾病であつて、厚生労働大臣が定めるもの

2 弗素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂の熱分解生成物にさらされる業務による眼粘膜の炎症又は気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患

3 すす、鉱物油、うるし、テレビン油、タール、セメント、アミン系の樹脂硬化剤等にさらされる業務による皮膚疾患

4 蛋白分解酵素にさらされる業務による皮膚炎、結膜炎又は鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患

5 木材の粉じん、獣毛のじんあい等を飛散する場所における業務又は抗生物質等にさらされる業務によるアレルギー性の鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患

6 落綿等の粉じんを飛散する場所における業務による呼吸器疾患

7 石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚

8 空気中の酸素濃度の低い場所における業務による酸素欠乏症

9 1から8までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他化学物質等にさらされる業務に起因することの明らかな疾病

五 粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則(昭和三十五年労働省令第六号)第一条各号に掲げる疾病

六 細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病

1 患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患

2 動物若しくはその死体、獣毛、革その他動物性の物又はぼろ等の古物を取り扱う業務によるブルセラ症、炭疽病等の伝染性疾患

3 湿潤地における業務によるワイル病等のレプトスピラ症

4 屋外における業務による恙虫病

5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病

七 がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による次に掲げる疾病

1 ベンジジンにさらされる業務による尿路系腫瘍

2 ベーターナフチルアミンにさらされる業務による尿路系腫瘍

3 四―アミノジフェニルにさらされる業務による尿路系腫瘍

4 四―ニトロジフェニルにさらされる業務による尿路系腫瘍

5 ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務による肺がん

6 ベリリウムにさらされる業務による肺がん

7 ベンゾトリクロライドにさらされる業務による肺がん

8 石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫

9 ベンゼンにさらされる業務による白血病

10 塩化ビニルにさらされる業務による肝血管肉腫又は肝細胞がん

11 1,2-ジクロロプロパンにさらされる業務による胆管がん

12 ジクロロメタンによりさらされる業務による胆管がん

13 電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺がん、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫

14 オーラミンを製造する工程における業務による尿路系腫瘍

15 マゼンタを製造する工程における業務による尿路系腫瘍

16 コークス又は発生炉ガスを製造する工程における業務による肺がん

17 クロム酸塩又は重クロム酸塩を製造する工程における業務による肺がん又は上気道のがん

18 ニッケルの製錬又は精錬を行う工程における業務による肺がん又は上気道のがん

19 砒素を含有する鉱石を原料として金属の製錬若しくは精錬を行う工程又は無機砒素化合物を製造する工程における業務による肺がん又は皮膚がん

20 すす、鉱物油、タール、ピッチ、アスファルト又はパラフィンにさらされる業務による皮膚がん

21 1から20までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他がん原性物質若しくはがん原性因子にさらされる業務又はがん原性工程における業務に起因することの明らかな疾病

八 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病

九 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病

十 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病

十一 その他業務に起因することの明らかな疾病

 

2016.08.20.

<健康保険より有利な労災保険>

労災保険では、労働者が業務または通勤が原因で負傷したり、病気にかかった場合に、労働者の請求に基づき、治療費の給付などを行っています。

しかし、業務または通勤が原因と考えられるにもかかわらず、労災保険による請求を行わず、健康保険を使って治療を受けるケースがあります。

これは、労働者に不利です。

健康保険では、被災者が原則として治療費の3割を負担しますが、労災保険なら、被災者の自己負担は原則としてありません。

また、負傷や病気で休んだ場合、健康保険の傷病手当金では賃金の約67%の補償となりますが、労災扱いならば賃金の80%が補償されます。

さらに、業務災害であれば、休業の3日目まで事業主が賃金の60%以上を補償します。

 

<労災保険に切り替え可能な場合>

受診した病院の締め日などの関係で、健康保険から労災保険への切り替えが簡単にできる場合には、次の手順によります。

・病院の窓口で支払った金額が返還

・労災保険の様式第5号または様式第16号の3の請求書を受診した病院に提出

 

<労災保険への切り替えができない場合>

受診した病院の締め日などの関係で、健康保険から労災保険への切り替えが簡単にできない場合には、次の手順によります。

・一度、医療費の全額を自己負担した上で労災保険に請求

・全国健康保険協会などへ業務災害または通勤災害である旨を申し出る

・「負傷原因報告書」の記入・提出(不要な場合もあり)

・全国健康保険協会などから医療費返納の通知と納付書が届く

・近くの金融機関で返納金を支払う

(健康保険が使えないのに使ってしまったため返金が必要となります)

・返納金の領収書と病院に支払った窓口一部負担金の領収書を添えて、労災保険の様式第7号または第16号の5を記入のうえ、労働基準監督署へ医療費を請求

 

<結論として>

間違った手続をやり直すのは、大変になってしまうことが多いものです。最初から必要な手続きをきちんと確認しましょう。

また、事業主の都合で、労災なのに健康保険の手続きを進めようとすることがあります。これ自体もちろん犯罪です。

そして、ケガが悪化して長く入院するような場合には、労働者の負担がとても大きくなります。

困ったときは、早めに所轄の労働基準監督署か社労士などに相談しましょう。

 

2016.08.11.

<労災手続きを担当すると>

労災は突然に起こります。得てして担当者が忙しいときに限って起きやすいような気もします。

特に不慣れな場合には、労基署や病院に提出する書類の書式はどれを使ったらよいのやら、似たものが多過ぎます。こんなときは、とにかく正確に遅れないように書類の作成に集中するものです。

一方、ベテランともなると、必要な情報を迅速かつ正確にそろえてサッサと書類を完成させてしまいます。

しかし、これでは2つの重要な視点が欠けてしまいます。

 

<再発防止>

ヒヤリハット運動というのがあります。事故の危険を感じて、ヒヤリとした経験、ハッとした経験があったら、これをキッカケに事故防止の対策を打とうという運動です。

実際に労災が発生してしまったなら、より一層強い意味で再発防止に取り組まなければなりません。

労災が発生すると、会社には一定のフォーマットが用意されていて、被災者や同僚・上司などがその各欄を埋める形で報告書を作成し、労災手続きを担当する部門に提出するということが多いようです。

そのフォーマットの中に、「再発防止策」の欄はあるでしょうか。簡単にできる対策であれば、「何月何日にこの対策を実施済み」と記入することになりますが、関連部門への要望という形になるかも知れません。

 

<被災者へのアプローチ>

その労災事故について、一番よくわかっているのは被災者本人です。それなのに、書類だけのやりとりで本人への取材がないのはもったいないです。本人の率直な意見は、今後の労災防止に大いに役立ちます。

このとき、「まだ痛みますか?」「大変でしたね」と声をかければ、本音も引き出すことができるでしょう。こうした言葉をかけることなく、サッサと用件だけ済ませようとすれば、被災者の心は凍りつきます。なぜなら、被災者は周囲の人からは「お前の不注意だ」「会社にとって迷惑だ」などと言われてしまっていることもあるからです。

再発防止に効率よく取り組むには、被災者本人の要望を聴くのが一番です。会社として、どうしていれば今回の事故が防げたかがわかるのです。たとえば、器具の正しい使い方を指導されていなかったとか、このところ長時間残業が続いていて注意力が低下していたとか、中には妻がまさに出産中のそのときに仕事を休めず上の空で働いていてケガをするというケースもあります。

 

<手続きを委託している場合>

スピーディーに労災手続きを済ませるには、社労士や労働保険事務組合に委託するのが便利です。

しかし、これだと再発防止や被災者への適切なアプローチという2つの重要な視点が欠けてしまいます。

どうせ委託するのであれば、親身に被災者の声に耳を傾け、真剣に再発防止を考える顧問社労士に頼むのがお勧めです。

手続きだけの商売をしていると、再発防止は考えないものです。なにしろ労災が減れば、自分たちの仕事も減るわけですから。

 

2016.08.03.

<本来は労働者のための労災保険制度>

労災保険は、労働者の業務や通勤による災害に対して、保険給付を行う制度です。

しかし、労働者ではなくても、その実態から労働者に準じて保護すべきであると認められる人は、特別に任意で加入できることになっています。これが、特別加入制度です。

中小企業の事業主・代表者は、一人で何役もこなしていて、その業務内容が一般の労働者と重なる部分が多いものです。そこで、労働者に準じて保険に加入できるようになっているのです。

 

<中小事業主等の範囲>

つぎの表の労働者を常時使用する事業主・代表者、または、その事業に従事する家族従事者や代表者以外の役員などが対象です。

業種

企業全体の労働者数

金融業

保険業

不動産業

小売業

50人以下

卸売業

サービス業

100人以下

その他の業種

300人以下

 

<初めて特別加入をする場合の条件>

つぎの3つが加入の一般的条件となります。

・雇っている労働者について、労災保険が適用されていること。

・労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること。

・所轄の都道府県労働局長の承認を受けること。

 

2016.07.18.

<労災病院や労災指定医療機関>

基本的に、業務災害や通勤災害による傷病の治療費が無料となります。

とはいえ実際には、病院などに「保証金」のようなものを仮に支払っておいて、「保証金の預かり証」と労災の手続き書類を提出したときに返金されるのが通常です。

この「保証金」は、万一、病院などに労災の手続き書類が提出されなかった場合に、病院が治療費を受け取れなくなることを防ぐために支払いを求めてくるものですから、その金額は病院などによって、1,000円だったり20,000円だったりとバラバラです。

いずれにせよ、この「保証金」は、なるべく早く被災者に返金されることが望ましいので、会社は書類の作成と被災者への交付を急ぎたいものです。

また、会社が「保証金」を負担した場合には、「保証金の預かり証」も会社が受領しておくとよいでしょう。こうしないと、会社が負担して被災者に返金されるケースもありトラブルのもとですから。

 

<労災病院ではない病院や労災指定ではない医療機関>

基本的に、被災者が治療費を一時的に負担しておいて、被災者名義の指定口座に振り込み返金されます。

したがって、手続き書類には口座番号を書く欄があります。ここが、労災病院用の手続き書類とは違うところです。

傷病が悪化して治療が長引くと、一時的にせよ負担額がバカになりません。普段は健康保険証を使って3割負担なのですが、ここでは全額患者の負担となりますから。

労災病院などの場合と同じように、会社が書類の作成と被災者への交付を急ぐことはもちろんですが、労災病院などに移ることも考えたいです。

 

<実際に労災が発生した時の注意点>

上記のことから、なるべく労災病院などでの治療が便利です。しかし、被災者は痛い思いをしていますから、労災病院にこだわるのではなく、最寄りの病院などでなるべく早く治療を受けさせましょう。

たとえば、手をやけどした場合、流水で30分ほど冷やしている間に、病院を探し連絡を取っておいてから、被災者を連れていくというのがよいでしょう。

 

2016.07.10.

<補償されるケース>

業務災害または通勤災害による傷病の治療のため働けず、賃金を受けられないときに補償されます。

勤務中に発生する業務災害のときは休業補償給付、通勤中に発生する通勤災害のときは休業給付といいます。

業務災害の場合は、もともと労働基準法で事業主に補償を義務づけていたので、「補償」ということばが入ります。

これに対して、通勤災害の場合には、事業主に通勤途上の事故にまで責任を負わせることに無理があります。そのため、労働基準法は事業主に補償を義務づけていないので、「補償」ということばが入りません。

労災保険は、事業主の補償義務を拡張して補償の内容に含めているのです。

 

<保険給付の内容>

休業4日目から、休業1日につき被災者の平均賃金の60%が基本です。

では、3日目まではどうかというと、業務災害の場合だけ事業主が補償します。〔労働基準法67条1項〕

ただ、休業特別支給金という制度があって、休業4日目から、休業1日につき被災者の平均賃金の20%が支給されます。

結局、被災者は合計80%の補償を受けるわけです。

この給付を受けるために、労働基準監督署長に提出する書類のタイトルには、休業特別支給金も兼ねていることが表示されていますので、1つの手続きで両方の請求ができるわけです。

 

<健康保険より手厚い補償>

治療費は、健康保険だと自己負担が30%ですが、労災保険だと無料です。

休業補償も、健康保険の傷病手当金が67%なのに対して、労災だと合計80%になります。

これは、憲法27条1項が、勤労を国民の義務としていることと深い関連があります。つまり、国民としての義務を果たしていて被災したのだから、プライベートな原因の場合よりも手厚い補償が必要だとされているわけです。

 

2016.07.09.

<転籍出向の場合>

これは、転籍とはいうものの、完全に所属が移っています。

給与の支払者は出向先ですから、雇用保険は出向先で入り、雇用保険料も出向先でカウントされます。

労働環境の管理も出向先ですから、労災保険も出向先で適用され、労災保険料は出向先の負担となります。

 

<在籍出向の場合>

これは、社籍が出向元に残ったまま、出向先で働く場合です。

給与の支払者は出向元ですから、雇用保険も出向元で入り、雇用保険料も出向元でカウントされます。

しかし、労働環境の管理は出向先ですから、労災保険も出向先で適用され、労災保険料は出向先の負担となります。

この場合、雇用保険と労災保険とで、保険料の負担者が異なることになります。

 

<その他の場合>

「転籍出向」「在籍出向」ということばを一般とは異なる意味で使っている会社や、どちらか明確ではない場合でも、給与の支払者が雇用保険料を負担し、労働環境の管理者が労災保険料を負担すると考えればよいのです。

 

2016.07.04.

<業務災害>

業務災害とは、労働者の負傷、疾病(しっぺい)、死亡のうち、業務が原因となったものをいいます。労働者の業務としての行為の他に、事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものがあります。

「業務上」という用語は、業務と傷病などとの間に、一般的な原因と結果の関係があることをいいます。

業務災害に対する保険給付は、労働者が事業場で雇われて、事業主の支配下にあるときに、業務が原因となって発生した災害に対して行われます。

ただし、労働者が労災保険の適用されない事業場に雇われていた場合は対象外となります。

 

<労災とはならないケガ>

・労働者が勤務時間帯に、仕事とは関係のないことを行ったり、仕事の範囲を超える勝手なことをしていて、それが原因でケガをした場合。

・労働者がわざとケガをした場合。

・労働者がプライベートな恨みなどを理由に第三者から暴行を受けてケガをした場合。

・大地震や台風など自然災害によってケガをした場合。ただし、落雷しやすい現場で作業していて落雷でやけどを負うなど、立地条件や作業環境などによっては労災と認められる場合があります。

・休憩時間や勤務の前後など、実際に業務に従事していない時間帯にケガをして、しかも事業場の施設・設備や管理状況に原因がない場合。ただし、トイレに行くなどの生理的行為については、事業主の支配下で業務に付随する行為として取り扱われますので、このときに生じたケガは労災となります。

 

2016.06.27.

<業務災害>

業務災害とは、労働者の負傷、疾病(しっぺい)、死亡のうち、業務が原因となったものをいいます。労働者の業務としての行為の他に、事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものがあります。

「業務上」という用語は、業務と傷病などとの間に、一般的な原因と結果の関係があることをいいます。

業務災害に対する保険給付は、労働者が事業場で雇われて、事業主の支配下にあるときに、業務が原因となって発生した災害に対して行われます。

ただし、労働者が労災保険の適用されない事業場に雇われていた場合は対象外となります。

 

<業務上の疾病とは?>

業務との間に一般的な原因と結果の関係にある疾病(病気)は、労災保険給付の対象となります。

業務上疾病は、必ずしも労働者が事業主の支配下で発症することを条件とせず、事業主の支配下で有害な原因にさらされたことによって発症すれば認められます。

たとえば、ある労働者が勤務中に心臓病を発症しても、その労働者の業務の中に原因が見当たらなければ、業務と疾病との間に一般的な原因と結果の関係は成立しません。

反対に、勤務時間外に発症した場合でも、その労働者の業務の中に有害な原因があって発症したものであれば、業務上の疾病とされます。

 

<業務上の疾病とされる3つの条件>

・その労働者の業務の中に有害な原因があったこと。例として、化学物質、身体に過度の負担がかかる作業、病原体など。

・健康障害を起こすだけの原因にさらされたこと。つまり、有害な原因の強さ、量、回数、期間が健康障害を起こしうるものだったこと。

・発症の原因から健康障害の結果が発生するまでの経過が、医学的に見て不自然ではないこと。中には、労働者が有害な原因に接してから、相当な長期間を経過した後に健康障害が発生するパターンも認められます。

 

2016.06.26.

<ケガをさせられた場合の追加の手続き>

通勤途上でひき逃げされたり、居酒屋でアルバイトをしていてお客様に殴られたり、休日に道を歩いていて自転車にぶつかられたりしてケガをすると、通常とは違う手続きが必要となります。

具体的には、労災では「第三者行為災害届」、私傷では「第三者行為による傷病届」という書類が必要になるのです。

 

<「第三者行為」とは?>

もともと保険というのは、保険料の負担があって、負担した人やその関係者に給付があるわけです。

労災保険では会社が保険料を負担して、従業員が治療を受けると労災保険から給付が行われて、従業員は治療費を負担しなくても済みます。

健康保険では会社と従業員が保険料を折半して、従業員や扶養家族が治療を受けると健康保険から給付が行われて、治療費の3割を負担するだけで済みます。

ところが無関係な第三者からケガをさせられて、治療費に保険が使われると、ケガをさせた第三者は、治療費の負担が減ったり負担がなくなったりして得してしまうのです。

こうした不都合が起こらないように、保険者である政府や協会けんぽなどが、加害者に費用の負担を求めるのです。

 

<万一ケガをさせられたら>

可能な限りケガをさせた人に逃げられないようにしたいです。周囲の人に助けを求めることもできるでしょう。少なくとも、氏名と連絡先ぐらいは把握しましょう。その場で示談してはいけません。

また、なるべく正確な日時や場所、状況など記憶が新鮮なうちに記録を残しておきましょう。

そして、会社の労災保険や健康保険の手続き担当者に連絡して指示を仰ぎましょう。

 

<書類の内容>

交通事故の場合と、それ以外の場合とで内容が異なります。

しかし、共通する内容で主なものは、事故の発生状況を説明した書類、負傷原因の報告書、加害者と示談しませんという念書(示談していたら示談書)、加害者からの損害賠償金の納付を確約する書類などです。

 

<書類作成ご担当のかたへ>

実際に書類を作成する会社の担当者は、被害者からの情報が頼りとなります。

すべての情報がそろっていても、慣れていないと数時間かかってしまいます。

必要な書式は、労基署や協会けんぽなどで入手しますから、ついでに必要な添付書類の確認をするとよいでしょう。

交通事故の場合には、警察に「交通事故証明書」の発行を依頼するのですが、手続きが遅れると人身事故でも物損扱いとなるなど不都合が起こります。

大変ですが落ち着いて急ぎましょう。

 

2016.06.20.

<労働保険の保険料>

雇用保険と労災保険の保険料は、あわせて労働保険の保険料として、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度を単位として計算されます。

その額は、雇用保険と労災保険のそれぞれについて、対象となる従業員に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を掛けて算定されます。

ただし、建設の事業で賃金総額を正確に算定することが困難な場合には、請負金額に労務比率を掛けて保険料を算定します。

 

<年度更新とは?>

労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法15条・17条〕

したがって事業主は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きを同時に行うことになります。これが「年度更新」の手続きです。

また、石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金も、年度更新の際に労働保険料とあわせて申告・納付することとなっています。

 

<労働保険対象者の範囲>

労働保険の対象者ということは、労災保険の適用対象者と雇用保険の適用対象者ということになります。その範囲は重なりますが、同じではありません。

労災保険の対象者については次の点に注意しましょう。

・正社員、嘱託、契約社員、パート、アルバイト、日雇い、派遣など、名称や雇用形態にかかわらず、賃金を受けるすべての人が対象となります。

・代表権・業務執行権のある役員は対象外です。

・事業主と同居している親族でも就労の実態が他の労働者と同じなら対象となります。就業規則が普通に適用されているなら対象となります。

雇用保険の対象者については次の点に注意しましょう。

・1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば原則として対象者です。雇い入れ通知書、労働条件通知書、雇用契約書などが基準となります。これらの書類が1つも無いのは、それ自体違法ですから注意しましょう。

・昼間に通学する学生、65歳以上で新たに雇われた人などは対象外です。

複数の会社などで同時には雇用保険に入れません。主な賃金を受けているところで対象者となります。

両方の保険に共通の注意点としては、次のものがあります。

・代表権も業務執行権も無く、役員報酬と賃金の両方を受け取っている役員は、賃金についてのみ計算対象となります。

・派遣社員は派遣元で保険に入ります。派遣先での手続きはありません。

・出向社員は賃金を支払っている会社などで雇用保険に入り、実際に勤務している会社などで労災保険に入って、そこでの料率が適用されます。出向先の会社は、年度更新のために出向元から賃金などのデータをもらう必要があります。

 

2016.06.13.

<法律の規定>

労災保険の適用される労働災害には、業務災害と通勤災害があります。このうち、通勤災害は通勤途上の災害です。通勤には典型的なものとして「住居と就業の場所との間の往復」があります。〔労働者災害補償保険法7条2項1号〕

 

<出勤のスタート地点>

出勤のスタート地点は住居ですが、一軒家と集合住宅とでは、厳密なスタート地点が違います。

これは、一般の人が自由に通行できるところで起こった災害が、通勤災害の対象となることによるものです。

一軒家の場合には、外に出る門を身体の半分以上が通過したところがスタート地点です。

集合住宅の場合には、玄関のドアを身体の半分以上が通過したところがスタート地点です。ただし、玄関ドアの外側は、誰でも自由に通行できることが前提となります。

セキュリティーの厳しいマンションなどでは、外部の人の自由な立ち入りを許さないドアが基準となります。

 

<出勤のゴール地点>

出勤のゴール地点は就業の場所ですが、勤務先企業の管理が敷地と建物全体に及ぶ場合と、その建物の一部にのみ及ぶ場合とでは、厳密なゴール地点が違います。

これは、事業主の支配管理権の及んでいる事業場施設での災害が、業務災害の対象であり、通勤災害の対象ではないからです。

業務災害で仕事を休んだ場合には、休業の最初の3日間について、事業主が平均賃金の60%以上の休業補償をします。〔労働基準法76条1項〕

通勤災害で仕事を休んだ場合には、この休業補償がありません。

また、労基署に労災保険の手続きで書類を提出するときに、業務災害と通勤災害とでは書式が違います。

勤務先企業の管理が敷地と建物全体に及ぶ場合には、身体の半分が敷地に入る直前がゴール地点となります。

勤務先企業の管理が店舗など建物の一部にのみ及ぶ場合には、その部分に身体の半分が入る直前でゴール地点となります。

 

<よくある勘違い>

一軒家の玄関を出たところで転んでケガをして、会社に連絡をしても、通勤災害の手続きはできません。

団地の階段で転んでケガをしたら、通勤災害ですから、会社に届出をしなければなりません。

「出勤や帰宅にあたってケガをしたらとりあえず会社に連絡」というルールにしておけばモレがありません。これなら細かい点についてまで教育する必要がないので楽です。

 

2016.05.27.

<保険証はどこにある?>

労災保険が適用される労働者は、適用事業に使用される労働者です。雇用形態に関係なく賃金を支払われている人は対象者です。アルバイト、パート、日雇い労働者も対象となります。また、不法就労を含む外国人労働者も対象者です。派遣社員は、派遣元で対象者になります。

雇用保険や健康保険では個人に被保険者証(保険証)が発行されますが、労災保険は業務執行権のある取締役などを除き、全員が対象となるので保険証は発行されません。保険料は全額事業主が負担します。

 

<適用事業とは>

労災保険法が「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。」と規定しています。〔3条1項〕

ただし、公務員、農林水産業従事者の一部は対象外です。

ということは、個人事業主でも労働者を一人でも雇えば、労災保険の適用対象となるわけです。

 

<適用されることの意味>

赤ちゃんが生まれれば、その子について出生届が出されなくても、一人の人間としての人権を保有することになります。これと同じように、事業主が労基署に「労働保険関係成立届」を提出しなくても労災保険は適用されるのです。もし事業主が、保険料の納付を逃れ労基署の監督を逃れる意図で届出をしなくても、そこで働く人々には労災保険が適用されます。

 

<届出しないとマズいのか>

ただ、事業主が届出を怠っていれば、バレたとき大きな不都合が発生します。場合によっては、事業の運営ができなくなります。

ではバレるのかというと、たとえば従業員が自転車に乗って出勤する途中で転倒し、意識を失ったまま病院に運ばれれば、通常は労災保険が適用されるでしょう。なぜなら家族や友人が駆けつけて、通勤途上の事故だと話すからです。治療費が高いほど、事業主の負担も高額になります。

最近導入されたマイナンバー制度は、今後も充実してきます。法人番号と個人番号から、届出をしていない事業主が一斉に摘発される日も近いことでしょう。

 

2016.05.10.

<行政通達とは>

行政通達は、行政機関が行政上の取扱いの統一性を確保することを目的として定める指針です。その内容は、法令の解釈、運用・取扱基準や行政執行の方針などです。

 

<労働法の世界での行政通達の役割>

労働法の世界では、労働者を保護するための法令が多数制定されています。

しかし、現実の世界で生じる具体的な問題や紛争のすべてをカバーすることはできません。法令が予定していないことも起こるのです。

また、法令というのは、抽象的な表現を多く含んでいます。そのため、いくつもの解釈ができてしまうことがあります。これでは、法令の適用によって労働者と使用者の両方が納得する結論を出すことができません。

そのため、行政機関が法令の解釈・運用・取扱基準を示すことがあります。これは「行政通達」の形をとることが多いのです。

 

<行政通達の効力>

あくまでも行政機関内部の指針です。国民の権利・義務を直接に規制するものではありません。しかし、たとえば労働基準監督署が企業を指導する場合には、行政通達の基準に従って指導します。ですから、事実上の強制力をもっていると考えられます。

 

<行政通達に逆らえるのか>

たとえば、行政通達そのものの効力を争って、企業が裁判を起こしても門前払いとなります。

しかし、行政通達に従った指導によって、企業が不当な損害をこうむった場合には、国家賠償を求める形で争うことはできます。

反対にいえば、企業はそこまでする気がないのなら、行政通達に基づく指導に従わざるをえないということです。

 

2016.05.04.

<労働安全衛生法>

職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、労働基準法の特別法である労働安全衛生法が定められています。

この法律は、事業者に、仕事が原因で労働者が事故に遭ったり、病気になったりしないようにする義務を定めています。

一方、労働者に対しては、労働災害を防止するために必要な事項を守り、事業者が行う措置に協力するように定めています。ただし、労働者がこれを行うのに必要な教育は、事業者が行わなければなりません。

 

<定期健康診断などの実施義務>

事業者は、労働者を雇い入れた際とその後年1回、医師による健康診断を行わなければなりません。労働者はその健康診断を受ける必要があります。〔労働安全衛生法66条〕

また、最近では仕事上のストレスによるうつ病など、労働者のメンタルヘルスも大きな問題となっており、快適な職場環境形成のためには、事業者が、作業方法の改善や疲労回復のための措置だけでなく、メンタルヘルス対策を行うことも重要となっています。

 

<労働者災害補償保険法>

労働者が仕事や通勤が原因で病気やけがをした場合には、労災保険給付の対象になります。

労災保険給付を受けるためには、病院や労働基準監督署に、各種の請求書を提出する必要があります。会社が被災労働者から災害の原因など必要な証明を求められたときは、速やかに証明をしなければなりません。

なお、仕事が原因の病気には、長期間にわたる長時間の業務による脳・心臓疾患や人の生命にかかわる事故への遭遇などを原因とする精神障害なども含まれますので、ご留意ください。

 

<パワーハラスメント>

パワ―ハラスメント(パワハラ)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を指します。

パワハラは内容によっては刑法などに触れる犯罪となります(名誉毀損罪、侮辱罪、暴行罪、傷害罪、強要罪など)。

また、会社には快適な職場環境を整える義務があることから、会社も責任を問われる場合があります。〔民法715条〕

さらに、社長以下取締役が責任を問われる裁判も増えています。〔会社法429条1項〕

 

2016.04.24.

<労働保険の保険料>

雇用保険と労災保険の保険料は、合わせて労働保険の保険料として、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度を単位として計算されます。

その額は、雇用保険と労災保険のそれぞれについて、対象となる従業員に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を掛けて算定されます。

労災保険料は、全額会社負担ですから、従業員は負担しません。

雇用保険料は、会社の方が従業員よりも多く負担します。

 

<保険料の計算で間違えやすいポイント>

間違えやすいのは、雇用保険の対象者、労災保険の対象者の確定です。

取締役は、どちらも対象外であることが多いのですが、労働者の立場を兼ね備えている場合には、対象となるケースもあります。

別の会社から出向してきている人は、働いている会社で、労災保険料だけ負担します。

学生の場合、定時制や通信制の学校だと雇用保険の対象になります。

他にも、雇用保険の保険料が免除される人がいたり、労災保険料の割引があったりと複雑です。

 

<年度更新とは?>

労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法15条・17条〕

したがって会社は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きを同時に行うことになります。これが「年度更新」の手続きです。

 

<年度更新の時期>

この年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行わなければなりません。〔労働保険徴収法19条〕

手続きが遅れますと、政府に保険料の額を決定され、さらに追徴金10%を課されることもあります。〔労働保険徴収法21条・25条〕

1年間の賃金が確定してから準備を始めると余裕が無くなりますので、最後の1か月の月給を加えれば確定できるという状態にまで、先に準備しておくことをお勧めします。

 

2016.01.24.