労働基準監督官の立入調査(臨検監督)

2022/05/22|1,613文字

 

<労働基準監督官の権限>

労働基準監督官には、事業場への臨検監督(立入調査)権限、帳簿・書類等の検査権限、関係者への尋問権限など多くの権限が与えられています。〔労働基準法第101条、第103条、労働安全衛生法第91条、第98条、最低賃金法第32条など〕

これらの権限を行使して、工場や事業場等に監督を実施し、関係者に尋問したり、各種帳簿、企画・設備等を検査します。

そして、法律違反が認められた場合には、事業主等に対しその是正を求めるほか、危険性の高い機械・設備等について労働基準監督署長が命ずる使用停止等の行政処分の実行を担っています。

なお、臨検監督(立入調査)の拒否・妨害や尋問に対する陳述の拒否・虚偽の陳述、書類の提出拒否・虚偽を記載した書類の提出については、罰則が設けられています。〔労働基準法第120条、労働安全衛生法第120条、最低賃金法第41条など〕

さらに労働基準監督官には、警察官のような司法警察員としての職務権限があるため、重大なまたは悪質な法違反を犯した事業者等に対しては、司法警察権限を行使して、刑事事件として犯罪捜査を行うこともあります。〔労働基準法第102条、労働安全衛生法第92条、最低賃金法第33条など〕

 

<その場で対応できない場合>

労働基準監督官は、事業場のありのままの現状を的確に把握することが重要であるため、原則として予告することなく事業場の監督を行っています。

したがって監督時には、事業場で労働基準監督官に対応すべき職務を担っている社員も、通常の自分の仕事をしている状況にあると思われます。

しかし、労働基準監督官が法律上の権限を基に監督していることを踏まえれば、できる限り時間をとって、これに対応することが適切です。

ただし来客があるなどで、どうしても時間が取れない場合もあると考えられます。

このような場合には、労働基準監督官に事情を十分に説明し、監督時間の短縮や監督日時の延期を要望すればよいと考えられます。

 

<その後の指導>

調査が入った後には、ほとんどの場合、会社が「是正勧告書」「指導票」という2種類の書類を受け取ることになります。

「是正勧告書」は、法律違反があるので、すぐに正しい形に改めなさいという趣旨です。

最近は、予め「□労働時間の適正な把握をすること(労働安全衛生法 第66条の8の3)」などの項目が印刷されていて、該当項目にチェックマークを付けるタイプのものも見られます。

労働基準監督官の調査は、より細かく、より厳しくなっていますので、省力化のためにこのような工夫がされるようになったのでしょう。

会社はこれに対応して、改善内容をまとめた「是正報告書」を労働基準監督署長に提出するのが一般です。

万一放置して、再び法律違反が見つかると、刑事事件として送検されることがあります。

もちろん、ウソの「是正報告書」を提出しても罰せられます。

「指導票」は、法律違反ではないけれど「ガイドラインに沿って改善した方がいいですよ」という指導の内容が書かれています。

調査が入ったとき、社会保険労務士が立ち会えば、労働基準監督署の監督官の方も、「話の通じる専門家がいる」ということで安心します。

もちろん反対に、緊張されてしまうこともありますが。

社労士が立ち会えば「是正勧告書」「指導票」の内容も、厳しくならないものです。

反対に、専門知識の無い方が、わかりにくい説明をしたために誤解され、法律違反を指摘されることもあります。

 

<事前の予告がある場合>

臨検監督(立入調査)は、必ずしも予告なしに行われるとは限りません。

もし、事前に調査の予告が入ったなら、その調査の意図を見抜いて準備しておけば、その後の会社の負担は大いに軽減されます。

ぜひ、充分な準備をしておきましょう。

下手な対応や下手な報告書の提出は、会社にとって命取りになることもあります。

その場の勢いではなく、長期的視点に立っての対応をしたいものです。

 

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