賃金がマイナスになる場合

2022/11/17|1,426文字

 

<欠勤控除>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことを欠勤控除といいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。

欠勤控除は、主に月給制の場合に問題となります。

ただし、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

<法律の規定>

労働基準法その他の法令に、欠勤控除を直接定めた規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

これは、労働契約が「働いてください。賃金を支払います」「働きます。賃金を支払ってください」という労使の合意によって成り立っているので、労働者が働かなければ賃金を支払わなくても良いという理論です。

こうして、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります。

 

<時間単価の計算>

欠勤控除を考える場合、まず時間単価を計算します。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけて、1か月の所定労働時間を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が、時間単価となります。

このように、所定労働時間や所定労働日数は賃金の計算基準となるものですから、決めておかないと不都合を生じます。

 

<減額方式>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じます。

この不都合は、カレンダーから割り出した現実の所定労働日数が、給与計算上定められた形式的な所定労働日数を上回る場合に発生します。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から天引きしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

ですから、減額方式でマイナスになった場合にはゼロとして扱い、会社からの支払も労働者からの徴収もないこととするなど、規定に例外を設ける工夫が必要です。

 

<加算方式>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない2月など、その月のカレンダーから割り出した現実の所定労働日数が、給与計算上定められた形式的な所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。

この場合には、減額方式よりも明らかに不利になります。

 

<併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して、多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって、欠点を解消することができます。

 

<他の控除と欠勤控除が重なってマイナスの場合>

社会保険料を賃金から控除することは、法律上問題ありません。

しかし、欠勤控除をしたら賃金が少額となり、ここから社会保険料を控除するとマイナスになってしまう場合、これでよいのか迷ってしまいます。

それでも、欠勤控除だけでマイナスになる場合とは違い、マイナス分を別途労働者に請求することは問題ありません。

こうした例外的な場合についてまで、就業規則に細かく規定しておくことは稀でしょうから、会社と労働者とで話し合い決めればよいことです。

 

PAGE TOP