試用期間だけ月給15万円の問題

2022/11/22|1,253文字

 

<試用期間だけ低めの月給>

試用期間中は低めの月給にしておいて、本採用になったら本人の働きぶりに見合った月給に引き上げるのは、よく行われていることです。

本採用にするとき、働きぶりに見合った月給に引き下げるというのは、不利益変更禁止の原則があってむずかしいので、どうしてもこのようになります。

試用期間中の賃金が低めになることに配慮して、平均賃金を計算する場合には、試用期間を除くことになっています。〔労働基準法第12条第3項第5号〕

求人広告でも、入社時の労働条件通知書でも、試用期間の月給について正しく明示してあれば問題ありません。

 

<最低賃金法との関係>

月給を1か月の所定労働時間で割って、都道府県ごとの最低賃金を下回れば、明らかに最低賃金法違反となります。

これは犯罪です。

この場合の所定労働時間は、給与計算に使う基準です。

入社にあたっては、労働条件通知書などで所定労働時間を示さなければ違法ですから、これもまた犯罪ということになります。

計算方法としては次のようになります。

土日のみが休日で、あとは一切休日がない場合、1日8時間勤務なら、

365日×(5日÷7日)×8時間÷12か月=173.8時間

となりますから、173.8時間と定めればよいでしょう。

都道府県ごとの最低賃金×173.8時間 を月給が下回れば、月給が安すぎるので、最低賃金法違反ということになります。

月給が15万円で、月間所定労働時間が173.8時間であれば、

150,000円÷173.8時間=863.06円

ですから、現在、最低賃金がこれを上回る都道府県では違法となってしまいます。

 

<固定残業代がある場合> 

 最低賃金法施行規則第1条が「所定労働時間をこえる時間の労働に対して支払われる賃金」については最低賃金額に算入されないと定めています。

これにより、月給から固定残業代を差し引いた金額を所定労働時間で割って、最低賃金を下回れば明らかに違法ということになってしまいます。

 たとえば、月間所定労働時間が173.8時間で、15万円の月給に20時間分の定額残業代を含むのであれば、残業代抜きの純粋な基本給をPとすると、 

150,000円=P+P÷173.8時間×20時間×1.25 ですから、これを解いて、 

残業代抜きの基本給が131,137円、20時間分の残業代が18,863円となります。 

すると、この場合には131,137円が最低賃金の基準となり、 

131,137円÷173.8時間=754.53円

ですから、現在はどの都道府県でも最低賃金を下回ってしまい違法であることがわかります。

 

<試用期間の特例>

試用期間中の者については、特別な許可を得て、最低賃金を下回る月給にすることができる建前です。

最低賃金の減額の特例許可を受けたい場合、使用者は最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)2通を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出する必要があります。

もっとも、許可基準は厳しいですから、まず許可されることはありません。

 

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