障害者の記事

2019/10/15|1,148文字

 

<障害者手帳>

障害者手帳には、身体障害者手帳、精神障害者福祉保健手帳、療育手帳の3つがあります。

こうした手帳を持っていることで、様々な福祉サービスを受けることができます。

また、仕事探しのときには、障害者雇用枠への応募が可能です。

障害者雇用率が段階的に引き上げられていることにより、企業も障害者の雇用には積極的にならざるを得ません。

 

<障害年金受給の基本3要件>

障害者を採用するにあたっては、障害年金の受給を前提に給与水準を考えてしまうこともあります。

しかし、障害者手帳を持っているからといって、障害年金を受給する資格があるとは限らないのです。

障害年金を受けるには、基本的に初診日、保険料の納付、障害の状態についての3要件を満たしていることが必要です。

 

【初診日要件=初診日が被保険者期間等にあること】

障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの期間にあること

① 国民年金または厚生年金に加入している期間(被保険者期間)

② 20 歳前または 60 歳以上 65 歳未満で国内に居住している期間

原則として、初診日が国民年金加入期間にあれば障害基礎年金、厚生年金加入期間にあれば障害厚生年金に振り分けられることになります。

初診日が不明であれば、この振り分けができないことになります。

 

【納付要件=保険料の納付要件を満たしていること】

次の①または②を満たしていること

① 初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上あること

② 初診日において65歳未満であり、初診日の属する月の前々月までの直近の1年間に保険料の未納期間がないこと(初診日が2026年4月1日前の場合の特例)

ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。

保険料を支払う経済的な余裕が無ければ、保険料の免除を受ければ良いわけです。何も手続きをしないうちに障害者になってしまうと、この納付要件を満たさないことがあります。

 

【障害要件=一定の障害の状態にあること】

① 障害認定日に、障害の状態が法令で定める障害の程度(障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級~3級)に該当すること

② 障害認定日後に、障害の程度が増進し、65 歳になるまでに障害の状態が法令で定められた状態に該当すること

障害認定日は、障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月をすぎた日、または1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日をいいます。

症状が固定することを、治癒(ちゆ)と言うことがあります。

障害基礎年金では、3級の障害には年金が支給されません。

 

解決社労士 柳田 恵一

<特別障害給付金制度の概要>

国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金等を受給していない障害者について、福祉的措置として「特別障害給付金制度」が設けられています。

 

<支給対象者>

支給の対象となるのは、次のうちのどちらかです。

 

1.平成3(1991)年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生 大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校の昼間部に在学していた学生です。

 昭和61(1986)年4月から平成3(1991)年3月までに限っては、専修学校、一部の各種学校が含まれます。ただし、定時制、夜間部、通信を除きます。

 

2.昭和61(1986)年3月以前に国民年金任意加入対象であった「勤め人(被用者等)の配偶者」であって、当時、任意加入していなかった期間内に初診日があり、現在、障害基礎年金の1級、2級相当の障害の状態にある人

 ただし、65歳に達する日の前日までにその障害状態に該当した人に限られます。

 

「勤め人(被用者等)の配偶者」とは以下の場合です。

 (1) 被用者年金制度(厚生年金保険、共済組合等)の加入者の配偶者

 (2) 上記(1)の老齢給付受給権者及び受給資格期間満了者(通算老齢・通算退職年金を除く)の配偶者

 (3) 上記(1)の障害年金受給者の配偶者

 (4) 国会議員の配偶者

 (5) 地方議会議員の配偶者(昭和37(1962)年12月以降に限る)

 

なお、障害基礎年金や障害厚生年金、障害共済年金などを受給することができる人は対象になりません。

また、給付金を受けるためには、厚生労働大臣の認定が必要になります。

 

<支給額>

障害基礎年金1級相当に該当:平成31年度基本月額52,150円(2級の1.25倍)

障害基礎年金2級相当に該当:平成31年度基本月額41,720円

特別障害給付金の月額は、前年の消費者物価指数の上昇下降に合わせて毎年度自動的に見直されます。

また、ご本人の所得が一定の額以上であるときは、支給額の全額又は半額が停止される場合があります。

老齢年金、遺族年金、労災補償等を受給している場合には、その受給額分を差し引いた額が支給されます。

老齢年金等の額が特別障害給付金の額を上回る場合は、特別障害給付金は支給されません。

 

<請求手続の窓口等>

原則として、65歳に達する日の前日までに請求する必要があります。

請求の窓口は、住所地の市区役所・町村役場です。

特別障害給付金の審査・認定・支給についての事務は日本年金機構が行います。

必要な書類等をそろえた場合でも、審査の結果、支給の要件に該当しないとき、あるいは支給の要件の確認ができない場合は不支給となります。

なお、給付金の支給を受けた場合には、申請により国民年金保険料の免除を受けることができます。申請は毎年度必要となります。

 

2019.08.08. 解決社労士 柳田 恵一

障害年金受給者が提出する障害状態確認届(診断書)などの手続きについて、一部変更がありましたので以下にご紹介します。

 

<障害状態確認届(診断書)の作成期間>

〔変更前〕

提出期限前1か月以内

〔変更後〕

提出期限前3か月以内

〔影 響〕

これまで誕生月の前月末頃に日本年金機構から送付されていた障害状態確認届(診断書)の用紙は、提出期限が令和元(2019)年8月以降となる対象者から、誕生月の3か月前の月末に送付されるようになります。

 

<障害給付額改定請求書に添付する診断書の作成期間>

〔変更前〕

提出日前1か月以内

〔変更後〕

提出日前3か月以内

〔影 響〕

令和元(2019)年8月以降に請求する分から変更となります。

 

<20歳前傷病による障害基礎年金受給者の所得状況届>

日本年金機構に提出していた所得状況届(ハガキ)は、日本年金機構が市区町村から情報提供を受けることになり提出不要となります。

ただし、例外的に日本年金機構が市区町村から情報提供を受けられない場合には、今までどおり提出が必要となりますので、届出に関する案内が対象者に送付されます。

 

<20歳前傷病による障害基礎年金の障害状態確認届(診断書)の提出時期>

〔変更前〕

7月末までに提出

〔変更後〕

誕生月の末日までに提出

〔影 響〕

障害状態確認届(診断書)の用紙は、提出期限が令和元年8月以降となる対象者から、誕生月の3か月前の月末に送付されるようになります。

 

2019.07.30. 解決社労士 柳田 恵一

<障害者数の不適切な計上>

障害者雇用率制度に関連して、多くの行政機関で、障害者である職員の不適切な計上があり、法定雇用率を達成していない状況が長年にわたって継続していた事実が報道され、国民の関心を集めました。

国が働き方改革を推進し、一億総活躍社会の実現を目指している中での報道ですから、かなりのインパクトがありました。

しかし、障害者雇用・就業の促進は、最近始まったことではなく長い歴史があります。

以下は、その概要です。

 

<身体障害者雇用促進法の制定>

諸外国で障害者の雇用法が制定されていたこと、ILO(国際労働機関)で職業更生勧告が採択されていたことなどを踏まえ、昭和35(1960)年、「身体障害者雇用促進法」が制定されました。

主に職業紹介、適応訓練、雇用率制度について定められ、雇用率制度については、公的機関は法的義務、民間企業は努力義務とされました。

 

<法定雇用率の法的義務化>

身体障害者の雇用が不十分なため、昭和51(1976)年、全ての企業に法定雇用率を義務付け、雇用納付金制度を創設しました。

このときの法定雇用率は1.5%でした。

 

<障害者の雇用の促進等に関する法律>

昭和56(1981)年の国際障害者年をきっかけに、法律の制定時から課題となっていた知的障害者に対する雇用率の適用に向けた動きが盛んになりました。

また、障害者の離職率の高まりについても対策が求められました。

そこで、昭和62(1987)年、法律の名称を「障害者の雇用の促進等に関する法律」とし、対象範囲を身体障害者から知的障害者や精神障害者を含む全ての障害者に拡大しました。

これによって、職業指導、職業訓練、職業紹介などの職業リハビリテーションの推進に必要な改正や、知的障害者を身体障害者と同様に実雇用率の計算に加える改正が行われました。

 

<知的障害者の雇用の義務化>

知的障害者の雇用が進展し、身体障害者の雇用の促進にも影響を及ぼすようになっていたことから、平成9(1997)年、知的障害者が雇用義務の対象とされ、障害者雇用率の算定基礎に加えられました。

 

<精神障害者の雇用対策の強化>

精神障害者の就業や在宅就業障害者が増加してきたため、平成17(2005)年には、精神障害者(手帳所持者)を実雇用率に算定できるようにしました。

また、在宅で就業する障害者に対して仕事を発注する事業主に、特例調整金などを支給するなどの改正が行われました。

 

<短時間労働者への適用拡大>

中小企業では障害者の雇用が低調に推移し、一方で短時間労働に対する障害者のニーズが高まったため、平成20(2008)年、障害者雇用納付金制度の適用対象が常用雇用労働者が300人以下の企業に拡大されました。

また、障害者の雇用義務の基礎となる労働者と雇用障害者に、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者が追加されました。

 

<障害者に対する差別の禁止と合理的配慮の提供義務>

「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、平成28(2016)年4月1日に施行されました。

①雇用の分野での障害者差別の禁止

②雇用の分野での合理的配慮の提供義務

③相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助

事業所の規模・業種に関わらず、すべての事業主が対象となりました。

対象となる障害者は、障害者手帳を持っている方に限定されません。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能に障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方が対象となりました。

 

<精神障害者の雇用義務化>

平成30(2018)年4月1日から、障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました。

法定雇用率が引き上げられ、精神障害者である短時間労働者の算定方法が変わりました。

 

2019.07.18. 解決社労士 柳田 恵一

<障害者の職業紹介状況>

令和元(2019)年6月18日に、厚生労働省が平成30(2018)年度の障害者の職業紹介状況を取りまとめ公表しました。

ハローワークを通じた障害者の就職件数は102,318件で、対前年度比4.6%の増となりました。また、就職率については48.4%で、前年度と同じ水準となりました。

 

<公表内容のポイント>

〇 新規求職申込件数は211,271件で、対前年度比4.5%の増となり、また、就職件数は102,318件で、対前年度比4.6%の増となった。このうち、精神障害者の新規求職申込件数は101,333件で、対前年度比8.1%の増となり、また、就職件数は48,040件で、対前年度比6.6%の増となった。

〇 就職率(就職件数/新規求職申込件数)は48.4%で、対前年度差0.0ポイントとほぼ前年並みとなった。

 

        就職件数   (対前年度差、比)   就職率(対前年度差)

身体障害者   26,841件   (85件増、0.3%増)  43.8%(0.4ポイント減)

知的障害者   22,234件 (1,247件増、5.9%増)  62.1%(3.4ポイント増)

精神障害者   48,040件 (2,976件増、6.6%増)  47.4%(0.7ポイント減)

その他の障害者 5,203件  (196件増、3.9%増)  40.4%(0.8ポイント減)

合計     102,318件 (4,504件増、4.6%増)  48.4%(0.0ポイント増)

 

○産業別の就職件数は、多い順に、「医療,福祉」(35,541件、構成比34.7%)、「製造業」(14,510件、同14.2%)、「卸売業,小売業」(12,607件、同12.3%)、「サービス業」(10,868件、同10.6%)などとなった。

○ 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第81条第1項の規定により、ハローワークに届出のあった障害者の解雇者数は、1,980人であった(平成29年度は2,272人)。

 

<障害者雇用率を達成するために>

障害者雇用を斡旋する専門業者もあります。

しかし、こうしてみるとハローワークも捨てたものではありません。

現在従業員がこなしている業務から、障害者が担当する業務を切り分けて、うまく役割分担ができたならダイバーシティ(適材適所)を叶えることができます。

ハローワークだけでなく、社会保険労務士も力になります。

 

2019.06.20. 解決社労士 柳田 恵一

平成31(2019)年4月09日、厚生労働省が民間企業における平成30(2018)年の「障害者雇用状況」集計結果を取りまとめ公表しました。

障害者雇用促進法では、事業主に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率、民間企業の場合は2.2%)以上の障害者を雇うことを義務付けています。

今回の集計結果は、同法に基づき、毎年6月1日現在の身体障害者、知的障害者、精神障害者の雇用状況について、障害者の雇用義務のある事業主などに報告を求め、それを集計したものです。

 

【集計結果の主なポイント】

<民間企業>(法定雇用率2.2%)※法定雇用率は平成30年4月1日に改定

 ○雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新。

  ・雇用障害者数は53万4,769.5人、対前年7.9%(3万8,974.5人)増加

  ・実雇用率2.05%、対前年比0.08ポイント上昇

 ○法定雇用率達成企業の割合は45.9%(対前縁比4.1ポイント減少)

 

以下、詳細についても、厚生労働省の報道発表資料を引用しておきます。

 

【雇用されている障害者の数、実雇用率、法定雇用率達成企業の割合】

・民間企業(45.5人以上規模の企業:法定雇用率2.2%)に雇用されている障害者の数は534,769.5人で、前年より7.9%(38,974.5人)増加し、15年連続で過去最高となった。

・雇用者のうち、身体障害者は346,208.0人(対前年比3.8%増)、知的障害者は121,166.5人(同7.9%増)、精神障害者は67,395.0人(同34.7%増)と、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きかった。

・実雇用率は、7年連続で過去最高の2.05%(前年は1.97%)、法定雇用率達成企業の割合は45.9%(同50.0%)であった。

 

【企業規模別の状況】

・企業規模別にみると、雇用されている障害者の数は、45.5~50人未満規模企業で4,252.5人、50~100人未満規模企業で50,674.5人(前年は45,689.5人)、100~300人未満で106,521.5人(同99,028.0人)、300~500人未満で46,877.0人(同44,482.0人)、500~1,000人未満で62,408.0人(同58,912.0人)、1,000人以上で264,036.0人(同247,683.5人)と、全ての企業規模で前年より増加した。

・実雇用率は、45.5~50人未満規模企業で1.69%、50~100人未満で1.68%(前年は1.60%)、100~300人未満で1.91%(同1.81%)、300~500人未満で1.90%(同1.82%)、500~1,000人未満で2.05%(同1.97%)、1,000人以上で2.25%(同2.16%)となった。なお、民間企業全体の実雇用率2.05%(同1.97%)と比較すると、500~1,000人未満及び1,000人以上規模企業が実雇用率以上となっている。

・法定雇用率達成企業の割合は、45.5人~50人未満規模企業で34.0%、50~100人未満で45.4%(前年は46.5%)、100~300人未満で50.1%(同54.1%)、300~500人未満で40.1%(同45.8%)、500~1,000人未満で40.1%(同48.6%)、1,000人以上で47.8%(同62.0%)となり、全ての規模の区分で前年より減少した。

 

【産業別の状況】

・産業別にみると、雇用されている障害者の数は、全ての業種で前年よりも増加した。

・産業別の実雇用率では、「農、林、漁業」(2.40%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(2.23%)、「医療、福祉」(2.57%)が法定雇用率を上回っている。

 

【法定雇用率未達成企業の状況】

・平成30年の法定雇用率未達成企業は54,369社。そのうち、不足数が0.5人または1人である企業(1人不足企業)が、64.0.%と過半数を占めている。

・また、障害者を1人も雇用していない企業(障害者雇用ゼロ企業)は31,439社であり、未達成企業に占める割合は、57.8%となっている。

 

【特例子会社の状況】

・平成30年6月1日現在で特例子会社の認定を受けている企業は486社(前年より22社増)で、雇用されている障害者の数は、32,518.0人であった。

・雇用者のうち、身体障害者は11,478.5人、知的障害者は16,211.0人、精神障害者は4,828.5人であった。

※特例子会社とは、親会社の実雇用率に算入できる、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社のことをいいます。

 

2019.04.12.解決社労士

<厚生労働省の発表>

平成30年8月22日、厚生労働省が「平成29年度使用者による障害者虐待の状況等」を取りまとめ公表しました。

労働基準監督署の上位の行政機関である都道府県労働局は、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下「障害者虐待防止法」)に基づき、都道府県などの地方公共団体と連携し、障害者を雇用する事業主や職場の上司など、「使用者」による障害者への虐待の防止や、虐待が行われた場合の関係法令に基づく是正指導などに取り組んでいます。

厚生労働省では、今回の取りまとめ結果を受けて、引き続き、地方公共団体との緊密な連携を図りながら、使用者による障害者虐待の防止のために取り組んでいくとのことです。

 

【ポイント】

 

1 通報・届出のあった事業所数、通報・届出の対象となった障害者数はいずれも前年度と比べ増加。

・通報・届出のあった事業所数    1,483事業所 (前年度比 12.7%増)

・通報・届出の対象となった障害者数    2,454人  ( 同 44.6%増)

 

2 虐待が認められた事業所数、虐待が認められた障害者数はいずれも前年度と比べ増加。

・虐待が認められた事業所数              597事業所 (前年度比 2.8%増)

・虐待が認められた障害者数               1,308人  (   同  34.6%増)

 

3 受けた虐待の種別は、経済的虐待が1,162人(83.5%)と最も多く、次いで心理的虐待が116人(8.3%)、身体的虐待が80人(5.7%)となっている。

 

 

<使用者とは>

使用者とは、法律の定義によると次のとおりです。

 

「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」〔労働基準法10条〕

 

ここでいう「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。

「使用者」というと、会社にいる人の一部というイメージなのですが、「労働基準法に基づく申請などについて事務代理の委任を受けた社会保険労務士が、仕事をサボってその申請などを行わなかった場合には、その社会保険労務士は労働基準法10条の使用者にあたり、労基法違反の責任を問われる」という内容の通達もあります。〔昭和62年3月26日基発169号〕

結局、労働基準法の他の条文や通達を全部合わせて考えると、「使用者」とは労働基準法で定められた義務を果たす「責任の主体」だということがわかります。

社会保険労務士は会社のメンバーではないのですが、労働基準法で義務づけられていることを、会社の代わりに行う場合には、その業務については「使用者」になるわけです。

また、人事部の中の担当者やお店で人事関係の事務を扱う人は「労働者」なのですが、労働基準法で義務づけられたことを行う場合には、その業務については「使用者」でもあるわけです。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮指針>

さて、障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔36条の2~36条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔36条の5〕

また、平成28(2016)年4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)年3月25日)

 

※正式名称は、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」と長く、具体的な内容を示すものですが、ここでは「合理的配慮指針」と呼びます。

 

この指針は、全ての事業主が障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないとしています。

また、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないとしています。

 

この内容からすると、たとえば視覚障害者に対しては、募集や採用試験にあたって点字や音声等による実施が求められることになります。

また、たとえば精神障害者に対しては、業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成し使用することや、本人の状況を見ながら業務量等を調整することなどが求められます。

 

人手不足の折、中小企業で障害者雇用の採用を考えた場合に、上記のような対応を求められたのでは、なかなか採用に踏み切れないでしょう。

実は、障害者雇用促進法の募集・採用、均等待遇、能力発揮についての規定には、「ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という但し書きが添えられています。〔36条の2、36条の3〕

これを受けて、合理的配慮指針にも、同様の内容が加えられています。

つまり各企業には、その規模や体力に応じた対応が求められているのであって、決して無理を強いられているのではないということです。

 

中小企業では、募集・採用にあたって経費のかかる配慮をしたり、勤務にあたって高額な設備を設けたりということではなく、相談相手を決めて親切に相談に応じるとか、チューター制度を設けてマンツーマンの指導を受けるようにするなどの配慮が求められています。

 

<経営者の責務>

法令や通達・指針によって、経営者には障害者に対する一定の配慮が求められているわけですから、使用者が隠れて障害者を虐待しないように監視する責務を負っています。

使用者が経営者から受けるストレスを、障害者にぶつけて解消するという現象も見られます。

経営者は、使用者のストレスも適切にチェックしていかなければなりません。

 

2018.08.26.解決社労士

<報道されていることの意味>

企業だけでなく行政機関でも、一定の割合で障害者を雇うことが法律で義務づけられています。

しかし今月に入り、国交省など複数の中央省庁や山形県が、障害者雇用者数を水増ししていたことが指摘されています。

企業が基準を上回る割合で障害者を雇用しなければ、経済的な負担を強いられます。

こうした中で、行政機関が障害者雇用者数を水増しするというのは、たとえ過失でもあってはならないことです。

以下に、障害者雇用納付金制度の概要を再確認したいと思います。

 

<障害者雇用納付金制度>

障害者の雇用には、事業主の経済的負担が伴います。

障害者を多数雇用している事業主と、障害者をほとんど雇用していない、あるいは、全く雇用していない事業主との経済的負担の格差の調整を図るために、障害者雇用納付金制度が設けられています。

具体的には、法定雇用率未達成の事業主から障害者雇用納付金を徴収し、それを財源とした障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金、在宅就業障害者特例報奨金、各種助成金を支給する制度です。

 

<障害者雇用納付金>

常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主で、法定雇用障害者数を下回っている事業主は、不足1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付します。

ただし、常用雇用労働者の総数が200人以下の事業主は、平成32(2020)3月までの分について、40,000円に減額されています(減額特例)。

 

<障害者雇用調整金>

常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主で、雇用障害者数が法定雇用障害者数を超えている場合は、超過1人につき月額27,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

 

<報奨金の支給>

常用雇用労働者の総数が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度合計数が一定数を超える場合、超える障害者1人につき月額21,000円の報奨金が支給されます。

ここで一定数とは、常用雇用労働者数の4%、または、各月6人(年間72人)のどちらか多い方をいいます。

 

<在宅就業障害者支援制度・助成金>

在宅就業障害者に仕事を発注する事業主に対する特例調整金・特例報奨金の制度があります。

障害者を雇い入れるための施設の設置、介助者の配置等に支給される助成金があります。

 

このように、障害者雇用に向けた努力が法定されているのに、行政機関が雇用している障害者の数を水増しするのは許されないということです。

最新情報は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 のページでご確認ください。

http://www.jeed.or.jp/disability/koyounoufu/

 

2018.08.22.解決社労士

<障害者手帳>

障害のある人が取得できる手帳全体を障害者手帳と呼んでいます。

この手帳を取得することで、各種福祉サービスを受けることができます。

大まかに分類すると、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳に分かれます。

取得するには、市区町村への申請が必要であり、申請の方法が市区町村によって異なっていたり、手続きが複雑であったりします。

そして、手帳の名称も全国で統一されているわけではありません。

 

<障害年金>

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金です。

障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたとき(初診日)に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。

このことから、障害年金を受け取ろうとする場合には、初診日を証明する必要があります。

障害年金は障害の程度により、障害基礎年金が1級と2級、障害厚生年金が1級から3級に区分されて支給されます。

また、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。

さらに、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件(保険料納付要件)が設けられています。

このように障害年金には、初診日の証明や保険料納付要件がありますので、障害者手帳を取得できたとしても、障害年金を受給できないことがあるのです。

 

<障害基礎年金の保険料納付要件>

国民年金に加入している間、または20歳前(年金制度に加入していない期間)、もしくは60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)に、初診日(障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日)のある病気やケガで、法令により定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にあるときは障害基礎年金が支給されます。

この障害基礎年金を受けるためには、初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていること(保険料納付要件)が必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

 

<障害厚生年金の支給>

厚生年金に加入している間に初診日のある病気やケガで障害基礎年金の1級または2級に該当する障害の状態になったときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。

また、障害の状態が2級に該当しない程度の軽い障害のときは3級の障害厚生年金が支給されます。

なお、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときには障害手当金(一時金)が支給されます。

この障害厚生年金・障害手当金を受けるためには、障害基礎年金の保険料納付要件を満たしていることが必要です。

 

2018.06.15.解決社労士

<障害者の職業紹介状況の概要>

平成30(2018)525日、厚生労働省から平成29(2017)年度の障害者の職業紹介状況が公表されました。

ハローワークを通じた障害者の就職件数は97,814件で、対前年度比4.9%の増となりました。

また、対前年比の就職件数では身体障害者が減少し、知的障害者・精神障害者は増加していますが、就職率は低下しています。

 

<数値データ>

・新規求職申込件数は202,143件で、対前年度比5.4%の増となり、また、就職件数は97,814件で、対前年度比4.9%の増となりました。

このうち、精神障害者の新規求職申込件数は93,701件で、対前年度比9.0%の増となり、また、就職件数は45,064 件で、対前年度比8.9%の増となりました。

・就職率(就職件数/新規求職申込件数)は48.4%で、対前年度差0.2 ポイントの減となりました。

・産業別の就職件数は、多い順に、「医療,福祉」(35,566 件、構成比36.4%)、「製造業」(13,595件、同13.9%)、「卸売業,小売業」(12,412件、同12.7%)、「サービス業」(10,288件、同10.5%)などとなりました。

・障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第81条第1項の規定により、ハローワークに届出のあった障害者の解雇者数は、2,272人であった(平成28年度は1,335人)。

 

障害者雇用について、ハローワークの機能も強化されてきているようです。

障害者雇用をサポートする会社も多数ありますが、ハローワークの活用を忘れないようにしたいものです。

 

2018.05.31.解決社労士

<調査の趣旨>

申告申請の内容が適正であるかを確認するため、毎年度、一定数の事業主が抽出され、訪問調査が行われます。これには、納付金申告を行っていない事業主の申告義務の有無確認が含まれます。

すべての事業主を対象として、毎年調査することはできないため、数年に分けて行っています。事業主から見れば、数年に1回調査が入るということになります。

この調査は、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づくものです。〔障害者雇用促進法52条〕

資料の提出拒否や虚偽の報告等は、罰せられることがありますのでご注意ください。〔障害者雇用促進法86条〕

 

<事業所調査の概要>

原則として、申告申請年度を含む直近3か年の各月における常用雇用労働者数や雇用障害者の雇用を裏付ける資料を確認します。

●常用雇用労働者の総数確認

・常用雇用労働者の範囲

・法定雇用障害者数の算定基礎となる労働者数

●雇用障害者の確認

・障害の種類と程度

(障害者手帳等の写しは退職後も3年間は保管が必要です)

・雇用関係と労働時間数

 

<調査対象となる資料>

・全労働者の労働者名簿、賃金台帳、雇用契約書等

(これらは労働基準法により罰則付きで義務付けられています)

・全労働者の勤務(就労)状況が確認できる出勤簿、タイムカード、勤怠表等

・その他、労働者の雇用に関する資料

 

<調査結果による対応>

調査の結果に基づき、次のような手続きがとられます。

●申告した納付金の額が過少であった場合

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が納付金の額を決定し、納入の告知を行います。この場合、その納付すべき額に10%を乗じて得た額の追徴金が加算されます。

●申告した納付金の額が過大であった場合

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が納付金の額を決定し、すでに納付した納付金の額のうち、過大となっている額がある場合には、未納の納付金に充当し、なお残余があるとき又は未納の納付金がないときは還付します。

●支給を受けた調整金等の額が過大であった場合

対象事業主は、最大過去10年に遡って支給額の全部または一部を返還することになります。

 

最新情報は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 のページでご確認ください。

http://www.jeed.or.jp/disability/koyounoufu/

 

2018.04.17.解決社労士

<法定雇用率の引き上げ>

平成30(2018)年4月1日、民間企業における障害者の法定雇用率が、2.0%から2.2%に引き上げられました。

さらに、平成33(2021)年4月までには2.3%に引き上げとなります。

事業主ごとの障害者雇用率は、原則として、次のように計算されます。

障害者の実雇用率 = 障害者である労働者の数 ÷ 労働者の数

 

<労働者の数>

障害者の実雇用率を計算するときの「労働者」は、常時雇用している労働者(常用労働者)をいいます。

常用労働者に当てはまるのは、1年以上継続して雇用されている人と、1年以上継続して雇用される見込みの人のうち、1週間の所定労働時間が20時間以上の人です。これには、障害者も含みます。

ただし、1週間の所定労働時間が30時間以上の人は、1人をそのまま1人と数えますが、20時間以上30時間未満の人は、1人を0.5人として数えます。

ここで、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を「短時間労働者」と呼びます。

このように、障害者の実雇用率を計算するときには、1年以上の継続雇用を前提として、1週間の所定労働時間で区分しますから、正社員、パート社員、アルバイトなどの区分が当てはまらないことになります。

 

<障害者である労働者の数>

障害者には、身体障害者だけでなく、知的障害者、精神障害者を含めて数えます。

身体障害者と知的障害者のうち重度の人を「重度障害者」と呼びます。

たとえば、身体障害者障害程度等級表の1~2級に該当、もしくは3級に該当する障害を2以上重複していることで2級とされる人は「重度身体障害者」です。

この重度障害者の場合には、短時間労働者なら1人をそのまま1人と数えます。短時間労働者でなければ、1人を2人と数えます。

また、重度障害者ではない障害者の場合には、短時間労働者なら1人を0.5人として数えます。短時間労働者でなければ、1人をそのまま1人と数えます。

 

2018.04.15.解決社労士

<障害者雇用率>

障害者雇用率とは、雇用している障害者数の常用労働者数に対する割合を示したものです。

民間企業も、地方自治体などの行政機関も、法定の障害者雇用率を達成することが義務付けられています。

 

<障害者の法定雇用率>

障害者雇用率制度は、昭和35(1960)年に身体障害者雇用促進法で初めて導入されました。

このとき、民間企業には努力義務として、工場などの現場的事業所が1.1%、事務的事業所が1.3%と定められました。

これが、昭和43(1968)年には、すべての事業所で一律1.3%になりました。

さらに、昭和51(1976)年には1.5%となり、努力義務から法的義務に高められました。

その後、昭和63(1988)年に1.6%、平成9(1997)年に1.8%、そして平成25(2013)年に2.0%へと上昇しています。

平成302018)年4月現在、民間企業は2.2%、特殊法人は2.3%、国や地方公共団体は2.3%、都道府県などの教育委員会は2.2%となっています。

このように法定雇用率は、法改正を重ねるたびに引き上げられ、民間企業では年々障害者の雇用者数が増加し、障害者雇用率も上昇してきています。

今後の予定として、平成30(2018)4月から3年以内に、民間企業の法定雇用率は2.3%になります。国等の機関も0.1%引き上げられる予定です。

 

<法定雇用率が適用される事業主の範囲>

平成30(2018)41日から、現在の法定雇用率となりましたが、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲も、従業員50人以上から45.5人以上に変わりました。

法定雇用率が2.3%となれば、対象となる事業主の範囲は、従業員43.5人以上に広がります。

また、対象事業主は、毎年61日時点の障害者雇用状況を、ハローワークに報告しなければなりません。

 

<計算の対象となる障害者>

現在の障害者雇用促進法では、以下の障害者を「対象障害者」としています。〔372項〕

・身体障害者

・知的障害者

・精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の所持者に限る)

障害者であることの確認は、障害者の種類ごとに定められた方法、たとえば、身体障害者手帳の交付の有無、または知的障害者判定機関の判定書などを用いて行います。

 

2018.04.12.解決社労士

<解雇の意味>

雇い主から「この条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。

労働契約は口頭でも成立します。ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。

解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法16条〕

普通解雇は、この制限を受けることになります。

 

<懲戒処分の制限>

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」という規定があります。〔労働契約法15条〕

労働契約法の15条と16条は、重複している部分があるものの、15条の方により多くの条件が加わっています。

懲戒処分は、この厳格な制限を受けることになります。

 

<懲戒解雇の有効要件>

懲戒解雇というのは懲戒+解雇ですから、懲戒の有効要件と解雇の有効要件の両方を満たす必要があります。

普通解雇は、解雇の有効要件だけ満たせば良いのですから、懲戒解雇よりも条件が緩いことは明らかです。

 

<懲戒解雇と普通解雇の有効要件の違い>

そして、条文上は不明確な両者の有効要件の大きな違いは次の点にあります。

まず懲戒解雇は、社員の行った不都合な言動について、就業規則などにぴったり当てはまる具体的な規定が無ければできません。しかし普通解雇ならば、そのような規定が無くても、あるいは就業規則が無い会社でも可能です。

また懲戒解雇の場合には、懲戒解雇を通告した後で、他にもいろいろと不都合な言動があったことが発覚した場合にも、後から判明した事実は懲戒解雇の正当性を裏付ける理由にはできません。しかし普通解雇ならば、すべての事実を根拠に解雇の正当性を主張できるのです。

ですから懲戒解雇と普通解雇とで、会社にとっての影響に違いが無いのであれば、普通解雇を考えていただくことをお勧めします。特に、両者で退職金の支給額に差が無い会社では、あえて懲戒解雇を選択する理由は乏しいといえます。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮>

障害者を採用した場合や、健常者である社員が障害者となった場合には、会社が障害者雇用促進法に基づく合理的配慮を求められます。

こうした配慮が不十分であれば、解雇を通告しても、労働契約法16条にいう解雇権の濫用とされ、解雇が無効となる可能性が高くなります。

ましてや、知的障害者や精神障害者の懲戒解雇となれば、そのハードルは更に高くなります。

懲戒処分の対象となる行為の原因が、知的障害や精神障害である可能性もあり、これに対して、戒めて反省を求めるための懲戒処分が無意味なケースもあるからです。

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和351960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔36条の236条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔36条の5

また、平成282016)年4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)325日)

この指針を参考にして、会社が十分な取り組みを行ってきたのでなければ、解雇を有効に行うことはむずかしいのです。

 

<解雇を検討するよりも>

結論としては、会社が一方的に普通解雇や懲戒解雇をするのではなく、障害者本人、家族、主治医、産業医などとよく話し合い、会社が対応しきれないことを説明して、合意による退職を目指すのが現実的です。

会社が誠実に説明すれば、家族が本人の説得に回ってくれることもあります。

それでも合意できない場合には、病状により休職を命じることも考えます。客観的に見て、懲戒解雇の検討対象となるような行動が現れたのなら、医師から病状が重いと判断されることが多いでしょう。

「あの対応で本当に良かったのだろうか」という疑問を残さないよう、慎重に対応しましょう。

 

2018.03.17.解決社労士

<いじめが疑われる場合>

障害者に対する偏見などにより、同僚からいじめられていたり、上司からパワハラを受けていたりすることによって、本来の能力を発揮できないことがあります。

また、求められている能力を発揮して業務をこなしているにもかかわらず、周囲から仕事ぶりについて悪く言われていることもあります。

この場合には、会社のトップや人事担当者が障害者と面談して、いじめの事実が無いか確認する必要があります。

そして、本人がいじめの事実を認めた場合でも、他に被害者がいないか、目撃者はいないかなどの調査を会社が始めると、告げ口したとされて、かえっていじめがエスカレートしてしまう危険があります。

会社が、いじめ、パワハラ、障害者について、きちんとした社内教育をしないうちに、障害者を迎え入れてしまうのは、危険だということです。

それでも、法定の障害者雇用率の段階的な上昇により、障害者の雇用が難しくなりつつありますから、急ぐあまり、態勢が整わないうちに採用してしまうこともあります。

こうした場合には、すぐに犯人探しに走るのではなく、研修などの社内教育をする旨の全社告知をしたうえで、計画的に進めるのが得策です。

 

<メンタルヘルス不調が疑われる場合>

身体障害やいじめなどが原因で、精神疾患にかかっている場合もあります。また、元々あった精神疾患が悪化している場合もあります。

これらの場合には、上司や同僚から不自然な言動についての情報が入ることもあります。会社のトップや人事担当者が障害者と面談して、受け答えや態度に疑問を抱くようであれば、専門医の受診を促すようにします。

程度によっては、ご家族、支援機関、主治医、産業医との連動も必要になります。

精神疾患により、正常に勤務できないのであれば、会社のルールに従い休職などの手続きを取ることになります。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮>

障害者を採用した場合や、健常者である社員が障害者となった場合には、会社が障害者雇用促進法に基づく合理的配慮を求められます。

こうした配慮が無いために、障害者が能力を発揮できないのであれば、会社側に問題があることを素直に認め、合理的な配慮を実施しなければなりません。

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和351960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔36条の236条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔36条の5

また、平成282016)年4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)325日)

この指針を参考にして、会社としての取り組みを進めましょう。

 

<解雇の検討>

以上の問題をクリアしたうえで、尚、障害者が思うように働いてくれない場合には、普通解雇を検討することになります。

しかし、障害者の場合には、会社側の努力が求められている分だけ、能力不足を理由とする解雇が困難です。

採用にあたっては、何をどこまで期待するのかについて、具体的な人材要件を文書化し、本人に説明して交付しておくことをお勧めします。

できれば3か月程度の試用期間を置き、定期的に必要な人材要件と本人の働きぶりとを対照しつつ面談を行って、本採用に至らない場合でも、納得が得られるようにしておくと良いでしょう。

 

2018.03.16.解決社労士

<解雇は無効とされやすい>

社員が障害者になったら、「ある程度面倒は見るけれど、今まで通り働けないのなら、退職を申し出て欲しい」というのが、経営者の本音だと思います。

それでも、本人から退職の申し出が無ければ、説得して退職を申し出てもらうように働きかけるでしょう。これに応じてもらえれば、退職勧奨に応じての退職ということで、その人は失業手当(雇用保険の基本手当)も有利に受給できます。

しかし、本人の愛社精神が強ければ、働きたいと思うはずです。経営者としては、こうした本人の想いに応えたい反面、止むを得ず解雇を考えることでしょう。

しかし解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

裁判になれば、この条文の中の「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」というのは、経営者の考え方や世間の常識ではなく、裁判官の解釈が基準になります。

ですから、安易に懲戒解雇を行うのは危険です。実際に発生している具体的な事実に照らして、関連する判例を数多く調べたうえで、懲戒解雇を検討しなければなりません。

多くの中小企業では、社外の専門家の手助けを必要とするでしょう。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮指針>

さらに、障害者については法令による保護が強化されています。

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和351960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔36条の236条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔36条の5

また、平成282016)年4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)325日)

 

※正式名称は、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」と長く、具体的な内容を示すものですが、ここでは「合理的配慮指針」と呼びます。

 

<合理的配慮指針の基本的な考え方>

全ての事業主は、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないとしています。

また、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないとしています。

 

<中小企業での対応>

しかし、中小企業で社員が障害者となった場合に、上記のような対応を求められたのでは大変でしょう。

実は、障害者雇用促進法の募集・採用、均等待遇、能力発揮についての規定には、「ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という但し書きが添えられています。〔36条の236条の3

これを受けて、合理的配慮指針にも、同様の内容が加えられています。

つまり各企業には、その規模や体力に応じた対応が求められているのであって、決して無理を強いられているのではないということです。

 

中小企業では、何が何でも障害者となった社員を解雇してはならないということではなく、ご本人と親身になって相談したうえで、会社ができる限りのことをしても限界があるのなら、解雇もやむを得ないということになります。

 

2018.03.15.解決社労士

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮指針>

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和351960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔36条の236条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔36条の5

また、平成282016)年4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)325日)

 

※正式名称は、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」と長く、具体的な内容を示すものですが、ここでは「合理的配慮指針」と呼びます。

 

<合理的配慮指針の基本的な考え方>

全ての事業主は、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないとしています。

また、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないとしています。

 

この内容からすると、たとえば視覚障害者に対しては、募集や採用試験にあたって点字や音声等による実施が求められることになります。

また、たとえば精神障害者に対しては、業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成し使用することや、本人の状況を見ながら業務量等を調整することなどが求められます。

 

<中小企業での対応>

人手不足の折、中小企業で障害者の雇用を考えた場合に、上記のような対応を求められたのでは、なかなか採用に踏み切れないでしょう。

実は、障害者雇用促進法の募集・採用、均等待遇、能力発揮についての規定には、「ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という但し書きが添えられています。〔36条の236条の3

これを受けて、合理的配慮指針にも、同様の内容が加えられています。

つまり各企業には、その規模や体力に応じた対応が求められているのであって、決して無理を強いられているのではないということです。

 

中小企業では、募集・採用にあたって経費のかかる配慮をしたり、勤務にあたって高額な設備を設けたりということではなく、相談相手を決めて親切に相談に応じるとか、チューター制度を設けてマンツーマンの指導を受けるようにするなどの配慮が求められるのでしょう。

 

2018.03.13.解決社労士

<法定雇用率の引き上げ(平成3041日)>

民間企業における障害者の法定雇用率が、2.0%から2.2%に引き上げられます。

さらに、平成334月までには2.3%に引き上げとなります。

事業主ごとの障害者雇用率は、次のように計算されます。

障害者の実雇用率 = 障害者である労働者の数 ÷ 労働者の数

 

<精神障害者の特例措置>

平成291222日開催の「第74回 労働政策審議会障害者雇用分科会」で、障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案が示されました。

これには、精神障害者である短時間労働者に関するカウント方法についての特例措置が含まれています。

 

精神障害者である短時間労働者であって、新規雇入れから3年以内の者または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の者については、雇用率を計算する場合の障害者数のカウントで、平成35331日までに雇い入れられた者等については、1人をもって1人とみなすこととする。

 

わかりにくいですが、現在は精神障害者である短時間労働者を0.5人とカウントしています。

これを1人とカウントすることにより、計算上の障害者雇用率が上がることになるわけです。

 

<特例措置の例外>

退職後3年以内に、同じ事業主(子会社特例、関係会社特例、関係子会社特例、特定事業主特例の適用を受けている事業主の場合は、これらの特例の適用を受けている、その事業主以外の事業主を含む)に再雇用された場合は、特例の対象とはしません。

 

<発達障害の場合>

発達障害により知的障害があると判定されていた者が、その発達障害により精神障害者保健福祉手帳を取得した場合は、判定の日を、精神保健福祉手帳取得の日とみなします。

 

2017.12.30.解決社労士

<法定雇用率の引き上げ>

民間企業における障害者の法定雇用率が、2.0%から2.2%に引き上げられます。

さらに、平成33年4月までには2.3%に引き上げとなります。

事業主ごとの障害者雇用率は、次のように計算されます。

障害者の実雇用率 = 障害者である労働者の数 ÷ 労働者の数

 

<対象事業主の範囲拡大>

今回の法定雇用率の変更に伴い、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、従業員50人以上から45.5人以上に変わります。また、その事業主には、以下の義務があります。

・毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければなりません。

・障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めなければなりません。

 

<端数の意味>

45.5人以上」と基準の従業員数に端数が入っています。これは、週所定労働時間が30時間以上の従業員は1人としてカウントしますが、短時間労働者(週所定労働時間が20時間以上30時間未満の従業員)は0.5人としてカウントするからです。

身体障害者または知的障害者である短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満の従業員)も0.5人としてカウントします。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

どうやって採用対象となる障害者を探したら良いのかについては、所轄のハローワークで相談できます。

障害者を新たに迎え入れるにあたって、必要な就業規則の変更や、従業員の教育・研修、雇用開発助成金の活用については、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.07.13.解決社労士