2022/10/27|976文字
<法律の規定>
健康保険法には次の規定があります。
【保険料の負担】
第百六十一条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。 |
厚生年金保険法にも次の規定があります。
【保険料の負担】
第八十二条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。 |
こうして社会保険料、つまり健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、労働者と雇い主とで半分ずつ負担することになります。
ただし、たとえば建設業で土建組合に加入している企業の場合には、健康保険ではなく土建国保に加入することとなり、その企業の判断により、労使折半であったり全額が労働者の負担であったりします。
それでも、厚生年金保険料は労使折半です。
<事業主の負担額>
こうした法律の規定にもかかわらず、福利厚生の一環で、社会保険料を会社が全額負担してはどうかという提案が出てくることもあります。
たとえば、本来の月給の総支給額が30万円の従業員が負担すべき社会保険料は、約4万5千円です。会社も同額を負担しています。
従業員が負担すべき保険料を会社が負担した場合、この約4万5千円は従業員の所得となります。
すると、この従業員の総支給額は約34万5千円に増額されますから、これに対する社会保険料は約5万1千円です。
こうして、この従業員の総支給額は約35万1千円に増額され、これに対する社会保険料は約5万4千円となって、最終的にこの従業員の総支給額は約35万4千円となります。
総支給額が約35万1千円と約35万4千円とは、社会保険料を決める保険料額表で同じ等級に含まれますから、総支給額は約35万4千円、社会保険料は約5万4千円となって、ここで計算が落ち着きます。
本来は労使折半の社会保険料を、会社が全額負担するということは、会社の負担が約4万5千円から約10万8千円に増額されることを意味します。
<税金の処理>
従業員の保険料相当額は、給与課税の対象となります。
給与が30万円から約35万円に大幅昇給したのですから、課税額も大幅に増額されます。
こうしてみると、社会保険料を全額会社負担にするというのも面倒なものです。
それでも、全額会社負担を考えたいのであれば、給与計算を担当する部署や、所轄の税務署などと十分打合せのうえ、実施に踏み切ることをお勧めします。