2022/01/06|1,331文字
モデル就業規則の性質と使い方
<就業規則作成料金の相場>
社会保険労務士に就業規則の作成を依頼すると、本格的なオーダーメイドであれば相場は20万円前後です。
何に経費がかかるのかというと、経営者や人事部門の責任者と繰り返し行う打合せの時間、移動時間、就業規則をパソコンで作成する時間、これらすべての人件費です。
こうした業務を行えるのは、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法その他多数の労働法についての専門知識があり、法改正や通達の変更、裁判所の新判例や判例変更、社会情勢の変動などに即した知識の更新があって、トラブル対応の実戦経験を積んでいればこそのことです。
日頃の自己研鑽あっての高度に専門的な業務なので、人件費の時間単価が高額になるのです。
(もっとも、とりあえずの就業規則であれば1~2万円で出来てしまいます。急いで形式だけ調えたいというご依頼もありますので。)
<高い就業規則で元が取れるのか>
下手な就業規則はトラブルを招きます。
会社と退職者との間で争いが生じ、徹底的に争った場合には、時間、労力、人件費その他の経費、そして何より精神力の負担が大変です。
裁判になれば、会社の評判も落ちます。
退職者も出ますし、求人に対する応募者も来ませんから、人材不足となります。
会社の負担を減らすため、和解に持ち込むことができたとしても、3・6・12の法則があると言われるくらいです。
【解決金の相場3・6・12の法則】
賃金の3か月分 ― 退職者側に悪質性が認められる場合の解決金
賃金の6か月分 ― 会社と退職者のどちらが悪いともいえない場合の解決金 賃金の12か月分 ― 会社側に悪質性が認められる場合の解決金 |
こうしてみると、優れた就業規則でトラブルを防ぐことができるか、あるいは会社に悪質性が認められずに済むことが1回でもあれば、十分に元を取ることができます。
ネットに公開されている就業規則を手直ししたり、友人の会社の就業規則をコピーさせてもらったりでは、自社の実態に合った就業規則にはなりません。
この実態に合わない就業規則がトラブルの種となるのです。
<就業規則はいつ作るか>
労働基準法には、次の規定があります。
【作成及び届出の義務:労働基準法第89条】
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。(以下略) |
これによると、従業員が9人までは就業規則の作成義務が無いことになります。
しかし、なるべく早く就業規則作りに取りかかることを強くお勧めします。
残念なことに、「そろそろ従業員の人数が2ケタになりそう」「労働基準監督署の監督が入って勧告を受けた」というタイミングで、就業規則の作成を依頼してくるお客様が多いのです。
会社を設立し、いつか従業員を雇入れる予定があるのなら、すぐに就業規則を作ることをお勧めします。
従業員が1人でもいれば、就業規則の変更にあたって、不利益変更という厄介な問題が出てきます。
しかし、適用対象者がいないのであれば変更は自由です。
思い立った時に変更をかけていけば、会社にぴったりの就業規則が完成してから従業員を雇入れるという理想的な形になります。