2022/07/21|1,247文字
<就業規則の改定>
従業員の一人ひとりに就業規則の冊子が配付されている会社で、いつの間にか内容が改定され、改定後の就業規則は配付されないということがあります。
その会社の責任者が一念発起して就業規則の冊子を作って配ったものの、その後は経費の関係で、あるいは人手不足の影響で、改定版までは作らなかったというパターンです。
この場合に、改定後の就業規則は有効なのでしょうか。
<就業規則の変更手続>
就業規則を変更する場合の手順は次のようになります。
・変更内容の社内決裁
・変更後の就業規則の作成
・変更した就業規則の周知(しゅうち)
・労働者代表などによる意見書の作成
・就業規則変更届の作成
・所轄労働基準監督署長への届出
そして、就業規則の変更内容が有効になるのは、 所轄労働基準監督署長への届出の時点ではなく、社内に周知した時点です。
<周知の重要性>
ここで、周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。
「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。
「就業規則の周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。
ところが、ここでの「周知」には、具体的内容について従業員全員に教えておくというほどの強い意味はありません。
周知の方法としては、従業員に配付する、常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける、パソコンやスマホなどでいつでも見られるようにしておくなどの方法があります。
会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。
たとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。
訴訟になれば、周知しない就業規則の効力は否定されます。
たとえ、所轄の労働基準監督署長に届出をしていなくても、周知した就業規則の効力は認められます。
もっとも、届出も義務づけられていますので、怠ることはできません。
<周知を怠ると>
会社が改定後の就業規則を周知したのに、たまたま気づかない従業員がいたという場合には、改定後の就業規則は、その従業員に対しても有効です。
しかし、会社が改定後の就業規則を周知しなかったので、これを知らない従業員がいたという場合には、改定後の就業規則は、その従業員に対しては無効です。
たとえ、労働基準監督署への届出が済んでいても、その従業員に対しては無効なのです。
働き方改革の一環で、平成31(2019)年4月1日から一定の労働者に対して、年5日以上の年次有給休暇を取得させる義務が労働基準法に規定されました。
このこととの関連で、就業規則を改定し年次有給休暇の取得日を会社が指定する仕組を定めた会社も多数あります。
普段から年次有給休暇の取得率が低い会社では、こうした改定は必須でしょう。
また、年次有給休暇を一斉に付与する労使協定を交わした会社も多いでしょう。
こうした労使協定も、就業規則と同様に周知しなければならないことを忘れないようにしましょう。