2022年 5月 21日

2022/05/21|1,604文字

 

<退職遺留の理由>

会社から退職話を持ちかける退職勧奨の対象者は、当然のことながら、能力的なミスマッチがあるなどの理由で、会社への貢献度が低い社員です。

これに対して、退職を申し出た社員に対して退職遺留を行うというのは、その対象者の会社への貢献度が高く、辞めて欲しくない人材だからです。

自ら退職を申し出る社員の中には、勤務を継続できないような突発的な事情が発生した人もいますが、他の会社でも通用する能力を備えていると自認している人は、キャリアアップを目指しての転職が多いものです。

終身雇用制度や年功序列制度が崩壊していますから、有能な人材の社外への流出は、そのリスクが年々高まっている状態です。

 

<退職の申し出が突然である理由>

通常、退職願の提出先は、就業規則で直属の上司が指定されています。

直属上司が、部下からの退職申し出を受けた時、突然のことで驚くことが多いものです。

部下が、上司に信頼を寄せていれば、退職願を準備する前に、転職についての相談をしていたはずです。

しかし、残念ながら、上司を信頼できなければ事前の相談はありません。

しかも、信頼できない上司の下で働くことも、それ自体が苦痛ですから、退職を決意する理由の一つになっていることでしょう。

 

<退職理由の説明と本音>

退職を申し出た社員に理由を尋ねると、優秀な人材は「介護の仕事をしたくなった」「事業を立ち上げることにした」など、異業種への転職を希望する旨の説明をすることが多いようです。

これは、同業種のライバル企業への転職が良く思われないこと、社内にある業種への転職であれば社内での異動での対応を打診されてしまうことなどに配慮してのことでしょう。

退職の数か月後に偶然会って近況を尋ねてみると、あるいは、社内で親しかった人からの情報で、現在は同業他社で勤務しているというのが大半です。

転職するにしても、スキルを磨き経験を積んだ業務に就くのは自然なことでしょう。

そして、本音の退職理由で最も多いのが人間関係です。

特に今の上司の下で勤務することに精神的な苦痛を感じていて、本人としては、これを理由に異動を申し出ることはできないので、転職を決意するということになります。

 

<退職遺留の方法と限界>

退職遺留の基本的なやり方としては、退職希望者本人の話を親身になって聞き、退職理由への対応として、退職以外の方法を提案するということになります。

しかし、本当の退職理由を聞き出せなければ、すべての提案が空振りになってしまいます。

ましてや、退職を決意する理由の一つとなっている上司から根掘り葉掘り聞かれたのでは、ますます退職の決意が固くなってしまいます。

むしろ、退職希望者が意欲的に働いていた時期の、元上司や元先輩に話を聞いてもらったほうが、本人も翻意しやすいでしょうし、退職遺留の成功率が高まるでしょう。

この場合には、退職希望者の上司がその上司の了解を得たうえで、元上司や元先輩に他言無用で協力を依頼することになります。

また、本音の退職理由が聞き出せたとしても、今の会社で働き続けたのでは解決できない問題のことも多いですから、ここにも退職遺留の限界があります。

さらに、辞めたいという気持は明確であるものの、その具体的な理由については、本人も良く分かっていないということがありますから厄介です。

 

<解決社労士の視点から>

一度退職を決意してしまった社員を翻意させるのは、決して容易なことではありません。

上司は部下との人間関係を良好に保ち、普段から本音を聴いておく必要があります。

このためには、パワハラに該当する言動を慎まなければなりませんし、指導する、あるいはアドバイスするという意識ではなく、傾聴の姿勢で、部下の話を最後まで良く聞くということが求められます。

こういう上司であれば、少なくとも勘違いや思い込みで退職を申し出るようなことは、ある程度、防ぐことができるでしょう。

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