2022/09/17|1,232文字
雇用保険と労災保険の保険料は、あわせて労働保険の保険料として、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度を単位として計算されます。
その額は、雇用保険と労災保険のそれぞれについて、対象となる従業員に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を掛けて算定されます。
ただし、建設の事業で賃金総額を正確に算定することが困難な場合には、請負金額に労務比率を掛けて保険料を算定します。
<年度更新>
労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法第15条・第17条〕
したがって事業主は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きを同時に行うことになります。
これが「年度更新」の手続きです。
また、石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金も、年度更新の際に労働保険料とあわせて申告・納付することとなっています。
<労働保険対象者の範囲>
労働保険の対象者ということは、労災保険の適用対象者と雇用保険の適用対象者ということになります。
その範囲は重なりますが、同じではありません。
労災保険の対象者については次の点に注意しましょう。
・正社員、嘱託、契約社員、パート、アルバイト、日雇い、派遣など、名称や雇用形態にかかわらず、賃金を受けるすべての人が対象となります。
・代表権・業務執行権のある役員は対象外です。賃金ではなく報酬を受けています。
・事業主と同居している親族でも就労の実態が他の労働者と同じなら対象となります。就業規則が普通に適用されているなら対象となります。
雇用保険の対象者については次の点に注意しましょう。
・1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば原則として対象者です。雇い入れ通知書、労働条件通知書、雇用契約書などが基準となります。これらの書類が1つも無いのは、それ自体違法ですから注意しましょう。
・昼間に通学する学生は対象外です。
・65歳以上で新たに雇われた人は、法改正により対象者になりました。
・複数の会社などで同時には雇用保険に入れません。主な賃金を受けているところで対象者となります。これには、65歳以上の特例による例外があります。
両方の保険に共通の注意点としては、次のものがあります。
・代表権も業務執行権も無く、役員報酬と賃金の両方を受け取っている役員は、賃金についてのみ計算対象となります。
・派遣社員は派遣元で保険に入ります。派遣先での手続きはありません。
・出向社員は賃金を支払っている会社などで雇用保険に入り、実際に勤務している会社などで労災保険に入って、そこでの料率が適用されます。出向先の会社は、年度更新のために出向元から賃金などのデータをもらう必要があります。
加入漏れがあると、その人の離職時に大変困ったことになります。
労働保険の対象者を間違えないようにしましょう。