2022/05/11|1,052文字
<法の規定>
労働基準法は、年次有給休暇の取得日について、次のように定めています。
【労働基準法第39条第5項】
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。
ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。 |
「時季」は、長期の連休をイメージしますが、「取得日」という意味です。
「労働者の請求する時季」なのだから、これから先の日付でも、過去の日付でも良さそうに思えます。
しかし、この条文の但し書きは、一定の場合には、使用者が別の日に年次有給休暇を与えることができると言っています。
過去の日を取得日に指定したのでは、使用者が取得日を変更できなくなってしまいます。
このことから、論理的に考えて、年次有給休暇の取得日の指定は、翌日以降の日でなければならないことになります。
<就業規則の規定>
就業規則には、次のような規定が置かれることがあります。
【欠勤の年次有給休暇への振替】
私傷病による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。
この申請は、所定の書式により上長に提出することによって行います。 |
私傷病など特定の原因による欠勤が発生した場合に、事後の申請で年次有給休暇に振り替えることを認めるわけです。
労働基準法は、労働者の権利について最低限の基準を定めているわけですから、労働者にとって労働基準法よりも有利な制度を設けることを禁止してはいませんので、こうした規定を置くことも可能です。
<フレックスタイム制での配慮>
フレックスタイム制を運用していると、仕事と生活の調整が容易ですから、年次有給休暇を取得するチャンスが訪れにくくなります。
なるべく残業時間が発生しないように勤務していたところ、清算期間の終了間際になってから、勤務の都合がつかず、清算期間の所定労働時間に満たない勤務しかできない期間が生じたら、事後的に年次有給休暇を取得できる仕組みにしてはいかがでしょうか。
反対に、業務が少ない時期だと思って、清算期間の途中にまとめて年次有給休暇を取得したところ、清算期間の終了間際になって、長時間の勤務が続くと、思わぬ残業が発生してしまいます。
この場合、使用者の方から、年次有給休暇の取得を取り消させるわけにはいきません。
しかし、労働者側から、これから先のために年次有給休暇を取っておきたいなどの希望で、年次有給休暇の取得を取り消せる仕組みも必要ではないでしょうか。