新型コロナウイルスの記事

2020/05/21|2,041文字

 

<労働契約>

会社と従業員との間には、労働契約が締結されています。

この労働契約は、口約束でも成立します。

 

【民法第623条:雇用】

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

労働条件通知書や雇用契約書等の書面を交付しなければならないのは、労働基準法が労働者を保護するために、使用者に対して労働条件の明示義務を課しているからです。

 

【労働基準法第15条第1項】

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

労働と賃金とは、対価関係にありますから、労働の提供が無ければ、賃金の支払も無いという、ノーワーク・ノーペイの原則が働きます。

従業員が働かなければ会社は賃金を支払わなくても良い、従業員が働いたら会社は賃金を支払わなければならないという、当たり前のことが大原則となります。

 

<100%の補償が必要な場合>

従業員が労働に従事しない場合でも、会社が賃金を100%支払わなければならない場合があります。

 

【民法第536条第2項:債務者の危険負担等】

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

 

これを労働契約に当てはめると、会社の落ち度で従業員が働けなくなったときには、会社は賃金の支払を拒めないということになります。

会社が従業員に解雇の通告をしたために、従業員が出勤できなくなったものの、不当解雇であって解雇が無効である場合には、賃金の支払義務を免れません。

この条文の中の「債権者の責めに帰すべき事由」というのは、故意、過失、信義則上故意や過失と同視すべきものとされています。

 

<60%以上の補償が必要な場合>

従業員が労働に従事しない場合でも、会社が賃金を60%以上支払わなければならない場合があります。

 

【労働基準法第26条:休業手当】

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

 

会社の主観的な判断により、不合理な理由で従業員の労働の提供を拒んだ場合には、会社が賃金の100%を支払う義務を負うのですが、客観的に合理的な理由で従業員の労働の提供を拒んだものの、会社に落ち度がある場合には、労働者を保護するため、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務を負います。

会社の経営判断で、従業員を休ませたところ、それには客観的に合理的な理由があって、しかし、従業員に落ち度はなく、厳しい目で見れば、どちらかというと会社側に落ち度がある場合に、この規定が適用されます。

国家機関による休業命令による場合は、休業命令を受けることについて会社に落ち度がありますから、この規定が適用されます。

仕入先から原材料が入らない場合には、その仕入先を選んだことについて会社に落ち度があるものと考え、この規定が適用されます。

 

<補償が不要な場合>

民法に、次の規定があります。

 

【民法第536条第1項:債務者の危険負担等】

当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

 

公共交通機関の遅れの場合、本来であればノーワーク・ノーペイの原則により、遅れて勤務できなかった時間の賃金は支払われないことになります。

しかし、実際には多くの会社で、遅刻が無かったものとして扱う慣行がありますので、この慣行にしたがって支払うのが通常でしょう。

このように経営判断で、法律上義務の無い賃金を支払うのは問題視されません。

 

<新型コロナウイルスの影響による休業の場合>

従業員本人が、新型コロナウイルスに感染して休業した場合、会社の命令で休業させるわけではなく、また感染したことについて会社に落ち度が無いのであれば、会社は賃金の支払義務を負いません。

その従業員が健康保険に加入していれば、傷病手当金を請求することができますし、業務上感染したのであれば、労災保険が適用されます。

問題は、会社の判断で店舗などを休業した場合です。

都道府県からの一般的な要請により休業したのであれば、60%以上の補償が求められるケースが多いでしょうし、業種が特定されてほぼ名指しのような形で休業させられたのであれば、会社が補償義務を負わないケースもあるでしょう。

この辺の判断が微妙なために、雇用調整助成金に様々な特例を設けて、多くの企業が利用できるようにしたのだと考えられます。

 

解決社労士

2020/03/30|1,650文字

 

<通達の発出>

令和2年3月17日、厚生労働事務次官が、都道府県労働局長に宛てて依命通達(令和2年3月17日厚生労働省発基0317第17号)を発出しました。

これは、新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響から、中小企業・小規模事業者で労働基準関係法令への対応が困難となる状況が発生していることを受け、中小企業等に与える影響への配慮の徹底を指示するものです。

直接的には、中小企業への配慮を依頼する内容となっていますが、労働基準法の解釈・適用について、実態を踏まえた柔軟な対応をなしうることを示しているもので、大企業にとっても参考になるものです。

具体的には、次の事項を指示しています。

 

<中小企業等への配慮>

・中小企業等に対する相談・支援にあたっては、労働基準関係法令に係る違反が認められた場合においても、新型コロナウイルス感染症の発生および感染拡大による影響を十分勘案し、労働基準関係法令の趣旨を踏まえた自主的な取組みが行われるよう、きめ細かな対応を図ること。

・中小企業等の置かれた状況に応じ、時差出勤やテレワークについて必要な周知等を行うこと。

ポイント:法令違反があっても、必要な知識を与え、自主的な改善を求める。

 

<労働基準法第33条第1項の解釈>

 

【労働基準法第33条第1項】

災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。

 

・感染患者を治療する場合、高齢者等入居施設において新型コロナウイルス感染症対策を行う場合および感染・蔓延を防ぐために必要なマスクや消毒液、医療機器等を緊急に増産または製造する場合等が対象になり得るものであること。

・このほか、人命・公益を保護するために臨時の必要がある場合には、状況に応じた迅速な運用を図ること。

・あくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものであり、やむを得ず月80時間を超える時間外・休日労働を行わせたことにより疲労の蓄積の認められる労働者に対しては、医師面接等を実施し、適切な事後措置を講じる必要があること。

ポイント:「臨時の必要がある場合」は限定されており、長時間労働で疲労が蓄積した労働者には、適切な事後措置が必要である。

 

<1年単位の変形労働時間制>

・新型コロナウイルス感染症対策のため、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、特例的に、1年単位の変形労働時間制の労使協定について、労使で合意解約をし、または協定中の破棄条項に従って解約し、改めて協定し直すことも可能であること。

・解約までの期間を平均して1週40時間超労働させた時間について割増賃金を支払うなど、協定の解約が労働者にとって不利になることのないよう留意すること。

ポイント:1年単位の変形労働時間制についての労使協定を合意解約し、また、協定のやり直しも可能だが、割増賃金の支払などで労働者に不利益が発生しないようにする必要がある。

 

<36協定の特別条項>

・36協定の「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」に、繁忙の理由が新型コロナウイルス感染症とするものであることが明記されていなくとも、一般的には、特別条項の理由として認められるものであること。

・現在、特別条項を締結していない事業場においても、法定の手続きを踏まえて労使の合意を行うことにより、特別条項付き36協定を締結することが可能であること。

ポイント:36協定の特別条項に新型コロナウイルス感染症についての記載が無くても、「繁忙の理由」として扱える。また、特別条項の無い36協定が届出済であっても、特別条項付きの36協定に切り替えることができる。

 

解決社労士

2020/03/18|1,435文字

 

令和2年3月6日、新型コロナウイルス感染症に関わる傷病手当金の支給について、厚生労働省保険局保険課から全国健康保険協会に宛てて、事務連絡文書が発信されています。

 

<感染者の傷病手当金>

健康保険加入者(被保険者)が新型コロナウイルス感染症に感染し、療養のため労務に服することができない場合には、傷病手当金の対象となります。

つまり、他の病気やケガと同様に、療養のため労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、労務に服することができない期間、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額が、傷病手当金として支給されます。

例外的に業務によって感染した場合には、傷病手当金の対象とはならず、労災保険給付の対象となります。

 

<自覚症状の有無>

検査の結果、「新型コロナウイルス陽性」と判定され、療養のため労務に服することができない場合には、たとえ自覚症状が無いときでも、傷病手当金の支給対象となりえます。

反対に、「新型コロナウイルス陽性」と判定されていない場合でも、医師が診察の結果、被保険者の既往の状態を推測して初診日前に労務不能の状態であったと認め、意見書に記載したときには、初診日前の期間についても労務不能期間となりえます。

今回の新型コロナウイルス感染症では、次のような症状があるため被保険者が自宅療養を行っていた期間は、療養のため労務に服することができなかった期間に該当することとなります。

・風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている

・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある

 

<受診していない場合>

やむを得ない理由により、医療機関での受診を行わず、医師の意見書を添付できない場合でも、傷病手当金支給申請書にその旨を記載するとともに、その期間、被保険者が療養のため労務に服さなかった旨を証明する書類を事業主に作成してもらい添付すること等により、傷病手当金を受給できる場合があります。

 

<職場全体が休業になった場合>

事業所内で、新型コロナウイルス感染者が発生したこと等により、事業所全体が休業し、労務を提供することができなかった期間については、傷病手当金は支給されません。

傷病手当金は、労働者の業務災害以外の理由による疾病、負傷等の療養のため、被保険者が労務に服することができないときに給付されるものであるため、被保険者自身が労務不能と認められない限り、傷病手当金は支給されないことになります。

なお、使用者の独自の判断により、一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、労働基準法に基づき、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりません。〔労働基準法第26条〕

 

<家族が感染した場合>

家族が感染し、労働者が濃厚接触者になったが症状は無いという場合、その労働者が休暇を取得しても傷病手当金は支給されません。

繰り返しですが、傷病手当金は、労働者の業務災害以外の理由による疾病、負傷等の療養のため、被保険者が労務に服することができないときに給付されるものであるため、被保険者自身が労務不能と認められない限り、傷病手当金は支給されないことになります。

 

これらは、従来の取扱いに基づくものであって、新型コロナウイルス感染症についての特例を定めたものではありませんが、迷いやすい点もあることから公表されたものです。

 

解決社労士

2020/03/05|1,039文字

 

<感染経路>

ウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。

飛沫感染は、感染した人の咳やくしゃみのしぶき(飛沫)に含まれるウイルスを吸い込むことによる感染です。

予防には、感染した人の咳やくしゃみが直接人にかからないよう、マスクやティッシュ等で口と鼻を覆う等の「咳エチケット」が効果的です。

マスクやティッシュ等が無い場合には、ひじを曲げてひじの内側で口と鼻を覆います。

接触感染は、ウイルスの付着した手で、目・口・鼻を触ることによる感染です。

予防には、手洗い、消毒が効果的です。

 

<従業員の取組>

●こまめな手洗い

手洗いは流水と石けんで15秒以上行い、水分を十分にふき取りましょう。

手が洗えない場合、手指消毒用アルコール製剤(エタノール等を60~80%程度含むもの) による消毒も効果があります。

●顔を触らない

手に付着したウイルスが目・口・鼻の粘膜から体内に入らないよう、手で顔を触らないようにしましょう。

●人ごみを避ける

外出する場合は、公共交通機関のラッシュの時間を避ける等、人ごみは避けましょう。

症状のある人(咳やくしゃみなど)に接触した場合は、手洗いなどを行いましょう。

●咳エチケット

咳やくしゃみが出るときは、マスク等で口や鼻を覆うなどの「咳エチケット」を心がけましょう。

 

<マスクの付け方>

口と鼻の両方を確実に覆う → ゴムひもなどを耳にかける → 鼻の部分に隙間ができたり、あごの部分が出たりしないようマスクを調節する

※あごや首にはウイルスが付着します。飲んだり食べたりの際、マスクを下にずらすと、マスクの内側にウイルスが付着してしまいます。

 

<マスクの外し方>

マスク表面には、ウイルスが付着している可能性があるので、触らずにゴムひもなどを持って外します。

※マスクは1日1枚程度交換します。

 

<企業の取組>

●感染予防に必要な備品・環境の整備

手指消毒薬、石けん・ペーパータオル等を備えるなど、衛生状態を保つための備品・環境を整備しましょう。

手指消毒薬の使用期限に注意しましょう。

●人が触れる場所を清掃・消毒

人が触れる場所(ドアノブ、スイッチ、階段の手すり、エレベーターの押しボタン等)を清掃・消毒しましょう。

消毒剤は、次亜塩素酸ナトリウム(製品表示に従い希釈)や消毒用エタノール等が有効です。

消毒剤を使う場合には、消毒剤を浸したペーパータオル等による拭き取り消毒を行うこと、換気すること、「使用上の注意」をよく読んで使うこと、作業をした後は手を洗うことなどに注意しましょう。

 

解決社労士