退職願を受理した後の退職日変更

2022/11/06|1,416文字

 

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(令和3(2022)年4月版)は、従業員の退職について、次のように規定しています。

 

【退職】

第50条  

前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。 

①退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して  日を経過したとき

 

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、労働契約の合意解除がなされたことになります。

これに対して、従業員が「退職願を提出して  日を経過したとき」は、会社側が退職の申し出を拒んだとしても、一定の日数の経過により労働契約が解除されるわけですから、従業員から会社に対する一方的な契約解除ということになります。

ここでは、「退職願」と言っていますが、「退職届」「辞職届」と呼んだ方がふさわしいでしょう。

結局、会社に退職願が提出されて会社が承認すればその時点で、承認しなくても定められた日数が経過すれば退職の効果が生じることになります。

 

<退職承認後の退職日変更>

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、この時点で労働契約の合意解除が成立しています。

ところが、早く転職先に入社したい、早く失業手当(雇用保険の基本手当)をもらいたいなどの理由から、従業員が退職願に記した退職日よりも早く退職したくなることもあります。

また、転職先から内定の取消を受けたり、思うように転職先が見つからなかったりすれば、退職願の退職日よりも遅く退職したくなることも、退職を撤回したくなることもあります。

こうして、従業員側から「退職日を早めたい」「退職日を遅らせたい」「退職を撤回したい」という要求が出たとしても、会社はこれに応じる義務がありません。

労働契約の合意解除は既に成立しているからです。

しかし、会社がこれに応じることは自由ですし、退職願の退職日とも従業員の退職希望日とも異なる新たな退職日を合意して決定することもできます。

こうしたことは、一般には就業規則に規定されていないのですが、労働契約の合意解除も、合意による変更も、労働基準法などに規制する規定が無いので、契約自由の原則から当然に認められることなのです。

 

<民法と就業規則>

正社員など期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。

また、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

なお、月給者の場合、月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日がたとえば20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要があります。〔民法第627条第2項〕

実際の就業規則には「退職願を提出して30日を経過したとき」あるいは「退職予定日の30日以上前に退職願を提出」などと規定されていることもあります。

これは、退職日や最終出勤日、引き継ぎなどについて、労使で話し合って決める合意退職を想定した規定です。

ですから、より早く退職したい労働者から、民法の規定を持ち出されると反論できません。

民法の趣旨からすると「遅くとも退職予定日の14日前までに退職願を提出」という規定にしておいて、退職希望者の会社に対する配慮に期待するしかないともいえるのです。

 

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