2022/05/06|1,738文字
<所定労働日数についての勘違い>
「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。
月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。
<所定労働日数の必要性>
所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。
月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。
この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。
こうしたことは、就業規則に定めておかなければなりません。
<月間所定労働日数を決めるときの端数>
就業規則に従って、カレンダーで年間の休日数を数え365日から引いて年間の労働日数を確定します。
うるう年と平年でも違いますし、同じ平年でも日曜日と祝日の重なる回数などによって変動があります。
そして、月間所定労働日数 = 年間の労働日数 ÷ 12 の計算式によって、月間所定労働日数を決めることが多いと思います。
このとき、22.51日、23.16日など、端数が出るのが通常です。
こうした場合に、切り上げると月給の時間単価は安くなり、切り捨てると高くなります。
今までの運用実績があるのなら、切り上げると厳密には不利益変更となりますので切り捨てるのが無難です。
月間所定労働日数に小数点以下の端数があっても給与計算には困らないのですが、一般には整数で決められています。
<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>
賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。
しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。
労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。
週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。
【図表1】
週所定 労働日数 |
勤 続 期 間 |
||||||
6月 | 1年6月 | 2年6月 | 3年6月 | 4年6月 | 5年6月 | 6年6月以上 | |
5日以上 |
10日 |
11日 |
12日 |
14日 |
16日 |
18日 |
20日 |
4日以上5日未満 |
7日 |
8日 |
9日 |
10日 |
12日 |
13日 |
15日 |
3日以上4日未満 |
5日 |
6日 |
6日 |
8日 |
9日 |
10日 |
11日 |
2日以上3日未満 |
3日 |
4日 |
4日 |
5日 |
6日 |
6日 |
7日 |
1日以上2日未満 |
1日 |
2日 |
2日 |
2日 |
3日 |
3日 |
3日 |
これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。
【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。
月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。
週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週
こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。
会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。
この場合、次の【図表2】が用いられます。
【図表2】
年間所定 労働日数 |
勤 続 期 間 |
||||||
6月 | 1年6月 | 2年6月 | 3年6月 | 4年6月 | 5年6月 | 6年6月以上 | |
217日以上 |
10日 |
11日 |
12日 |
14日 |
16日 |
18日 |
20日 |
169~216日 |
7日 |
8日 |
9日 |
10日 |
12日 |
13日 |
15日 |
121~168日 |
5日 |
6日 |
6日 |
8日 |
9日 |
10日 |
11日 |
73~120日 |
3日 |
4日 |
4日 |
5日 |
6日 |
6日 |
7日 |
48~72日 |
1日 |
2日 |
2日 |
2日 |
3日 |
3日 |
3日 |
所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。
結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。
これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。
やはり、明確に確定することが求められているのです。