シフト制で働くパート・アルバイトの休業手当

2021/12/12|1,540文字

 

ダブルワーク禁止

 

<シフトゼロなら休業ゼロの疑問>

パートやアルバイトで、シフト制で勤務している労働者は、たとえば来月1か月は店舗が休業という場合、全くシフトに入らないことになります。

この場合、そもそも出勤予定日が無いのだから、1日も出勤しない状態であっても、休業は発生せず、したがって休業手当は不要であり、雇用調整助成金の対象にもならないという解釈があります。

実際、この解釈によって、大企業を含む多くの企業がシフト制の労働者に休業手当を支払わず、雇用調整助成金の手続も行わないという事実があって、この問題をマスコミが採り上げています。

 

<休業の定義>

休業とは、労働者による労務提供が行われない場合のうち、労働者が労働契約に従って労働の用意をなし、労働の意思を持っているにもかかわらず、その給付の実現が拒否され、または不可能となった場合をいいます。

そもそも労働者が労務を提供することができない場合や、労務を提供する意思が無い場合には、休業には該当しないことになります。

休業の定義の中で「労働契約に従って」というのが、大きなポイントとなります。

シフトが組まれるなどにより、出勤が予定されている日に休むのが休業ではなく、労働契約が予定している日に休むのが休業だということになります。

週3日シフトに入るという労働契約であったのに、1日しかシフトに入らないのであれば、2日の休業が発生することになるのです。

 

<労働契約の内容>

労働契約の内容は、労使の合意により決定されます(労働契約法第6条)し、労働契約は口頭で成立します(民法第623条)。

使用者が労働条件通知書の交付などによって労働条件を明示しないのは、労働基準法違反となり罰則も適用されうるのですが、この場合でも労働契約は成立しています。〔労働基準法第15条第1項、第120条第1号〕

つまり、使用者が明示義務を負っている労働条件の一部があやふやであったとしても、労働契約そのものは成立しているわけです。

ただ、シフトに殆ど入れない、全く入れないなどの場合に、休業が何日になるのかがあやふやになってしまいます。

 

<合理的意思解釈>

労働契約の締結にあたって、使用者は「退職者の穴を埋めてもらうのに、週3日程度働いてもらいたい。週2日では足りないし、週4日だと人手が余る」などと考えます。

一方、労働者も「月10万円は稼ぎたいので、週3日は働きたい。週2日だと足りないし、週4日だと家事ができない」などと考えます。

しかし、週何日あるいは月何日出勤するのか明確な合意が無いまま、なんとなく合意して労働契約が成立することがあります。

この場合でも、労働契約に従って休業の日数が決定されることになります。

その労働者の過去の労働日数の実績や、同様の「約束」で勤務している労働者の労働日数の実態などから、「労働契約の内容をこのように考えるのが合理的だ」というものを割り出して、これを基準とすることになります。

こうしたやり方を「合理的意思解釈」と呼び、民事裁判でも使われている手法です。

雇用調整助成金についても、シフト勤務で労働契約の内容の一部が不明確な場合には、過去の勤務実績を踏まえて、金額が確定されることになっています。

 

<解決社労士の視点から>

たとえば年次有給休暇の付与日数は、週所定労働日数(時間)によって法定されています。

労働契約の内容が不明確で確定し難い場合には、労働基準監督署が過去の勤務実績を基準に付与するよう指導しています。

しかし、入社の6か月後に付与される年次有給休暇とは異なり、休業手当の問題は入社後すぐにも発生しうるのです。

やはりシフト制といえども、1週あたりの労働日数、労働時間を明確に決めて明示しておくことが、トラブル防止のためにも必要でしょう。

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