雇用保険の不正受給処分

2021/06/10|1,361文字

 

<不正受給とは>

失業手当(求職者給付の基本手当)や雇用継続給付(高年齢雇用継続給付・育児休業給付・介護休業給付)など、失業等給付の支給を受ける権利が無いのに、不正な手段によって支給を受けたり、支給を受けようとしたりすると、不正受給となります。

つまり、実際に給付を受けていなくても不正受給となります。

 

<不正受給の処分>

不正受給があった場合には、次のような処分が行われます。

・不正のあった日から、雇用継続給付、基本手当等の支給を受ける権利がなくなります(支給停止)。

・不正な行為により支給を受けた金額は、全額返還しなければなりません(返還命令)。

・さらに悪質な場合には、不正な行為により支給を受けた金額の最高2倍の金額の納付が命ぜられます(納付命令)。

この場合、不正受給した金額の返還と併せて、3倍の金額を納めなければなりません。

これらの支払を怠った場合は、財産の差し押えが行われる場合があります。

・刑法により処罰されることがあります。詐欺罪(刑法第246条第1項)の場合、10年以下の懲役に処せられます。

 

<事業主との連帯責任>

事業主が虚偽の申請書等を提出した場合は、事業主も連帯して返還命令や納付命令処分を受けることがあります。

また、同一事業所で一定期間に複数回連続して就職、離職、失業等給付の基本手当の受給を繰り返している人(循環的離職者)を再び雇用した場合は、雇用保険の受給資格決定前から再雇用予約があったものとして受給資格者本人だけでなく、事業主も共謀して不正受給したとして連帯して返還命令処分を受ける場合があります。

 

<ハローワークによる調査>

不正受給の疑いがある場合には、ハローワークによる調査が行われます。

失業等給付を受けていた人を採用した場合に、その人を採用した時期の点検等のため、ハローワークが事業主から関係書類を借りる場合があります。

また、循環的離職者を雇用する(雇用していた)事業主へ再雇用予約の有無等について、ハローワークが確認の連絡をする場合もあります。

 

ハローワークには、雇用保険給付調査官が配置され、不正受給者の摘発や実地調査を行なっています。この場合には、企業の訪問調査も行われています。

 

<不正受給のうっかりポイント>

労働者を採用した場合、雇用年月日の理解が不正確なために不正受給につながることがよくあります。

試用期間や見習期間も雇入れのうちですから、この期間の初日が雇用年月日となります。

この期間について失業等給付(基本手当)を受給すると不正受給になります。

 

失業等給付(基本手当)を受給している人が、内職、アルバイト、手伝等をした場合は、ハローワークへ申告をしなければなりません。

失業中にアルバイトなどをすること自体は違法ではありませんが、必要な申告を怠ると不正受給になります。

 

対象者本人から、雇入年月日、賃金や労働日数、働いていた期間等について、事実と相違する書類が提出されることもあります。

しかし、事業主は事実に基づく証明をしなければなりません。

万一、偽りの記入を求められても絶対に受け入れないようにしてください。

 

不正受給に関して、事業主の証明が誤っていたり、承知しながら見逃していたりした場合、事業主も連帯責任を問われることがあります。

うっかりしないように注意してください。

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