就業規則のひな形の使い方(賞与)

2022/06/15|956文字

 

<退職者から賞与の請求>

勤続10年以上で円満退職した正社員から「賞与が振り込まれていない」という電話が入ります。

もう3か月も前に退職した方です。

この電話を受けた人事担当者は、頭の中がパニックです。

なにしろ、つい先日「退職金が振り込まれていました」という電話をくださったその退職者から、今度は賞与の催促です。

後日、その退職者の代理人弁護士から、賞与請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の請求も増えているようです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(賞与)

第48条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。

ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

算定対象期間

支給日

    日から    日まで

    

    日から    日まで

    

 

この規定では「下記の算定対象期間に在籍した労働者」に支給するとなっています。

「算定対象期間の最終日に在籍した労働者」とは書いてありません。

これだと、算定対象期間の途中まで在籍していて、その後退職した労働者には、本当に支給しなくて良いのかが不明確です。

労働法の原理からすると、「疑わしきは労働者の有利に」ですから、会社は賞与の支払を拒めないように思われます。

就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。

ちょっとしたポイントですが、こうした規定を設けるか設けないかで大きな違いを生じてしまいます。

 

<ひな形はひな形>

ひな形はあくまでもひな形です。

就業規則のひな形に合わせて、会社を運営することなど殆ど不可能です。

当たり前のことですが、会社の実情を反映した就業規則でなければ使い物になりません。

ひな形を利用するのであれば、注意書きをすべて読み込んだうえで、上手にカスタマイズしましょう。

 

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