シフト制の所定労働時間

2022/12/12|1,189文字

 

<事件として報道されるキッカケ>

飲食店の素直なアルバイトAくんが店長に呼ばれます。

店長「売り上げが落ちているのでキミには辞めてもらうことになった」

Aくん「はい、わかりました」

翌日、Aくんは親戚のおじさんに、アルバイトをクビになった話をします。

おじさん「解雇予告手当は?もらっていないなら労基署に相談だな」

Aくん「はい、わかりました」

Aくんが労基署の監督官に事情を話します。

監督官「時給は?1日と1週間の所定労働時間は?労働条件通知書という名前の書類をもらったでしょ」

Aくん「時給はたしか1,100円です。所定…とか、書類とかはありません」

こうして、労基署はアルバイト先の店舗に連絡し、さらに調査に入ります。

この飲食店がチェーン店だと、本社や各店舗に調査が入り、報道機関の知るところとなる可能性があります。

キッカケは、こんなものです。アルバイトのAくんが無知で素直でも、家族や親戚までがすべてそうだとは限りません。

 

<店長はどうしたら良かったのか>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

1人につき30万円の損失で済めばマシです。

マスコミやネットの書き込みの威力で、1店舗だけでなく会社全体が立ち直れなくなる可能性があります。

 

<なぜいけないのか>

所定労働時間が決まっていなければ、年次有給休暇を取得した場合の賃金計算ができません。

つまり、所定労働時間が決まっていないアルバイトについては、会社が有給休暇を与える気が無いのだということが、労基署にはバレバレなのです。

調査(臨検監督)に入るのは当然でしょう。

 

<正しい対応>

飲食店では、アルバイトが2時間勤務の日もあれば10時間勤務の日もあるというシフトのことがあります。

アルバイトやお店の都合で、1週間全く勤務しないことも週6日勤務することもあります。

このような場合には、固定した所定労働時間を決めることができません。

しかし、実態に合わせて平均値で規定しても、有給休暇の賃金の計算は可能となります。

たとえば、「9:00から21:00の間で実働平均5時間」「週平均3.5日勤務」としておき、実態と大きく離れたら、書面を作り直して交付すればよいのです。

これで、アルバイトの年次有給休暇の付与日数についても、迷うことはありません。

1週間の所定勤務日数と所定労働時間が決まっていないので、付与日数すらわからないという危険な状況は解消しておきたいものです。

A4判で両面印刷すれば、1人の労働者に交付する書面は、たったの1枚で済みます。これを怠るのは、そのリスクを考えると得策ではないでしょう。

 

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