労働紛争の記事

<冷静に考えれば>

会社の物品が壊れたのに、すぐに報告せず遅れて報告したら、責任を問われ半額弁償するよう迫られたという相談がありました。

かなりメチャクチャな話であることは明らかです。

理論的に反論するなら、報告が遅れたことと会社の物品が壊れたこととの間に因果関係が無いので、物品の修理費用や新品の購入代金を基準に責任を負わされるのは不合理だということになります。報告が遅れたから物品が壊れたわけではないのに、壊れたことに対して責任を負うのはおかしいのです。

 

<営業上の損害が発生する場合>

パン屋さんやピザ屋さんで、閉店間際にパンを焼くオーブンやピザを焼く窯(かま)が壊れたとします。このときすぐ会社に報告して、修理の手配や代品の手配ができるようにしなかったため、翌日、臨時休業になったとします。会社の損害は、その店舗の1日分の売上に基づく利益ということになります。

もし、会社に損害を加えようとして、わざと報告しなかったのであれば、不法行為としてこの損害を基準とする賠償を求められることもありえます。〔民法709条〕

しかし、この場合でも、修理費用が賠償額の基準になるわけではありません。

また、その場にいる従業員だけで、何とか修理しようとして翌朝まで頑張ってしまい、会社に報告することなど思いもよらなかったというケースなら、故意はありません。過失にしてはひどすぎますが、会社側の教育不足も原因だと考えられます。就業規則の懲戒規定に従い、合理的な範囲内で懲戒処分を受けることになるでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

こんなとき報告を受ける側としては、ついカッとなってしまいます。クビにしようか、全額弁償させようかと、極端な思考に走りがちです、一呼吸おいて信頼できる社労士にご相談いただけたらと思います。

 

2017.03.30.解決社労士

<賠償予定の禁止>

会社の就業規則で、研修の費用を労働者の負担とし、一定期間勤続せずに退職した場合には、返還するものと定めていることがあります。

しかし労働契約を結ぶ際に、契約違反があったときの賠償額を決めておくことは、人身拘束につながるとして禁止されています。〔労働基準法16条〕

通常の業務のために行われる教育訓練や、通常の新人研修や社内研修として実施される教育訓練について、退職時の費用返還を定めておくことは、この規定に違反する可能性があります。

 

<返還請求が認められる場合>

ところが裁判の中には、返還請求が認められた例もあります。

たとえば通常の業務と直接の関係がない研修であって、もともと本人が支出すべき内容の研修費用を、会社が一時的に立て替えたに過ぎない場合です。

希望者を募って海外の大学院へ留学させた例で、費用を会社が貸し付けた形をとり、一定の年数の勤続によって返済を免除するという事例で、退職者への返還請求を認めた裁判例があります。

実際に返還請求が認められるためには、返済金額や返済方法などから客観的に見て退職の自由を奪うものではないこと、返還について事前に十分な説明が尽くされていて合意があったことなど、厳格な条件を満たしていることが必要になります。

 

2016.12.16.

<コミュニケーション>

従業員の間で情報交換が盛んであれば、起きない労働問題もあります。

ある従業員が「何かおかしい」と思ってネットで調べたことを、自分に都合よく解釈し、不満が大きくなったところで、会社にぶつけるというパターンの労働紛争があります。

会社としては、ほとんど言いがかりに感じますが、完全に適法ではない部分もあり、対応に困ってしまいます。

この従業員が「何かおかしい」と思ったとき、ネットで調べるのではなくて、社長、上司、先輩に確認したら、みんなで考えることになります。

一人の従業員と会社が対立する形にはならず、みんなで解決する形になります。

 

<信頼関係>

従業員の間の信頼関係があれば、起きない労働問題もあります。

上司からしかられた部下が、「これは嫌がらせだ。イジメだ。パワハラだ」と思い、労働問題になることがあります。

しかし、「あの上司は親身になってしかってくれてありがたい。よし、頑張ろう!」と思えば、客観的にはパワハラの疑いがあっても、労働問題にはなりません。

むしろ、感謝の気持ちとモチベーションにあふれる結果になります。

 

<やりがい>

従業員が自分の仕事にやりがいを感じていれば、起きない労働問題もあります。

「毎日残業続きで、しかも残業代の一部がカットされているような気がする。言われたからやっているけれど、やる意味が解らない。これじゃうつ病になりそうだ。」こう考える従業員は、メンタルヘルス不調になりがちです。当然、会社の責任問題にもなります。

ところが、仕事にやりがいを感じていれば、「毎日自分の納得がいくまで残業させてもらえる。会社の光熱費負担だけでも大変だろう。何とか貢献度を上げて成果を出さねば。」こう考える従業員は、精神的に充実していますから、多少労働時間が長くても調子が落ちないものです。

この「やりがい」は、コミュニケーションと信頼関係に大きく依存します。自分の仕事が、どこで誰の役に立っているのか、失敗すると誰に迷惑がかかるのかが明確だからです。

 

<就業規則の充実>

上記3つが足りない会社では、就業規則の充実が急務です。会社にピッタリの就業規則は、会社にとって大きな武器になります。

ところが、会社にとって余計なことが書かれている就業規則、会社にとって必要なことが書かれていない就業規則、規定の意味が何とでも受け取れる就業規則、そして法改正に追いついていない就業規則では、会社の武器になるどころかブラック社員の武器になります。特に退職前後のブラック社員にとっては、大変強力な武器です。

これを踏まえれば、就業規則の作成や改定にお金をかけるのは当然です。

 

<相談窓口>

どうしても労働問題を防止できない環境にある会社では、問題が小さいうちに発見して対応することが最大の課題となります。

パワハラ、セクハラ、マタハラについての相談窓口設置は必須です。

病気と同じで早期発見と早期治療は大変有効です。

 

就業規則の作成や変更だけでなく、相談窓口となったり、社内のコミュニケーション、信頼関係、やりがいの改善をすることは、すべて社労士(社会保険労務士)の業務です。

社内で対応し切れない、あるいは、早く対応したいということであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.11.04.

<ノーワーク・ノーペイの原則>

たとえば勤務時間中に、スマホを片手にモンスター探しの旅に出ていたら、その時間の賃金はもらえなくて当然です。

働いていなければ賃金は発生しないというノーワーク・ノーペイの原則は、労働契約の性質から当然に導かれます。

つまり、使用者の「働いてください。賃金を支払います。」と労働者の「働きます。賃金をください。」という意思表示が合致して労働契約が成立したのですから、働かなければ賃金が発生しないのは当然なのです。

ただし、欠勤控除をするかしないか、どのように計算するかは、就業規則に定めておくべき事項です。定めておかないと、実際に勤務時間帯に働かなかった場合に、賃金から差し引かれる金額をめぐってトラブルが発生します。

ご質問のかたが仕事をサボって、あとからさかのぼって欠勤控除を受けたというのであれば、労働契約の債務不履行による損害賠償請求〔民法415条〕というより、不当利得の返還〔民法704条〕ということになるでしょう。

 

<拡大損害の場合>

しかし仕事をサボったために、重要なお取引先への納期が守れず、取引を解消されてしまったので、会社の売り上げが安定して2割減少したとか、機械の点検会社の社員が点検を何回かサボったために、機械の故障による死亡事故が発生したという場合には、賃金を削られるだけでは済むはずがありません。

これらは、労働契約上の義務を果たすにあたって発生した拡大損害です。

たとえば、運送屋さんがソファーを個人の家に届ける際、玄関に飾ってあった時価1億円の花瓶を落として割ってしまったという場合、「すみません。配送料をタダにします。」と言われても、「はいそうですか。」とは言えません。

(これは、大学の法学部の講義でよく出てくる例です。個人的には、「花瓶をしまっておきましょうよ」と思う次第です。)

これも、契約関係から拡大して発生する損害なので、債務不履行による損害賠償のケースだとされます。

もし、ご質問のかたが、こうした拡大損害を発生させてしまったのなら、サボりと損害との因果関係(原因と結果の関係)が認められる範囲で、損害賠償を請求されることは十分にありえます。

 

いずれの場合でもなく、納得がいかない場合には、信頼できる特定社労士(特定社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.09.13.

<常識的に考えてみて>

たとえば、会社で30年以上使われてきたホッチキスを、たまたま自分が使っていたら壊れたとします。

こんなとき、乱暴に扱ったわけでもないのに「あなたが使っていて壊れたのだから自分のお金で新しいのを買ってきなさい」と言われたら、決して納得できません。

法律上も、こうした常識に反する解決にはなりません。

 

<労働者の会社に対する損害賠償責任>

労働者が故意や過失によって、会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任が発生します。〔民法709条〕

物を壊すなど財産上の損害だけでなく、名誉や信用といった形のないものに対する損害や、お客様に損害を与えたために会社が損害賠償をした場合も含まれます。

それでも、会社は労働者の働きによって利益をあげていて、危機管理の義務もありますから、リスクをすべて労働者に負わせるのは不公平です。

そこで裁判になれば、多くのケースで損害の全額を労働者に負担させることはできないとされています。

具体的には、労働者本人の責任の程度、違法性の程度、会社が教育訓練や保険で損害を防止しているかなどの事情を考慮して、労働者が負担すべき賠償額が判断されます。

 

<弁償額の給与天引き>

労働者が、会社に損害賠償責任を負う場合であっても、会社が一方的に賠償金の分を差し引いて給与を支給することは禁止されています。〔労働基準法24条1項〕

したがって、会社は給与を全額支払い、そのうえで労働者に損害賠償を請求する必要があります。

また、労働契約を結ぶ際に「備品の破損は1回5,000円を労働者が弁償する」など、労働者が会社に与えた損害について、あらかじめ賠償額を決めておくこともできません。〔労働基準法16条〕

 

2016.06.16.

<個別労働紛争と解決>

個別労働紛争というのは、労働関係に関する事項についての、個々の労働者と事業主との間の紛争のことです。

これを解決する最終手段としては、裁判制度があります。しかし、これには多くの時間と費用がかかってしまいます。また、感情的なしこりが残るものです。

そこで、職場慣行を踏まえた円満な解決を図るため、都道府県労働局では、無料で個別労働紛争の解決援助サービスを提供しています。

さらに、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進することを目的として、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、次の制度が用意されています。

・総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談

・都道府県労働局長による助言・指導

・紛争調整委員会によるあっせん

 

<紛争調整委員会によるあっせんの特徴>

上記の制度のうち、紛争調整委員会によるあっせんには、次のような特長があります。

・長い時間と多くの費用を要する裁判に比べ手続きが迅速かつ簡便

・弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家が担当

・あっせんを受けるのは無料

・紛争当事者間であっせん案に合意した場合は民法上の和解契約の効力

・非公開で紛争当事者のプライバシーは保護

・労働者のあっせん申請を理由に事業主が不利益取扱いをすることは禁止

 

<あっせんの対象となる紛争>

労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争が対象となります。

・解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争

・いじめや嫌がらせなどの職場環境に関する紛争

・会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争

・その他、退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争 など

 

<あっせんの対象とならない紛争>

・労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争

・募集・採用に関する紛争

・裁判中または判決が出ているなど他の制度において取り扱われている紛争

・労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話し合いが進められている紛争 など

 

2016.04.10.