労使協定の作成、保管、届出、遵守は怠りなく

2022/05/02|1,565文字

 

<労使協定>

労使協定とは、労働者と使用者との間で締結される書面による協定のことです。法令に「労使協定」という用語があるわけではなく一種の通称です。

そして、使用者と労使協定を交わす主体は、事業場により2通りに分かれます。

・労働者の過半数で組織する労働組合があるとき ― その労働組合

・労働組合が無いとき、あるいは、労働組合があっても労働者の過半数で組織されていないとき ― 労働者の過半数を代表する者

労働者の過半数を代表する者は、その事業場で使用者側の関与を受けず、民主的に選出されます。

 

<労使協定の効力>

労使協定の多くは、労働基準法などの最低基準を解除する効力や、罰則の適用を免除する効力を持っています。

労働協約のように、各従業員の労働契約を直接規律する効力は認められませんが、事業場の対象従業員との間で効力を持っています。

労使協定書の作成や届出は形式的なものですが、これを怠ると違法となり罰則が適用されうるのです。

労使協定が不要な会社は稀ですから、遵法経営のため、労使協定の作成、届出、遵守を怠ることはできません。

 

<三六(さぶろく)協定>

その事業場で、時間外労働(法定労働時間を超える早出、残業)や休日出勤(法定休日の出勤)が全く無い事業場を除き、これらについての三六協定を所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

労使協定の中には、所轄の労働基準監督署長への届出を義務づけられたものがいくつかありますが、届出をしなくても罰則が適用されるだけで、効力そのものは発生するのが原則です。

しかし、唯一の例外として三六協定だけは届出をするまでは無効です。

しかも、届出をした日からの時間外労働などについてのみ有効とされ、日付を遡っての効力は認められません。

さらに、その有効期間は最長でも1年間ですから、更新を忘れてはなりません。

 

<賃金控除協定>

財形貯蓄の積立金などについて賃金からの控除を認めるものです。〔労働基準法第24条第1項〕

所得税や社会保険料など法定のものは、労使協定が無くても賃金から控除できますが、これ以外のものを賃金から控除する場合には、この協定が必要となります。

 

<休憩時間の一斉付与を免れるための労使協定>

休憩時間の一斉付与は、多くの事業で適用が除外されていますので、除外されていない事業について必要となります。〔労働基準法第34条第2項〕

運輸交通業、商業、金融広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署を除く事業で、休憩時間を従業員に一斉に付与しないのであれば、つまり時間をずらして休憩時間を与えるのであれば、この協定が必要となります。

 

<事業場外労働のみなし労働時間の労使協定>

事業場外で業務に従事した労働者について、労働時間を算定し難いときには、予め決められた労働時間だけ労働したものとみなすことができます。〔労働基準法第38条の2第1項〕

ただし、その業務を遂行するのに、通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、それがどれだけの時間であるかを労使協定で定め、労働基準監督署長に届け出る必要があります。〔労働基準法第38条の2第2項、第3項〕

 

<年次有給休暇の分割付与についての労使協定>

1年に5日分を限度として、時間単位の年次有給休暇の取得を可能にするものです。〔労働基準法第39条第4項〕

 

<解決社労士の視点から>

以上の他にも、労働基準法に規定されている労使協定は多数ありますし、育児・介護休業法や雇用保険法などにも労使協定についての規定が見られます。

労使協定書を作成、保管、届出しないというだけで、違法を指摘され罰則が適用されるというのは、つまらないことだと思います。

会社に必要な労使協定を再確認し、手続を確実にしたうえで、社内に周知し遵守することが大切です。

 

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