行動災害の予防対策の推進

2022/02/25|1,345文字

 

不注意による労災の防止

 

<基安発0209第1号通達>

令和4(2022)年2月9日、厚生労働省労働基準局安全衛生部長より都道府県労働局長に宛てて、小売業と介護施設等を中心に増加する転倒や腰痛による労働災害を予防する取組を推進するため、令和4年度より労働局において実施する事項に関する通達を発出しました。

 

<通達発出の背景>

令和4(2022)年1月時点(速報値)における死傷者数(新型コロナウイルス感染症の罹患による労働災害を除く)は、小売業と介護施設を中心に増加し、全体では平成29(2017)年同期比で9.0%の増加となっています。

事故の型別でみると、「転倒」及び腰痛等の「動作の反動・無理な動作」など、職場での労働者の作業行動を起因とする労働災害(行動災害)が増加しており、中には後遺障害を伴う重篤な災害も発生しています。

こうした状況から、小売業と介護施設を中心として行動災害を予防するための取組の強化が、喫緊の課題となっています。

この課題を解決するためには、行動災害の増加を労働分野の問題としてだけではなく、人材確保など企業の経営問題であるとして、事業者の行動変容を促し、自主的な安全衛生管理の定着を図る必要があります。

このため、都道府県労働局では、小売業と介護施設を中心とした行動災害の予防対策の推進について、令和4(2022)年度は、以下のような事項を実施することとしています。

 

<+(プラス)Safe 協議会(仮称)の設置および運営>

各労働局で、管内での波及効果が期待されるリーディングカンパニー、地方公共団体、関係団体等を構成員とする+Safe 協議会(仮称)を設置します。

構成員による連携した取組みとして、取組目標の設定、行動災害の予防に関する啓発資料等の作成を行うとともに、構成員の安全衛生管理の好事例を管内事業場へ水平展開を行います。

 

<+(プラス)Safe 育成支援(仮称)の実施>

+(プラス)Safe 協議会(仮称)の構成員に準ずる規模の小売業と介護施設の多店舗展開企業等を対象者として、自主的な安全衛生管理のスタートアップ支援を行います。

支援開始にあたっては、労働局で対象者の安全衛生管理の状況や課題を確認し、効果が高いと見込まれる対策を育成支援対象企業とともに検討し、育成支援対象企業の実情を踏まえつつ優先順位を付けた支援計画を作成したうえで、支援を行います。

 

<大規模ショッピングセンター等の施設管理者を通じた取組み>

労働局と労働基準監督署で、駅ビルや商店街、ショッピングモールなど、小売店や飲食店等が複数、密集して存在する施設の施設管理者と連携しつつ、各店舗の責任者が集まる会議の機会等に、啓発資料等を活用した周知啓発を行います。

 

<実務の視点から>

通達に掲げられた施策は、個人レベルでの安全衛生に対する意識啓発による行動変容の促進、企業レベルでの自主的な安全衛生活動の普及・定着を図るものです。

しかし、これらのことは、本来、行政が中心となって行うべきものではなく、企業が自主的に取組むべき施策です。

企業の積極的な取組により、安全で健康に働くことのできる職場環境を調えることができ、従業員の勤労意欲が向上し、生産性、定着率が高まるとともに、有能な人材の獲得も容易になると考えられます。

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