労使協定方式の過半数代表者

2023/07/28|1,522文字

 

<労使協定のチェックポイント>

令和2(2020)年2月12日、厚生労働省が、派遣労働者の同一労働同一賃金に関するリーフレット「過半数代表者に選ばれた皆さまへ」を公表しました。

このリーフレットは、労使協定方式での過半数労働組合または過半数代表者が、派遣元事業主と労使協定を締結する際のポイントを解説したもので、次の点に関する確認を呼びかける内容となっています。

 

【手続面】

・過半数代表者の選定手続きは適切か

・派遣労働者の意思は反映されているか

・過半数代表者が事務を円滑に遂行できるよう派遣元事業主は配慮しているか

 

よくある失敗としては、過半数代表者の選定にあたって、会社側が関与してしまうということがあります。

会社側が過半数代表者を指名してしまう場合の他、会社側が候補者を数人立てて、その中から投票で選出するなど、必ずしも民主的とはいえない方法で選定すると、その選定が無効となり、労使協定も無効となってしまいます。

派遣労働者の場合には、派遣先が数か所に分かれていて、派遣先の異なる派遣労働者とは面識が無いのは当然のことです。

こうした事情の中で、過半数代表者を選定するわけですし、派遣労働者が一堂に会する機会も限られていますので、メールによる投票などの方法がとられます。

民主的な方法による選定を行うことは当然ですが、これを裏付ける資料の保管も必要です。

 

【協定内容】

・協定の対象となる派遣労働者の範囲は適切か

・職種の選択は適切か

・通勤手当の支払方法について確認したか

・能力・経験調整指数の当てはめは適切か

・一般賃金額と対象従業員の賃金額が同等以上か

・昇給規定などが定められているか

・退職金について、どの方法を選択したか確認したか

 

職種の選択については、悩ましいケースが多いと思います。

同じ職種の中にも、必要な技能や経験が異なるものが含まれていますから、そこに示された一般賃金額の妥当性に疑問を持つことも多々あります。

また、一人の派遣労働者が、複数の職種にまたがっている場合もあります。

これらの疑問に答える資料は、今のところ厚生労働省からも十分に提供されているわけではありません。

令和2年度については、ある程度手探りで、不合理とならないように注意しつつ、労使協定の内容を定めるしかないのが実情でしょう。

 

<協定への記載が必要な事項>

派遣労働者について、労使協定方式をとった場合の労使協定に、特に必要な項目として、次のものが掲げられています。

 

□ 派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力または経験などを公正に評価して賃金を決定すること

□「労使協定の対象とならない待遇」(労働者派遣法第40条第2項の教育訓練および同法第40条第3項の福利厚生施設)および「賃金」を除く待遇について、派遣元事業主に雇用される通常の労働者(派遣労働者を除く)との間で不合理な相違がないこと

□ 派遣労働者に対して段階的・計画的な教育訓練を実施すること

□ その他の事項

   ・有効期間(2年以内が望ましい)

   ・労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する場合はその理由

   ・特段の事情がない限り、一の労働契約の期間中に派遣先の変更を理由として、協定の対象となる派遣労働者であるか否かを変えようとしないこと

 

派遣先が大企業で賃金水準が高ければ、派遣先均等・均衡方式をあてはめ、零細企業で賃金水準が低ければ労使協定方式をあてはめるといった恣意的な運用をすれば、派遣元事業主の人件費は軽減されることになります。

しかし、こうした運用は明らかに不合理であって、派遣労働者に不利であることから、「その他の事項」の2つ目と3つ目に注意的に掲げられているわけです。

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