労働安全衛生の記事

2021/10/11|1,688文字

 

暑すぎる職場寒すぎる職場https://youtu.be/Cxs2OPz37Iw

 

<労働安全衛生法>

快適な職場環境の形成について、基本的なことを定めているのは労働安全衛生法です。

略して安衛法と呼びます。

安衛法の目的について、第1条が次のように規定しています。

 

第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

 

つまり、この法律は、次の2つのことを目的としています。

・労災を防止して労働者の安全と健康を確保する

・快適な職場環境の形成を促進する

 

<事業者の講ずる措置>

そして、快適な職場環境の形成を促進するために、会社など事業者に次のような義務を課しています。

 

第七十一条の二 事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない

一 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置

二 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置

三 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備

四 前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置

 

この条文の「努めなければならない」というのは、努力義務であることを示しています。

努力義務というのは、法律の規定に違反しても、刑事罰や過料等の法的制裁を受けない義務です。

結局、守られるか否かは当事者の任意の協力次第ですし、守られているか否かの判断も当事者の評価に委ねられることになります。

 

<快適職場指針>

会社など事業者が快適な職場環境の形成を促進する義務については、労働安全衛生法に基づき、厚生労働省が「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」を定めています。

その中の「温熱条件」という項目には、次のように定められています。

 

屋内作業場においては、作業の態様、季節等に応じて温度、湿度等の温熱条件を適切な状態に保つこと。

また、屋外作業場については、夏季及び冬季における外気温等の影響を緩和するための措置を講ずることが望ましいこと

 

<事務所衛生基準規則>

さらに、事務所内で事務作業に従事する労働者については、空気調和設備等による調整が可能である場合に限定して、事務所衛生基準規則に次の規定があります。

 

第五条 事業者は、空気調和設備又は機械換気設備を設けている場合は、室に供給される空気が、次の各号に適合するように、当該設備を調整しなければならない。

3 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない

 

これによると、事務所内は気温が17℃以上28℃以下、湿度が40%以上70%以下というのが基準になります。

つまり、年間を通してこの範囲内にあれば、法令の基準を満たしていることになります。

それでもなお、「暑い」「寒い」という話が出てくるのであれば、話し合いによる調整が必要となります。

 

<働き方改革との関係で>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

ひとり一人の労働者が「暑い」「寒い」ということで生産性が低下しているのであれば、温度環境を整えることで生産性が向上するのは目に見えています。

設備投資と電気代を人件費と比べるだけでなく、定着率の向上や採用の困難性を考えて、どこまでの対応が必要なのか、経営者としての判断は難しいのかもしれません。

それでも、蒸し暑い部屋で採用面接を行った場合と、快適な室内で採用面接を行った場合とでは、辞退者の人数に違いが出てくるのではないでしょうか。

2021/07/14|1,903文字

 

労働基準監督官の行動規範https://youtu.be/gmncel00ZWc

 

<労働基準監督署への申告>

労働基準監督署への申告については、労働基準法に次の規定があります。

 

【監督機関に対する申告】

第百四条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

 

申告事案は、最低労働基準を定めた労働基準法などに違反するとして、労働者が労働基準監督署に救済を求めるものですから、労働基準監督署では、労働者が置かれた状況に配慮し、懇切・丁寧な対応に留意しつつ、迅速・的確に処理を行っています。

 

<令和2(2020)年の申告>

申告受理件数は3,965件で、前年と比べ159件(3.9%)減少しました。

直近10年間の申告受理件数の推移をみると、平成23(2011)年の6,460件をピークとして、その後減少が続いていましたが、平成29(2017)年に増加に転じ、平成30(2018)年も引き続き増加していたところ、平成31年(令和元年)以降再び減少に転じています。

申告を内容別にみると、賃金不払が 3,075 件(前年比 6.1%減)で最も多く、業種別では、接客娯楽業(22.3%)、商業(16.1%)、保健衛生業(11.8%)の順となっています。

次いで、解雇が 622 件(前年比 11.7%増)となっており、業種別では、同じく接客娯楽業(27.5%)、商業(15.4%)、保健衛生業(10.3%)の順となっています。

具体的な申告事例としては、次のようなものが公表されています。

 

<賃金不払>

退職した労働者から、退職月の賃金が一部支払われていないとの申告を受け、調査したところ、退職月の賃金額が約定した金額を下回る東京都最低賃金の金額まで減額されていたことが判明した。(その他の事業)

 

労働者が、会社側と感情的に対立したまま退職し、会社側が賃金の一部を支払わないということがあります。

しかし、賃金の全額を支払わないことは、労働基準法違反の犯罪となりますから、会社側がこうした手段に出ることは避けなければなりません。

 

<休業手当不払>

パート労働者から、会社から休業を命じられて休業しているにもかかわらず、休業手当が支給されないとの申告を受け、調査したところ、正社員以外には休業手当を支給していないことが判明した。(接客娯楽業)

 

労働基準法に規定されている労働者の権利には、正社員限定とされているものがありません。

非正規社員には、同一労働同一賃金についての認識も強まっていますので、不公平な格差は是正されなければなりません。

 

<割増賃金不払>

退職した労働者から、在職中の割増賃金が支払われていなかったとの申告を受け、調査したところ、1か月単位の変形労働時間制を採用していないにもかかわらず、1か月単位の変形労働時間制を採用したものとして時間外労働として計算していたことが判明した。(教育・研究業)

 

1か月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制など、変形労働時間制は法定の手続を踏み、それぞれの制度に特有の正しい賃金計算が必要です。

なんとなく、それらしき制度を運用し、誤った賃金計算を行えば、当然に労働基準法違反となってしまいます。

 

<解雇>

解雇された労働者から、即時解雇されたにもかかわらず、解雇予告手当が支払われていないとの申告を受け、調査したところ、解雇予告手当の支払いを行わないまま即時解雇したことが判明した。(接客娯楽業)

 

解雇予告手当の支払が不要なのは、労働基準法に示された例外に該当する場合だけです。

会社側の裁量で支払わないことは許されません。

即時解雇であれば、特殊なケースを除き、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払が必要となります。

 

<労働時間>

労働者から、違法な時間外労働を行っているとの申告を受け、調査したところ、36協定の上限時間を超えて、月100時間を超える時間外労働、または2か月平均で80時間を超える時間外労働を行わせていたことが判明した。(その他の事業)

 

36協定違反や労働基準法の上限を超える時間外労働は違法です。

こうしたことが発生する恐れがある場合には、緊急避難的に会社全体の業務量を削減する必要があるかもしれません。

また、採用の強化や定着率の向上も大事です。

 

<解決社労士の視点から>

そもそも業界の常識が、労働基準法違反ということも多々あります。

常識を疑い、法令などの情報源に遡って確認することが、経営者に求められています。

2021/07/11|934文字

 

労災保険は自動加入https://youtu.be/LHPgv8RJ0RI

 

<送検状況の公表>

令和3(2021)年6月29日、東京労働局管内での令和2年度の送検状況が公表されました。

労働基準法や労働安全衛生法などには罰則があり、この罰則に触れる行為は犯罪ですから、刑法犯同様に送検されることがあるわけです。

公表内容から、東京労働局と管下の労働基準監督署が、どのような事件を送検しているのか、実態を把握することができます。

 

<送検状況の概要>

令和2(2020)年4月から令和3(2021)年3月までの1年間に、管下の労働基準監督署(支署)では、70件(前年度に比べ30件増加)の司法事件が東京地方検察庁に送検されました。

その内容を見ると、危険防止措置に関する違反が19件となっているなど、労働安全衛生法違反の事案が大幅に増加しています。

また、賃金・退職金不払に関する違反(16件)、割増賃金不払に関する違反(8件)も多く見られます。

業種別で見ると、建設業(19件)が最も多く、次いで商業及び清掃・と畜業が11件となっています。

 

<違反事項の内容>

労働基準法・最低賃金法違反により送検されたのは34件で、主な送検事項は、賃金・退職金不払に関する違反が16件、割増賃金不払に関する違反が8件、労働時間・休日に関する違反が5件でした。

労働安全衛生法違反により送検されたのは36件で、主な送検事項は、危険防止措置に関する違反が19件(このうち、墜落・転落災害に関する違反が14件)、労災隠しが4件でした。

 

<今後の対応>

東京労働局及び管下の労働基準監督署(支署)では、法違反を原因として重大な労働災害を発生させたものや、同種の法違反を繰り返し、遵法状況に悪影響を及ぼすもの等、重大・悪質な事案に対しては、引き続き、送検も含め厳正に対処していくとしています。

 

<解決社労士の視点から>

最近になって、全国的に労災事故が増加傾向にあります。

こうした中で、法違反が原因での重大な労災事故は、1発アウトで送検されることもあります。

また、労基署の立入検査(臨検監督)を受け、交付された是正勧告書に応じて改善報告書を提出したにもかかわらず、再び同じ違法行為を行ってしまえば、悪質と認定される可能性は極めて高くなります。

こうしたことに留意して、遵法経営を目指しましょう。

2021/03/22|1,574文字

 

<自主点検表>

自主ですから「自社はどうなのか」ということで、自己点検に用いるのが本来の趣旨です。

しかし現実には、所轄の労働基準監督署から送られてきて、自己点検を迫られるのです。

「この点検表は、御社の労務管理が労働基準法等に照らして問題ないかを自ら点検し、問題があれば自主的に改善するきっかけとしていただくためのものです。それぞれの設問の回答のうち、御社に当てはまるものを選んでください」という、やんわりとした説明が加えられています。

しかし、「自主点検した結果は、別紙「労働条件に関する自主点検結果報告書」に転記の上、同封の返信用封筒を用いて◯月◯日までに、御返送いただきますようお願いします」ということになっていますから、決して自主的なものではありません。

 

<労働基準監督署の監督>

自主点検結果に違法な項目があれば、所轄の労働基準監督署から立入調査(臨検監督)が入ります。

「問題があれば自主的に改善するきっかけとしていただく」ということですから、自主点検結果報告書を提出してから一定の期間を経過していれば、改善済みになっている筈という建前です。

改善が滞っていれば、当然に行政指導が入ります。

指導が入れば、これに対して改善内容の報告をする義務があります。

かといって、自主点検結果報告書の提出を怠っても立入調査の対象となりますし、虚偽の報告に対しては罰則の適用もありえます。

 

<所定労働時間>

一般の事業では週40時間、労働者数10人未満の商業・接客娯楽業等の事業場では週44時間が所定労働時間の上限ですから、これを上回れば違法ということになります。

実態としては、所定労働時間を決めていないので答えようがないという中小企業もあります。

労働者の都合を踏まえ、話し合いで出勤日や労働時間を決定しているので、むしろ望ましい状況なのですが、法律の規定に照らすといけないことになってしまいます。

変形労働時間制など、労働基準法が準備している制度の利用が求められます。

 

<休日>

労働基準法では、週1日または4週4日が法定休日となっています。

このうち、4週4日には運用のルールがあるのですが、これを遵守していないこともあります。

また、飲食店などでは、月8日という休日の定め方をしている場合もあります。

これらは労働基準法違反なのですが、当事者にはピンと来ない部分です。

労働基準監督署の指導が入っても、対応に苦慮することになります。

しかし、労働基準監督署からは適法になるまで是正を求められます。

 

<三六協定>

三六協定を所轄の労働基準監督署長に届出していない企業、協定が期限切れのまま放置している企業も多数あります。

この場合、1分の残業が違法であり犯罪ということになります。

残業した労働者ではなく、残業させた使用者に罰則が適用されます。

これもついうっかりの手続ミスですが、「忘れていました」は言い訳になりません。

自主点検表でチェックした結果、忘れていることが判明したので、あわてて三六協定の届出をしましたということであれば、ギリギリセーフといったところです。

 

<最低賃金>

試用期間、固定残業代などで、うっかり最低賃金を下回ってしまうことがあります。

たとえ短期間でも、最低賃金を下回ることは、最低賃金法違反の犯罪ですから注意が必要です。

 

<就業規則>

働き方改革や少子高齢化対策で、法改正があまりにも頻繁です。

就業規則の内容を適法に維持するのは、困難を極めている状態です。

しかし、内容が適法で、しかも実態が就業規則通りであることが求められます。

 

<解決社労士の視点から>

自主点検表の最後には、「セミナー及び個別訪問の参加希望」の欄が設けられています。

労働法への完璧な対応に自信が無ければ、これに申し込むことによって、改善の猶予が与えられます。

可能な限り、これを希望するのが得策だと考えられます。

2021/03/13|1,494文字

 

<正社員以外の労働者と健康診断>

企業は、常時使用する労働者に対し、労働安全衛生法に定める基準により、健康診断を実施しなければなりません。

たとえ就業規則に規定がなくても、この実施義務は免れることができません。

労働安全衛生法に定める対象者の基準は次の2つです。

両方の基準を満たす人については、健康診断の実施義務があります。

1. 期間を定めないで採用されたか、期間を定めて採用されたときでも1年(深夜業を含む業務、一定の有害業務に従事する人は6か月)以上引き続き使用(または使用を予定)されていること。

2. 1週間の所定労働時間が、その企業で同種の業務に従事する正社員の4分の3以上であること。

 

また、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3未満の労働者であっても、上記1.の要件に該当し、1週間の所定労働時間が正社員の2分の1以上であれば、健康診断を実施することが望ましいとされています。

努力義務です。

 

<実施義務のある健康診断>

実施しなければならない健康診断は次のとおりです。

1. 常時使用する労働者に対しては、雇入れの際に行う健康診断、及び1年に1回定期に行う健康診断。

2. 深夜業に常時従事する労働者に対しては、その業務への配置替えの際に行う健康診断、及び6か月に1回定期に行う健康診断。

3. 一定の有害な業務に常時従事する労働者に対しては、採用、及びその業務への配置替えの際と、その後に定期で行う特別の項目についての健康診断。

4. その他必要な健康診断。

 

<健康診断の費用>

法律によって定められた健康診断は、実施することが企業に義務付けられていますから、その費用は企業が負担することになります。

これに対し、法律上義務付けられていない健康診断や、法定の事項以外の検査を希望者に実施する場合の費用負担については、労働契約や就業規則などによって決まることになります。

なお、健康診断を受けてから3か月を経過していない人を採用する場合で、その健康診断の結果を提出したときは、企業は健康診断を省略できることになっています。

このため、企業から採用前に自分で健康診断を受け、その結果を提出するよう求められることがあります。

この費用については、必ず企業が費用負担すべきとまではいえません。

 

<健康診断とプライバシー>

企業は、健康診断を実施した際に、結果を従業員に通知する義務があり、その結果に基づいて、従業員の健康管理や適切な配置転換などの措置を講じなければなりません。

また、健康診断に関する情報は重要な個人情報であることから、その取扱いは慎重にし、外部に漏れないようにしなければなりません。

なお、企業が実施する健康診断を受けたくない人は、自分で必要な事項の健康診断を受け、その結果を提出することもできます。ただし、費用については本人負担にしてもよいとされています。

 

<解決社労士の視点から>

企業は、健康診断の実施結果を5年間保管する義務を負っています。

事業主の方が、従業員の個人情報、特に身長や体重などのデータを取得することについて、ためらうことがあります。

しかし、企業には労働者の安全配慮義務があります。

遠慮していては、義務を果たせないことになってしまいます。また、健康診断の結果票が、後々障害年金の請求に役立つこともあります。

健康診断の実施と、結果の保管はきちんとしましょう。

今まで健康診断の実施対象者がいなかった企業で、新たに実施義務を負うようになった場合など、健康診断の手配や情報の管理について不明な点も多いと思います。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

2021/02/22|1,739文字

 

YouTubeこれって労働時間?

https://youtu.be/2UlD66LICBo

 

<労働時間の定義>

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に、労働時間の定義が示されています。

これは、厚生労働省が平成29(2017)年1月20日に策定したものです。

企業が労働時間を管理する場合には、このガイドラインを参考にして行うことになります

これによると「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示または黙示の指示により、労働者が業務に従事する時間である」とされています。

最高裁判決にも、労働時間の概念が示されています。

三菱重工長崎造船所事件の判決です。

ガイドラインの定義は、この最高裁判決を参考にしたものです。

こうした定義は、公的なものとして、すでに確定しています。

ですから、各企業で自由に定義を定めるわけにはいかないのです。

 

<黙示の指示>

この労働時間の定義の中の「黙示の指示」とは、一体どのような場合を指すのでしょうか。

黙示(もくし、もくじ)という言葉は、暗黙のうちに意思や考えを表すことをいいます。

具体的に、どのような行為が「暗黙のうちに指示を出した」と評価されるのか、その判断がむずかしいのです。

特に、労働者が「自主的に」残業しているように見える場合の、残業代支払義務について争われます。

労使でこの点が争われた場合には、最終的には司法判断によって決着がつくことになります。

 

<裁判で黙示の指示があったとされたもの>

まず、労働者の残業を使用者が黙認しているような分かりやすい黙示の指示の他、残業することを前提とする業務命令が出された場合、時間外に会議が予定される場合など、間接的に残業を指示している場合には、黙示の指示があったものとされます。

これは、労働者が休日に出勤をしていることを知りながら、使用者が注意を与えなかった場合にも認められます。

また、労働者が所定労働時間ではこなし切れない量の業務を抱えていること、所定労働時間の労働だけでは締切に間に合わないことなどを、使用者が把握しておきながら、こうした事情の解消について具体的な指示を出していない場合も、残業することについて、黙示の指示があったものとされます。

また、タイムカード、出勤簿、日報などにより、使用者が労働時間の把握をしておきながら、労働者に対して抑制的な態度を示さず、自己判断での残業などを止めるように指導していない場合には、黙示の指示があったものとされます。

これらの場合には、使用者から明示の指示がなく、労働者から残業の申告などがなければ、残業代の支払は不要であるという勘違いが生ずる危険があります。

 

<裁判で黙示の指示が無かったとされたもの>

労働者が職場にいるのは、労働に就く目的であることが推定されます。

それだけに、黙示の指示の存在が否定されるのは、むしろ例外であると考えた方が安全でしょう。

ただ、次のような例外的な場合には、裁判例でも黙示の指示が否定されています。

まず、残業禁止の業務命令が発せられ徹底されていた場合、使用者が定時に労働者の帰宅を促していた場合、残業には事前申請を必要とする規定が運用されているにもかかわらず事前申請無く時間外労働に就いていた場合など、残業について厳格な管理が実施されている場合には、黙示の指示が否定されます。

また、客観的に見て時間外労働を必要とするだけの業務を抱えていない場合、業務に就く意思がなく習慣的に早く職場に来てくつろいでいた場合など、時間外労働の指示が想定できない場合にも、黙示の指示が否定されます。

さらに、実習中の労働者が業務の下調べをしていた時間や、仕事に慣れるため自発的に出勤した時間も、それが期待されていることではなかったため、黙示の指示が否定されています。

これらは裁判例ですから、それぞれの具体的な事実に即して判断されているわけであり、一般化することはできませんから注意が必要です。

 

<解決社労士の視点から>

管理監督者や、その代行者は、無駄な人件費の発生を抑制しなければなりませんし、長時間労働による健康被害の発生防止に努めなければなりません。

「黙示の指示」が発生しないように、部下の動向に目を向け、想定外の勤務に気付けば、声を掛けるということが管理職に期待されているわけです。

2021/02/04|1,606文字

 

YouTubeコロナハラスメント

https://youtu.be/Y0ga4SznnTM

 

<労災保険の手続>

従業員が勤務中に新型コロナウイルスに感染したと思われる場合には、労災保険の適用が考えられますので、会社はその手続に協力する義務を負います。

労災認定を行うのは労働基準監督署(労働局)の権限ですから、会社側で安易に判断することは避けなければなりません。

新型コロナウイルス感染症の労災認定に関する判断はむずかしいですから、所轄の労働基準監督署と相談しながら手続を進めるのが得策です。

 

<新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の労災認定基準>

「医師、看護師、介護従事者等の医療従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合は、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」という基準があります。

この基準は、「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱い」(令和2年4月 28 日基補発0428第1号通達)に示されているものです。

医療従事者が、新型コロナウイルスに感染した場合には、一般に「業務上」である可能性が高いですから、こうした基準が適用されるわけです。

一方で、医療従事者以外の人が新型コロナウイルスに感染した場合には、一般に「業務上」である可能性が低いですから、同じ基準は適用されません。

医療従事者以外の人については、この通達で「感染源が業務に内在していることが明らかな場合は、労災保険給付の対象となる」という基準が設けられています。

原則と例外が逆になっているわけです。

また、この通達では「感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務(複数の感染者が確認された労働環境下での業務や顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務など)に従事し、業務により感染した蓋然性が高いものと認められる場合は、労災保険給付の対象となる」という基準が設けられていて、医療従事者以外であっても、感染リスクが高い環境下での業務については、中間的な基準が適用されることになっています。

 

<安全配慮義務>

労働契約法には、安全配慮義務について次の規定があります。

 

【労働者の安全への配慮】

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

労働契約法は、最高裁判所の判決の理由中に示された判断を中心にまとめられた法律です。

ですから、この法律ができる前から、安全配慮義務は認められていたことになります。

そもそも信義則上、債権者(使用者)は債務者(労働者)がうまく債務を履行できるよう(働けるよう)配慮する義務を負っています。

ここで、「信義則」というのは、民法第1条第2項に定められた「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」という原則のことです。

こうして債権者(使用者)は、債務者(労働者)に対して、安全配慮義務などを負うことになります。

 

<新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する安全配慮義務の内容>

従業員に感染拡大予防のための教育指導を行う必要があります。

正しい手洗い、うがいの励行、正しいマスクの着用、顔に手で触れない、三密を避けるなどを指導し、守れない従業員には個別指導を行います。

また、在宅勤務を拡大する、座席の間隔を空ける、アクリル板などで飛沫の飛散を防止するなど職場環境への配慮も必要です。

会社が安全配慮義務を尽くしていれば、感染者が発生した場合に、本人や家族から不法行為責任や債務不履行責任を問われても、反証は容易になります。

 

<解決社労士の視点から>

速やかで正しい労災保険の手続や、感染拡大防止に向けて安全配慮義務を尽くすことは、会社が損害賠償責任を負わないという消極目的だけでなく、お客様やお取引先の信頼を高め、従業員の定着率を高めるなど積極目的でも行うべきです。

是非とも、前向きに取り組んでいただきたいと思います。

2021/01/22|1,788文字

 

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、被害者に対して会社も賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、会社は従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

会社に生じた利益のすべてを従業員に分配しているわけではないのに、損害についてだけ従業員にすべてを負担させるのは不合理だというわけです。

 

<懲戒処分による減給>

就業規則に「過失によって会社に損害を加えた場合」の懲戒規定を置いておけば、減給処分も可能です。

厚生労働省のモデル就業規則にも、こうした規定例がありますので参考になります。

しかし、減給処分の金額は限られていて、損害のすべてを回収することはできないでしょう。

むしろ、懲戒処分を受けることはそれ自体が苦痛ですから、懲戒処分を受けた従業員も、懲戒処分があったことを知った従業員も、会社に損害を加えないように一層注意深くなります。

 

<適正な人事考課による対応>

きちんとした人事考課制度があって、交通事故を起こしたことの責任を反映させるというのは正しい方法です。

給与について言えば、安全運転ができないという能力の面や、会社に損失を与えたという貢献度の面で適正な評価をすれば、他の従業員よりも昇給額が少ないというのは妥当性のある結果です。

また、賞与の支給率に反映され、支給額が少なくなるのも仕方のないことです。

これらは、あくまでも人事考課の仕組みがあって、適正に運用されることが前提となります。

従業員が給与や賞与を意識して、会社に損害を加えないように注意深くなるのは明らかです。

 

<交通安全教育>

会社の従業員に対する交通安全教育も重要です。

報償責任や懲戒処分の有効性を考えたときには、会社が十分な教育を行っていたことが、損害賠償の請求や懲戒処分の正当性の根拠となります。

ここで注意したいのは、実質面だけでなく形式面にも配慮すべきだということです。

交通事故を減らすために交通安全教育を実施するわけですが、実施したことの証拠を残すことも重要です。

最終的に会社が負担する責任の範囲を狭めるためには、いつどこでどのような内容の教育を行ったのか、資料を残しておく必要があります。

そして、参加者名簿を作成し、参加者の署名を得ておくことをお勧めします。

参加・不参加も人事考課に反映させたいところです。

 

<過重労働の責任>

全く残業していない従業員の事故と、月80時間ペースで残業している従業員の事故とでは、会社と従業員との間の責任割合が変わってきます。

長時間労働であるほど、会社の責任が重くなります。

過重労働によって疲労が蓄積したり、注意力が低下したりで事故が発生しやすかったと評価されるからです。

人手が足りないのなら、新人を採用する工夫が必要です。

残業手当は25%以上の割増賃金が絡んできますから、長時間労働が発生しているのなら、新人の採用が経営上も有利になります。

ひとり一人の負担を減らすことで、事故の防止を図りたいところです。

 

<スケジュールの見直し>

忙しいとはいえ、そうでもない日もあるはずです。

繁閑の差が出ないようにシフトを工夫しましょう。

1か月何件というノルマがある場合でも、1日何件までという上限を設定して、過重労働を防止する工夫ができます。

会社がスケジュールの管理を強化することも考えられます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社会保険労務士というと、手続業務を思い浮かべることが多いようです。

手続型社労士が多いからでしょう。

しかし、社労士は労務管理の専門家ですから、年金、健康保険、雇用保険、労災保険の手続よりも、労務管理や労働安全衛生のこと、そして就業規則などのルール作りと運用管理が得意です。

また、労働トラブルへの対応や防止が得意な社労士もいます。コンサル型社労士です。

守備範囲は広範に及びますから、何か困ったら、とりあえず信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/04|1,582文字

 

<医師による面接指導>

事業者は、一定の要件を満たす長時間労働者に対して、医師による面接指導を実施しなければなりません。〔労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項、第66条の10第3項〕

法の規定に基づく面接指導は、情報通信機器を用いて行うことができます。

令和2(2020)年11月19日に、このことについての通達が一部改正されました(基発1119 第2号)。

ここで、通達の内容をご紹介します。

 

<基本的な考え方>

労働安全衛生法第66条の8第1項で、面接指導は「問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと」とされています。

つまり、医師が労働者と面接し、労働者とのやりとりやその様子(表情、しぐさ、話し方、声色等)から労働者の疲労の状況やストレスの状況その他の心身の状況を把握し、把握した情報を元に、必要な指導や就業上の措置に関する判断を行うものです。

このため面接指導は、労働者の様子を把握し、円滑にやりとりを行うことができる方法により行う必要があります。

面接指導を実施する医師が、必要と認めた場合には、直接対面によって行う必要があります。

急速なデジタル技術の進展に伴い、情報通信機器を用いて面接指導を行うことへのニーズが高まっています。

しかし、情報通信機器を使って面接指導を行う場合でも、労働者の心身の状況の確認や必要な指導が適切に行われるようにするため、以下の留意事項を踏まえて実施しなければなりません。

 

<医師への情報提供>

事業者は、面接指導を実施する医師に対し、面接指導を受ける労働者が業務に従事している事業場に関する事業概要、業務の内容、作業環境等に関する情報、対象労働者に関する業務の内容、労働時間等の勤務の状況、作業環境等に関する情報を提供しなければなりません。

 

<望ましい医師>

面接指導を実施する医師が、以下のいずれかの場合に該当することが望まれます。

・面接指導を実施する医師が、対象労働者が所属する事業場の産業医である場合。

・面接指導を実施する医師が、契約(雇用契約を含む)により、少なくとも過去1年以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当している場合。

・面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがある場合。

・面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、その労働者に指導等を実施したことがある場合。

 

<情報通信機器の要件>

面接指導に用いる情報通信機器は、以下の全ての要件を満たすことが必要です。

・面接指導を行う医師と労働者とが相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであって、映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること。

・情報セキュリティ(外部への情報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止)が確保されること。

・労働者が面接指導を受ける際の情報通信機器の操作が、複雑、難解なものでなく、容易に利用できること。

 

<実施方法の要件>

情報通信機器を用いた面接指導の実施方法等について、以下のいずれの要件も満たすことが必要です。

・情報通信機器を用いた面接指導の実施方法について、衛生委員会等で調査審議を行ったうえで、事前に労働者に周知していること。

・情報通信機器を用いて実施する場合は、面接指導の内容が第三者に知られることがないような環境を整備するなど、労働者のプライバシーに配慮していること。

 

<緊急時対応体制の整備>

情報通信機器を用いた面接指導で、医師が緊急に対応すべき徴候等を把握した場合に、労働者が面接指導を受けている事業場その他の場所の近隣の医師等と連携して対応したり、その事業場にいる産業保健スタッフが対応する等の緊急時対応体制が整備されていることも必要です。

 

解決社労士

2020/09/29|812文字

 

YouTube

https://youtu.be/u8Qtv6DciyM

 

<休憩室とは違う休養室>

休憩室は、従業員がリフレッシュするため日常的に使うスペースです。

しかし休養室は、従業員が急に体調をくずしたときに一時的に休ませ、場合によっては救急車が来るまで待たせておくための施設です。

 

<設置義務>

労働安全衛生法と労働安全衛生法施行令の規定に基づき、またこれらの規定を実施するため、労働安全衛生規則が定められています。

その第618条には、次のように規定されています。

「事業者は、常時五十人以上又は常時女性三十人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない」

このように、設置義務を負うのは男女合わせて50人以上、または、女性だけで30人以上の従業員がいる事業場に限られています。

 

<注意ポイント>

が床(臥床)とは横たわることですから、座って休めればよいというものではありません。

ベッドや布団が必要になります。ソファーベッドが便利です。

また、男女兼用ではダメで、男性用と女性用に区別して設置する必要があります。

従業員が少しずつ増えていき、いつの間にか50人を超えた場合、衛生管理者、衛生委員会、産業医、健康診断結果報告などは思いつくものの、休養室は忘れがちです。

 

<規則に違反した場合>

労働安全衛生規則そのものには罰則がありません。

しかし、休養室が設置されていなかったり、条件を満たしていなかったりした状態で、急病人が発生し対応が遅れることがあれば、会社が責任を問われることになります。

そうでなくても、労働基準監督署の監督などがあった場合には、指摘を受けてしまいますので、きちんと対応すべきです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

事業場の従業員が10名以上になった場合、50名以上になった場合など、節目の人数で会社が対応に追われることは多々あります。

計画的に対応できるよう、予め信頼できる社労士に相談しておきましょう。

 

解決社労士

2020/09/27|578文字

 

<職場の空気の量や換気についての規制>

労働安全衛生法と労働安全衛生法施行令の規定に基づき、また、これらの規定を実施するため、労働安全衛生規則が定められています。

 

<空気の量についての規制>

労働者が室内で呼吸などに利用できる空気の量を気積(きせき)といいます。

その室内にキャビネットなどがあって、空間をふさいでいる部分の体積は、気積に含まれません。

また、天井が高く床面から4メートルを超える場合には、4メートルを超える高さにある空間も気積に含まれません。

こうして計算された気積は、労働者1人について10立方メートル(1万リットル)以上必要です。〔労働安全衛生規則第600条〕

 

<換気についての規制>

換気が十分に行われる設備が整っていれば問題ないのですが、窓を開けて換気している場合には、直接外気に触れる部分の面積が、床面積の20分の1(5%)以上であることが必要です。〔労働安全衛生規則第601条第1項〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

事業場の従業員が50名以上であれば、資格を持った衛生管理者や産業医のチェックが法定されています。

しかし小規模な事業場では、職場環境の最低基準を満たしていないケースも見られます。

一度、信頼できる社労士にチェックさせてはいかがでしょうか。

少数ですが、職場環境を専門にしている社労士の先生もいます。

ぜひ、ご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/26|612文字

 

<職場のトイレについての規制>

労働安全衛生法の規定に基づき、また規定の内容を実施するため、事務所衛生基準規則が定められています。

これは、厚生労働省令の一つで、トイレについては事務所衛生基準規則第17条に規定があります。

 

<男性用と女性用の区別>

職場のトイレは、男女共用ではいけません。

男性用と女性用をそれぞれ設置する必要があります。

そのうえで、障害者やLGBTなどの方々に配慮した専用のトイレを設置することが望まれています。

 

<男性用小便器の数>

男性労働者30人以内ごとに1つ以上の割合で必要です。

その職場に所属する人数ということではありません。

同時に就業する最大の人数が基準となります。

たとえば、同時に就業する最大の人数が65人であれば、65人 ÷ 30人 = 2.17 の端数切り上げで3つ必要です。

 

<個室の数>

同時に就業する最大の人数を基準として、男性用は60人以内ごとに1つ以上の割合で必要です。

女性用は20人以内ごとに1つ以上の割合で必要です。

 

<その他>

流水で手を洗うための設備が必要です。

事業者には、トイレを清潔に保つ義務があります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

事業場の従業員が50名以上であれば、資格を持った衛生管理者や産業医のチェックが法定されています。

しかし小規模な事業場では、職場環境の最低基準を満たしていないケースも見られます。

一度、信頼できる社労士にチェックさせてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/09/06|711文字

 

<新薬との違い>

医師の診断により、病院や調剤薬局などで処方される医療用医薬品は、新薬(先発医薬品)とジェネリック医薬品(後発医薬品)に分けられます。

新薬はその開発に多額の費用と時間がかかるため、特許権が与えられ、その新薬を独占的に製造・販売することができます。

しかし、この特許権には特許期間が設けられていて、その特許期間が過ぎると、他の医薬品メーカーでも同じ有効成分の薬を製造することが許されます。

こうして、特許権を持っていたメーカーとは別のメーカーが製造するようになった薬がジェネリック医薬品です。                 

 

<効き目の違い>

ジェネリック医薬品は、新薬と同一の有効成分を含み、効き目や安全性が同等であると厚生労働省が承認した薬です。

しかも、ジェネリック医薬品は、医薬品メーカーによって薬を飲みやすい形や大きさに変えるなどの工夫がされています。

 

<価格の違い>

新薬の開発には、10年~15年程度の長い期間がかかり、数百億円もの費用が必要とされています。

新薬の価格には、これが反映されています。

ところが、ジェネリック医薬品は、新薬の有効成分を利用して開発されるため、その分だけ、開発期間やコストを大幅に抑えることが可能となります。

そのため、ジェネリック医薬品の価格を安く設定することができます。

一般に、ジェネリック医薬品は、新薬に比べ、3割から5割程度安くなります。

 

<注意したい点>

新薬と同じ成分のジェネリック医薬品が、まだ無いこともあります。

ジェネリック医薬品は、新薬に比べて、やや供給が不安定なこともあります。

この点を確認のうえ、ジェネリック医薬品を希望すれば、医療費を節約することができます。

 

解決社労士

2020/03/05|1,039文字

 

<感染経路>

ウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。

飛沫感染は、感染した人の咳やくしゃみのしぶき(飛沫)に含まれるウイルスを吸い込むことによる感染です。

予防には、感染した人の咳やくしゃみが直接人にかからないよう、マスクやティッシュ等で口と鼻を覆う等の「咳エチケット」が効果的です。

マスクやティッシュ等が無い場合には、ひじを曲げてひじの内側で口と鼻を覆います。

接触感染は、ウイルスの付着した手で、目・口・鼻を触ることによる感染です。

予防には、手洗い、消毒が効果的です。

 

<従業員の取組>

●こまめな手洗い

手洗いは流水と石けんで15秒以上行い、水分を十分にふき取りましょう。

手が洗えない場合、手指消毒用アルコール製剤(エタノール等を60~80%程度含むもの) による消毒も効果があります。

●顔を触らない

手に付着したウイルスが目・口・鼻の粘膜から体内に入らないよう、手で顔を触らないようにしましょう。

●人ごみを避ける

外出する場合は、公共交通機関のラッシュの時間を避ける等、人ごみは避けましょう。

症状のある人(咳やくしゃみなど)に接触した場合は、手洗いなどを行いましょう。

●咳エチケット

咳やくしゃみが出るときは、マスク等で口や鼻を覆うなどの「咳エチケット」を心がけましょう。

 

<マスクの付け方>

口と鼻の両方を確実に覆う → ゴムひもなどを耳にかける → 鼻の部分に隙間ができたり、あごの部分が出たりしないようマスクを調節する

※あごや首にはウイルスが付着します。飲んだり食べたりの際、マスクを下にずらすと、マスクの内側にウイルスが付着してしまいます。

 

<マスクの外し方>

マスク表面には、ウイルスが付着している可能性があるので、触らずにゴムひもなどを持って外します。

※マスクは1日1枚程度交換します。

 

<企業の取組>

●感染予防に必要な備品・環境の整備

手指消毒薬、石けん・ペーパータオル等を備えるなど、衛生状態を保つための備品・環境を整備しましょう。

手指消毒薬の使用期限に注意しましょう。

●人が触れる場所を清掃・消毒

人が触れる場所(ドアノブ、スイッチ、階段の手すり、エレベーターの押しボタン等)を清掃・消毒しましょう。

消毒剤は、次亜塩素酸ナトリウム(製品表示に従い希釈)や消毒用エタノール等が有効です。

消毒剤を使う場合には、消毒剤を浸したペーパータオル等による拭き取り消毒を行うこと、換気すること、「使用上の注意」をよく読んで使うこと、作業をした後は手を洗うことなどに注意しましょう。

 

解決社労士

2019/11/24|1,013文字

 

<企業の受動喫煙防止義務>

健康増進法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、喫煙専用室など施設内の一定の場所を除き、喫煙が禁止されることとしています。

令和2(2020)年4月からは、事務所や飲食店等の場合、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準を満たした喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室等以外の屋内の場所では、喫煙が禁止となります。

これに先駆けて、令和元(2019)年7月からは、学校、病院、児童福祉施設等の第一種施設では、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じた特定屋外喫煙場所を除き、敷地内禁煙となっています。

これ以降、施設の管理権原者等は、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないことになります。

労働者の受動喫煙を防止するため、実情に応じた措置を講ずる努力義務が事業者に対して課せられています。

 

<法規制を上回る施策の実施>

法規制を超えて、敷地内や建物内の全面禁煙に踏み切る企業も増えています。

これらの根拠は、労働法上の施設管理権です。企業が社内秩序を定立する権限の一つとして認められるものです。

これは、場所を限定しての規制であり、健康増進法が対象施設に応じた規制をするのと軌を一にしています。

 

<時間的な喫煙制限>

ところが、場所の限定に加え、企業独自の基準で喫煙時間を制限する動きも出てきました。

公務員以外は、あまり強く意識されることが無いのですが、労働者は本来的に職務専念義務を負っています。

勤務時間中は、職務に専念し私的活動を差し控える義務です。

これを根拠として、企業は勤務時間中の喫煙を禁止できるものと考えられます。

なぜなら、喫煙によって、主観的にはともかく、客観的には生産性が低下すると思われるからです。

 

<喫煙の自由>

喫煙の自由が最高裁で争われたこともあります。

昭和45年の大法廷判決では、たばこが生活必需品とまではいえず、普及率の高い嗜好品に過ぎないのだから、あらゆる時間、あらゆる場所で喫煙の自由が保障されるものではないという趣旨が述べられています。

本来は自由であるはずの喫煙も、他社に危害を与えうる危険との関係では、大幅に制限されうるということになります。

 

この手の話は、喫煙者と非喫煙者とで相容れない見解に立つものです。

私自身は、ひょんなことから24年前に禁煙しました。

どちらの立場もわかるつもりでいます。

やはり、喫煙者と非喫煙者とは分かり合えないと思っています。

 

解決社労士

<労働基準監督官の権限>

労働基準監督官は、労働基準法違反を是正するだけではありません。

労働安全衛生法を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査し、作業環境測定を行い、または検査に必要な限度で無償で製品、原材料、器具を持ち去ることができます。〔労働安全衛生法第91条第1項〕

ここで、作業環境測定というのは、温度、湿度、騒音、照度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、塵(ちり)の密度など、職場の客観的な労働環境を測定する検査のことをいいます。

 

<法違反に対する使用停止命令>

都道府県労働局長または労働基準監督署長は、事業者の講ずべき措置など労働安全衛生法の規定に違反する事実があるときは、その違反した事業者、注文者、機械等貸与者または建築物貸与者に対し、作業の全部または一部の停止、建設物等の全部または一部の使用の停止または変更その他労働災害を防止するため必要な事項を命ずることができます。〔労働安全衛生法第98条第1項〕

労働災害発生の差し迫った危険がある場合には、この他、必要な応急措置を講ずることを命ずることができます。〔労働安全衛生法第99条第1項〕

つまり、営業停止や労働者の職場への立ち入り禁止を命令できるのです。

 

<講習の指示>

都道府県労働局長は、労働災害が発生した場合には、その再発を防止するため必要があると認めるときは、その事業者に対し、期間を定めて、その労働災害が発生した事業場の総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、統括安全衛生責任者その他労働災害の防止のための業務に従事する者に都道府県労働局長の指定する者が行う講習を受けさせるよう指示することができます。〔労働安全衛生法第99条の2第1項〕

なにより労働災害の発生防止に努めることが大切です。

しかし、安全管理者や衛生管理者など法定の労働災害防止業務従事者をきちんと選任し、労働基準監督署長に選任報告書を提出しておくことも必要です。

つまり、労災防止の実質面と形式面の両方を備えることが求められているのです。

 

2019.09.13. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年8月21日、厚生労働省が「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)」をとりまとめ公表しました。

その概要を以下にご紹介します。

 

<メンタルヘルス対策に関する事項>

過去1年間(平成29年11月1日から平成30年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は6.7%、退職者がいた事業所の割合は5.8%となっている。(受け入れている派遣労働者は含まれない。)

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は59.2%[平成29年調査58.4%]となっている。メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所について、取組内容(複数回答)をみると、「労働者のストレスの状況などについて調査票を用いて調査(ストレスチェック)」が62.9%[同64.3%]と最も多く、次いで「メンタルヘルス対策に関する労働者への教育研修・情報提供」が56.3%[同40.6%]となっている。

労働者にストレスチェックを実施した事業所のうち、ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を実施した事業所の割合は73.3%[同58.3%]であり、このうち分析結果を活用した事業所の割合は80.3%[同72.6%]となっている。分析結果を活用した事業所のうち、結果の活用内容(複数回答)をみると、「残業時間削減、休暇取得に向けた取組」が46.5%と最も多くなっている。

 

<長時間労働者に対する取組に関する事項>

平成30年7月1日が含まれる1か月間に45時間を超える時間外・休日労働をした労働者(受け入れている派遣労働者を除く。以下「長時間労働者」という。)がいる事業所の割合は、「45時間超80時間以下」が25.0%[平成29年調査26.7%]、「80時間超100時間以下」が5.6%[同5.9%]、「100時間超」が3.5%[同2.1%]となっている。また、長時間労働者に対する医師による面接指導の実施方法をみると、いずれの時間外・休日労働時間数階級においても「実施方法が決まっていない」が回答のあった事業所の中で最も多くなっている。

さらに、1か月の時間外・休日労働時間数が100時間超の労働者に対する医師による面接指導を「実施しないこととしている」又は「実施方法が決まっていない」事業所について、その理由(複数回答)をみると「事業所として1か月間の時間外・休日労働時間数が100時間超となる働き方をしていないため」が76.3%と最も多くなっている。

 

<受動喫煙防止対策に関する事項>

受動喫煙防止対策に取り組んでいる事業所の割合は88.5%[平成29年調査85.4%]となっている。産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」が98.5%と最も高く、次いで「不動産業,物品賃貸業」が96.6%となっている。禁煙・分煙の状況をみると、「事業所の建物内全体(執務室、会議室、食堂、休憩室、商談室等含む)を禁煙とし、屋外のみ喫煙可能としている」が38.8%[同35.0%]と最も多く、次いで「事業所の内部に空間的に隔離された喫煙場所(喫煙室)を設け、それ以外の場所は禁煙にしている」が19.3%[同18.1%]、「屋外を含めた事業所敷地内全体を禁煙にしている」が13.7%[同13.6%]となっている。

職場の受動喫煙を防止するための取組を進めるにあたり、問題があるとする事業所の割合は37.4%[同42.6%]となっている。問題があるとする事業所について、問題の内容(主なもの2つ以内)をみると、「顧客に喫煙をやめさせるのが困難である」が30.3%[同34.3%]と最も多く、次いで「喫煙室からのたばこ煙の漏洩を完全に防ぐことが困難である」が29.0%[同28.5%]となっている。

 

<産業保健に関する事項>

傷病(がん、糖尿病等の私傷病)を抱えた何らかの配慮を必要とする労働者に対して、治療と仕事を両立できるような取組を行っている事業所の割合は55.8%[平成29年調査46.7%]となっている。治療と仕事を両立できるような取組を行っている事業所について、取組内容(複数回答)をみると、「通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討(柔軟な労働時間の設定、仕事内容の調整等)」が90.5%[同88.0%]と最も多く、次いで「両立支援に関する制度の整備(年次有給休暇以外の休暇制度、勤務制度等)」が28.0%[同31.6%]となっている。

治療と仕事を両立できるような取組を行っている事業所のうち、取組に関し困難なことや課題と感じていることがある事業所の割合は76.1%[同76.2%]となっている。困難なことや課題と感じていることがある事業所について、その内容(複数回答)をみると、「代替要員の確保」が74.8%[同75.5%]と最も多く、次いで「上司や同僚の負担」が49.3%[同48.6%]となっている。

 

<安全衛生管理体制に関する事項>

産業医を選任している事業所の割合は29.3%となっており、産業医の選任義務がある事業所規模50人以上でみると、84.6%となっている。産業医を選任している事業所について、産業医に提供している労働者に関する情報(複数回答)をみると、「健康診断等の結果を踏まえた就業上の措置の内容等」が74.6%と最も多く、次いで「労働者の業務に関する情報で、産業医が必要と認めるもの」が57.4%となっている。

現場における安全衛生管理の水準について、低下している又は低下するおそれがあると感じている事業所の割合は11.7%となっている。低下している又は低下するおそれがあると感じている事業所について、そう感じる理由(複数回答)をみると、「安全衛生管理を担っていたベテラン社員が退職し、ノウハウの継承がうまく進んでいない」が31.4%と最も多く、次いで「経営環境の悪化で、安全衛生に十分な人員・予算を割けない」が31.2%となっている。

 

2019.08.24. 解決社労士 柳田 恵一

<労働安全衛生法>

労働災害を防止するために事業者が講じなければならない措置については、労働安全衛生法に詳細に規定されています。

各事業場では、この法律などに従い、労働災害の防止と快適な職場環境の形成に積極的に取り組むことや、職場の安全衛生管理体制を確立しておくことが求められています。

 

<安全衛生管理体制>

労働安全衛生法では、業種や労働者数によって、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医の選任が義務付けられています。〔第10条等〕

また、常時使用する労働者数が10人以上50人未満の事業場でも、業種により安全衛生推進者や衛生推進者の選任が義務付けられています〔第12条の2〕

会社は、これらの者に、事業場の安全衛生に関する事項を管理させなければなりません。

就業規則には、このことも規定しておくことが望ましいでしょう。

 

<受動喫煙の防止>

健康増進法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、喫煙専用室など施設内の一定の場所を除き、喫煙が禁止されることとしています。

令和2(2020)年4月からは、事務所や飲食店等の場合、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準を満たした喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室等以外の屋内の場所では、喫煙が禁止となります。

これに先駆けて、令和元(2019)年7月からは、学校、病院、児童福祉施設等の第一種施設では、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じた特定屋外喫煙場所を除き、敷地内禁煙となっています。

これ以降、施設の管理権原者等は、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないことになります。

労働者の受動喫煙を防止するため、実情に応じた措置を講ずる努力義務が事業者に対して課せられています。

就業規則には、次のような規定を加えることになります。

 

・20歳未満の者は、喫煙可能な場所には立ち入らないこと。

・受動喫煙を望まない者を喫煙可能な場所に連れて行かないこと。

 

事業場内では、喫煙専用室等の指定された場所以外は禁煙とし、周知することが必要です。

また、思い切って、事業場の敷地内全体を禁煙対象とすることも考えられます。

この場合の就業規則の規定は、上の2つに代えて「喫煙は、敷地内では行わないこと。」となります。

 

2019.08.19. 解決社労士 柳田 恵一

<ガイドラインの改定>

令和元(2019)年7月18日、厚生労働省が、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を公表しました(基発0712 第3号令和元年7月12 日)。

これによって、平成14(2002)年の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(基発第0405001号平成14年4月5日)は廃止されました。

元々は、ブラウン管型のモニター画面を見ながら長時間の作業をすることによって、本人に自覚のないまま疲労が蓄積し、健康障害をもたらす危険があるということで、ガイドラインが策定されたのが始まりです。

今では液晶画面に、タブレット端末やスマートフォンなども加わり、同様に健康障害の危険があることから、対象範囲が広げられています。

 

<新ガイドラインの特徴>

情報機器作業が多様化しているため、従来のように作業類型別に健康確保対策を示すことは困難です。

新ガイドラインでは、考え方の基本は維持しつつ、多様な作業形態に対応するため、事業場が個々の作業形態に応じて判断できるように、健康管理を行う作業区分が見直されています。

 

<対象作業>

対象となる作業は、企業内で行われるデスクトップパソコンやノートパソコンの他、タブレット端末やスマートフォン、ウェアラブル端末等を使用した、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業です。

新しい情報機器を使って行う作業が、新たに加わっています。

 

<社外での作業>

情報機器の発達により、社外でも情報機器作業を行う場面が増えています。

新ガイドラインでは、社外で行う情報機器作業、自営型テレワーカーが自宅等において行う情報機器作業等についても、できる限りガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう促しています。

 

2019.08.11. 解決社労士 柳田 恵一

<労働安全衛生法>

職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、労働基準法の特別法である労働安全衛生法が定められています。

この法律は、事業者に、仕事が原因で労働者が事故にあったり、病気になったりしないようにする義務を定めています。

一方、労働者に対しては、労働災害を防止するために必要な事項を守り、事業者が行う措置に協力するように定めています。

ただし、労働者がこれを行うのに必要な教育は、事業者が行わなければなりません。

 

<定期健康診断などの実施義務>

事業者は、労働者を雇い入れた際とその後年1回、医師による健康診断を行わなければなりません。労働者はその健康診断を受ける必要があります。〔労働安全衛生法第66条〕

また最近では、仕事のストレスによるうつ病など、労働者のメンタルヘルスも大きな問題となっており、快適な職場環境形成のためには、事業者が、作業方法の改善や疲労回復のための措置だけでなく、メンタルヘルス対策を行うことも重要となっています。

 

<労働者災害補償保険法>

労働者が仕事や通勤によって病気やけがをした場合には、労災保険給付の対象になります。

労災保険給付を受けるためには、病院や労働基準監督署に、各種の請求書を提出する必要があります。会社が被災労働者から災害の原因など必要な証明を求められたときは、速やかに証明をしなければなりません。

なお、仕事が原因の病気には、長期間にわたる長時間の業務による脳・心臓疾患や人の生命にかかわる事故への遭遇などを原因とする精神障害なども含まれますので、ご留意ください。

社会保険や雇用保険は、従業員一人ひとりについて、個人ごとに手続きをしないと保険に加入しません。

しかし、労災保険は雇われると同時に保険に加入しますので、個人ごとの手続きは要りませんし、保険料は雇い主側の全額負担となります。

 

<パワーハラスメント>

パワ―ハラスメント(パワハラ)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を指します。

パワハラは内容によっては刑法などに触れる犯罪となります(名誉毀損罪、侮辱罪、暴行罪、傷害罪、強要罪など)。

また、会社には快適な職場環境を整える義務があることから、会社も責任を問われる場合があります。〔民法第715条〕

さらに、社長以下取締役が責任を追及される裁判も増えています。〔会社法第429条1項〕

 

2019.06.01. 解決社労士 柳田 恵一

<NITEからの注意喚起>

平成31(2019)年1月24日、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)がリチウムイオンバッテリー搭載製品の事故について注意を呼びかけています。

以下、NITE(ナイト)による報道発表資料です。

 

【事故の被害状況】

モバイルバッテリーを筆頭に、リチウムイオンバッテリーを搭載した様々な製品で事故が発生しています。

2013年度から2017年度の5年間に通知された製品事故情報では、リチウムイオンバッテリーを搭載した製品の事故は582件ありました。この582件のうち、402件(69%)が火災を伴っています。

 

【事故の原因】

事故の原因は、製品の不具合によるものが368件(71%)と最も多くなっています。368件のうち209件(36%)は、リコール対象製品によるものであり、回収や交換、情報の周知などが適切に行われていれば防げた事故も多いと考えられます。

 

【モバイルバッテリーの規制】

モバイルバッテリーの事故の多発を踏まえ、経済産業省は平成30(2018)年2月1日、通達「電気用品の範囲等の解釈について」を改正し、モバイルバッテリーを電気用品安全法の規制対象として取り扱うこととしました。

事業者における対応の準備期間として、施行日より1年間を経過措置期間とし、この間はこれまでの扱いによることもできるとしていましたが、平成31(2019)年2月1日以降は、基準に適合した製品でなければ販売できません。

 

<リコール情報の確認>

会社の業務でもプライベートでも、リチウムイオンバッテリーを搭載した様々な製品が使用されています。

会社が従業員に貸与している物品の中にも、リチウムイオンバッテリーが使われているものがあるでしょう。

こうした物品で事故が発生すると業務に支障が出ますから、リコール情報があった場合には、不具合が生じていなくても速やかに使用を中止し、購入した販売店や製造・輸入事業者に相談する必要があります。

もっとも、連絡先が分からないのでは、相談することもできませんから、製造事業者、販売事業者や輸入事業者が確かな製品を購入することも大切です。

また、従業員がプライベートで使用する物による事故であっても、これによって欠勤が発生したり、通院などのために時間を割かれたりしますので、会社から従業員に対する情報の提供や教育により、可能な限り事故を防いでいかなければなりません。

 

<誤用による事故>

誤った使い方による事故も後を絶ちません。

しかし従業員の中には、取扱説明書をほとんど読まずに使用する人もいます。

取扱説明書には、「分解しない。無理な力や強い衝撃を与えない。発熱・発火の原因となる」といった説明があったにもかかわらず、かばんに入れたスマートフォンに、外から力が加わったため、内部ショートが生じて異常発熱し、焼損する事故も発生しています。

また、ズボンのお尻のポケットに、リチウムイオンバッテリーを搭載した製品を入れたまま座ってしまい、発火するという事故も起きています。

こうしたことは、本来、個人の自己責任なのですが、従業員の啓蒙も十分に行っておくことが、会社にとって有益であるといえるでしょう。

 

2019.02.01.解決社労士

<労働安全衛生法の目的>

労働安全衛生法は、この法律の目的を次のように規定しています。

 

【目的】

第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

 

この中の「自主的活動」が、誰のどのような活動を指しているのかは、労働安全衛生法の中に示されていません。しかし、主にリスクアセスメントを指していると考えられます。

 

<リスクアセスメント>

リスクアセスメントは、職場の潜在的な危険や有害性を見つけ出し、これを除去・低減するための手法です。

労働安全衛生法が、全体として多くの職場に共通する労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化を目指しているのに対し、リスクアセスメントは、各職場の個性に応じて労働災害防止を目指すものです。

平成18(2006)年4月1日より、リスクアセスメントの実施が労働安全衛生法第28条の2により努力義務化されました。

 

【事業者の行うべき調査等】

第二十八条の二 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等(第五十七条第一項の政令で定める物及び第五十七条の二第一項に規定する通知対象物による危険性又は有害性等を除く。)を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限る。

 

具体的な進め方については、厚生労働省より「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」が公表されています。〔労働安全衛生法第28条の2第2項〕

 

<リスクアセスメントの必要性>

かつての労働災害防止対策は、発生した労働災害の原因を調査し、類似災害の再発防止対策を確立し、各職場に徹底していくという手法が基本でした。

しかし、災害が発生していない職場であっても潜在的な危険性や有害性は存在しており、 これが放置されると、いつかは労働災害が発生する可能性がありました。

また、技術の進展等により、多種多様な機械設備や化学物質等が生産現場で用いられるようになり、その危険性や有害性が多様化してきました。

こうしたことから、これからの安全衛生対策は、自主的に職場の潜在的な危険や有害性を見つけ出し、事前に的確な対策を講ずることが不可欠であり、これに応えたのが職場のリスクアセスメントです。

 

2019.01.03.解決社労士

<面接指導対象者の拡充>

平成31(2019)年4月1日付の働き方改革関連法の改正は、労働基準法だけでなく労働安全衛生法にも重要なものが含まれています。

 

【医師による面接指導の対象者】

一般労働者に対する医師による面接指導の対象を、現行の「1月当たり100時間超」から「1月当たり80時間超」へ見直し。〔労働安全衛生法66条の8 1項、労働安全衛生規則52条の2 1項〕

 

これは、労働基準法36条6項2号の改正により、労働時間を延長して労働させた時間と、休日に労働させた時間の合計が、1か月について100時間未満とされたことに呼応するものです。

もっとも、面接指導は労働者からの申し出により行われるものです。〔労働安全衛生規則52条〕

 

<対象者への情報提供>

 

【長時間労働者への通知】

長時間労働者(1月当たり80時間超)に対し、労働時間の状況に関する情報の通知を事業者に義務付け。〔労働安全衛生規則52条の2 3項〕

 

医師による面接指導の対象者であることを本人が認識していなければ、面接指導を希望し申し出るというのは困難ですから、事業者にこのような通知義務を負わせたものです。

もちろん、単純に労働時間の状況を通知しただけでは、これを受けた労働者が事業者の意図を誤解しかねませんから、医師による面接指導の対象者であることも併せて通知すべきです。

 

<研究開発業務従事者の例外>

 

【研究開発業務従事者の場合の面接指導対象者】

新技術、新商品等の研究開発業務に従事する労働者が、長時間労働(労働安全衛生規則により1月当たり100時間超時間外・休日労働)を行った場合、申出なしで医師による面接指導の実施を事業者に義務付け。〔労働安全衛生法66条の8の2〕

 

こちらは、労働者からの申出がない場合でも事業者に実施義務がありますし、50万円以下の罰金という罰則も規定されています。〔労働安全衛生法120条〕

なお、高度プロフェッショナル制対象労働者については、「労働時間」が「健康管理時間」に読み替えられて適用されます。

 

<労働時間把握義務>

医師による面接指導の対象者は、労働時間によって抽出される仕組みですから、事業者による労働時間の把握が客観的で適切な方法によらなければなりません。

従来は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定され、各事業者はこれを参考に労働時間を把握するように努めるものとされてきました。

しかし、今回の労働安全衛生法の改正により、労働時間の適正な把握は法的な義務となりました。

 

【労働時間の把握】

・客観的な方法その他適切な方法により労働時間の状況を把握することを事業者に義務付け。〔労働安全衛生法66条の8の3〕

・労働時間の把握方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピューター等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。〔労働安全衛生規則52条の7の3 1項〕

・把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならない。〔労働安全衛生規則52条の7の3 2項〕

 

この労働時間の把握義務ですが、その目的は労働者の健康管理にあります。

このことから、労働時間の把握が対象外とされてきた管理監督者についても、事業者は労働時間を適正に把握することが求められるようになりました。

 

2018.12.24.解決社労士

<衛生委員会の設置義務>

事業者は業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生委員会を設置する義務を負っています。

これを規定するのが、労働安全衛生法の次の条文です。

 

【衛生委員会】

第十八条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。

二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。

三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。

四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

 

事業場ごとですから、会社全体ではなく事務所や店舗ごとに設置します。

労働者が50人を上回ったり下回ったりの場合には、給与計算の締日ごとに集計して、過去1年間の7か月以上で50人以上なら「常時50人以上」と考えるのが行政解釈です。

 

<委員会のメンバー>

その事業場の責任者、衛生管理者、産業医、その事業場の労働者で労働衛生に関する経験を有する者で構成されます。

衛生管理者は試験に合格しなければなれませんし、産業医は医師に限定されますので、事業場の労働者数が50人に近づいたら、前もって準備しておくことが必要です。

 

<衛生委員会の役割>

毎月1回以上委員会を開催して、労働者の健康障害防止対策、労働者の健康保持増進対策、労働災害の原因と再発防止などについて、労働衛生の面から調査・審議し、重要なものについては議事録を作成して、その内容を社内に周知します。委員会の内容で「重要なもの」だけ議事録に残せば良いのですが、定期健康診断の結果についての話し合いは、これに含まれるというのが行政解釈です。

議事録は3年間の保管義務があります。ここは労働基準監督署のチェックポイントになりますから重要です。

せっかく毎月衛生委員会を開催していても、議事録を作成して保管しておかなければ、労働基準監督署には伝わりません。

形式を整えておくことも大事ですから、忘れないようにしましょう。

 

2018.12.09.解決社労士

<救急箱を備える義務>

救急用具について、労働安全衛生規則には次の規定があります。

 

【労働安全衛生規則633条1項】

(救急用具)第六百三十三条 事業者は、負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、その備付け場所及び使用方法を労働者に周知させなければならない。

2 事業者は、前項の救急用具及び材料を常時清潔に保たなければならない。

 

ただ救急箱を置いておけば良いのではなく、イザというときに役立つよう、従業員に置き場所を知らせておき、使い方も指導しておく必要があります。

もちろん、メンテナンスも重要です。

 

<救急箱の中身>

救急箱の中身についても規定されています。

 

【労働安全衛生規則634条】

(救急用具の内容)第六百三十四条 事業者は、前条第一項の救急用具及び材料として、少なくとも、次の品目を備えなければならない。

一 ほう帯材料、ピンセット及び消毒薬

二 高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬

三 重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等

 

つまり、どの職場にも最低限、包帯材料、ピンセット、消毒薬が必要です。

このうち、包帯材料はよく見るガーゼ付きの絆創膏でもかまいません。

また、消毒薬も赤チンなどではなく、無色透明のシュッと吹き付けるタイプのものでかまいません。

これらを保管するには、やはり救急箱が手頃でしょう。

 

<管理もきちんと>

従業員の誰かが気を利かせたつもりで、救急箱の中に医師から処方された胃腸薬の使い残しを入れておいたとします。

これを他の従業員が勝手に服用すると、薬事法違反となりかねません。

ですから、救急箱は中身が適正で清潔に保てるよう、担当者を決めてきちんと管理することが大事です。

 

2018.11.02.解決社労士

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