2022/03/15|1,577文字
働き方改革と労働基準法との関係
<雇用対策法の改正>
平成30(2018)年7月6日、雇用対策法が「労働政策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」へと改正されました。
この改正は、働き方改革を推進するために行われたものです。
<働き方改革>
働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。
しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、国内で優良な労働力を確保するための変革」といえるでしょう。
長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。
中小企業であっても、ここは従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。
<旧法と新法の目的の違い>
旧法も新法も、その目的をそれぞれの第1条に示しています。
太字が変更部分です。
【旧法の目的】
第一条 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。 |
【新法の目的】
第一条 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。 |
<新法にあらわれた新しい目的>
新法にあらわれた新しい目的には、次の3つが示されています。
① 労働者の多様な事情に応じた雇用の安定
② 職業生活の充実 ③ 労働生産性の向上を促進 |
①の「雇用の安定」は、雇用契約の継続として一応客観的に測定できるものの、それが「労働者の多様な事情に応じた」ものといえるかは、労働者の主観的な判断により評価が変わってきます。
また、②の「職業生活の充実」も労働者の主観次第ということになります。
ですから、企業が新法に対応するためには、まず労働者の意見を聴いたうえで、具体的な施策を策定する必要があります。
この法律に限らず、働き方改革では「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策」が求められていますから、労働者の不安や不満を把握するために、その意見を聴くことが前提となるのは当然のことです。
これに対して、③の「労働生産性」は客観的な指標ですから、定期的に確認して施策にフィードバックすれば足ります。
この労働生産性の算出式にはいくつかありますが、現在の働き方改革は、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得を推進していますので、端的に次のものを基準にすると良いでしょう。
労働生産性 = 付加価値額 / 実労働時間 |
つまり、1か月など一定の期間内の付加価値額を、その期間内の労働者全体の実労働時間で除したものを、労働生産性の指標に用いることになります。
労働生産性の高い労働力というのは、企業にとって優良な労働力です。
そうするために、労働環境を整えたり教育・研修を積極的に行う必要があるわけです。