懲戒理由(事由)証明書

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2019/11/15|1,900文字

 

<解雇理由証明書>

会社が従業員に解雇を通告した場合には、それが懲戒解雇ではなく、普通解雇や整理解雇であったとしても、その従業員からの請求があれば、これに応じて解雇理由(事由)証明書を交付する義務があります。

このことは、労働基準法に次のように規定されています。

 

【退職時等の証明】

第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

2 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

3 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

4 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

 

従業員が解雇に納得しているのなら、会社に対して解雇理由(事由)証明書の交付を求めることはないはずです。

これを求めるということは、解雇の正当性に疑念を抱き、会社の主張する解雇の理由についての証拠書類を得ておいて、納得がいかなければ、労働審判や訴訟に備えようとしていることは明白です。

労働審判や訴訟となれば、会社が解雇理由(事由)証明書に書かなかった理由を、後から追加して主張することは困難です。

ですから、会社としては、思いつく限りの正当な解雇理由を、漏らさず記載しておく必要があります。

ただし、当たり前ですが、言いがかり的な不当な解雇理由を記載してはいけません。

 

<弁明の機会>

裁判所が懲戒処分の有効性を判断するにあたっては、対象となる従業員に弁明の機会を与えていたか否かが重要なポイントとなります。

弁明の機会を全く与えていなければ、それだけで懲戒権の濫用とされ、懲戒処分は無効であるという判断に結びつきやすくなります。

労働契約法は、懲戒権の濫用による懲戒処分の無効について、次の規定を置いています。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

従業員の言い分を聞くことなく、懲戒処分を行うというのでは、客観的に合理的な理由があったかどうかが疑わしいですし、世間一般の常識にも反しているでしょう。

大半の会社の就業規則には、労働組合との協議や本人の言い分を聞き取る手続が定められています。これによって、弁明の機会を与えていることになります。

このとき、懲戒処分の対象となる従業員の問題行動について、会社から話があり、これを受けて従業員が言い分を述べるわけですから、この時点で、懲戒処分の理由はある程度明らかになっています。

しかし、懲戒処分の理由が具体的に何なのか、弁明の機会を与えられただけでは、従業員が把握することはできません。

ですから、労働審判や訴訟の準備を考えていない従業員でも、懲戒処分を受ければその理由が気になって当然です。

 

<懲戒理由証明書>

法律上、懲戒処分を受けた従業員が、会社に対して懲戒理由(事由)証明書の交付を請求する権利はありません。

解雇の場合には、それが従業員を会社の外に放り出すことになり、重大なことなので、特別に証明書の交付請求権が認められているに過ぎないのです。

しかし、懲戒処分を行うからには、会社側が誠意をもって、その具体的な理由を従業員に説明すべきです。

対象者が納得できなくても、理解できるところまでは、説明する必要があります。

懲戒権は、会社が労働契約関係の中で、従業員に行使することができる権利です。

そして、権利を行使する場合には、信義に従い誠実に行わなければなりません。〔民法第1条第2項〕

会社が証明書を発行する義務は無いのですが、もし従業員から懲戒理由(事由)証明書の交付を求められるようなことがあれば、納得していない可能性が極めて高いわけですから、できるだけ丁寧に説明して疑念を晴らすようにしましょう。

 

解決社労士