2021/12/26|1,440文字
<働き方改革とは>
働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。
しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料を基に考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、日本全体で質の良い労働力を確保するための変革」といえるでしょう。
社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ、肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下してきます。
しかし、休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。
適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。
これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし、生産性は低下します。
また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。
社員のためだけでなく、そして企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。
社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。
<長時間労働の解消>
現在、大手企業を中心に最も進んでいる働き方改革といえば、残業時間を初めとする労働時間の削減でしょう。
労働時間の削減は、ひとつ一つの業務の必要性を見直すことが基本です。
過去からの習慣で行っている業務、得られる成果が経営陣の自己満足だけのような業務は最初に切り捨てられます。
これはこれで正しいのですが、労働者側の声として「働き方改革の影響で収入が減った。転職を考えている」というのがあります。
残業時間の減った正社員は、その分だけ残業手当が減り給与が減少します。
パート社員は時間給ですから、出勤日数や労働時間が減った分だけ収入が減ります。
会社側は、働き方改革で労働時間が減り、労働生産性が向上したということで喜んでいる一方、働き手の不満は膨らんでいるようです。
<正しい働き方改革>
「残業時間が減ったから残業手当も減った。バンザイ!」というのは、飽くまでも会社側の考えです。
収入が減れば、社員のモチベーションは低下します。
生活レベルも低下して疲労回復も限定されてしまいます。
会社への帰属感は低下します。
「この会社が好きだけど、今の仕事が気に入っているけれど、転職しないと生活できない」という社員も増えてしまいます。
こうした状態では、労働生産性が低下します。
やる気が無くなり、不安が先行しますから当たり前のことです。
社員は人間ですから、収入が減ればやる気が無くなります。
残業時間が減ったのなら、今までの残業分を定額残業代として支給してはいかがでしょうか。
残業代を不当に削るための定額残業代ではなく、働き方改革が進んだことへの報奨としての定額残業代です。
パート社員についても時給のアップを考えましょう。
採用難の中、ただでさえ人材確保のために時給を高めに設定する必要があります。
「皆さんのご協力のおかげで働き方改革が進んでいます。これに報いるため時給の見直しを行います」というアナウンスをすると効果的です。
たしかに形式的には、会社の人件費は少しも削減されません。
しかし、社員の疲労は軽減され、やる気は大幅にアップします。
これが正しい働き方改革の姿なのです。