2021/12/11|1,000文字
<「被」という漢字の意味>
「被」という漢字には、受け身の意味があります。
ここで「受け身」というのは、行動の主体からの動作・作用を受ける人を主人公にして話す話し方です。
AさんがBさんをほめた。
この事実をBさんから見ると、
BさんがAさんからほめられた。
となります。
英語の授業では受動態として習いましたし、漢文の授業では「る」「らる」という受け身の助動詞として習いました。
<社会保険で「被」が付くことば>
「被保険者」は、保険について受け身の人のことをいいます。
保険者は、保険を運用する人のことをいいます。
健康保険の保険者は、保険証に書かれています。
協会けんぽであったり、健康保険組合であったり…
国民健康保険では、市町村が保険者です。
そして、保険が適用され給付を受ける人が「被保険者」ということになります。
日常用語では「保険加入者」ですね。
「被扶養者」は、扶養について受け身の人のことをいいます。
扶養する人を、わざわざ「扶養者」ということは少ないでしょう。
誰かに扶養されている人のことを「被扶養者」といいます。
日常用語では「扶養家族」ですね。
特に被扶養者のうち配偶者を「被扶養配偶者」といいます。
国民年金では勤め人が第二号被保険者、その被扶養配偶者が第三号被保険者ということになっています。
<労働保険で「被」が付くことば>
雇用保険や労災保険でも、保険を適用される人が「被保険者」ということになります。
労災保険では、保険事故に遭った人のことを「被災者」といいます。
業務災害や通勤災害という災害に遭った人ということです。
<その他「被」が付くことば>
「被相続人」というのは亡くなった人です。
「相続人」は、相続する人、相続を受ける人のことですから、相続をされる側の人は亡くなった人ということになります。
「被害者」は害を受ける人です。相手は「加害者」です。
「被告人」は、犯罪の嫌疑を受けて公訴を提起された人です。
「告訴された人」が語源ですが、その意味は「起訴された人」です。
告訴は、犯罪の被害者などが、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求めることですから、起訴とは意味が違っています。
なお「被告」は、民事裁判で訴えを提起された人のことを指しますから、犯罪者というわけではありません。
日常用語では、「被告人」と「被告」が混同されています。
テレビなどのニュースでも、正しく区別して表現されないことがあります。