会計検査院の調査による企業への立ち入り

2022/07/24|977文字

 

<会計検査院による実地検査>

国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査します。〔日本国憲法第90条〕

そして、常時または臨時に職員を派遣して、実地の検査をすることができます。〔会計検査院法第25条〕

 

会計検査院が行う実地の検査には、次のような内容も含まれます。

・労基署がきちんと労働保険料(雇用保険・労災保険)を正しく支払う指導をしているか。

・ハローワークが失業者の再就職後の不正受給を見逃していないか。

・雇用関係助成金の不正受給がないか。

・年金事務所が対象企業や対象従業員をきちんと社会保険に加入させ、保険料を徴収しているか。

とはいえ、これらのことは、実際に対象となる企業に出向いて調べてみないことにはわかりません。

そこで、会計検査院は労基署、ハローワーク、年金事務所の方々と共に、企業に出向いて実地の検査をするということになります。

 

<会計検査院の調査の特徴>

一言でいうと、とにかく厳しいです。

実際、労基署、ハローワーク、年金事務所が単独で調査に入った場合には、会社の現状を察してくださることもありますから、人情に訴えることも不可能ではありません。

しかし、会計検査院は「法律通り正しく行われているか」を調査しますので、会社の成長段階や体力に対する配慮はしてくれません。

視点が違います。

企業を指導するという考えではなくて、「企業を指導する労基署、ハローワーク、年金事務所」の指導ぶりを厳しくチェックするわけです。

労基署、ハローワーク、年金事務所の皆さんは、会計検査院を「鬼より怖い」といいます。

 

<一例として>

たとえばある企業で、パート社員が社会保険加入を嫌うので資格取得手続をしなかったとします。

これが年金事務所に発覚すると「すぐに手続してください」という指導が行われるでしょう。

ところが会計検査院だと、「保険料を2年前からの分すべて、会社負担分も本人負担分も、まとめて納付してください」ということになります。

こうしないと、国の収入が法律通りにならないわけですから。

こうなると、対象となるパート社員から2年分の保険料を強制的に徴収する方法はないのですから、会社は本人負担分も支払うことになり、大きな損失をこうむることになるわけです。

場合によっては、そのパート社員が突然に来なくなることもあるのです。

やはり、正しい手続、正しい納付が基本です。

 

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