就業規則変更への不満

2022/05/08|1,507文字

 

<不満発生の原因>

従業員から就業規則の変更に対して不満が出るのは、形式面と実質面の問題が想定されます。

 

<変更手続>

就業規則変更の正しい手順は、次の順番になります。

 

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

 

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。

変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。

ですから、上記の順番が正しいわけです。

こうした手続を巡って、従業員から不満が出るのは、労働者の過半数を代表する者の選出手続が民主的ではなかったために無効であるとか、就業規則が社内に周知される前に労働者の意見書が作成されたというような場合です。

労働者の過半数代表者の選出手続が正しくなかった場合、その選出は無効となり、三六協定届の場合には協定そのものが無効とされます。

三六協定は届出が有効要件だからです。

しかし、就業規則の場合には、その職場の従業員への周知が有効要件です。

ですから、所轄の労働基準監督署長への届出のプロセスに不備があっても無効にはなりません。

会社が手続の不備を指摘された場合に、極論すれば「ご指摘ありがとうございます。次回から正しく行います」ということで済んでしまいます。

 

<不利益変更>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【就業規則による労働契約の内容の変更】

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更内容を従業員に知らせていて、不利益の程度や会社側の必要性など様々な事情を踏まえて合理的であれば、変更後の就業規則が有効だということです。

実際に不利益を受けた従業員や退職者が会社に対して民事訴訟を提起して、裁判所が「不合理」と判断したのでなければ無効にはなりません。

 ただ、この不利益は「平均値」や「総合計」ではなくて、個々の従業員にとって不利益かどうかの問題です。

「自分にとって不利益だ」という不満が出れば、会社はそうでないことを説明しなければなりません。

説明できないのであれば、不利益解消のための対応が必要になります。

 

<不満発生の防止のためには>

就業規則を変更する場合には、事前に社内で説明することと、変更案を周知して、労働組合や労働者の過半数代表者以外からも広く意見を求めておくことです。

こうすることによって、思わぬ見落としに気付くこともありますし、周知を徹底しトラブルを未然に防止することもできるのです。

 

<解決社労士の視点から>

人間は変化を嫌います。

変化の先に、どんな結果が待っているかが見えないからです。

たとえ、従業員の誰にとっても有利な変化であったとしても、変化そのものに対する不安から反対意見が出るのは当然です。

反対意見を減らすには、変化の期日からかなり前もって、情報提供を繰り返すことです。

これによって、従業員から様々な意見が出てくる中で、会社側が思わぬ失敗を回避することもできるでしょう。

 

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