2022/10/17|1,295文字
<1か月単位の変形労働時間制の狙い>
会社としては、割増賃金支払いの基準が変わることで人件費の削減が期待できます。
労働者としては、日々の勤務時間数に変化が出ることでメリハリができ、勤務時間の短い日にプライベートを充実させたりリフレッシュしたりできます。
これは、働き方改革の流れにも沿った仕組みです。
<基本的な仕組み>
1か月単位の変形労働時間制では、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内となるように、労働日と労働日ごとの労働時間を設定します。そのようにシフトを組むわけです。
こうすることにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりしても、条件を満たすシフトの範囲内では、時間外割増賃金が発生しない仕組みです。〔労働基準法第32条の2〕
ここで特例措置対象事業場とは、常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業をいいます。
<必要な手続き>
労使協定または就業規則に必要な事項を定め、締結した労使協定や作成・変更した就業規則を、所轄労働基準監督署長に届け出ます。
常時使用する労働者が10人以上の事業場は、就業規則の作成・届出となります。
これは簡単な手続きで済みます。
<定めることが必要な事項>
・対象労働者の範囲
法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。
・対象期間と起算日
対象期間と起算日は、具体的に定める必要があります。たとえば、毎月1日を起算日として、1か月平均で1週間あたり40時間以内とするなどです。
・労働日と労働日ごとの労働時間
シフト表などで、対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。
一度定めたら、特定した労働日や労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。
・労使協定の場合にはその有効期間
労使協定を定める場合、労使協定の有効期間は対象期間以上の長さとなります。
一般的に、労使協定は有効期間を1年以内とすることが望まれます。
適切に運用するためには、見直しの機会を考えて、長くとも3年以内にしましょう。
<1か月単位の変形労働時間制が上手くいく条件>
メリットの多い制度ですが、導入する意味があるのは「少なくとも月1回は8時間を下回る勤務時間の日があること」です。
実態として、毎日少なくとも8時間は勤務するというのであれば、この制度を導入しても、会社にも労働者にもメリットがありません。
スーパーマーケットなどの小売業や、カラオケ店などの接客娯楽業では、正社員について、この制度を導入するメリットがない実態が見られます。
制度導入の前提として、正社員の仕事をパート社員やアルバイト社員にも割り振ることができるよう、教育に力を入れる必要があります。
「1か月単位の変形労働時間制を導入するため」という目的で、正社員による正社員以外への教育を強化すれば、それ自体が生産性の向上になるのですから、ぜひ取り組むことをお勧めします。