労働紛争の記事

2021/08/08|1,259文字

 

<自宅外勤務の発生>

会社が在宅勤務を命じたところ、社員の判断で自宅ではなく、友人宅、カフェ、ホテル、レンタルオフィスなどで業務を行っていたということがあります。

在宅勤務について、詳細な規程があれば、形式的にルール違反ということが多いでしょう。

しかし、大雑把なルールしか無いため、必ずしもルール違反とはいえず、迂闊に指導できないということもあります。

こうしたことでのトラブル発生を防ぐためのポイントを、検討したいと思います。

 

<在宅勤務の趣旨・目的>

在宅勤務を命じたのに、自宅で勤務しないからルール違反であり、指導や懲戒の対象となるというのは少し乱暴です。

やはり、在宅勤務を命じた趣旨・目的を軸に据えて考える必要があります。

まず、育児や介護との両立のために、本人からの希望もあって在宅勤務を命じた場合には、自宅よりも実家での勤務の方が現実的なこともあります。

自宅や実家以外での勤務であっても、配偶者の実家、兄弟の家、介護施設など、そこで業務をこなすことに合理性を見出しうる場合もあります。

つぎに、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、通勤や社内での密を避けるために在宅勤務を導入したのであれば、電車やバスで遠くに出かけて業務を行うのは趣旨に反します。

密になりやすい場所での勤務も同様です。

しかし、近所のホテルやレンタルオフィスであれば、多くの場合には、感染拡大防止の趣旨には反しないことが多いでしょう。

さらに、業務効率化の目的で在宅勤務が行われているのであれば、本人が業務に集中しやすい環境で勤務することが趣旨に適います。

たとえば、学生時代からカフェでの勉強が効率的であったという社員であれば、カフェでの勤務も趣旨に適うわけです。

 

<勤務場所の届出>

会社としては、社員がどこで業務を行っていようとも、きちんと業務が遂行されていれば基本的には問題ありません。

勤務場所は就業規則の必要記載事項でもないですし、労働条件通知書でも、雇入れ直後のものを記載すれば足りますし、将来の就業場所を含め網羅的に明示することも許されています。

しかし、勤務場所により情報漏洩のリスクが高まる、労災発生のリスクが高まる、容易に連絡がつかないなど就業管理が困難になるなどは困りものです。

これらを総合的に考えると、会社が社員に在宅勤務を指示した時点で、社員が自宅以外の場所を勤務場所としたいのであれば申し出てもらう必要がありますし、勤務場所を途中で変更する場合にも申告が必要です。

そして、その勤務場所が実質的な不都合をもたらすものであれば、会社から社員に対して、勤務場所の適正化を求めることができるようにしておくことも必要です。

これらのことから、在宅勤務を命じた場合に、社員が自宅とは異なる就業場所を希望するのであれば、会社への届出を義務付け、その就業場所が実質的な不都合をもたらすのであれば、会社は就業場所の変更を求めることができるルールとし、届出とは異なる場所での業務遂行や届出の懈怠に対しては、懲戒を規定しておくのが合理的だといえるでしょう。

2021/07/13|1,302文字

 

パワハラ加害者の処分https://youtu.be/CHoRL8XmcXA

 

<同じ失言でも>

大臣が失言で罷免されたというニュースは、たびたび報道されています。

場合によっては、大臣をクビになるだけでなく、国会議員としても辞職に追い込まれるケースがあります。

しかし、民間企業での社員の失言はほとんど報道されず、じわじわとその影響が現れてくることが多いものです。

 

<会社での失言>

上司が部下に対して「○○くんって彼女はいるのかな?」という失言をしたとします。

これが失言だとピンとくる人は、正しい知識を持っていて実践できているので、問題となる失言はしないでしょう。

 職場の優位者が劣位者に対して、仕事上接する際に、必要以上に人権を侵害しうる行為をパワハラといいます。

上司が部下を「○○くん」と呼ぶ必要はありません。

このように呼ぶのは、客観的に見れば上から目線の態度ですから、パワハラになりうるのです。

職場の人間関係や職場環境で、性について平穏に過ごす自由を侵害しうる行為をセクハラといいます。

彼女かいるかどうかは、聞かれるだけでドキドキします。

ですからセクハラになるのです。

ましてや、言われた男性が同性愛者であれば、同性愛者であることがバレたのかと、大いに困惑することもあるでしょう。

LGBTQへの対応は、すべての企業に必須の取組み課題なのです。

 

<失言で表面化する労働問題>

この例で、言われた部下がパワハラやセクハラを問題にすることは少ないでしょう。

ハラスメントについての社員教育が不足していれば尚更です。

しかし、彼女のいない○○くんは「彼女がいないのは出会いが無いからだ。毎日残業続きだし、休日出勤もあるし、有給休暇も取れないからだ」と思ってしまうかも知れません。

また、彼女がいる○○くんは「今の年収では結婚もできないし、子供を設けるなんてとても無理だ。それに、家族と過ごす時間も確保できやしない」と考えるキッカケとなります。

上司の失言により「会社のため、自分のため」と頑張ってきた○○くんは、考えを変えてしまう可能性があるのです。

何気ない一言が、人間関係や職場関係を悪化させ労働問題が表面化します。

この例では、パワハラ、セクハラ、長時間労働、サービス残業、年次有給休暇の取得率、低賃金の問題について、法的に正当な主張を公式の場で展開する可能性が高まります。

 

<解決社労士の視点から>

特に中小企業では、社員教育が最善の対策です。

すべての点で、労働法に従った遵法経営というのは困難です。

有名な大企業であっても、しばしば労働法違反の報道がされています。

あらゆる点で法律上の努力義務まで尽くしているという企業は稀です。

だからといって、法令を無視することはできません。

日本は法治国家です。

会社は、法律によって法人としてその存続が認められでいるのですから、アウトローでは生きていけません。

罰則が適用されるようなことは慎まなければなりません。それは犯罪なのです。

結局、会社として対応すべきは対応して、社員とのコミュニケーションを密にして、適正な社員教育をすることです。

少なくとも、部下を持つ社員には失言させない教育が必要ですし、すべての社員にブラック企業の疑いを発生させないための教育が必要です。

2021/05/23|1,258文字

 

YouTube業務委託契約https://youtu.be/pWsPNSl0Jjk

 

<業務委託契約の特殊性>

契約について基本的なことを定めている法律は民法です。

ところが民法はおろか、その他の法律にも業務委託契約についての規定はありません。

何か契約を交わす場合には、法律に具体的な規定があった方が、トラブルを避けることができて便利なはずです。

それなのに、あえて法律に規定の無い契約を交わそうとするのは、法律の適用を避け、自分に一方的に有利な取り決めをしようという意図があるのでしょうか。

契約相手から、業務委託契約書の案を示されたら、内容をよく吟味しなければなりません。

不安があれば、専門家の確認を受けることをお勧めします。

 

<業務委託契約の内容>

業務委託契約という言葉からは、「業務を他人に委託する契約」ということしかわかりません。

学者たちは業務委託契約を、請負契約〔民法第632条〕、委任契約〔民法第643条〕、準委任契約〔民法第656条〕などの性質をもつ契約だと考えています。

そして、実際の業務委託契約には様々なものがあって、「これは請負契約」「これは委任契約」というように明確に分類することが困難だとしています。

結局、業務委託契約書の条文ひとつ一つを具体的に解き明かさなければ、その内容を把握できないということになります。

わざわざこのような契約を交わそうとするからには、やはり何らかの意図があるものと思われます。

 

<一方の当事者に有利な契約書>

請負では欠陥の無い完全な成果物を提供しなければならないのに対して、委任ではベストを尽くした結果なら不完全でも責任を問われません。

また、請負では材料や費用を負担するのは業務を引き受けた側ですが、委任なら業務を委託する側の負担となります。

さらに、請負なら簡単には契約の解除ができません。

しかし、委任ならいつでも契約を解除できます。

これらを踏まえて業務を委託する側が、「業務の結果は完全でなければならない。費用はあなたが負担しなさい。私はいつでも契約を解除できるが、あなたから解除を申し出ることはできない」という内容の業務委託契約書を作ることもできて

 

<解決社労士の視点から>

業務を委託する企業と、業務を行う人との契約関係が、実質的には雇用契約〔民法第623条〕なのに、契約書のタイトルが業務委託契約書となっていることもあります。

雇用契約(労働契約)であれば、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働法による労働者の保護があります。

これを企業側から見れば、労働者の保護に対応した負担が発生することになります。

ブラックな企業がこの負担を避けるため、実質は雇用契約なのに「業務委託契約書」を交わして「あなたは労働者ではないので、社会保険や雇用保険には入りません。労災保険も対象外です。年次有給休暇も残業手当もありません」と説明することもできてしまいます。

それでも、雇われている人はクビになることを恐れて「おかしい」とは言えないものです。

このような場合には、あきらめずに行政の相談窓口や契約に詳しい社会保険労務士に相談していただけたらと思います。

2021/05/22|1,247文字

 

YouTube身元保証人https://youtu.be/uBrHHqL13Bs

 

<身元保証>

身元保証というのは、労働者が企業に損害を与えた場合に、企業が確実に損害の賠償を得られるよう、労働者本人以外の第三者にも責任を負わせる契約です。

企業に大きな損害を与えやすい労働者といえば、正社員が思い浮かびますから、正社員限定で身元保証を求める企業が一般です。

しかし、契約社員、パート、アルバイトなどにも身元保証を求める企業もあります。

これは企業の方針によって決めても良いことであって、不当なことではありません。

身元保証は、企業が確実に損害の賠償を得られるようにするための契約ですから、責任を負わされる身元保証人が、本人と全く同じ責任を負う連帯保証契約とするのが一般的です。

企業としては、安易に同居の親族を身元保証人にするのではなく、賠償責任を果たせるだけの資力・財産を備えた人物を選ばなければなりません。

一方で、身元保証人になることを依頼された場合には、親類だから、知り合いだからと安易に引き受けるのではなく、慎重に判断する必要があります。

 

<身元保証書の提出義務>

入社にあたって身元保証書の提出を求めることは、長年にわたって広く行われてきた企業一般の習慣です。

就業規則や労働条件通知書などに規定を置いて、身元保証書の提出を採用条件としたり、採用後に身元保証書を提出しないことを理由に採用取消としたりすることは、採用の時点でそのルールが知らされていれば違法ではありません。

ただし、採用の時点で説明が無かったにもかかわらず、採用後に身元保証書の提出を求められた場合であれば、提出しないことを理由に解雇を通告するのは不当解雇になると解されます。

 

<身元保証の法規制>

身元保証契約は連帯保証となっていることが多いため、身元保証人が多額の賠償金支払い義務を負ってしまうことがあります。

そこで、これを法的に規制するため「身元保証ニ関スル法律」によって、身元保証人の責任が軽減されています。

まず、身元保証契約は、期間を定めなければ3年間、期間を定めても最長5年間で終了します。

また、労働者に不審な行動や仕事内容の変化があったときは、企業から身元保証人に対して直ちにその事実を通知しなければなりません。

これを受けて、身元保証人は契約を解除できます。

身元保証をしたからといって、実際に身元保証人が企業の全損害を負担することにはなりません。

企業は、損害の内容と損害額が明らかな限度でしか、身元保証人に責任を負わせることができません。

そして裁判になれば、企業側にも過失が無かったか、身元保証人が保証を引き受けた理由、労働者の仕事の変化など一切の事情を踏まえて、賠償額が決定されることになります。

 

<解決社労士の視点から>

さらに、令和2(2020)年4月1日の民法改正により、保証契約には責任の限度額(極度額)を設定しなければ無効とされることになりました。

身元保証契約にもこの規定が適用されるのか判然としませんが、身元保証人が安心して引き受けられるようにするためにも、極度額を定めておくことが無難でしょう。

2021/05/14|873文字

 

<誓約書の提出義務>

誓約書とは、労働者が働くにあたって、企業に対して負う義務の内容を確認し、義務に違反しないことを誓約する書面です。

場合によっては、退職にあたって、企業に対して負う義務の内容を確認し、義務に違反しないことを誓約する書面のこともあります。

また、状況の変化に応じて、在職中に作成されることもあります。

万一義務違反があった場合には、一切の損害を賠償するという内容が含まれるのが一般です。

入社にあたって誓約書の提出を求めることは、長年にわたって広く一般化しています。

就業規則や労働条件通知書などに規定を置いて、誓約書の提出を採用条件としたり、採用後に誓約書を提出しないことを理由に採用取消としたりすることは、採用の時点でそのルールが知らされていれば違法ではありません。

ただし、採用の時点で説明が無かったにもかかわらず、採用後に誓約書の提出を求められた場合であれば、提出しないことを理由に解雇を通告するのは不当解雇になると解されます。

 

<誓約書の効力>

就業規則の一部を抜粋して順守を求める内容の誓約書であれば、元々守るべきことを再確認しているだけですから、ほとんど問題になることはないでしょう。

この場合は、誓約書を書かせることによって、労働者に心理的なプレッシャーを与えているだけのことです。

つまり、心理的効果しか期待できません。

 

よく問題となるのは、労働者が退職後に同業他社への就職をしない義務を定めた誓約書です。

大前提として、労働者には職業選択の自由があります。〔憲法第22条第1項〕

しかし、この自由は絶対無制約ではありません。

そして、競業避止義務の誓約は、合理性を欠き公序良俗に反するときだけ、無効とされます。〔民法第90条〕

 

実際の裁判では、次のような厳しい条件を満たす場合に限り、その誓約書は有効だとされています。

・その労働者が営業秘密に関わる業務に就きうること

・正当な目的によるものであること

・「同業他社」の範囲など制限の対象が妥当であること

・地域や期間が妥当に限定されていること

・特別な手当の支給など相当の代償が与えられること

2021/03/28|2,122文字

 

YouTube情報漏洩の防止

https://youtu.be/nnTZG2FyG8w

 

<和解契約の性質>

和解とは、法律関係の争いについて、当事者が互いに譲歩し争いを止める合意をすることをいいます。

退職者から会社に対し、代理人弁護士を通じて、法的な権利を主張し何らかの請求をしてくることがあります。

在職者からは、弁護士を介さず直接請求してくることが多いでしょう。

会社が何らかの回答をし、これに退職者・在職者が納得しなければ、あっせんや労働審判を申し立てられることがあります。

これを超えて訴訟にまで発展すると、当事者には時間、費用、労力、精神力などの負担が大きくのしかかります。

和解というのは、会社と退職者・在職者のどちらが正しいか白黒を付けるのではなく、お互いに歩み寄って解決することにより、時間、費用、労力、精神力などの負担を軽減しようという、合理的な解決方法であるといえます。

 

<和解契約書のひな形>

和解契約書のひな形は、ネットで検索すると、金銭消費貸借契約に関するものも多いですが、「和解 ひな形 労働者」で検索すれば、会社と従業員や退職者との和解契約書のひな形が見つかります。

しかし、その一般的なものには、そのまま利用すると、紛争の解決どころか新たな紛争の火種となる要素が含まれています。

以下、そうした例について説明を加えてみましょう。

なお、例文中の甲は会社、乙は退職者・従業員を示しています。

 

<離職理由>

第○条 甲乙は、本件に関し、雇用保険の離職証明書の離職事由は、○○○○であることを確認した。

雇用保険の離職理由は、会社(事業主)と退職者(離職者)のそれぞれが、離職票・離職証明書に具体的事情を記入し、所轄のハローワーク(公共職業安定所)が判断します。

会社と退職者とで離職理由の申し合せをしても、ハローワークがこれに拘束されるわけではありません。

あくまでも具体的事情に基づいて判断されます。

したがって、事実と異なる申し合せは無効となります。

たとえ話ですが、自己都合の退職者が、雇用保険の手続担当者に「5万円あげるから会社都合にして」と依頼し、手続担当者がこれを承諾して会社都合の離職票を作成したら、失業手当(求職者給付の基本手当)を不正受給することになりかねません。

こうしたことが許されないのは明らかです。

 

<守秘義務1>

第○条 乙は、在籍中に従事した業務において知り得た技術上・営業上の情報について、退職後においても、これを他に開示・漏洩し、自ら使用しないことを誓約する。

退職者に「他に開示・漏洩しない義務」を負わせることは可能ですが、退職者の頭の中に残っている情報を使用しないというのは不可能なことです。

無意識のうちに使用することは避けられません。

不可能なことを和解の内容に加えてしまうと、全体の信憑性が損なわれてしまいます。

 

<守秘義務2>

第○条 乙は、本合意書の存在及びその内容の一切を厳格に秘密として保持し、その理由の如何を問わず、一切開示又は漏洩しない。

守秘義務に共通のことですが、守秘義務に反して秘密を開示・漏洩してしまった場合のペナルティーが無ければ、実効性を保てないのではないでしょうか。

秘密の開示・漏洩によって会社に実害が発生した場合には、和解契約書の有無とは関係なく、不法行為または債務不履行による損害賠償責任が発生しますので、あえて和解契約書を交わすメリットは見当たりません。

会社側が実害の立証をしなくても、秘密の開示・漏洩があれば、従業員や退職者に一定の違約金を請求できる内容を加えておく必要があるでしょう。

 

<競業避止義務>

第○条 乙は、退職後○年間は、甲と競業する企業に就職したり、役員に就任するなど直接・間接を問わず関与したり、又は競業する企業を自ら開業したり等、一切しないことを誓約する。

退職者にも、憲法で保障された職業選択の自由がありますから、競業避止義務を負わせる場合には、期間だけでなく、地域的な範囲を限定しなければ一般には無効となります。

地域を限定しないで、つまり全世界で禁止ということが合理性を持つのは、ほんの一つまみのグローバル企業の場合だけです。

また、給与への上乗せ、退職金への上乗せなどで、競業避止に対する対価の支払が行われている場合を除き、和解に当たって、競業避止の対価を支払うことが必要です。

退職者には、和解に応じる/応じないの選択権がありますから、会社に都合の良い内容を押し付けることはできないのです。

 

<債権債務の不存在>

第○条 甲乙は、本件に関し、本合意書に定めるほか、何らの債権債務が無いことを相互に確認し、今後一切の異議申し立てを行わない。

和解にこの条項が無いと、紛争のぶり返しがありうるので、最終決着であることを担保するために設けられます。

しかし、従業員と会社との間には労働契約上の債権債務があります。

これが消滅してしまう和解というのは、ありえないでしょう。

また、退職者であっても、退職直後であれば、退職金の支払、健康保険や雇用保険の手続が残っていることがあります。

こうしたものが残っている場合には、例外として盛り込んでおく必要があります。

 

<解決社労士の視点から>

「ひな形」は飽くまでも「ひな形」です。

主体的に考えて、カスタマイズして利用しましょう。

2021/03/18|1,590文字

 

YouTube「社会通念上相当」の意味

https://youtu.be/z4rMrTt-cn8

 

<解雇は無効とされやすい>

会社が社員に解雇を通告しても、それが解雇権の濫用であれば無効になります。

これを不当解雇といいます。

解雇したつもりになっているだけで解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ、賃金や賞与の支払義務が消えません。

会社にとっては、恐ろしい事態です。

出来てからまだ10年余りの労働契約法という法律に次の規定があります。

 

(解雇)

第十六条   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。

しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。

そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。

つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。

 

<「客観的」の落とし穴>

「客観的に合理的な理由」を欠けば、解雇権の濫用となり、解雇は無効となるわけです。

しかし、当事者である会社側と対象社員の言い分は、完全に主観的なものです。

会社がそれなりの理由を示して解雇を通告した場合、その解雇理由は主観的な判断により示したものです。

また、これに対する対象社員の反論も主観的なものです。

ですから、「どちらが正しいか」という議論は、解雇の有効性については無意味です。

あくまでも、「客観的に合理的な理由」が有るか無いかによって、解雇権の濫用となるか否かが決まってきます。

 

<「客観的に合理的な理由」とは>

「客観的に合理的な理由」とは、誰が見ても解雇はやむを得ないという理由です。

なぜなら、誰が見ても正しいというのが、客観的に正しいということだからです。

ただし、当事者である会社側と対象社員は「誰が見ても」の「誰」からは除かれます。

当事者は、主観的に考えてしまうからです。

そして、最終的な判断は裁判所が行います。

 

結局、バイク通勤の禁止ルールに違反することが、その職場では絶対に許されない背信的行為であるとされる特別な事情が客観的に認定されるのであれば、解雇もやむを得ないということになります。

 

しかし、現実にはそこまで特別な事情は想定できません。

会社がバイク通勤を禁止するのは、事故が多いとか、駐車場が確保できないとか、近隣のお客様に不快感を与えるとかいうのが一般的な理由でしょう。

これらは、可能性があるというに過ぎません。

 

現実に、通勤の途中でバイク事故を起こした場合、違法駐車をした場合、近隣のお客様からバイクの騒音などについてクレームがあった場合に、これらを理由として解雇してしまうのは行き過ぎだと考えられます。

これらの行為と解雇とのバランスがとれていないからです。

つまり解雇するについて「客観的に合理的な理由」があるとはいえないわけです。

 

<会社として取りうる措置>

まず、就業規則で全面的にバイク通勤を禁止するのではなく、「会社の許可なくバイクで通勤することは禁止する」という形にして、特別な理由があれば許可する形にすることです。

そして、許可の条件としては、一定の条件を満たすバイク保険の加入、適正な駐車場の利用、騒音が一定以下であることなどを示す書面を添付して、会社に申請書を提出することなどが考えられます。

 

たとえこの場合でも、無許可でのバイク通勤が解雇の理由となるわけではありません。

就業規則の中に会社の手続違反に対する懲戒規定があって、懲戒処分についての適正な手続を踏めば、減給や出勤停止程度の処分が有効となるケースもあるといえるに過ぎません。

 

<解決社労士の視点から>

バイク通勤は危ないから禁止、そして違反したら解雇というような、安易な運用はできません。

解雇が有効になるのは、労働契約法の条件を満たす場合に限られるのです。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

2021/03/17|1,566文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

https://youtu.be/qUAFJ0sjnDg

 

<反撃の懲戒処分>

職場で上司から暴言を吐かれ、これに対抗して暴力を振るった社員の処分は、どう考えたら良いでしょうか。

繰り返される上司のパワハラに対抗する行為であって、部下が堪りかねて行ったのであれば、心情的には不問に付すか、情状酌量で軽い処分にとどめたいと感じます。

懲戒処分は就業規則の規定を適用して行うものですから、就業規則の規定にある「情状酌量」などの解釈の問題となります。

 

<正当防衛の可能性>

これを法的観点から見ると、上司の暴言は侮辱または名誉毀損に該たります。〔刑法第230条、第231条〕

部下の暴力は暴行罪、ある程度のケガをさせていれば傷害罪に該たります。〔刑法第208条、第204条〕

そして部下の行為が、刑法上、罪を軽減されるとすると、正当防衛が根拠になると思われます。〔刑法第36条第1項〕

「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」という規定です。

このように刑法の正当防衛は、犯罪から自分や他人の身を守るために、やむを得ず行った行為のことをいいます。

しかし、正当防衛の成立要件は思いの外厳格です。

今回のケースでは、相当性の要件を満たしていません。

相当性の要件というのは、侵害の危険を回避するための行為が、必要最小限のものであることです。

暴言を封じるのに、暴力を振るうというのは、必要最小限のやむを得ない行為とはいえません。

 

<過剰防衛の可能性>

不正な権利の侵害に対して、受けた侵害を上回る防衛行為を行ったのであれば、正当防衛ではないにしても、過剰防衛になる可能性はあります。

刑法は「防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる」と規定しています。〔刑法第36条第2項〕

刑法の過剰防衛の規定が適用されるようなケースであれば、これに倣って社内の処分でも、情状酌量により懲戒の程度を低くすることが妥当です。

しかし、過剰防衛の成立要件も大変厳格です。

正当防衛の他の要件は満たしていて、「防衛の程度を超えた行為」という点だけに問題があるときにのみ、過剰防衛が認められるのです。

今回のケースでは、「急迫不正の侵害」があったものの、「暴力」というのは、この侵害から名誉を防衛する手段としては、あまりにも的外れなのです。

そこには、「防衛の意思」が無く、これを機会に反撃する、あるいは、ついカッとなってやってしまったことがうかがわれます。

「防衛の意思」が無ければ、正当防衛も過剰防衛も成立しないのです。

刑法が正当防衛や過剰防衛の成立を認めない以上、会社の懲戒処分でも、情状酌量して大目に見るというのは、整合性が保てない結果となってしまいます。

 

<解決社労士の視点から>

「それでも当社は独自の考えを採り、今回のようなケースでは、暴力を振るったとしても厳重注意に留める」というのはどうでしょうか。

おそらく、同じような事件が多発するのではないでしょうか。

懲戒処分では、公平が求められます。

過去に起こった事件と同様の事件が発生した場合には、特別な事情が無い限り、同様の処分にしなければなりません。

上司に暴力を振るっても厳重注意で済まされるなら、機会をうかがって行為に及ぼうと企む社員も出てくる可能性があります。

厚生労働省のモデル就業規則でも、「会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く)には、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、普通解雇、減給又は出勤停止とすることがある」というように規定しています。

暴行罪、傷害罪は、刑法に懲役刑の刑罰が規定された重大な犯罪です。

これを厳重注意や譴責(けんせき)処分で済ませるのは、危険ではないでしょうか。

2021/03/14|1,295文字

 

YouTube常識ってなんだろう?

https://youtu.be/UgGT9OM0_S8

 

<常識とは>

「常識」という日本語は、一般の社会人が共通に持つ/持つべき普通の知識・意見や判断力などと説明されます。

これを英語に訳すと、次の3つの内のどれかになると思われます。

general knowledge ― 誰もが持っている知識・情報

common courtesy ― 礼儀作法、マナー

common sense ― 当たり前の感覚、分別(ふんべつ)

「常識」という言葉が出てきたときには、どの意味で使われているのかを考える必要があるでしょう。

 

<誰もが持っている知識・情報としての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、仕事が上手く進まないことがあります。

しかし、単純に知識や情報を与えることで不都合は解消します。

社内でAさんの「常識」とBさんの「常識」が食い違った場合、ネットで検索すれば大抵の場合に、どちらが正しいか簡単に判明します。

社内に特有なことであれば、社内資料で確認できます。

ですから、3つの中では最もトラブルになりにくい「常識」です。

 

<礼儀作法、マナーとしての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、人間関係がぎくしゃくし、取引先との関係が悪くなることがあります。

ビジネスマナー研修を受講させ、上司や先輩が手本を示すことによって、「常識」を身に着けさせることができます。

「中途採用の〇〇さんは、挨拶の仕方も知らない。常識が無い」という話を耳にすることがあります。

たしかに、応接室や車内での席順、名刺交換の方法などは、ほとんどの企業に共通の「常識」となっています。

しかし、挨拶の仕方については地域や業界によって「常識」が異なっていますから、転職すれば「常識」の修正が必要になります。

こうした違いについての知識が無い社員が、異なる「常識」を備えた社員を馬鹿にしたり、叱ったりすることでトラブルが発生します。

また、中途採用の社員を試用期間中に解雇してしまうなど、誤った判断をすれば訴訟に発展することもあります。

社内での礼儀作法とマナーを統一し、それが全企業統一の「常識」ではなく社内ルールであることを、社員に教育しておく必要があります。

 

<当たり前の感覚、分別としての常識>

これが最もトラブルになりやすい「常識」です。

なぜなら、この「常識」は個人ごとに異なり、それにもかかわらず多くの人に共通するものだという勘違いがあるからです。

「近頃の若いもんは」というのは、世代による「常識」の違い、ゼネレーションギャップを端的に表した言葉です。

この「常識」の違いが、ハラスメントの原因にもなります。

部下に反省させるためなら、怒鳴るのも、多少の暴力をふるうのも仕方が無いという「常識」が、パワハラの原因となります。

いつも笑顔で感謝の言葉を述べるのは、自分に好意を抱いている確たる証拠であるという「常識」が、セクハラの原因となります。

勤務中にマスクを外すことは許されないという「常識」が、コロナハラスメントの原因となります。

社員一人ひとりの「常識」に任せておけば、必然的にトラブルの温床となります。

安全配慮義務を果たし、ハラスメントを防ぐには、社内の統一ルールと教育が必要なのです。

 

解決社労士

2021/03/09|1,443文字

 

YouTubeコロナハラスメント

https://youtu.be/Y0ga4SznnTM

 

<生理休暇取得の権利>

「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と規定され、これに違反すると30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法第68条、第120条第1号〕

つまり、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を取るのは権利であり、使用者に当たる人がこれを妨げれば、それは労働基準法違反の犯罪ということになります。

ここで「使用者」には、個人事業なら事業主、会社なら会社そのもの、代表者、取締役、理事、人事部長、労務課長などが含まれます。〔労働基準法第10条〕

 

<パワハラとは>

パワハラは、職場での力関係に基づく嫌がらせです。

年齢、経験年数、能力、地位、権限、人気などのパワーを持った人が、自分から見てある側面で「劣る」と思える相手に対して、主に指導の名目で嫌がらせをします。

多少不快感や損害を与えたとしても、指導に伴うものはある程度仕方がないという勘違いが多発しています。

 

<パワハラになるかならないかの基準>

生理日の就業が著しく困難な女性が生理休暇を取得しようとした時に、「仕事を優先しろ」「使えない」などの発言をすることは、明らかにパワハラです。

また、無限定に漠然と「お前は生理休暇なんか取るな」と発言した場合には、生理日の就業が著しく困難な場合を含めて生理休暇の取得を妨げる発言ですから、権利の侵害でありパワハラになります。

 

これに対して、普通に勤務することが困難ではない程度の苦痛を伴う生理を理由に生理休暇を取得することや、生理中であることそのものを理由に生理休暇を取得することは、労働基準法も認めていません。

ですから、生理中の女性が朝から普通に勤務していて、お天気が良いので午後から遊びに行くため「生理休暇を取得したい」と言ったのなら、これに対して「今日は生理休暇を取るな」という指導は正当なものであり、パワハラにはならないのが一般です。

 

実際には、生理の苦痛は本人にしかわからないでしょう。

上司としては、女性から「生理休暇を取得したい」という申し出があれば、これを拒否できないことになります。

ただ、生理休暇を取得しておきながら、レジャー施設に出かけて絶叫マシンで楽しんでいる様子がSNSなどにアップされたら、不正に生理休暇を取得したものとして、懲戒処分の対象となりうるというのも事実です。

この辺りについては、女性社員に対する教育指導が必要でしょう。

 

<セクハラにもあたる場合>

セクハラは、性的なことについての嫌がらせです。

職場に限らず、性的なことに対する興味が特に強い人がいます。こうした人が、「いたずら」「からかい」のつもりで「嫌がらせ」をするとセクハラになるのですが、本人は道徳に反しないと思っているので、反省することなく繰り返します。

 

生理休暇について言えば、「生理の周期から考えて今日休暇を取るのはおかしい」「その歳で生理休暇を申し出るのは変だ」などという発言はセクハラになります。

これは、相手の人格の尊厳を無視して、踏み込みすぎた発言となるからです。

 

<解決社労士の視点から>

生理休暇など労働者の権利についての知識習得は従業員任せにはできません。

会社が教育研修を実施する義務を負っています。

また、パワハラ、セクハラ、マタハラについては教育だけでなく、就業規則などにその定義を明らかにし、懲戒処分の対象とすることも必要です。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

2021/03/08|1,624文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

https://youtu.be/qUAFJ0sjnDg

 

<本来は自由な退職勧奨>

「退職勧奨」と「退職勧告」は厳密に区別されず、ほとんど同視されています。

「勧奨」は、勧めて励ますことです。

「退職勧奨」の例としては、「あなたには、もっと能力があると思います。たまたま、この会社が向いていないだけです。他の会社では実力を発揮できるでしょう。退職について真剣に考えてみてください」といった内容になります。

「勧告」は、ある事をするように説いて勧めることです。

「退職勧告」の例としては、「入社以来ミスが多いことは、あなた自身も残念に思っているでしょう。まわりの社員も、ずいぶん親切に丁寧な指導をしてきましたが、これ以上はむずかしいと思われます。退職を考えていただけますか」といった内容になります。

このように、退職勧奨(勧告)は、会社側から社員に退職の申し出をするよう誘うことです。

これに応じて、社員が退職願を提出するなど退職の意思表示をして、会社側が了承すれば、労働契約(雇用契約)の解除となります。

退職勧奨(勧告)を受けた社員が、実際に退職の申し出をするかしないかは、本来は完全に自由なのですが、職場の慣習などにより、心理的に断り切れないこともあります。

 

<不当解雇となる場合>

このように退職勧奨(勧告)は、社員の意思を拘束するものではありません。

したがって、会社が自由に行えるはずのものです。

しかし、本人がキッパリと断った後も退職勧奨を続ける、長時間の退職勧奨を繰り返す、家族に働きかけるなど社会的に相当な範囲を逸脱した場合には違法とされます。

違法とされれば、退職が無効となりますし、会社に対して慰謝料の支払請求が行われることもあります。

会社から社員に退職勧奨を行い、これに快く応じてもらって円満退職になったと思っていたところ、代理人弁護士から内容証明郵便が会社に届き、不当解雇を主張され損害賠償請求が行われるということは少なくありません。

 

<詐欺を理由とする退職の意思表示の取消>

詐欺による意思表示は取り消すことができます。〔民法第96条第1項〕

詐欺を理由に退職の意思表示が取り消される場合としては、次のようなものが挙げられます。

・「会社の経営状況が思わしくなく、来月以降、給与の支払を約束できない」などの説明を受けたため、退職の意思表示をしたが、そこまで経営が悪化している事実は無かった場合。

・大規模なリストラを予定しているとの説明を信じ、退職の意思表示をしたが、リストラは行われず、むしろ新規採用が積極的に行われている場合。

・「自主的に退職願を提出しなければ懲戒解雇となる」という説明を信じ、退職願を提出したが、懲戒解雇に該当するような事実は無かった場合。

これらの場合に、詐欺罪〔刑法第246条〕が成立しなくても、民法上は詐欺を理由とする意思表示の取消によって、退職の申し出が無かったことになるのです。

 

<強迫を理由とする退職の意思表示の取消>

強迫による意思表示も取り消すことができます。〔民法第96条第1項〕

強迫を理由に退職の意思表示が取り消される場合としては、次のようなものが挙げられます。

・大声を出したり、机を叩いたりしながら、パワハラ発言を交えて退職を迫られた場合。

・狭い会議室で、多数の社員に取り囲まれて退職勧奨された場合。

・休日に突然、自宅に押しかけてきて、退職を勧める話をされた場合。

これらの場合に、脅迫罪〔刑法第222条第1項〕が成立しなくても、民法上は強迫を理由とする意思表示の取消によって、退職の申し出が無かったことになるのです。

ちなみに、刑法では「脅迫」、民法では「強迫」です。

 

<解決社労士の視点から>

退職勧奨(勧告)は、会社が自由に行えるとは言うものの、客観的に合理的な具体的理由が説明できない場合には、トラブルに発展する可能性が高いですから、行うべきではないのです。

むしろ、普通解雇を通告できるケースで、やんわりと退職勧奨(勧告)を検討するくらいの慎重さがあっても良いでしょう。

2021/03/04|1,077文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

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<人事考課が無いのは論外>

社内に人事考課の基準が無く、年齢や経験年数だけで昇給と昇格が決まっている会社からは、将来有望な若者が去っていくものです。

ただクビにならないように気を付けながら、在籍年数を伸ばしていくだけで、それなりの昇給と昇格が期待できるとすれば、危険を冒してまで努力するのはばかばかしくなります。

こうして多数派の社員は、本気で業績に貢献しようという意欲を失っていきます。

中には、会社に貢献して会社の事業を成長させれば、自分自身も成長できると信じて努力を続ける社員もいます。

これは少数派です。

それでも、長年にわたって報われなければ、やがて力尽きてしまいます。

 

新卒採用でも中途採用でも、入社当初は意欲に燃えています。

その時に、「いつかはあの先輩を越えよう」「いや社長を目指そう」と思える会社ならば、新鮮な意欲を持続することができます。

年齢や経験年数だけで昇給と昇格が決まっている会社では、永遠に先輩を追い抜くことはできません。

まるでアキレスと亀のパラドックスのようです。

 

こうして有能な社員が去っていき会社に欠員が出ても、ネット上の情報や口コミが邪魔をして応募者が来ないでしょう。

こんなことでは、再び人手不足クライシスが発生し、会社の存続は難しくなってしまいます。

 

<主観的な人事考課基準も危険>

社長や人事権を握っている一部の人が、主観的に判断して社員を評価するのも危険です。

こういう会社では、会社の業績に貢献するよりも、社長や考課権者と仲良くなるのが出世の近道になってしまいます。

反対に社長や考課権者に嫌われたら最後、未来は暗くなりますから、会社から去っていくことになります。

いわゆる「上を見て仕事をする社員」ばかりになりますから、仕事よりも社長に嫌われないように、社長に気に入られるように努力します。

こういう会社では、社長のまわりに社員が集まって雑談する様子が良く見られます。

本当に会社の業績に貢献している社員は、そんなシーンでも黙々と仕事をこなしているものです。

 

人事考課基準は、具体的で客観的なものにしなければ、社員の努力の方向性が曲がってしまうのです。

何をどれだけしたらどれだけ昇給するのか、どこまでやったら昇格するのか、これが明確であれば社員は言われなくても努力を重ねます。

 

<解決社労士の視点から>

その会社に合った人事考課基準の作成、改定、教育、運用は、社労士ではなくてもコンサルタントにもできます。

しかし、就業規則とも連動させ、法令順守を前提とした健全な企業活動を目指すのであれば、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

2021/02/22|1,739文字

 

YouTubeこれって労働時間?

https://youtu.be/2UlD66LICBo

 

<労働時間の定義>

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に、労働時間の定義が示されています。

これは、厚生労働省が平成29(2017)年1月20日に策定したものです。

企業が労働時間を管理する場合には、このガイドラインを参考にして行うことになります

これによると「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示または黙示の指示により、労働者が業務に従事する時間である」とされています。

最高裁判決にも、労働時間の概念が示されています。

三菱重工長崎造船所事件の判決です。

ガイドラインの定義は、この最高裁判決を参考にしたものです。

こうした定義は、公的なものとして、すでに確定しています。

ですから、各企業で自由に定義を定めるわけにはいかないのです。

 

<黙示の指示>

この労働時間の定義の中の「黙示の指示」とは、一体どのような場合を指すのでしょうか。

黙示(もくし、もくじ)という言葉は、暗黙のうちに意思や考えを表すことをいいます。

具体的に、どのような行為が「暗黙のうちに指示を出した」と評価されるのか、その判断がむずかしいのです。

特に、労働者が「自主的に」残業しているように見える場合の、残業代支払義務について争われます。

労使でこの点が争われた場合には、最終的には司法判断によって決着がつくことになります。

 

<裁判で黙示の指示があったとされたもの>

まず、労働者の残業を使用者が黙認しているような分かりやすい黙示の指示の他、残業することを前提とする業務命令が出された場合、時間外に会議が予定される場合など、間接的に残業を指示している場合には、黙示の指示があったものとされます。

これは、労働者が休日に出勤をしていることを知りながら、使用者が注意を与えなかった場合にも認められます。

また、労働者が所定労働時間ではこなし切れない量の業務を抱えていること、所定労働時間の労働だけでは締切に間に合わないことなどを、使用者が把握しておきながら、こうした事情の解消について具体的な指示を出していない場合も、残業することについて、黙示の指示があったものとされます。

また、タイムカード、出勤簿、日報などにより、使用者が労働時間の把握をしておきながら、労働者に対して抑制的な態度を示さず、自己判断での残業などを止めるように指導していない場合には、黙示の指示があったものとされます。

これらの場合には、使用者から明示の指示がなく、労働者から残業の申告などがなければ、残業代の支払は不要であるという勘違いが生ずる危険があります。

 

<裁判で黙示の指示が無かったとされたもの>

労働者が職場にいるのは、労働に就く目的であることが推定されます。

それだけに、黙示の指示の存在が否定されるのは、むしろ例外であると考えた方が安全でしょう。

ただ、次のような例外的な場合には、裁判例でも黙示の指示が否定されています。

まず、残業禁止の業務命令が発せられ徹底されていた場合、使用者が定時に労働者の帰宅を促していた場合、残業には事前申請を必要とする規定が運用されているにもかかわらず事前申請無く時間外労働に就いていた場合など、残業について厳格な管理が実施されている場合には、黙示の指示が否定されます。

また、客観的に見て時間外労働を必要とするだけの業務を抱えていない場合、業務に就く意思がなく習慣的に早く職場に来てくつろいでいた場合など、時間外労働の指示が想定できない場合にも、黙示の指示が否定されます。

さらに、実習中の労働者が業務の下調べをしていた時間や、仕事に慣れるため自発的に出勤した時間も、それが期待されていることではなかったため、黙示の指示が否定されています。

これらは裁判例ですから、それぞれの具体的な事実に即して判断されているわけであり、一般化することはできませんから注意が必要です。

 

<解決社労士の視点から>

管理監督者や、その代行者は、無駄な人件費の発生を抑制しなければなりませんし、長時間労働による健康被害の発生防止に努めなければなりません。

「黙示の指示」が発生しないように、部下の動向に目を向け、想定外の勤務に気付けば、声を掛けるということが管理職に期待されているわけです。

2021/02/24|1,618

 

YouTube情報漏洩の防止

https://youtu.be/nnTZG2FyG8w

 

<悪ふざけ写真の拡散>

6年ほど前、アルバイト社員がSNSに悪ふざけの写真を投稿し、これが拡散されて会社に損害をもたらす事件が多発しました。

自分の友だち限定で、ウケを狙って配信したところ、その友達がコピーして一般公開してしまい、拡散されて会社が信用を失うことになったわけです。

こうした事件は、店舗で発生することが多く、お客様の信用を失って、休業や閉店などを余儀なくされることもありました。

不正な情報拡散の威力を思い知った事件でした。

 

<情報漏えいの問題>

店舗よりも、むしろ本部など事務部門の方が、重要な機密情報を多く保有しています。

営業上の秘密が漏洩すると、会社は直接的な打撃を受けます。

顧客の個人情報などが漏洩すると、信用が失われ、信用回復のために多額の費用を投じても、回復までの間、売上が相当に減少してしまいます。

社員の中に、こうした情報を漏洩している者がいると疑われた場合には、迅速で徹底的な対応を迫られることになります。

 

<懲戒処分の検討>

社内に情報漏えいの疑われる社員がいる場合、まず会社は事実の確認をします。

情報漏えいの事実が確認された場合、就業規則にこれを懲戒の対象とする具体的な規定があれば、適正な手続に従って、懲戒処分を検討することになります。

しかし、就業規則の中に情報漏えいに対応できる規定が無ければ、情報漏えいを理由に処分することは困難です。

 

<秘密保持誓約書>

情報漏えいの事実が確認できないものの、その疑いがある場合には、対象社員に就業規則の内容を説明したうえで、それを再確認する形での秘密保持誓約書に署名してもらうなどの対応を考えるでしょう。

これなら、対象社員も署名することに抵抗を示さないかも知れません。

ところが、就業規則に規定の無い内容を含む誓約書に署名させることは、新たに義務を課すことになりますから、署名を強要できませんし、署名しないことをもって情報漏えいの可能性が高まったと判断するわけにもいきません。

対象労働者は、誓約書への署名を強要されたことが原因で、会社に対する反感から、意図的な情報漏えいに走るかも知れないのです。

対象労働者の神経を逆なでしないためにも、また他にも情報漏えいの恐れがある社員がいる可能性をも考えて、その部署全員に説明し誓約書に署名を求めるのが得策です。

 

<就業規則の規定>

秘密保持について、就業規則に規定が無いのであれば、「遵守事項」の項目に次の内容を加えておきましょう。

「在職中および退職後においても、業務上知り得た会社、取引先、顧客等の機密を漏洩しないこと」

また懲戒項目には、これに対応する次のものを加えておきましょう。

「正当な理由なく会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、または業務の正常な運営を阻害したとき」

 

<解決社労士の視点から>

就業規則や誓約書で情報漏えいを防止しようとするのは、ルールで社員を縛ろうとするものです。

ですから、就業規則の内容を説明し、誓約書に署名させても、これらに反感を覚える社員は一定数存在します。

そもそも社員は、労働契約上、信義則により業務上の秘密を守る義務を負っています。

この義務に違反して情報を漏洩し会社に損害を加えれば、労働契約上の債務不履行責任により、あるいは不法行為責任により、社員は会社に対して損害賠償責任を負うこともあります。

その金額は、かなり多額になるでしょうから、その後の人生を棒に振ることにもなりかねません。

この辺りを、社員に教育しておくことが情報漏えいの防止には必要ではないでしょうか。

 

【参考:古河鉱業事件判決(東京高判昭和55年2月18日)】

労働者は労働契約に基づき労務を提供するほか、信義則により使用者の業務上の秘密を守る義務を負うとしたうえで、会社が機密漏洩防止に特段の配慮を行っていた長期経営計画の基本方針である計画基本案を謄写版刷りで複製・配布した労働者に対する懲戒解雇を有効と判断した事案。

2021/02/21|2,152文字

 

YouTube傷病手当金の書類を会社が書いてくれない

https://youtu.be/cuSdiy6H6Mg

 

<傷病手当金支給申請書>

傷病手当金支給申請書の提出先は、健康保険証に書いてある保険者です。

そして申請書の形式は、保険者が決めています。

たとえば、協会けんぽの申請書であれば、1セット4枚で、次の内容になっています。

1,2枚目 = 申請者情報、申請内容

3枚目 = 事業主の証明 ※事業主とは会社などのことです。

4枚目 = 療養担当者の意見書 ※療養担当者とは医師などのことです。

 

<記入する人>

1,2枚目の申請者情報、申請内容は、仕事を休んだ健康保険加入者(被保険者)自身または、被保険者が亡くなった場合は相続人が記入します。

会社の担当者が、ほとんど代筆してくれることもあります。

3枚目の事業主の証明は、会社の担当者や顧問の社会保険労務士が記入します。

4枚目の療養担当者の意見書は、担当医師が記入します。

 

会社が傷病手当金の書類を書いてくれなくて困るというのは、事業主の証明の部分を書いてくれないということになります。

1,2枚目の書き方がわからないのであれば、保険者に確認することになります。

 

<会社が知らないケース>

会社に傷病手当金のことを知っている人がいないとか、書類の書き方がわからないとかいう理由で、書類を書いてもらえないということがあります。

傷病手当金は、業務災害や通勤災害を除く病気やケガで働けないとき、賃金の一部を健康保険が支払ってくれるもので、これを利用しても、保険料が上がったりしないと説明すれば、書いてもらえるかもしれません。

会社が記入する内容は、勤務状況と支給した賃金の内訳です。

勤務状況は、「出勤した」「休んだ」「公休だった」「年次有給休暇だった」という区分だけですから、勤務開始時刻や勤務終了時刻など細かい数字は要りません。

賃金の内訳も大まかな内容です。

ただ、会社が賃金計算を外部に委託していると面倒に思うのかもしれません。

このような説明をしても分かってもらえない場合には、事業主の証明を自分で代筆して、ゴム印と代表印だけもらうのが早いと思います。

自分で書くのが難しければ、書き慣れている人に代筆してもらうこともできます。

 

<会社が労災を隠しているケース>

たとえば、パワハラが原因でうつ病になった場合には、本来は労災保険の手続をとるのが正しいのです。

こんなとき、うつ病になった被災者から傷病手当金の書類を書くように求められると、会社は労災の責任を問われることを恐れて、書類の作成から逃げることも考えられます。

労災の認定をするのは、所轄の労働基準監督署や労働局ですから、少しでも業務に原因がありそうな場合であれば、お近くの労働基準監督署に相談してみると良いでしょう。

労災にあたるケースであれば、労働基準監督署が会社に対して、労災保険の手続をするように指導してくれます。

この場合には、そもそも健康保険の傷病手当金は対象外です。

 

<会社が社会保険料をごまかしているケース>

会社が社会保険加入者(被保険者)の給料などを過少申告して、社会保険料を少なめに支払っていることがあります。

健康保険も保険ですから、手当金の金額は保険料に見合ったものとなります。

ですから、傷病手当金の手続をとると、支給額が不当に少ないことがわかってしまい、不正が発覚することになります。

会社の不正が疑われる場合には、健康保険証に書いてある保険者に相談することをお勧めします。

 

<会社が意地悪をしているケース>

会社と申請者が何らかの対立関係にあれば、会社が意地悪をして書類を書いてくれないことも考えられます。

こうしたケースでは、労働組合や議員さんに相談して何とか解決できたという話も聞かれます。

しかし、健康保険法に次の規定があります。

 

(報告等)

第百九十七条 保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者を使用する事業主に、第四十八条に規定する事項以外の事項に関し報告をさせ、又は文書を提示させ、その他この法律の施行に必要な事務を行わせることができる。

2 保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。)又は保険給付を受けるべき者に、保険者又は事業主に対して、この法律の施行に必要な申出若しくは届出をさせ、又は文書を提出させることができる

 

(罰則)

第二百十六条 事業主が、正当な理由がなくて第百九十七条第一項の規定に違反して、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、文書の提示をせず、又はこの法律の施行に必要な事務を行うことを怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

 

これらを根拠に、会社を説得するよう保険者にお願いしてみてはいかがでしょうか。

保険者は「…できる」という規定ですから、保険者に義務付けられているわけではないので、あくまでも熱心にお願いすることになります。

罰則も「十万円以下の過料」と決して重くはないですが、会社に対するプレッシャーにはなるでしょう。

 

<なかなか書いてもらえないケース>

会社としては書く気が無いのではなく、遅いだけということもあります。

傷病手当金の請求書は、最長3か月分をまとめて記入できますから、まとめて書くつもりのこともあります。

しかし、「なるべく早くお金が欲しい」という申し出をしてみたら、急いで書いてくれるかもしれません。

 

解決社労士

2021/02/16|905文字

 

YouTube「社会通念上相当」の意味

https://youtu.be/z4rMrTt-cn8

 

<解雇は無効とされやすい>

会社が社員に解雇を通告しても、それが解雇権の濫用であれば無効になります。

これを不当解雇といいます。

解雇したつもりになっているだけで解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ賃金や賞与の支払義務が消えません。

会社にとっては、恐ろしい事態です。

出来てから10年余りの労働契約法という法律に次の規定があります。

 

(解雇)

第十六条   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。

しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。

そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。

つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。

 

<解雇のチェックリスト>

過去の裁判所の判断例から、以下にチェックリストを示します。

ほとんどの項目にチェックマークが入るケースならば、解雇の有効性が肯定されやすいといえるでしょう。

 

□ 解雇の理由が労働契約の継続を期待し難いほど重大なものである

□ 労働契約で約束した能力や資質と実際とが大きく食い違う

□ 教育しても労働者の能力の向上が期待できない

□ 配転や降格では対応できない

□ 教育指導を十分に行ってきた

□ 上司や教育担当が十分な対応を行ってきた

□ 解雇までの経緯や動機に隠された意図や恣意が認められない

□ 解雇の手続は就業規則に定めた通りに行った

□ 対象者と話し合い、言い分も聞いたうえで決定した

□ 対象者の会社に対する功績や貢献度が低い

□ 勤続年数は短い

□ 対象者は解雇されても再就職が容易である

□ 他の従業員に対する処分とのバランスはとれている

□ 対象者に対して、より軽い懲戒処分で対応した過去がある

 

<解決社労士の視点から>

こうして見ると、しろうとでは判断が困難な項目も含まれています。

また、チェックマークを入れられる状態にするには、日頃の準備が必要な項目もあります。

問題社員が増加傾向にある今、会社を守るための準備を進めるには、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

2021/02/06|1,126文字

 

YouTube労働条件を確認しましょう

https://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<求人広告と労働条件との関係>

求人広告は、あくまでも広告に過ぎません。

これに応募したからといって、必ず採用されるわけではありません。

また、求人広告に「月給20万円~25万円」などと書いてあって、具体的な金額は採用面接の中で決まるという場合もあります。

さらに、事務職で応募したところ、「他の応募者で採用枠が埋まってしまったけれど、営業職に欠員が1名出たのでいかがでしょうか」と打診されて、これに応じるというのは普通に行われていることです。

このように、求人広告と実際の労働条件とが異なる場合に、採用側が新たな労働条件を明示していれば問題ないのです。

そして、職業安定法第5条の3第3項も、平成30(2018)年1月1日付で、この内容を盛り込む形に改正されました。

 

<説明が不十分なケース>

採用面接の中で、たとえば上記のように「他の応募者で採用枠が埋まってしまったけれど、営業職に欠員が1名出たのでいかがでしょうか」と打診された応募者が、過度の緊張のあまり内容をよく理解しないまま「はい」と生返事してしまうことがあります。

この場合でも、採用側が新たな労働条件を書面で明示していて、応募者が後からその書面を確認していれば問題ないのです。

しかし面接者が「あれだけ具体的に説明したし、理解してもらえただろう」と満足して、説明の内容を書面で交付しないのはいけません。

 

<問題のあるケース>

採用が決まって労働契約を締結する際の労働条件明示義務については、30万円以下の罰金が定められています。〔労働基準法第120条〕

これは、労働基準法違反の犯罪なのです。

労働契約の締結は口頭でもできますが、雇い主は労働者に対して、労働条件を書面で明示する義務を負っているのです。

ところが、最初の給与支払額を見て不審に思った労働者が会社に確認すると「あなたの場合には能力不足だから給与は半分しか支払えない」などの回答が返ってくるケースがあります。

また、求人広告では正社員募集だったのに、後から契約期間6か月の契約社員だと言われたりもします。

これらは、入社にあたって労働条件の明示が無いので犯罪なのです。

 

<解決社労士の視点から>

特にブラック企業というわけではないのに、入社にあたって「労働条件通知書」などを交付しない会社もあります。

経営者が労働基準法の規定を知らないだけのこともあります。

また、労働条件の決め方に迷っている場合もあります。

しかし、新人から「実際の労働条件が求人広告と違う」という話が出るのは大いに問題です。

つまらないことで罰則を適用されたり、会社の評判が落ちたりしないように、労働条件の決め方、変え方、通知の仕方については、信頼できる社労士にご相談ください。

2021/02/05|1,456文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

https://youtu.be/qUAFJ0sjnDg

 

<問題社員の知識レベル>

問題社員というのは「良いことの原因は自分、悪いことの原因は他人」と思い込み、義務は果たさず権利を濫用して退職後に会社を訴えるような社員です。

こうした問題社員は、労働法関連の知識が豊富であるかのように見えることが多いものです。

ところが実際には、正しい知識が少なくて、体系的な理解が不足しているようです。

その原因としては、法律関係の知識を吸収する際に、自分に都合よく独自の解釈を加えてしまうこと、コツコツと地道な努力を重ねるのは嫌いなので専門書を通読しないことなどが考えられます。

 

<問題社員から要求があったとき>

問題社員から会社に対して、脅しとも取れるような強烈な要求が出されることもあります。

この要求の中には、正しいこと、誤ったこと、単なる勘違いが含まれ、区別の難しい形で一体化しています。

立場上こうした要求に耳を傾ける役割の人は、事実と主張とを明確に区分して聞き取らなければなりません。

そして、事実については、なるべく具体的に話の内容を明らかにすることと、どのようにしてその事実を認定したのかも聞いておく必要があります。

一方、主張についても具体的な内容を明らかにすることが必要ですが、それ以上に、会社にどうして欲しいのかを明確にしなければなりません。

こうして聞き取りをした人は、その場で結論を出してはいけません。

少なくとも、聞き取った内容が事実かどうかの確認はしなければならないのですから、安易に結論を出せないのです。

 

<社労士(社会保険労務士)へのご連絡>

問題社員から「話がある」と言われ、それが会社に対する何らかの要求であると判明した場合、話を聞くのは上司や人事部門の責任者の業務であっても、話をするのは問題社員の業務ではありません。

ですから、後日改めて話を聞くことにして日時を指定することもできます。

そして、対応方法について社労士と協議するのがベストです。

このタイミングを逃しても、正しく聞き取りができていれば、その後の対応について協議ができます。

事実を確認するのは社内のメンバーで行い、主張の正当性の確認は労働法令の専門家である社労士が行うというように役割を分担することもできます。

もしこのタイミングを外して、会社なりの対応をした結果、問題社員がその対応を不満に思い、労働審判に持ち込んだような場合には、弁護士の先生がメインとなって対応する局面に進んだと判断されます。

まだ法的手段に出ていないような場合なら、会社が主体となって労働局の斡旋(あっせん)を利用することもできます。

この場合、特定社労士に委任することが可能です。

 

<問題社員への指導>

勤務態度や他の社員への干渉について、上司などから問題社員に指導をする場合があります。

ここで注意しなければならないのは、注意指導の根拠を明らかにしたうえで行うことです。

なんとなく常識的に、あるいは、ビジネスマナーとしてというのでは、強い抵抗を受けてしまいます。

根拠としては、就業規則、労働契約、法令、社内ルールとなりますが、文書化されていないものは根拠として弱すぎます。

この点、就業規則が無かったり、労働条件通知書の交付を怠っているような会社で、問題社員を採用してしまったり、発生させてしまったりした場合には大きなリスクを抱えることになります。

 

<解決社労士の視点から>

現時点で会社に存在する就業規則や労働契約で対応しきれないと感じた場合にも、信頼できる国家資格の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

本当に対応できないかを確認し対応方法をご提案いたします。

2021/02/03|1,072文字

 

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<問題社員>

「良いことの原因は自分、悪いことの原因は他人」と思い込み、義務は果たさず権利を濫用して退職後に会社を訴えるような社員です。

 

<問題社員の結果の結果>

こういう社員が上手く立ち回って、会社から金銭的な利益を得ると、次から次へと真似をする社員が出てきます。

会社から得る金銭的な利益は、賃上げ、未払い残業代、年次有給休暇の買い上げ、退職金の上乗せ、慰謝料、解決金、和解金、口止め料など多岐にわたります。

正当な権利の行使を超えて、恐喝まがい詐欺まがいなものも出てきます。

そして、会社の中の小さな不平等や小さな不公平が原因で、問題社員の真似をしたくなる社員は多いのです。

真面目に働いている社員は、会社から不当な利益を得ようとはしないでしょう。

ただ、真面目に働いているのがばかばかしくなります。

問題社員が会社の悪い所を徹底的に指摘するので、会社の魅力も低下します。

辞めたくなったり、意欲が低下したりは仕方のないことです。

ここまでくると、お客様にも、お取引先にも、近隣にも、金融機関にも評判は良くないはずです。

会社の経営は上手くいくはずがありません。

 

<問題社員の原因の原因>

以前いなかった問題社員が入社してくるのは、思ったような応募者が少なくて、究極の選択によって、少し問題を感じる人でも妥協して採用してしまうからです。

こうした採用難の原因は少子高齢化なのですが、一企業が少子高齢化を解消することはできませんので、良い応募者を増やす知恵を絞りたいところです。

まず、仕事の内容を中学生にもわかるように具体的に示すことです。

つぎに、会社や商品・サービスの魅力、仕事のやりがい、交通の便、近隣の環境、社長のキャラクター、長く働いている人の感想やチョッとしたエピソードなど、求職者が応募したくなるメリットを明らかにします。

反対にデメリットも明かします。

なぜなら、良いことばかりを並べると信用されないからです。

あえて会社の悪い面を少し加えることで、求人に対する信頼がグッと高まるのです。

それでも、こうしたアピール情報を公開できないとしたら、それは会社や仕事に魅力が無いからです。

上手いこと良い人をひっかけようとするのではなくて、正面から魅力ある会社に変えていく必要があります。

最低でも、労働基準法など労働関係法令に対する違反は解消しないと、ブラック企業のレッテルを貼られる恐れがあります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

即戦力にできる人材を確保するための採用も、万一問題社員を抱えてしまった場合の対応も、信頼できる国家資格の社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/02/01|1,270文字

 

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<北風と太陽>

「北風と太陽」は、有名なイソップ寓話のひとつです。

ウィキペディア(Wikipedia)によると、そのあらすじは次のとおりです。

 

ある時、北風と太陽が力比べをしようとする。そこで、旅人の上着を脱がせることができるか、という勝負をする。まず、北風が力いっぱい吹いて上着を吹き飛ばそうとする。しかし寒さを嫌った旅人が上着をしっかり押さえてしまい、北風は旅人の服を脱がせることができなかった。

次に、太陽が燦燦と照りつけた。すると旅人は暑さに耐え切れず、今度は自分から上着を脱いでしまった。

これで、勝負は太陽の勝ちとなった。

 

この寓話の内容から、「北風と太陽」という言葉は、物事に対して厳罰で臨む態度と、寛容的に対応する態度の対比を表すのに使われます。

 

<北風社長>

うちの社員は、報告・連絡・相談がなっとらん。全社員に、「正しい報連相研修」「効果的な報連相研修」を受けさせよう。

人事考課の評価基準では、「上手な報連相」を重点項目に据えよう。

そして、下手な報連相、間違った報連相は、懲戒処分の対象にしよう。

 

ここまでいかなくとも、報告・連絡・相談のスキルアップを社員に求める会社は多いものです。

社員ひとり一人が、報連相の能力をアップすれば、会社全体の風通しが良くなり、生産性がアップするに違いないと考えるのでしょう。

 

<太陽社長>

社内の報告・連絡・相談が上手くいっていないようだ。社員ひとり一人が、もっと気楽に報告・連絡・相談できたら良いのだが。

私を含め役員全員と管理職に、「正しい報連相の受け方研修」「喜ばれる報連相の受け方研修」を受講していただきましょう。

管理職の評価基準では、「聞き上手」を重点項目に据えましょう。

そして、優れた報連相を行っている部門や社員を表彰しましょう。

 

報告・連絡・相談を受ける側のスキルアップを図ることは、コミュニケーションの改善に不可欠です。

しかし、あまり行われていないのが残念です。

またたとえば、遅刻や欠勤に対して懲戒処分を行うのと、無遅刻無欠勤を表彰するのとでは、その効果に大きな違いはありません。

就業規則に表彰規定があっても、永年勤続以外では、ほとんど表彰が無いというのは、よく聞く話です。

もっと表彰を活用しても良いのではないでしょうか。

 

<実務的な観点から>

ここまで読むと、「太陽方式のほうが優れているということか」と思われるかもしれません。

しかし、コミュニケーション不足は労働問題の原因の大半を占めますし、報告・連絡・相談の不足は会社にとって致命的な欠陥です。

上の例で、北風社長と太陽社長が相談して、会社の施策を検討したならどうなったでしょうか。

おそらく、「報連相するスキル」「報連相を受けるスキル」両方の研修を導入するでしょう。

人事考課では、報連相をする/される両面の評価が行われます。

また、虚偽の報連相や、報連相の遅れは、懲戒処分の対象とされる一方で、手本となった部門や社員は全社で表彰されることでしょう。

報告を受けて、いきなり怒り出す管理職がいる会社では、早急に取り組むことをお勧めします。

 

解決社労士

2021/01/21/1,135文字

 

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<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、会社も被害者に対して賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、会社は従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

会社に生じた利益のすべてが従業員に分配されるわけではないのに、損害についてだけ従業員に負担させるのは不合理だというわけです。

 

<賠償金の給与天引き>

最初から違法な賠償額の予定があったわけではなく、客観的に適正な賠償額が確定したとします。

この場合でも、賠償金を給与から控除するには、また別の問題があります。

労働基準法には次の規定があるからです。

 

(賃金の支払)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

 

原則として、賃金は全額を支払わなければなりません。

法令、労働協約、労使協定に定めがあるものは例外的に控除が許されます。

法令により控除が許されるのは、所得税、住民税、社会保険料、財形貯蓄などです。

賠償金は、控除の根拠が法令に規定されていません。

労働協約で組合費、労使協定で共済会費、社宅家賃の控除が定められていることは普通にあります。

賠償金も、労使協定などで定められていれば控除が可能です。

ただし、会社側からの強制で労使協定を交わしたのなら無効です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

万一に備えて、規定を整備しておくことは重要です。

三六協定と呼ばれる労使協定も、残業がありうるのなら交わして所轄の労働基準監督署長への届出が必要です。

届出なしに残業が1分でもあれば違法です。

つまらないことで足元をすくわれることがないように、手続的なことはきちんと行いましょう。

ただ、やるべきことは会社によって違いますので、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/20|1,120文字

 

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<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、会社も被害者に対して賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を会社も負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

会社は、儲かっても利益のすべてを従業員に分配しないのに、従業員の過失で会社に損害が発生したときに、その損害のすべてを従業員に負担させるのは、あまりにも不公平です。

 

<懲戒処分による減給>

就業規則に「過失によって会社に損害を加えた場合」の懲戒規定を置いておけば、減給処分も可能です。

厚生労働省のモデル就業規則にも、こうした規定例がありますので参考になります。

しかし、減給処分の金額は限られていて、労働基準法に次の規定があります。

 

(制裁規定の制限)

第九十一条  就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

 

つまり、1か月の総支給額が30万円なら、1日分の1万円のさらに半分の5千円しか減給ができません。

複数の減給処分が重なった特殊な場合でも、3万円が限度となります。

この規定は、「1か月につき」ではなく「全部で」という意味です。

会社としては、わずかな損害しか回収できません。

 

<適正な人事考課による対応>

きちんとした人事考課の仕組みがあって、交通事故を起こしたことの責任を反映させるというのは正しい方法です。

給与について言えば、安全運転ができないという能力の面や、会社に損失を与えたという貢献度の面で適正な評価をすれば、他の従業員よりも昇給額が少ないというのは妥当な結果です。

また、賞与の支給率に反映され、支給額が少なくなるのも仕方のないことです。

これらは、あくまでも人事考課の仕組みがあって、適正に運用されることが前提となります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

成果を出しても出さなくても、努力してもしなくても、昇給や賞与が全員同じならば、できる社員ほど退職しやすくなります。

「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則が働くのです。

小さな会社でも、評価制度は必要です。

生産性を高める適正な人事考課制度は、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/18|1,127文字

 

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<労働問題解決の手順>

労働問題の解決は、1.事実の確認、2.問題の抽出、3.解決策の立案、4.解決策の実行 という4つのステップで行うのが基本です。

我々人間だけでなく、すべての生物は事実を頼りに判断しています。

ですから、最初に事実を確認すべきです。

これが不十分なまま、先に進むのは時間の無駄ですし、対応について悩んでしまうことになります。

次に、確認した事実の中から問題を抽出します。

ここでは、法令や判例などの法的知識と、人間関係に関する知識・経験がものをいいます。

知識・経験が不十分なまま問題を抽出しようとしても、やはり悩んでしまうことになります。

そして、解決策の立案では、a.目の前の問題を収束させる即効性のある解決策、b.長期的視点からの改善策、c.再発防止策 の3つを明確に分けて考える必要があります。

この3つのうちの1つでも欠けていると、問題が再燃し悩んでしまうことになります。

あとは、解決策を計画化して実行するだけです。

 

<1.事実の確認>

「おそらくこうだろう」という推測を排除して、客観的な事実の収集と、関係者からの聞き取りを行います。

関係者からの聞き取りでは、事実と感想・意見を明確に分け、あくまでも事実を中心に確認します。

社員に対して下手な聞き取り調査をしてしまうと、重要な証拠を消されてしまったり、人権侵害の問題が発生したりで、悩みの種が増えてしまいます。

慎重かつスピーディーに、効率良く行うことが求められます。

 

<2.問題の抽出>

確認した事実の中から問題を抽出するには、法的知識が必須ですから、人事部門が法務部門と連動して行うべきです。

これが難しいのであれば、労働問題の経験が豊富な弁護士や、特定社会保険労務士の力を借りるのが安全です。

こうした専門家は、法的な問題点を「争点」と呼んで数多く把握しています。

 

<3.解決策の立案>

解決策を考える場合、どうしても目の前の問題を収束させる方法だけに意識が集中してしまいます。

しかし、問題の発生には背景があるわけですから、その背景を改善しなければ、当事者だけの解決に終わってしまい、全社的な解決にはなりません。

同じ背景をベースとする別の問題が発生する危険、同じ問題が別の人に発生する危険を解消できないのです。

また、発生した問題について再発防止策を講じることも大事です。

抽出された問題の一つひとつについて、原因、原因の原因、そのまた原因を追究して、それを消滅させる必要があります。

 

<4.解決策の実行>

長期的視点からの改善策や再発防止策は、ついつい後回しになる傾向にあります。

これでは、いつまで経っても、労使トラブルが減少しません。

どの解決策も、計画を立て、スケジュール通りに実行しましょう。

 

解決社労士

2021/01/17|687文字

 

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<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、被害者に対して会社が賠償責任を負うこともあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<ルール設定の必要性>

こうした事態に備えて、従業員の会社に対する損害賠償のルールを設定しておかないと、その都度、損害賠償の範囲を検討したり、事故を起こした従業員への説明と交渉で多大な労力と時間が必要になります。

明確かつ客観的な規定を就業規則に置いておけば、万一の場合に役立つに違いありません。

 

<就業規則の規定>

ところが、厚生労働省のモデル就業規則を見ても、このような規定は見当たりません。

交通事故に限らず、従業員の会社に対する損害賠償の規定が無いのです。

実は、予め賠償額や損失の負担割合のルールを決めておくことは、労働基準法違反となり、ルールを定めるだけで最高刑懲役6月の罰則があります。〔労働基準法第16条、第119条第1号〕

こうした規定は、労働者を不当に拘束するものとして禁止されているのです。

さらに進んで、「賠償金の支払いが完了するまでは退職を認めない」などということになれば、強制労働の禁止に違反し、これには最高刑懲役10年の罰則があります。〔労働基準法第5条、第117条〕

どちらも、労働基準法違反の犯罪になってしまうわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

あれば便利なルールでも、定めること自体が違法ということもあります。

就業規則の作成にあたっては、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/16|1,615文字

 

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<労働基準法の規定>

労働基準法によると、解雇する場合には30日前に予告しなければならないのが原則です。

30日前に予告する代わりに、12日分の解雇予告手当を支払うとともに18日前に予告するなど、足して30日になるという方法も取れます。

30日分の解雇予告手当を支払うとともに即日解雇も可能です。

この場合には、「後日支払う」という約束ではなく、現実に支払っておくことが必要です。

そして、試用期間中の労働者に対しては、最初の14日間に限り、解雇予告も解雇予告手当も不要です。

労働基準法には、こうした規定しかありません。

ですから、入社から14日間は解雇の条件が緩いという誤解が生じます。

 

(解雇の予告)

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

 

2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

 

3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

 

第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。

一   日日雇い入れられる者

二   二箇月以内の期間を定めて使用される者

三   季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者

四   試の使用期間中の者

 

<試用期間についての判例>

試用期間については、最高裁判所が解約権留保付労働契約だと言ったために、何か特別な契約期間であるかのように思われがちです。〔昭和44年12月12日三菱樹脂事件判決〕

しかし、最高裁判所が試用期間について述べたのは、判決を下すのに必要があって述べたわけではなく、傍論として、ついでに語っただけです。

試用期間であれば、本採用後よりも解雇のハードルが低くなる趣旨のことを述べていますが、具体的に、どの項目についてどの程度低くなるのかは語っていません。

結局、試用期間も本採用後も労働契約の期間であることに変わりはなく、両者の違いを明確に説明することはできません。

それでも、試用期間であれば、本採用後とは違った扱いができるという勘違いは、多くの企業に存在しています。

 

<解雇の制限>

試用期間の最初の14日間でも、解雇権濫用であれば不当解雇とされます。

不当解雇なら、使用者が解雇したつもりになっていても、その解雇は無効です。

一方、労働者は解雇を通告されて、解雇されたつもりになっていますから出勤しません。

しかしこれは、解雇権を濫用した使用者が悪いのです。

何か月か経ってから、労働者が解雇の無効に気付けば、法的手段に訴えて会社に賃金や賞与を請求することもあります。

これを使用者側から見れば、知らない間に労働者に対する借金が増えていったということになります。

これは労働契約法に、次のように規定されています。

 

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

一部の企業に端を発した法令の拡大解釈や、最高裁判所の判決に対する誤解が、いつの間にか「常識」となってしまうこともあるのです。

さらに、昨日まで正しかった常識も、法改正や判例変更によって、不適法になることがあります。

正しいことは、信頼できる社労士にご確認ください。

 

解決社労士

2021/01/13|895文字

 

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<設立直後の会社>

できたばかりの会社では、創業者だけ、あるいは創業者の他は家族だけということもあります。

この場合は、労働条件通知書も就業規則も作られないことが多いでしょう。

すべてはお互いの信頼関係に基づいた口約束で足ります。

創業者に対する尊敬や恩義の気持から、大きな問題は発生しないものです。

 

<事業の拡大>

やがて知り合いを採用し、近隣の人たちをパートやアルバイトとして採用します。

法律上は、労災保険や雇用保険の手続だけでなく、労働条件通知書などの作成交付も必要です。

ところが、家族による事業の運営の延長線上で、これらの手続が行われないことがあります。

もちろん、労働基準法違反の犯罪ですから、罰則の適用もありえます。

違法だと分かっていて手続をしないよりは、よく分からないから放置することの方が多いようです。

また、労働保険や労務管理の専門家は社会保険労務士なのに、何でもかんでも税理士の先生に確認して済ませていると、違法な状態が解消されません。

 

<創業者の離脱>

事業がこれからという時に、創業者が病に倒れ、配偶者やお子さんたちが後を継ぐという事態は、常に想定しておかなければなりません。

相手のあることであれば、分からないことは相手に聞けば良いのですが、それですべてが分かるわけではありません。

特に、従業員の給料のこと、とりわけ残業代については、労働条件通知書や就業規則、そしてきちんとした給与明細書が無ければ、分からずじまいになってしまうことも多いのです。

創業者に対する尊敬や恩義の気持から長く働いていた従業員も、会社から心が離れ、何年分もの残業代を請求してくるかもしれません。

また、退職金を要求するかもしれません。

こうした法的紛争になったときに頼れるのは、人ではなくて、書類を中心とする物的証拠なのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

労働関係法令を知らずに他人を雇うリスクは大きなものです。

会社が大きくなったら、事業が軌道に乗ったらではなくて、創業の時から信頼できる社労士にご相談ください。

従業員がいないうちに、労働条件や会社のルールを決めておいた方が楽なのは明らかなのですから。

 

解決社労士

2021/01/10|1,222文字

 

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<具体的なトラブル>

円満退社のパート社員が、退職にあたって会社に退職金の支払を請求する、あるいは、退職後に請求するということがあります。

もちろん、パート社員にも退職金を支払うルールなら問題ないですが、会社が支払わないつもりだったならトラブルになります。

 

<就業規則が1種類しか無い場合>

社員が10人以上になったときに会社の就業規則が作成され、そのときは正社員しかいなかったのに、やがてパート社員も働くようになっていたとします。

この場合には、将来パート社員も入社してくることを想定して、就業規則が作成されているとは限りません。

つまり、正社員用の就業規則しか無い状態になりうるのです。

あるいは、就業規則のひな形をそのまま引用して「パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する」という規定を置きながら、別に定める規則を作っていなければ、パート社員にも正社員用の就業規則が適用されます。

こうして法的には、パート社員にも正社員と共通の唯一の就業規則が適用され、会社に退職金の支払義務が発生するのです。

 

<社員の定義が無い場合>

就業規則に「正社員に退職金を支給する。パート社員には退職金を支給しない」という明確な規定があったとします。

それでも退職するパート社員から「私は残業もしたし、休日出勤もしました。この会社は賞与が出ないけど、誰ももらっていないから我慢しました。でも、退職金が出ないなんておかしいです。私は正社員として働いてきました」と主張されたら、会社は就業規則に示された正社員の定義とパート社員の定義を説明して切り抜けなければなりません。

しかし、就業規則に「正社員とは…」「パート社員とは…」という定義が定められていなければ、説明のしようがありません。

「何となくわかるでしょ」というレベルなら、労働者に有利な解釈がとられるのが労働法の世界です。

結局、会社が退職金の請求を拒むことは困難です。

 

<労働条件通知書に「退職金無し」と書かれている場合>

労働条件通知書、雇用契約書、労働契約書などの名称で、個人ごとに労働条件が通知されています。

ここに「退職金無し」と書かれている場合でも、労働契約法に次の規定があります。

 

(就業規則違反の労働契約)

第十二条  就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

 

つまり、就業規則には「退職金あり」と書いてあって、労働条件通知書などに「退職金無し」と書かれていたら、労働者に有利な「退職金あり」が有効になるということです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

退職金一つをとっても、法的に争われたら会社が負けてしまうことがあります。

就業規則にトラブルの火種を残さないよう万全を期すため、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/08|1,839文字

 

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<コミュニケーション不足>

コミュニケーションというのは、人と人との間で行われる知覚・感情・思考の伝達です。

労働問題の原因の大半は、コミュニケーション不足にあると考えられます。

コミュニケーションの良い職場では、労働問題が少ないといえます。

しかし、「コミュニケーションを心がけましょう」と言ってみたところで、それは掛け声に終わってしまいます。

 

<コミュニケーションコスト>

コミュニケーションコストとは、知覚・感情・思考の伝達に必要な、時間・労力・精神的負担のことです。

短時間で手軽に気軽に伝われば、コミュニケーションコストが低いことになりますし、長時間にわたり苦労しないと伝わらないのは、コミュニケーションコストが高い状態です。

 

<伝え手のコミュニケーションコスト>

伝え手のコミュニケーションコストは、受け手に伝えるのに必要な時間・労力・精神的負担です。

主に受け手側に、忙しそう、嫌そうに見える、伝えると怒りそう、反論しそう、理解力が低いなどの問題があると、伝え手のコミュニケーションコストが高くなります。

受け手が、いつも機嫌良く、話しかけると嬉しそうに笑顔になって、反論せずに最後まで聞いて、「ああなるほど」と言ってくれる相手であれば、伝え手のコミュニケーションコストは極めて低くなります。

こういう受け手の所には、情報が集まります。

 

<受け手のコミュニケーションコスト>

受け手のコミュニケーションコストは、伝え手から知覚・感情・思考を受け取るのに必要な時間・労力・精神的負担です。

主に伝え手側に、遠慮している、自信が無い、感情的になっている、言語能力が不足している、論理的でない、話が脱線するなどの問題があると、受け手のコミュニケーションコストが高くなります。

伝え手が、自信を持って堂々と冷静に、分かりやすく論理的に手短に話してくれる人なら、受け手のコミュニケーションコストは極めて低くなります。

こういう伝え手には、協力者が集まります。

 

<職場のコミュニケーションコスト>

職場のコミュニケーションコストは、情報の共有と価値観の統一が進んでいて、メンバーが高い言語能力と理解力を備えていれば、全体に低くなります。

言語能力と理解力は、個人の資質と努力にかかっていますので、職場のコミュニケーションコストを下げるには、情報の共有と価値観の統一を図るのが合理的です。

価値観の統一を図るには話し合いが必要ですから、コミュニケーションコストが低い職場ほど、価値観の統一が進むことになります。

反対に、相手の立場に立って考えることが苦手なメンバーが多いと、価値観の統一を図るのは困難です。

 

<報連相の問題>

ある職場で、報連相不足が認識されたとします。

「報連相を心がけましょう」と言ってみたところで、それは掛け声に終わってしまいます。

もちろん、報連相をする部下の意識が低いだけであれば、こうした掛け声だけで改善されることもあるでしょう。

しかし、多くの場合には、部下のコミュニケーションコストが高くて、報連相がしにくいという実態があります。

つまり上司が、部下の前ではいつも忙しそうで機嫌が悪く、何か伝えても途中で反論しながら怒るというのでは、安心して報告も、連絡も、相談もできる筈がありません。

報連相不足が問題視される職場では、管理職が態度を改めることによって、改善が進みやすくなります。

 

<テレワークの問題>

テレワークでは一般に、コミュニケーションコストが高くなります。

リモート会議のツールを使っても、話し相手の反応にはラグ(遅延)が付き物ですから、コミュニケーションコストが高くなって当然です。

ましてやメールの場合には、相手の様子が分からないまま、文字だけで知覚・感情・思考を伝達するのですから、どうしてもコミュニケーションコストが高くなってしまいます。

当然のマナーともいえますが、メールを打ち終わっても、すぐに送信するのではなく、次のチェックを行いながら何度も推敲すべきです。

 

【メール送信前のチェック】

・可能な限り相手の立場に立って、分かりにくい点は無いか、誤解を招く点は無いか。

・論理矛盾は無いか。

・用件と無関係なことを書いていないか。

・相手がメールを読んで起こすべきアクションは明確か。

・誤字、脱字、誤変換、「てにをは」の誤りは無いか。

 

こうすることによって、コミュニケーションコストを低くすることができます。

もし、感情的になっていたら、一度冷静になってから上記のチェックを行うようお勧めします。

 

解決社労士

2021/01/05|1,450文字

 

YouTube労働条件を確認しましょう

https://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<労働条件>

労働条件は、原則として労働契約の内容です。

ただし、法令、労働協約、就業規則よりも不利な点は、これらによって修正されます。

法令には、労働基準法、最低賃金法、賃金支払確保法、男女雇用機会均等法などが含まれます。

労働協約は、労働組合法に従って締結された、労働組合と使用者(またはその団体)との取り決めをいいます。

 

<労働契約の原則>

労働契約法第3条は、労働契約の原則を次のように定めています。

 

【労働契約の原則】

1 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

 

労働基準法は、使用者に多くの義務を課し違反に対して罰則を設けている一方で、労働者に対する罰則はありません。

これに対して、労働契約法は、労働者と使用者の両方に義務を課しているものの、罰則は設けられていません。

違反があった場合には、損害賠償等により民事的に解決されます。

 

<労働条件の決定と明示>

結局、労働条件は、労働契約の内容として労使の合意により決定されるのですが、法令、労働協約、就業規則よりも不利な点は、これらによって修正されます。

労働契約は、口約束でも成立します。〔民法第623条〕

しかし、労働者にとっては生活がかかっていますし、使用者にとっては賃金その他の経費を含め合計数億円に達する大取引ですから、トラブル回避のためにも、使用者が労働者を採用するときは、賃金・労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければなりません。〔労働基準法第15条第1項〕

明示された労働条件が事実と相違する場合には、労働者は、即時に労働契約を解除することができます。〔労働基準法第15条第2項〕

労働条件通知書や労働契約書で、「残業なし」と明示されているのに残業を命じられたら、すぐに退職を申し出ることができるわけです。

 

<労働条件の変更>

労使の合意により、労働契約を変更することによって、労働条件を変更できます。〔労働契約法第3条第1項〕

変更についても、法令、労働協約、就業規則より不利な点は、これらによって修正されます。

労働基準法は、労働者を採用するときだけ、賃金・労働時間その他の労働条件を書面などで明示するよう求めていますが、労働条件を変更する場合にも、トラブル回避のためこれを行っておくべきです。

労働条件の変更のうち、労働者にとって不利益な変更を特に「不利益変更」と呼んでいます。

不利益変更の場合には、労働者の同意の有無が争点となりやすいものです。

しかも、この同意は労働者の「自由な意思による同意」であることが必要です。

使用者は、労働者の真意に基づく同意があったことを証明できるよう、「同意書」のような書面を証拠として残しておくべきです。

この書面には、労働条件の変更内容と同意した旨の他、具体的な変更理由を表示しておくことによって、労働者から「勘違いしていた」「だまされた」などの主張が出されても、納得のうえ同意したことを説明できるようにしておくべきでしょう。

 

解決社労士

2020/10/07|1,385文字

 

<退職者からの文書>

退職者から会社に宛てて、様々な主張、要求、金銭的請求などが書かれた文書が郵送されてくることがあります。

代理人弁護士名義で届いた文書であれば、退職者が弁護士に相談し、弁護士が退職者の委任を受けて発信していますから、事実関係の認定は不確かなものの、退職者の主張する事実を前提とした法的主張の部分は正当なはずです。

しかし、退職者が自分自身の想いで作成し、会社に対して主張をぶつけてきた文書は、かなり主観に傾いたものであることが多く、その趣旨が不明確なことも多いものです。

大企業では、こうした文書の内容に対して寛大な態度がとられることもあり、言った者勝ちの不公平が発生する恐れがあります。

一方で、中小企業の経営者は立腹し、その内容を全否定しようとする危険があります。

 

<退職者の心境>

毎日のように出勤し、余計なことを考えずに生活していたところ、退職して自分の時間を持て余すようになった退職者は、あれこれと余計なことを考える傾向にあります。

思いを巡らせるうちに、ネットサーフィンで得た不確かな情報を拡大解釈、類推解釈して、会社に物申したくなることもあります。

転職先の決まっている退職者や、事業を立ち上げる準備を開始した退職者は、毎日が忙しく充実していますから、余計なことを考え、ネットでつまらない情報を探索する時間はありません。

会社に文書を送りつけてくる退職者は、次の仕事が決まっていない場合が多いのです。

すぐに転職先が決まるつもりでいたところ、なかなか決まらないとなれば、精神的にも経済的にも追い詰められてきますから、会社に金銭的請求をしようと考えても不思議ではありません。

 

<会社に対する主張>

在職中に、大変な目に遭っていたという主張は多く見られます。

セクハラやパワハラのような嫌がらせがあったという、不平・不満・恨みが支離滅裂に書き連ねられているのです。

その中に、一部感謝の気持が述べられていることもあります。

感情を爆発させたいという欲求を満たしているかのような文書となります。

文書に対する回答は、文書で行うのが社会のルールです。

しかし、ただ単に感情をぶちまけているだけの文書であれば、これに文書で回答するのは、冷たくあしらっているように受け取られます。

人事部門の担当者などが直接面会して親身になって話を聞くのが良いでしょう。

そして、職場環境の改善に努めたいという話をすれば、納得して帰ることが多いものです。

 

<会社に対する要求>

具体的な根拠となる事実関係の主張がなく、ただ単に金銭を要求している内容であれば、「事実関係と計算根拠を示して請求してください」という内容の文書で回答すれば良いでしょう。これに対して、それなりの根拠を示したうえで、会社に対する謝罪の要求や、未払い賃金の請求、慰謝料などの賠償請求を含む内容であれば、文書の中に記された事実関係を確認する必要があります。

会社から回答する文書の内容としては、会社が認定した事実関係と会社の見解の2点に限られます。

回答するまでの期間が長くなってしまうと、退職者が労働基準監督署などに相談して、余計な労力と時間を費やす結果を招くことになりかねませんので、事実関係の確認は、なるべくスピーディーに行いましょう。

退職者の主張する事実関係が信じられないからといって、放置することだけは避けなければなりません。

 

解決社労士

2020/08/12|755文字

 

<報連相は大事だが>

会社の物品が壊れた時に、すぐに報告せず遅れて報告したら、責任を問われ半額弁償するよう迫られたという相談がありました。

かなりメチャクチャな話であることは明らかです。

理論的に反論するなら、報告が遅れたことと会社の物品が壊れたこととの間に因果関係が無いので、物品の修理費用や新品の購入代金を基準に責任を負わされるのは不合理だということになります。

報告が遅れたから物品が壊れたわけではないのに、壊れたことに対して責任を負うのはおかしいのです。

 

<営業上の損害が発生する場合>

パン屋さんやピザ屋さんで、閉店間際にパンを焼くオーブンやピザを焼く窯(かま)が壊れたとします。

このときすぐ会社に報告して、修理の手配や代品の手配ができるようにしなかったため、翌日、臨時休業になったとします。

会社の損害は、その店舗の1日分の売上に基づく利益ということになります。

もし、会社に損害を加えようとして、わざと報告しなかったのであれば、不法行為としてこの損害を基準とする賠償を求められることもありえます。〔民法第709条〕

しかし、この場合でも、修理費用が賠償額の基準になるわけではありません。

また、その場にいる従業員だけで、何とか修理しようとして翌朝まで頑張ってしまい、会社に報告することなど思いもよらなかったというケースなら、故意はありません。

過失にしてはひどすぎますが、会社側の教育不足も原因だと考えられます。

就業規則の懲戒規定に従い、合理的な範囲内で懲戒処分を受けることになるでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

こんなとき報告を受ける側としては、ついカッとなってしまいます。

クビにしようか、全額弁償させようかと、極端な思考に走りがちです。

一呼吸おいて信頼できる社労士にご相談いただけたらと思います。

 

解決社労士

2020/06/10|1,116文字

 

<労働条件通知書の交付義務>

労働条件のうちの基本的な事項は、労働者に対して書面で通知するのが基本です。

この書面が、労働条件通知書です。

 

【労働基準法第15条第1項:労働条件の明示】

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

これが労働基準法の定めです。

そして、1件につき30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法第120条第1号〕

最近の傾向として、非正規労働者に対しては、きちんとした労働条件通知書を交付しているものの、正社員に交付する労働条件通知書に必要な項目が漏れているケースが散見されます。

是非、再確認していただくことをお勧めします。

 

<労働条件通知書の保管義務>

労働条件通知書は3年間の保管義務があります。

「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない」〔労働基準法第109条〕

そして、こちらにも1件につき30万円以下の罰金という罰則があります。〔労働基準法第120条第1号〕

 

<労働条件変更時の労働条件通知書>

時給が上がった、契約期間が更新されたなどの場合、就業規則や賃金規定に具体的な規定があって、その規定を見ればだいたいのことが分かるという状態であれば、労働者の包括的な合意があるともいえます。

こうしたことから、前掲の労働基準法第15条第1項の「労働契約の締結に際し」というのは、一般には、新たに雇い入れる場合のことを指していると解釈されます。

ですから、就業規則などの範囲内での労働条件変更であれば、新たに労働条件通知書を交付する法的義務は無いということになります。

それでも、多くの会社で、有期雇用の労働者に契約更新の都度、労働条件通知書を交付するのは、常に現状の労働条件を明示してトラブルを防止するためです。

正社員についても、昇給や人事異動があった場合には、トラブルを防止するため、労働条件通知書を交付することをお勧めします。

 

<労働法上の義務を超えて>

労働基準法だけでなく、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パートタイム労働法から改正されたパートタイム・有期雇用労働法などなど、経営者に課せられた法的義務は把握するだけでも大変な状況です。

しかし、形式的な義務だけ果たしていても、労働トラブルを防止することはできません。

法的義務を超え、トラブル発生の予防を図ることで、経営者自身を護ることにつなげましょう。

 

解決社労士

2020/04/20|1,689文字

 

<使用者責任の求償>

従業員が、勤務中に第三者に損害を与えることがあります。

たとえば、従業員が勤務中に会社の車を運転していて交通事故を起こし、第三者に怪我をさせたような場合です。

この場合に、事故を起こし怪我をさせた従業員は、第三者に対して損害賠償責任を負います。不法行為責任です。〔民法第709条〕

それだけでなく、会社も、相当の注意をしていたなど一定の条件を満たした場合を除き、使用者責任を負うことになります。〔民法第715条第1項〕

会社が使用者責任に基づき、損害賠償を行った場合には、従業員に対してその責任の程度に応じて賠償額の一部を負担させることができます。

求償権の行使です。〔民法第715条第3項〕

これらのことについて、民法は次のように規定しています。

 

【使用者等の責任】

第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 

会社の従業員に対する求償権は、相当程度制限されるのが一般的です。

なぜなら、求償権の行使は、従業員の責任の程度に応じたものでなければならないからです。

 

<使用者責任の逆求償>

会社よりも先に、従業員が第三者に損害賠償を行った場合に、従業員が自分の責任の程度を超えて賠償金を支払った場合には、会社の本来の負担分を請求できるのではないかが問題となります。

いわゆる「逆求償」の問題です。

これまで、これに関する最高裁の判例は無かったのですが、最高裁第二小法廷令和2年2月28日判決がこれを認めました。

 

<最高裁の判決>

最高裁は、次のように判断しました。

 

民法第715条第1項が規定する使用者責任は、使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや、自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し、損害の公平な分担という見地から、その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることとしたものである。このような使用者責任の趣旨からすれば、使用者は、その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず、被用者との関係においても、損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである。また、使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対して求償することができると解すべきところ、上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない。以上によれば、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、上記諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解すべきである。

 

<判決の意味するところ>

民法の不法行為制度は、社会の中で必然的に発生する損害について、その損失を当事者間で公平に分担するための制度です。

民法には、会社から従業員に対する求償のみが規定されていて、従業員から会社への求償(逆求償)は規定されていません。

しかし、不法行為制度の趣旨からすると、逆求償が認められて当然だという判断が示されました。

つまり、会社と従業員のどちらが先に賠償金を支払っても、自分の責任を超える額については、他方に求償できるという、常識的な判断を示したことになります。

 

解決社労士

2020/04/07|531文字

 

<賠償予定の禁止>

会社の就業規則で、研修の費用を労働者の負担とし、一定期間勤続せずに退職した場合には、返還するものと定めていることがあります。

しかし労働契約を結ぶ際に、契約違反があったときの賠償額を決めておくことは、人身拘束につながるとして禁止されています。〔労働基準法第16条〕

通常の業務のために行われる教育訓練や、通常の新人研修や社内研修として実施される教育訓練について、退職時の費用返還を定めておくことは、この規定に違反する可能性があります。

 

<返還請求が認められる場合>

ところが裁判の中には、返還請求が認められた例もあります。

たとえば通常の業務と直接の関係がない研修であって、もともと本人が支出すべき内容の研修費用を、会社が一時的に立て替えたに過ぎない場合です。

希望者を募って海外の大学院へ留学させた例で、費用を会社が貸し付けた形をとり、一定の年数の勤続によって返済を免除するという事例で、退職者への返還請求を認めた裁判例があります。

実際に返還請求が認められるためには、返済金額や返済方法などから客観的に見て退職の自由を奪うものではないこと、返還について事前に十分な説明が尽くされていて合意があったことなど、厳格な条件を満たしていることが必要になります。

 

解決社労士

2020/02/17|1,348文字

 

<コミュニケーション>

従業員の間で情報交換が盛んであれば、起きない労働問題もあります。

ある従業員が「何かおかしい」と思ってネットで調べたことを、自分に都合よく解釈し、不満が大きくなったところで、会社にぶつけるというパターンの労働紛争があります。

会社としては、ほとんど言いがかりに感じますが、完全に適法ではない部分もあり、対応に困ってしまいます。

この従業員が「何かおかしい」と思ったとき、ネットで調べるのではなくて、社長、上司、先輩に確認したら、みんなで考えることになります。

一人の従業員と会社が対立する形にはならず、みんなで解決する形になります。

 

<信頼関係>

従業員間の信頼関係があれば、起きない労働問題もあります。

上司から叱られた部下が、「これは嫌がらせだ。イジメだ。パワハラだ」と思い、労働問題になることがあります。

しかし、「あの上司は親身になって叱ってくれてありがたい。よし、頑張ろう!」と思えば、客観的にはパワハラの疑いがあっても、労働問題にはなりません。

むしろ、感謝の気持ちとモチベーションが増大する結果になります。

 

<やりがい>

従業員が自分の仕事にやりがいを感じていれば、起きない労働問題もあります。

「毎日残業続きで、しかも残業代の一部がカットされているような気がする。言われたからやっているけれど、やる意味が解らない。これじゃうつ病になりそうだ」こう考える従業員は、メンタルヘルス不調になりがちです。当然、会社の責任問題にもなります。

ところが、仕事にやりがいを感じていれば、「毎日自分の納得がいくまで残業させてもらえる。会社の光熱費負担だけでも大変だろう。何とか貢献度を上げて成果を出さねば」こう考える従業員は、精神的に充実していますから、多少労働時間が長くても調子が落ちないものです。

この「やりがい」は、コミュニケーションと信頼関係に大きく依存します。自分の仕事が、どこで誰の役に立っているのか、失敗すると誰に迷惑がかかるのかが明確だからです。

 

<就業規則の充実>

上記3つが足りない会社では、就業規則の充実が急務です。会社にピッタリの就業規則は、会社にとって大きな武器になります。

ところが、会社にとって余計なことが書かれている就業規則、会社にとって必要なことが書かれていない就業規則、規定の意味が何とでも受け取れる就業規則、そして法改正に追いついていない就業規則では、会社の武器になるどころかブラック社員の武器になります。特に退職前後のブラック社員にとっては、大変強力な武器となってしまいます。

就業規則の作成や改定を、専門家に依頼して時間とお金をかけるのは当然です。

 

<相談窓口>

どうしても労働問題を防止できない環境にある会社では、問題が小さいうちに発見して対応することが最大の課題となります。

パワハラ、セクハラ、マタハラについての相談窓口設置は必須です。

病気と同じで早期発見と早期治療は大変有効です。

 

就業規則の作成や変更だけでなく、相談窓口となったり、社内のコミュニケーション、信頼関係、やりがいの改善をすることは、すべて社労士(社会保険労務士)の業務です。

社内で対応し切れない、あるいは、早く対応したいということであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2019/12/17|943文字

 

<ノーワーク・ノーペイの原則>

たとえば勤務時間中に、スマホを片手にモンスター探しの旅に出ていたら、その時間の賃金はもらえなくて当然です。

働いていなければ賃金は発生しないというノーワーク・ノーペイの原則は、労働契約の性質から当然に導かれます。

つまり、使用者の「働いてください。賃金を支払います」と労働者の「働きます。賃金をください」という意思表示が合致して労働契約が成立したのですから、働かなければ賃金が発生しないのは当然なのです。〔労働契約法第6条〕

ただし、欠勤控除をするかしないか、どのように計算するかは、就業規則に定めておくべき事項です。

定めておかないと、実際に勤務時間帯に働かなかった場合に、賃金から差し引かれる金額をめぐってトラブルが発生します。

仕事をサボって、後から遡って欠勤控除を受けたというのであれば、労働契約の債務不履行による損害賠償請求〔民法第415条〕というより、不当利得の返還〔民法第704条〕ということになるでしょう。

 

<拡大損害の場合>

しかし仕事をサボったために、重要なお取引先への納期が守れず、取引を解消されてしまったので、会社の売り上げが安定して2割減少したとか、機械の点検会社の社員が点検を何回かサボったために、機械の故障による死亡事故が発生したという場合には、賃金を削られるだけでは済むはずがありません。

これらは、労働契約上の義務を果たすにあたって発生した拡大損害です。

たとえば、運送屋さんがソファーを個人の家に届ける際、玄関に飾ってあった時価1億円の花瓶を落として割ってしまったという場合、「すみません。配送料をタダにします」と言われても、「はいそうですか」とは言えません。

(これは、大学の法学部の講義でよく出てくる例です。個人的には、「花瓶をしまっておきましょうよ」と思う次第です。)

これも、契約関係から拡大して発生する損害なので、債務不履行による損害賠償のケースだとされます。

もし、こうした拡大損害を発生させてしまったのなら、サボりと損害との因果関係(原因と結果の関係)が認められる範囲内で、損害賠償を請求されることは十分にありえます。

 

いずれの場合でもなく、納得がいかない場合には、信頼できる特定社労士(特定社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

<常識的な解決>

たとえば、会社で20年以上使われてきた電卓を、たまたま自分が使っていたら壊れたとします。

こんなとき、乱暴に扱ったわけでもないのに「あなたが使っていて壊れたのだから自分のお金で新しいのを買ってきなさい」と言われたら、決して納得できません。

法律上も、こうした常識に反する解決にはなりません。

 

<労働者の会社に対する損害賠償責任>

労働者が故意や過失によって、会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任が発生します。〔民法第709条〕

物を壊すなど財産上の損害だけでなく、名誉や信用といった形の無いものに対する損害や、お客様に損害を与えたために会社が弁償した場合も含まれます。

特に、労働者が故意に基づいて会社に損害を与えたのであれば、その責任は重く、会社から損害額の全額を労働者に請求できる場合もあります。

もっとも、この場合であっても、中古品を破損した場合に新品の代金を請求するようなことはできません。

ましてや、故意によらず損害が発生した場合には、リスクをすべて労働者に負わせるのは不公平です。

会社は労働者の働きによって利益をあげていて、その利益のすべてを労働者に分配し尽くしているわけではありません。

損害についてだけ、労働者がすべて負担するというのは、あまりにも不公平です。

また、会社には危機管理の義務もありますから、これを怠っておいて、労働者に損害を押し付けるのもおかしいのです。

そこで裁判になれば、多くのケースで損害の全額を労働者に負担させることはできないとされています。

具体的には、労働者本人の責任の程度、違法性の程度、会社が教育訓練や保険で損害を防止しているかなどの事情を考慮して、労働者が負担すべき賠償額が判断されます。

 

<損害額の給与天引き>

労働者が、会社に損害賠償責任を負う場合であっても、会社が一方的に損害額の分を差し引いて給与を支給することは禁止されています。〔労働基準法第24条第1項〕

したがって、会社は給与を全額支払い、そのうえで労働者に損害賠償を請求する必要があります。

また、労働契約を結ぶ際に「備品の破損は1回5,000円を労働者が弁償する」など、労働者が会社に与えた損害について、あらかじめ賠償額を決めておくこともできません。〔労働基準法第16条〕

これは物品の破損などに限られず、「遅刻1回につき罰金3,000円」などのルールを設けることも違法です。

 

2019.08.23. 解決社労士 柳田 恵一

<労働時間・休憩時間の定義>

労働基準法には、休憩について次の規定があります。

 

【休憩】

第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

 

労働基準法の中に「労働時間」「休憩時間」の定義はありません。

このため、会社が独自の解釈で労務管理や賃金計算を行っている場合があります。

たとえば、業務で着用が決められている制服に着替える時間を労働時間から除いていたり、お弁当を食べながらの電話番を休憩時間として扱っていたりという違法な運用も見られます。

その結果、労働基準監督署の調査(臨検監督)が入れば、その違法性を指摘され、すぐに是正するよう求められます。

 

<通達の役割>

労働基準監督署が企業を指導するにあたって、「労働時間」「休憩時間」の定義があやふやであれば、企業側が納得できません。

そのため、法令解釈の基準として次のような通達が示されています。

 

労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。〔平29.1.20 基発第3号〕 

 

休憩時間とは、単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱う。〔昭22.09.13発基第17号〕

 

これらの通達は公表されていますから、ネットで調べるなり、所轄の労働基準監督署に問い合わせるなりすれば、比較的容易に内容を知ることができます。

 

<判例の役割>

上の通達によっても、従業員が社外で市場調査の業務を行い、そのまま帰宅した場合には、どこまでが「使用者の指揮命令下にある時間」といえるのかが不明確です。

また、昼休みであっても、業務上の必要に応じて電話で呼び出せる状態では、「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」とはいえないのかという疑問も生じます。

このため、会社が休憩時間として扱った時間を、従業員や退職者が労働時間であると判断し、会社を相手に未払い賃金の請求訴訟を提起するということが起こります。

会社は、訴訟代理人の弁護士を選任するでしょう。そして、依頼された弁護士は、事実関係、使える証拠、条文、通達、過去の裁判例などを確認します。

過去の判決などは、最高裁判所のホームページで参照することができます。

しかし、今回の事例にどの判例があてはまるのか、この判例の射程はどうなのか、会社が準備できる証拠によって主張できるのはどこまでかなど、難しい判断を迫られます。

 

<企業としての対応>

欲を言えば、社内に専門部署を置いて、法改正、新たな通達、新判例の情報を随時吸収し、社内の問題点を改善していきたいものです。

新たな判例が、いままでの判例や通達を覆すということもありますから、判例の研究には重点を置かなければなりません。

しかし、こうした体制が取れない場合には、労働問題に詳しい社会保険労務士を顧問に置いて、トラブルの発生を未然に防止する。万一トラブルが発生したら、労働事件に対応できる弁護士と連携させるというのが現実的でしょう。

社会保険労務士の中には、手続きを専門として活動している先生もいます。弁護士の中には、労働事件を扱わない先生もいます。その先生の専門をよく確認したうえで選ぶと良いでしょう。

 

2019.06.05. 解決社労士 柳田 恵一

<個別労働紛争と解決>

個別労働紛争というのは、労働関係に関する事項についての、個々の労働者と事業主との間の紛争のことです。

これを解決する最終手段としては、裁判制度があります。しかし、これには多くの時間と費用がかかってしまいます。また、感情的なしこりが残るものです。

そこで、職場慣行を踏まえた円満な解決を図るため、都道府県労働局では、無料で個別労働紛争の解決援助サービスを提供しています。

さらに、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進することを目的として、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、次の制度が用意されています。

・総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談

・都道府県労働局長による助言・指導

・紛争調整委員会による斡旋(あっせん)

 

<紛争調整委員会による斡旋の特徴>

上記の制度のうち、紛争調整委員会による斡旋には、次のような特長があります。

・長い時間と多くの費用を要する裁判に比べ手続きが迅速かつ簡便

・弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家が担当

・斡旋を受けるのは無料

・紛争当事者間で斡旋案に合意した場合は民法上の和解契約の効力

・非公開で紛争当事者のプライバシーは保護

・労働者の斡旋申請を理由に事業主が不利益取扱いをすることは禁止

 

<斡旋の対象となる紛争>

労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争が対象となります。

・解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争

・いじめや嫌がらせなどの職場環境に関する紛争

・会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争

・その他、退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争 など

 

<斡旋の対象とならない紛争>

・労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争

・募集・採用に関する紛争

・裁判中または判決が出ているなど他の制度において取り扱われている紛争

・労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話し合いが進められている紛争 など

 

2019.05.09. 解決社労士 柳田 恵一

<今年は台風の当たり年>

今年の6月から8月にかけて、例年よりも台風の発生が多くなっています。

赤道の北側に「熱帯収束帯」というのがあります。

ここに赤道の北と南から風が集まり、行き場のなくなった風が上空に上昇気流として上がっていくと、海水温が高く水蒸気が多いので、多量の積乱雲が発生します。

こうして台風の卵ができます。

今年は、熱帯収束帯の海水温が例年より1℃高いので台風が多いようです。

 

<原因の原因>

では、なぜ熱帯収束帯の海水温が高いのかというと、二酸化炭素の増加による地球全体の温暖化、太陽活動の変化、森林の縮小などが原因ではないかとされています。

しかし、自然現象ですから確実なことは解かりません。

ましてやその先の、なぜ二酸化炭素が増えるのか、太陽活動がどのように変化するのか、森林はなぜ縮小するのかを解明しようとしても、さらに困難になります。

 

<労働問題の原因>

たとえば、残業が減らないのも、年次有給休暇の取得率が低いのも、男性が育児休業を取らないのも、「仕事が忙しいから」で終わらせてしまうと改善策が出てきません。

同様に、パワハラやセクハラは「それを行う人の常識が無い」、求人への応募者が少なくて退職者が多いのは「会社に魅力が無い」、新人が入社して数年で意欲を失うのは「仕事にやりがいが無い」というだけの原因解明では、対応の糸口すら見えてきません。

 

<突っ込んだ原因解明>

たとえば、パワハラの原因が「それを行う人の常識が無い」ことにあるとすれば、そのまた原因は会社の教育不足が考えられます。

・経営者がパワハラを許さないことについて明確な意思を表明していない

・就業規則に具体的で明確なパワハラの定義がない

・定義があっても、就業規則について定期的な研修が繰り返されていない

またたとえば、非常識でパワハラを行う社員がいるのではなく、パワハラが放置されていることが原因で横行しているのであれば、その原因は次のことが考えられます。

・パワハラの相談窓口がない

・パワハラ被害者から申し出があっても会社が対応していない

・就業規則に具体的で明確な懲戒処分の規定がない

・規定があっても、就業規則について定期的な研修が繰り返されていない

自分の会社が、どうしてこのような状態なのか、その原因まで解明できれば、やるべきことは全て見えてくるでしょう。

 

自社内での分析と対応がむずかしければ、会社の改善に取り組んでいる社会保険労務士にご用命ください。

 

2018.08.24.解決社労士

<労働争議統計調査>

平成30(2018)82日、厚生労働省が平成29(2017)年「労働争議統計調査」の結果を取りまとめ公表しました。

この調査は、国内の労働争議について、行為形態や参加人員、要求事項などを調査し、その実態を明らかにすることを目的としています。

 

【調査結果のポイント】(カッコ内は前年の数値)

 

1 総争議

平成29年の件数は358件(391件)で8年連続の減少となり、比較可能な昭和32年以降で最も少なかった。

 

2 争議行為を伴う争議

(1) 全体では前年と比べて件数、総参加人員及び行為参加人員が増加した。

件数68件(66件)

総参加人員 72,637人(52,415人)

行為参加人員 17,612人(15,833人)

(2) 半日以上の同盟罷業でも前年と比べて件数、行為参加人員及び労働損失日数が増加した。

件数38件(31件)

行為参加人員7,953人(2,383人)

労働損失日数14,741日(3,190日)

(3)半日未満の同盟罷業では、前年に比べて件数及び行為参加人員が減少した。

件数46件(47件)

行為参加人員9,917人(13,698人)

 

3 労働争議の主要要求事項

争議の際の主な要求事項(複数回答。主要要求事項を2つまで集計)は、「賃金」に関するもの181件(167件)が最も多く、次いで「経営・雇用・人事」に関するもの122件(160件)、「組合保障及び労働協約」に関するもの117件(99件)であった。

 

4 労働争議の解決状況

平成29年中に解決した労働争議(解決扱いを含む)は298件(328件)で、総争議件数の83.2%であった。そのうち「労使直接交渉による解決」は42件(46件)、「第三者関与による解決」は101件(115件)であった。

ここで「解決扱い」というのは、不当労働行為事件として労働委員会に救済申立てがなされた労働争議、労働争議の当事者である労使間では解決の方法がないような労働争議(支援スト、政治スト等)及び解決の事情が明らかでない労働争議等をいいます。

 

2018.08.09.解決社労士

<厚生労働省の公表>

平成30(2018)627日、厚生労働省が「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。

総合労働相談は10年連続で100万件を超えています。

内容は「いじめ・嫌がらせ」が6年連続でトップになっています。

 

<個別労働紛争解決制度>

個別労働紛争解決制度は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブル(個別労働紛争)を未然に防止し、早期に解決を図るための制度で、「総合労働相談」、労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。

厚生労働省では、今回の施行状況を受けて、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談への適切な対応に努めるとともに、助言・指導及びあっせんの運用を的確に行うなど、引き続き、個別労働紛争の未然防止と迅速な解決に向けて取り組んでいくとしています。

 

<総合労働相談>

都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など380か所(平成3041日現在)に、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応しています。

 

<助言・指導>

民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度です。

助言は、当事者の話し合いを促進するよう口頭または文書で行うものであり、指導は、当事者のいずれかに問題がある場合に問題点を指摘し、解決の方向性を文書で示すものです。

 

<あっせん(斡旋)>

都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度です。

社会保険労務士の中でも、「特定」の付記を受けた特定社会保険労務士は、あっせん当事者(使用者側・労働者側)の代理人となることができます。

 

<平成29年度の概要>

総合労働相談、あっせん申請の件数はいずれも前年度と比べ減少、助言・指導の申出件数は増加。総合労働相談件数は1104758件で、10年連続で100万件超え。

総合労働相談件数 1104,758(前年度比2.3%減)

 うち民事上の個別労働紛争相談件数 253,005(前年度比1.0%減)

助言・指導申出件数 9,185(前年度比2.3%増)

あっせん申請件数 5,021(前年度比2.0%減)

 

民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の全てで、「いじめ・嫌がらせ」が引き続き最多。

民事上の個別労働紛争の相談件数では、72,067件(前年度比1.6%増)で6年連続最多。

助言・指導の申出では、2,249件(前年度比1.9%増)で5年連続最多。

あっせんの申請では、1,529件(前年度比6.9%減)で4年連続最多。

 

2018.06.30.解決社労士

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