免許の取消と解雇

2022/05/09|758文字

 

<具体例>

タクシーの運転手が運転免許を取り消された、医師が医師免許を取り消された、となればもう働けないのだから解雇は当然という考えは常識でしょうか。

 

<法律では>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

では、免許の取消を解雇の理由としたら、客観的に合理的な理由になるのか、社会通念上相当と認められるのかは、基準が抽象的なので判断が容易ではありません。

 タクシーの運転手や医師が免許を剥奪されても、事務や営業の仕事ならできるでしょう。

そうなると、必ず解雇というのもどうなのでしょうか。

 

<紛争防止のために>

使用者が労働者を雇うにあたっては、労働条件通知書を交付します。

これは、罰則をもって使用者に義務付けられていることです。

その中の、「従事すべき業務の内容」の欄に、「運転免許を利用してのタクシー運送」「医師免許を利用しての診察・治療」と記載してあれば、免許を失えば業務ができないことも明確になります。

「退職に関する事項」の中の「解雇の事由及び手続」の欄に、解雇の事由として「自動車運転免許を失ったとき」「医師免許を失ったとき」と明記しておけば、免許の取消を解雇の理由とすることが明確になります。

タクシーの運転手として雇う、医師として雇うということが、明確に示されて雇用されたのなら、免許を失ったときに解雇するのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるといえます。

 

法的に正しい形式を整えるということは、常識的に正しいというのとは違います。

人を雇っていて、つまらないことで足元をすくわれないように、専門家である社会保険労務士にご相談いただけたらと思います。

 

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